神様のケーキを頬ばるまで (光文社文庫 あ 58-1)

著者 :
  • 光文社
3.64
  • (63)
  • (141)
  • (126)
  • (27)
  • (4)
本棚登録 : 2166
感想 : 129
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (269ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334773663

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • あなたは、駅前の『雑居ビル』にどんな人が働いているか知っていますか?

    どんな街にも人が集まる場所があります。『カフェ』や『古書店』、『マッサージ店』などなど、さまざまなサービスを提供してくれる店が駅前の『雑居ビル』に入っている…そんな光景は全国各地にありふれた光景ともいえます。また、下層階がそういったサービス業のお店である場合、上層階はいずれかの企業の『オフィス』が入居しているという場合も多いでしょう。しかし、自分が利用するお店がなければそんな建物自体に足が向くことはないでしょうし、ましてや上層階に入る『オフィス』の存在など知る由もないと思います。

    では、ここで視点を180度回転させてみましょう。上記したような『カフェ』や『古書店』、『マッサージ店』などには、それぞれそのサービスを提供する側にある人たちが働いています。そして、上層階には『オフィス』で働くたくさんの人たちの存在があります。そうです。私たちの生活の中で意識することのない場所にも確かに人の営みがあるのです。そして、そんな人たちもあなたと同じ人間なのです。あなたがそうであるように、そんな人たちも、さまざまなことに悩み苦しみながらも毎日を送っているのです。

    さてここに、東京都墨田区にある『錦糸町の、駅にほど近い六階建てのビル』で働く人たちに光を当てる物語があります。それぞれが選んだ人生の中にそれぞれの人間模様が繰り広げられるこの作品。”もがき、傷つき、それでも前を向く”人たちの姿を見るこの作品。そしてそれは、明日に続く今を必死に生きる五人の主人公たちの生き様を見る物語です。
    
    『初めて自分の店を持ったとき、私は若い画家の絵を一つ買った』と、『まだ二十四歳で、二日後に迫った店のオープンの支度で連日ろくに眠れていなかった』という時のことを振り返るのは主人公の『私』。『鍼灸指圧の専門学校を卒業し』、チェーンの『手揉みマッサージ店の一店舗を任されることになった』『私』は、『これからはここで最善のサービスを模索して、自分の手でお客を迎えることができる』と思う中に『全身が震え出すほど嬉し』いと感じていました。『安価な複製画』を扱っているギャラリーを訪れた中に『初めて買う絵は、意味を持ちますよ』と言う店主は『これらは複製ではなくオリジナルです』と幾枚かの絵を持ってきました。そんな中、『銀色の雪が降りしきる平原。建造物はなにひとつない』という一枚の絵に心囚われた『私』。『たったの五千円…ウツミマコト。男の人だろうか』と思う中に『これにします』と決めた『私』は、『この無名の画家が』『大きな舞台に羽ばたいていくのかどうかは分からない』、けれど『きっと私は年をとっても、この人の絵を追い続けるのだろう』と思います。それから、十七年の時が経ち、『なんどか店の場所を変え、町を変え』たものの『私の施術室で雪を降らせ続けた』というその絵。そんなある日、二十九歳の一人の女性が訪れます。『四十代だと言われても違和感がないくらいにくたびれ』た背中の女性の施術を進める中に首元に『不思議な青あざ』があることに気づきます。『手で首を押さえちゃうんです。くせで』と言う女性の説明に違和感を持つ『私』。そして、仕事を終え『錦糸町の、駅にほど近い六階建てのビルの二階』にある店を出た『私』は、『学童クラブ』で小一の娘を迎えると家路を急ぎます。『窓の明かり』を見て『今年中学二年生になった息子が帰っているのだろう』と家に入った『私』は、急いで『具だくさんの味噌ラーメンを作』りました。しかし、『ごはんだよ、と呼びかけても』『部屋から出てこない』息子の部屋を開けると、『勝手に開けんなよ』と文句を言う息子はゲームに夢中になっていました。『でてけよ!うるさい!』と言う息子に部屋を押し出された『私』は、『どんっ、と鈍い音が響』くのを聞きます。『壁を殴ったのだろう』と思う『私』は、『イヤで、イヤで、仕方がない。けれど、正さなければいけない。だって、この家に大人は私しかいないのだ』と思います。そして、数日後、先日施術した女性が再び店を訪れました。『彼氏と喧嘩しちゃった』と話し始めた女性は、『彼、前に好きだった人のことが、まだ好きなんだと思う』と続けます。そんな女性に『彼氏さん、首のあざはなにも言わないの?』と訊く『私』に、『ほんとうは、彼が絞めるの。首』と語ります。そして、彼が首を絞めるようになった経緯を話し始めた女性。二人の子どもを育てる『私』が『銀色の雪が降りしきる平原』の一枚の絵に見下ろされながら、マッサージ店で施術の日々を送る日々が描かれていきます…という最初の短編〈泥雪〉。何か起こるでもない静けさを感じさせる物語の中に、主人公『私』の思いを感じられる好編でした。

