残業税 (光文社文庫 こ 40-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (404ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334774271

感想・レビュー・書評

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  • 残業に税金を課す「時間外労働税」が導入。これに伴い、社会全体の残業時間は劇的に滅る一方で、サービス残業という【脱税】も横行し始める。税務署の残業税調査官と労基署の労働基準監督官がコンビを組み、ブラック企業を取り締まるお仕事小説。

    3か月ぶりに立ち寄った古本屋。

    右を見ても本。
    左を見ても本。
    上を見ると天井。
    下は床。

    やはり本屋って良いな。

    文庫本物色中、陳列された中に【残業税】の文字を発見。(おや、そんな税金あっただろうか。)
    無性に気になって入手に至った。

    言わずもがな【残業税】はフィクションなのだが、発想、着眼点が面白いではないか。

    働けば働くほど会社(使用者)だけでなく労働者にも税金を課す。更に時間外労働時間ごとに税率変動を設けるなど、リアルな設定が良い。

    残業税の建て付けは以下の通りだ。
    ------------------------------------
    正式名称は時間外労働税。
    労働基準法では、1日8時間または1週間40時間を法定労働時間と定めており、これを超える労働については、割増賃金を払わなければならない。この割増された賃金の2割が、時間外労働税として労使折半で国に収められる。
    たとえ残業代が支払われなくても、残業すれば納税義務は生じる。だが、実際には、残業代を払わずに残業税だけ天引きする事業所はない。そのため、「サービス残業は脱税」という表現になるのだ。
    ------------------------------------

    働き方改革が推進され、過重労働防止やら有給取得義務やらの関連法や指針の改正が随時なされている近年。
    本作品の発刊が2015年とのことなので、著者の斬新な先取りアイデアが素晴らしい。また、目的が異なる税務官と労基官をコンビにするあたり洒落ている。

    労働基準監督署の西川の熱血漢でムラのある行動言動、一方で多くを語らず冷静に論理的に物事を組み立てていく残業税調査官の矢島の凸凹なやり取りが良い。

    しかしながら、全体的な物語としては今ひとつ起伏や展開の秀逸さ、面白みに欠けた印象は否めなかったのが残念。

    どうやら、本作はシリーズ化されているようなので続編に期待。ついでに私の残業が減ることにも期待したい。

    本日は新年度初日。
    成人年齢引き下げの民法改正や、育児介護休業法の改正、私が産声をあげた日であるなど、公私ともに歴史的な1日であった。

  • どなたかの「残業税マルザの憂鬱」のレビューを読み、面白そうだったのでシリーズ最初の巻を買ってみた。

    過重労働を減らすために超勤手当に税金を課すとはなかなか考えたな。なんて思いながら読み始めたけれど、肝心の残業税に突っ込みどころも多く、その設定に従って進む話がなんだかなぁ。
    主人公の二人は人間的な魅力に乏しくて共感できず、お話もよくある話であまり面白くもなかった。

  • 残業すればするほど取られる税金が増える時間外労働税が導入された世界。
    冷静な残業税調査官と熱い労働基準監督官コンビが脱税に立ち向かう。
    凸凹だけど、仕事に真っ直ぐなコンビのやり取りや残業税という設定が面白かった。
    残業について改めて考えるきっかけになった。

  • 【収録作品】マルザの日常/脱税のトライアングル/誇り高き復讐者/メテオの衝撃/逆襲のクリスマス・イブ

     残業税という言葉のインパクトに惹かれて読む。
     それがなくても、ブラック企業のやり甲斐搾取の話は普通に通じる。
     矢島の誠実に仕事をする姿勢は好もしい。だからこそ、「けじめをつける」とかで、離婚しながらも矢島を応援する元妻の姿勢にはもやもやする。そこまで夫を理解しているのなら、親より夫だろう、と思うのだが。

     だいたい、身内を摘発したことを「情がない」という人たちは、身内を庇えば「依怙贔屓」だと言うだろう。
     あれを摘発してこれを摘発しないというのは不公平なわけで、その線引きをするのが、法治主義においては「法律」、というだけなのに。
     恣意的に「お友だち」ならOKとする社会は嫌だ。