    “ありふれた雑居ビルで繰り広げられるいくつもの人間模様。思うようにいかないことばかりだけれど、かすかな光を求めてまた立ち上がる。もがき、傷つき、それでも前を向く人々の切実な思いが胸を震わせる、明日に向かうための5編の短編集”と内容紹介にうたわれるこの作品。『錦糸町の、駅にほど近い六階建てのビル』のそれぞれの一室で働く人たちに一編ごとに順に光を当てていく連作短編集となっています。

    そんな物語の舞台となるのが六階建てのビルです。物語の中ではこんな風に紹介されます。まずは、二階に店を構えマッサージ店を営む『私』の説明から見てみましょう。

    『錦糸町の、駅にほど近い六階建てのビルの二階にある。同じビルの一階はいつもセールを行っている大型のドラッグストア、二階にはうちの店の他にカフェと古本屋が並び、三階以上のフロアにはIT関連企業がオフィスを構えている』。

    今度は三、四階にオフィスを構えるIT会社の事務員・十和子の説明です。

    『私の勤めているアプリ開発会社は、六階建ての雑居ビルの三階と四階に入居している。一階にはいつも特売をやっている大きなドラッグストア、二階にはカフェや古本屋などのテナントがいくつか入っていて、五階と六階には同じくIT系の、セキュリティソフトを作る会社がオフィスを構えている』。

    どうでしょうか?立場の異なる二人の人物の見立てですがこの説明から読者が受ける印象に変化はないと思います。また、これだけの説明で読者の中にはおおよそのイメージが浮かび上がると思います。そうです。特に特徴のない、どこにでもあるような『雑居ビル』。この物語は、そんなどこにでもある光景でしかないビルの中で働く人たちに光を当てていきます。

    そして、そんな物語はビルの他にもうひとつ、五つの物語をひとつに結びつける存在が登場します。それが一編目の短編〈泥雪〉で登場する『銀色の雪が降りしきる平原。建造物はなにひとつない』という一枚の絵を描いた『ウツミマコト』という人物であり、そんな彼が監督をした『深海魚』という映画です。カフェの店長・橋場の語りでこの映画がどんなものか見てみましょう。

    『ひと言で言うと、どうしようもない映画だった。主人公の男は若い頃に一世を風靡した、けれど今はやや落ち目の、中年のシンクロナイズドスイミング振付師だ。彼はある日、夢で見た理想の女性泳者と出会い、恋をし、彼女と共に究極の水中芸術の完成を目指して奮闘する』。

    『どうしようもない映画』と言われると、その印象に引っ張られますが、必ずしも他の主人公が同じように感じているわけでもありません。『アマゾンのレビュー』で『星5つか星1つに集まっており、好悪がばっさりと分かれていた』という評価の分かれるその作品。それぞれの主人公たちがこの映画をどう評していくかもこの作品の一つの読みどころだと思います。

    では、次にそんなビルに関係する主人公たちを五つの短編についてそれぞれ見ていきましょう。

    ・〈泥雪〉: 十七年前に買った『ウツミマコト』という『無名の画家』の絵をビル二階の施術室に飾るのは主人公の『私』。『父子家庭』で中二の息子と小一の娘を悩みながらも育てる『私』はマッサージに訪れた女性の首すじに『不思議な青あざ』を見つけます。当初、癖でついたと説明した女性でしたが『彼が絞めるの。首』と語ります。