  • 残業代に税金がかかる、というなんとも斬新な働き方改革
    そんな方法が!?とハッとして、脳がグッと刺激された
    発想力が凄いのって尊敬する

    残業させない方法として、ブレーカー落とせばいいじゃん、とか考えてた自分が稚拙すぎるわ…

    これ、実現しないのかなぁ
    国としても税徴収が増えるのはいいことなんじゃないかと

    そもそも、働き方改革とか言ってるけど、やって欲しいことは働かせ方改革なんだよなぁ
    働く側が改革起こしていいなら、「定時なんで帰ります」でいいのに
    まぁ、日本人なんでそんなことできないんですが…

    さてさて、本作はそんな背景の中、残業税を脱税してないか調査するマルサの女ならぬマルザの男が、悪をスパスパと裁いていくお話

    難しそうな話かと思いきやそんなことはなく、展開もテンポがよく、いい感じにサクサク読めるし面白い

    わかりやすく悪者がいて、わかりやすくそれを倒す、そんな感じ
    とはいえ、設定が設定なので、この制度による問題点などもある
    続編もある様なので、その辺りのしがらみや葛藤などが描写されてたりすると面白くなりそう

    『花咲舞が黙ってない』的なフランクさでドラマ化しないかな?

    こういうのって、配役とか考えるの楽しいよね
    ただ、主人公の矢島は呪術廻戦のナナミン、西川はなかやまきんに君で脳内再生されるんだよなぁ…
    同調した人は教えてください

    ここ最近は、病気になって死を近くに感じたことで、今後の人生の過ごし方を改めて考える様になった
    ありがちだけど、健康で楽しく充実した日々を過ごしたいな、と

    特に仕事に関してはかなり考え方が変わった
    何も見出せず、何も得られず、ただただ不快にしか感じないのであれば、それは生きるために必要なものではなく、生活をつまらなくさせている害悪なものでしかないなと
    ならサクッと辞めてしまおう、くらいな気持ちになってる

    もちろん今辞めたいわけではない
    あくまで考え方として、懐に忍ばせる感じね

    お金がなくても楽しくやれればそっちが正解だし、最悪どうにかなるし、なんならどうにかすることも楽しんでやろうと

    こう見えて慎重派でビビりな人間なので、虚勢な部分もあるが、それくらいの気持ちでいたいという意思表示
    アウトプットすることが大事なのよ、多分

    そんな想いもあり、この本を読んで本当に残業がなくなって、空いた時間を有効活用できる様な社会・思想になっていくといいなと思った
    そもそも「空いた時間を有効活用」って言ってる時点でダメだね
    その時間は「必須な時間」なんだし

    ふと外を見ると、こんな時間でもオフィスビルの明かりはまだまだ点いてる

    「それ、本当に残業してまでやらないといけないことですか?」

  • 「設定モノ(特殊な設定を一個思いついただけで、あとは、それを取り巻くストーリーを紡いだだけ)」にしては面白かった。残業税の設定よりも調査官の設定が絶妙。ケンオウさんの人間ドラマになっていて、もはや残業はどうでもいい。「過労が悪」という大前提が、違和感なく読めて楽しめるが、読み終わって冷静になってみると、イロイロおかしい設定。これが設定モノの妙。

  • これは有りな税金かなと思った。ただし、取った税金を正しく使ってくれる政府なら。

    どちらかというと、税金や働き方の話より、ケンオウさん個人の物語の方が興味深く読めた。最初は続編を読む気はしなかったけど、ちょっと気になりだした。

  • 残業すればするほど税金が持っていかれる残業税。
    サービス残業は脱税にあたり、働かせる側も働く側も罪になる。
    国民のオーバーワークを防ぐことを目的としてブラック企業には威力を発揮するという。
    もしもこんな法律が出来たら……。

    残業税の脱税にまつわる5話からなる話。
    脱税すれば、雇用者も労働者も両成敗となるが、マインドコントロールされて、会社を守るろうとする社員。
    法律の網の目をくぐり抜けて働かせる雇用者。
    残業税は、働く人の心身の健康を守るために作られた。
    ブラック企業の話もよく聞くので、かなり突飛な発想ではあるけれど、今の日本には、コレ系の法律が必要なのかも知れない。

    つねに体育系で熱く突っ走る労働基準監督官と冷静沈着な税務署の残業税調査官の凸凹コンビの活躍が良かった。

    それにしても残業税とは‥よく思いついたものだ。

  • リベンジ告発という怪しげな用語は寺内の創作だが、そういう事例はたまにある。つまり、勤務態度や能力に問題があって解雇された社員が逆恨みして、労基法違反や時間外労働税法違反で古巣を告発するのである。残業税の導入以降、労働改革が進んで正社員の解雇が増えている。