    ・〈七番目の神様〉: 幼い頃から『喘息の持病』に苦しめられてきたのは主人公の橋場。『半年ほど前のある日』、河川敷で畑を耕す『ごま塩頭の』磯部と出会い、意気投合します。ビル二階のイタリア料理店で店長をしている橋場。そんな橋場はビル内IT会社の藤原に『合コン』に誘われ、戸惑いの中に参加しますが…。

    ・〈龍を見送る〉: ビル二階の『古書店「けやき」』でアルバイトの日々を送る朝海が主人公。『アマチュアバンドで作詞作曲を担当』するという朝海は哲平と『二人組ユニット、フォックステイル』を組み『コミュニティサイト』で販売を続けてきました。『哲平に龍が降りた』と人気が出る中に、哲平はコンビ解消を申し入れてきます。

    ・〈光る背中〉: ビルの三、四階にオフィスを構える『IT会社で事務員をしている』十和子が主人公。そんな十和子は『一流商社勤めで六つ年上の三十四歳』の上条と付き合い始めます。『たいそうモテ』る上条に『デートに誘ってもらえる』ことに喜びを感じる十和子。そんな十和子がホテルのベッドでプロレスを見る中に目を覚ます上条。

    ・〈塔は崩れ、食事は止まず〉: 郁子との『輝かしい日々』を思い返すのは、ビルから『道路を挟んだ向かい側にある』マンションに暮らす主人公の大野。共同経営のカフェの経営者だった郁子が『規模の大きな舞台』へと旅立ち『評判は上々』という記事を見て『頭が痛む』という大野は職探しもできずにテレビを眺める日々を送ります。

    五つ目の短編〈塔は崩れ、食事は止まず〉のみ、ビルから離れ、真向かいのマンションに暮らす女性が主人公となるというフェイントが入っていますが、この女性もビル内のある人物と関わりを持つことになっていきます。また、この女性がこういう立場で登場する理由も結末に判明します。このあたりとても上手い物語作りがされていると思います。いずれにしてもこの作品は、このビルに何かしらの形で関係する人たちの生き様が描かれていきます。そこには、市井の人たちのささやかな人生、つつましやかな人生の中にそれぞれに悩み苦しみながらも日々を生きる人たちの姿が浮かび上がります。

    〈泥雪〉の主人公・『私』は、『父子家庭』で二人の子どもを育てながらマッサージ師としてリラックスした環境の中にさまざまな会話を交わす『私』は、患者の痛みを取る一方で、別れた夫の影を中二の息子に見る日々に胸を痛めます。〈七番目の神様〉の主人公・橋場は、『人付き合いが苦手なわけではない』という中にイタリア料理店の店長としての日々を送りますが、幼い頃から悩まされてきた『喘息の持病』もあって『ふとした瞬間にねじくれた怯えがほとばしる』という日々を生きています。そして、〈塔は崩れ、食事は止まず〉の主人公・大野は、カフェの共同経営者だった郁子と仲違いし、一方で新しい店の評判を上げていく郁子を見る中に、自信をなくしていきます。職探しもままならない日々に身動きが取れなくなる大野。

    五つの短編では、それぞれに悩み苦しみを抱えた主人公たちが登場します。しかし、この世に生きる私たちの誰もが何の悩みもなく生きているわけではありません。それは、私も、そしてこのレビューを読んでくださっているあなたも同じことだと思います。誰もが自分の悩みこそが最も深刻なものであると考え、思い悩み、そして苦しみます。この作品では、そんな主人公たちが、行き詰まり身動きが取れなくなっている中に、ちょっとしたきっかけを見る物語が描かれていきます。それは、大きな変化ではありません。物語の最初と最後、それぞれの主人公たちには何も変化がない、何も変わってはいない、そんな風にも思えるそれぞれの結末があります。しかし、この物語を読んだ読者には、それぞれの主人公たちに訪れたほんの些細な変化、主人公たちの視点がほんの少し変わるだけで主人公たちの心に大きな変化が訪れ、前に進むためのきっかけとなっていることに気づくはずです。特にそれを顕著に感じられるのが、〈塔は崩れ、食事は止まず〉の主人公・大野の物語です。『郁子も他のスタッフも私を捨てた』、『あらゆるものを根こそぎ奪って、より大きくきらびやかな舞台へ出ていった』と嘆く中に生きる大野は『死んでしまえばいい、あんな女!』と郁子のことを思います。そして、『郁子が私に残したのは、パンケーキのレシピたった一枚だ』と思う大野が残されたものを思う結末。「神様のケーキを頬ばるまで」という書名が鮮やかに浮かび上がるその結末。そして、感動的な物語を作り上げる彩瀬さんの上手さをとても感じる中に思わず涙ぐんでしまった私。良い本を読んだ感いっぱいに包まれる読後がそこにありました。

    『普段はまったく気に留めることのない、雑居ビルの二階を見上げる』。

    私たちが暮らすそれぞれの街にはさまざまな建物が立ち並び、その中にはたくさんの人たちが働いています。そんな建物の多くに私たちが関係することはありません。しかし、そこに働く見ず知らずの人たちにもそれぞれの人生があり、それぞれの暮らしがあるのです。この作品では、そんな市井の人たちの生き様が五つの短編にわたって描かれていました。ひとつのビルに関係する人たちが連作短編で見事に繋がっていく様を見るこの作品。そんな見ず知らずの人たちにもそれぞれの悩み苦しみがあることに気づくこの作品。

    切なさと優しさがそれぞれに感じられる物語の中に、人の生の営みの愛おしさに胸を熱くさせられた素晴らしい作品だと思いました。

  • 同じ雑居ビルで働く人たちのそれぞれの人間模様を描いた5編の短編集。

    シングルマザーのマッサージ師や、イタリアンカフェバーの店長や、IT企業に勤めるOLなど、ままならない人生に疲れ果て、恋に仕事にもがき苦しむ人たちが新たな一歩を踏み出す様子を、心の内側をとても細やかに表現されていて、その苦しみが痛いほど伝わってくる。
    重苦しいのになぜかどんどん読み進められて、彼らの立ち直り方が潔くてかっこいい。

    それぞれの短編の締めくくり方もよかったけれど、最終章で、タイトルにある「神様のケーキ」という言葉の意味がちゃんと込められていたし、何かを失っても忘れられても、また新しく生まれ変われる、そんな希望を持たせてくれる終わり方が素晴らしかった。

    綾瀬まるさんの作品は、いつも最後に驚かせてくれるし、優しい気持ちにさせてくれる。

  • 初読みの彩瀬まるさん。

    五つの短編集で、一つの雑居ビルで繰り広げられる生活の物語。
    そこで働く人、そこのお店に通う人、そこの向かいに住む人。

    出てくる人たちは、何となく人生がままならない人たち。別に救いようのないどん底でもないけど、あの人のように輝かしい日々を送っているわけでもない。
    ヒーロー、ヒロインの友達、クラスメイト的なポジション。

    それなりに一生懸命に生きてはいるけれど、思い通りに行かなかったり悔しい思いをしたり。
    死ぬほどではないけど、後悔したり引きずったりしながら生きている物語の主人公が、ちょっと自分を認めて、また明日に向かって歩き出すお話。
    劇的な感動や感激はないけれど、きっとこれが人生だし、何度小さい挫折をしてもいつかまた頑張ろうと思う日が来ることを繰り返して生きていくんだな、と思えるような一冊でした。

    色々…こう…胸がぐわっともやっとする所もありましたが…「泥雪」とか「光る背中」とか…わかりますとも!私も大抵依存が強いのでね!っていう。
    『本当にだめだった時、私は自分の事、だめだってわからなかったよ。』
    ほんと、そう。←

  • 彩瀬まるさんの書く物語は 苦しい。
    それは、目を逸らしたくなるような悲劇が描かれている訳ではない。家族、仕事、恋人…生きていれば誰もが1度は悩み苦しんだことがあるであろうこと。日々の生活の中でぶち当たる壁。5篇の短編の主人公の誰かには共感してしまうんじゃないだろうか。ただ、この主人公たちには共通していることがあると思う。それは みんな「真面目」だということ。きっとみんな生きることに不器用で几帳面で、自分の中にある「正しさ」があって他人も自分も許せない。自分で自分をがんじがらめにしている感じ。

    今日のわたしは 生理痛と低気圧頭痛のダブルパンチでメンタルが弱くなっているんだ。「生きていると、一つ一つ、いとおしんできた夢が醒めていく。二人の子供はけして幸せそうではない。娘も、息子と同じくいつか私を嫌うのだろうか。」なんて一文に急に涙が込み上げてきそうになった。いや、うちの子 誰も反抗期なかっただろ。心の不調と体の不調って繋がってるよね。本の中でマッサージ師の主人公が、ガチガチに凝り固まった患者の体を丁寧に揉みほぐしながら「胃腸が弱ってるね。ちゃんと眠れてる?」ってツボを押してくれるシーン。体も心もジワーっとほぐれた患者がホロっと悩みもこぼしちゃうんだけど、めっちゃ気持ちよさそうなんだよなぁー。心身ともに揉みほぐされたい。

    どの話の終わりも 奇跡的で感動的な出来事なんて起こらない。それでも「明日はちょっとだけ前向きに生きられそう」と思わせてくれるところがすき。

    そしてこの本を読み終わったときに 誰もが思うであろうこと。

    生クリームたっぷり乗ったおいしいおいしいパンケーキを頬ばりたいっ!!(*´﹃`*)



    • チーニャ、ピーナッツが好きさん
      私の場合は…星状神経節ブロックは、首に注射する(結構キツイやつ)…これはちっとも効かなかった。別のペインクリニックでは、首や肩や、腰にまでブ...
      私の場合は…星状神経節ブロックは、首に注射する(結構キツイやつ)…これはちっとも効かなかった。別のペインクリニックでは、首や肩や、腰にまでブロック注射したのだけれど、そこでもちっとも効かなくて。三番目に行ったペインクリニックで、肩甲骨辺りをブロック注射したり、光治療当てたりしたらやっと、治ってきた。やっぱり肩こりがひどくて、カチカチだった肩が…柔らかくなって楽になったの。私の場合は、そんな感じですよ…。参考になるか、わかりませんけれど…。
      早く良くなると良いですね~!!
      2023/04/08
    • ゆーき本さん
      。°(°´ᗝ`°)°。チーニャさん辛かったんだねぇ。
      たくさんありがと!あんまり効かないってこともあるのね。 わたしパニックの症状が酷くなる...
      。°(°´ᗝ`°)°。チーニャさん辛かったんだねぇ。
      たくさんありがと!あんまり効かないってこともあるのね。 わたしパニックの症状が酷くなると この緊張型頭痛が酷くなるんだよねー。なんか今まで抗不安剤で誤魔化してたかんじ。
      睡眠、食事、適度の運動、わかってるんだけどねぇ。
      ゆる〜くがんばろうね*ˊᵕˋ*
      2023/04/09
    • チーニャ、ピーナッツが好きさん
      そうしましょう\(^_^)(^_^)/
      ゆる~く、がんばりましょう~
      (*^ー^)ノ♪
      そうしましょう\(^_^)(^_^)/
      ゆる~く、がんばりましょう~
      (*^ー^)ノ♪
      2023/04/09
  • テナントの入った雑居ビルを舞台にした、悩める人達の人間模様を描いた短編集。
    何かしら悩みを抱え自分の居場所を作ろうと必死にもがく彼ら。
    次々に試練が課せられ、落ち込んだり投げやりになったりとどうにも地味で冴えない。
    羨ましいのは励ましたり話を聴いてくれる味方のいること。
    特に「龍を見送る」の傷痕に名前をつけて可愛がってくれる千景さんのエピソードや、「光る背中」の最後まで逃げずに見届けておいで、と助言してくれる女友達のセリフに泣けた。

    世の中思い通りにいかないことが多くやるせない。
    でも大丈夫。生き方や考え方を少し変えてみれば各々の場所で少しずつでも前に進められる!
    ご褒美の甘いケーキをみんなが微笑みながら頬張っていますように…各々の未来を祈りたくなる優しい物語だった。
    彩瀬さんのラストの描き方は優しい気持ちにさせてくれて好きだ。

  • 食べ物系?と思ってたまたま買ったけど 全然違った 笑。初めての作家さん。
    続けて2回読んだ。1回めの2話くらいで 失敗かもと思ったけど 4話でグッと盛り返して。
    最終話まで読んで面白かったから もしかして最初から悪くなかったのかも と思って もう一周して。面白いというよりは 苦しくなるような切ない話の連続。食べ物系のほっこりした話と思って読み始めたから 途中で苦しくなっちゃったんだと思う。
    すごく好きなのと まぁまぁなのとは確かにあるけど どの話も心に残る一説があって また読み返したくなる本。
    光る背中と塔は崩れ 食事は止まず が好き。
    パンケーキって 特に好きじゃないけど のばらのパンケーキ食べたくなった。

  • 一本目の泥雪、くっっっら、って思って。
    もっとほのぼのな話だと思って読んでたので、ちょっと進めるのが辛くなる。

    うまいなぁと思うのは、話が進むごとに少しずつ希望の割合が増えていくこと。

    だから、龍を見送る。光る背中。塔は崩れ、食事は止まず。は結構好きだったかも。


    気持ちが明るくなる本ではないけど、救済を感じた。

    そして柚木麻子の解説がすごい。
    本書くの上手い人って読むのも上手いのね。笑

  • それぞれが『深海魚』の評価と解釈を披露することで、それぞれのキャラクターが際立つようになっていると感じた。

  • 駅の書店で購入。短編集なら気軽によめるかしらと。神様のケーキってなあにと思いつつ。悩める人達の人間模様を描いてる。私も心に栄養がほしくて、タイトルにひかれて買ってしまったかも。この作者の本は重いテーマもすっと読めるかな。

  • 短編集で、それぞれの物語の主役同士が薄くつながっている…そういう本が私はけっこう好きなんだな、と今さら気づいた。
    そういう短編集を今までいくつも読んできたけれど、つながり方にそれぞれ個性があるのが面白い。単純に人同士の場合もあるけれど、この小説の場合は“古びた雑居ビル”というどこにでもありそうな1つの建物がつながりの中心にある。
    と言ってもビルの存在感はほぼ無いに等しくて、むしろ後になって「あ、この人もあのビルにいたんだ」と気づいたりするのがまた面白い。

    登場するのは、シングルマザーのマッサージ師、喘息持ちのカフェバーの店長、理想の男から逃れられないOLなど。
    人生は思うようにいかないことばかりだけど、もがいたり傷ついたりしながら、かすかな光を求めてまた立ち上がる。そんな人々の切実な思いが描かれる。

    彩瀬まるさんの小説を読むのは「骨を彩る」に続き2冊目だけど、芯に人としての温かさを感じるという共通点があった。
    簡単に批判したり断罪したりしない。少しの空白を持って人を見つめる。その距離感が温かいと感じる。
    現実の人間でもそうだなと個人的には思う。距離が近いように見えて実のところ優しくない人はたくさんいて、本当に温かい人は、少しの距離をもって他人と接する独特の優しさを持っている。信じてるからベタベタしないし、何も知らないまま人を批判したりもしない。
    そういう温かさを、この小説(を書いた著者)から感じたような気がする。

    基本的にはなかなかうまくはいかない日常や人との関係が描かれているけれど、けして絶望的ではなくて、むしろ光の存在がすぐそこにあるような作品群。
    失敗や理不尽な出来事、うまく進まない恋、こじれてしまった人間関係。現実の日々にも起こりうる出来事は登場人物を傷つけるけれど、そこから立ち上がるパワーを人が持つことも同時に教えてくれる。
    全体的に、人に対する“赦し”のようなものを感じた。辛くても人を愛することは止められない、というような。

    それぞれにとても良かったから選びがたいけれど、「光る背中」と「塔は崩れ、食事は止まず」がとくに好きだった。
    両方とも、理不尽な人との断絶から立ち上がる女性の物語。

    とあるアーティストが様々なかたちで全てに登場するところも共通点で、そのアーティストの作品に対する登場人物たちの感じ方の違いがその人の生きる指針を表しているところも面白かった。

全129件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1986年千葉県生まれ。2010年「花に眩む」で「女による女のためのR-18文学賞」読者賞を受賞しデビュー。16年『やがて海へと届く』で野間文芸新人賞候補、17年『くちなし』で直木賞候補、19年『森があふれる』で織田作之助賞候補に。著書に『あのひとは蜘蛛を潰せない』『骨を彩る』『川のほとりで羽化するぼくら』『新しい星』『かんむり』など。

彩瀬まるの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×