    「自信をもつっていうのは、必要なんですけどね。スポーツはとくに。でも、うまくいかなあことを他人のせいにしちゃ、ダメです。そういう選手は伸びない」

  • 設定が面白そうだったので購入。読み始めると確かにと納得する部分が多く読むスピードが上がった。が、中盤からありきたりな展開に飽き始めている自分に気がついた。毎度毎度キャラクターの性格から余計なトラブルになるのも、業種が業種故に無理がある。
    警察関係者も続編か何かなのかな?中途半端に出て来る。

  • 格好良すぎる説得に居た堪れなくなりつつ
    妻が一番格好良い
    税金は納めるものか取られるものか

  • 労基署と税務署がタッグを組み、サービス残業という労働法違反と脱税を暴き出す。
    長時間労働を防ぐため奮闘するが、相手方の企業もなかなか簡単には尻尾を掴ませない。
    様々な葛藤と事件の中、仲間に助けられながらも自らの仕事に突き進む。
    実際にはない残業税なるものだけど、リアル過ぎる内容に、現実もそうだったか?と考えてしまう。

    2022.7.18

  • 4分の1読んで挫折。

  • 長々とつまらない話がだらだら続く。
    一応最後まで読んだが時間の無駄だった。

  • 残業税という発想が面白い。現実の労働問題や法律の問題にも触れていて勉強になった。私たちが意識せず歩いている道も税金が無ければ整地すらできないんですよね。税務署のかたには感謝です。矢島の奥さんがまともな人で良かった。

  • 『残業税』って面白いね。
    もちろんフィクションだけど、本当にあったら、そういう批判あるだろうな~と納得の世間の声とか、世界ができてる。

    新卒時の仕事が「あの人残業してるよ~。仕事遅いね。お小遣い必要なのかな。」って文化(職種的にも)の外資系会社だったので、どれだけ転職しても日本企業の定時退社=仕事少ない ってのがどーにも慣れない。勘違いワークライフバランスで、ただ早く帰るだけの人もいる。そもそも会社にいる時間じゃないと思うんだよなーーー。

  • 残業代に対して高率の課税をする社会。主人公は、かつて自分の舅の工場の残業代の脱税を摘発した過去を持つほど税金に真摯に向き合っている。
    リアリティがあったのが、残業代をごまかす企業と自分達は経験を積むために好きで残業をしているんだ!とそのごまかしに手を貸している従業員。
    ちゃんと納得している人もいるみたいだけど、他の人がそう言っているから、と言い出せない人もいるだろうし、結局はこれって社員のやる気を利用した搾取だよね。

  • 1話目は「ちょっと・・」と思ったけど、2話以降どんどん良くなって、最終話では心地よいカタルシスも感じました。小前亮さんの作品は以前「姜維」だけ読んだ事があって歴史ものの作家さんだと思ってたので新鮮でした。

  • ソーシャルサイエンスフィクション。勝手に名付けたジャンル。残業に対して税を課した日本社会を描く。
    文章は端的。少し彩りにかけるかもしれ
    ないが、作風に非常にあっていると思う。主人公のキャラは最初は取っつきにくかったけど、エピソードが進むにつれて背景が浮き彫りになり親しみを持てるようになってくる。
    残業税が導入され、ダブルワークが増えるとか、外国人研修生制度が悪用されるとかなかなか興味深い。過剰に働くことが罪となる世の中はなかなか世知辛いなぁなんて序盤は思ったものの、過労死を扱う頃にはそんなことないのかも。なんて思ったり。冷静に考えると脱税と労災が一緒くたにされてるのだけど、労働基準監督官と主人公が組んでるあたりバランスもいい。
    残業税に思いを馳せられる良い小説だった。

  • 現実的な設定で、良かったと思う

  • テーマは面白いけど、掘り下げが足りないかんじ。全体的に、特に女性の描写にそこはかとない不快感を感じる。

  • 今どきの話としてはなかなか面白い。

  • 時間外勤務に対して課税する残業税が導入された世界で不正を働く企業に対して、税務署・労基署が立ち向かう様を描いた小説。税務署と労基署の方向性の違いなどの行政の描写がかなりリアルな点が良いと思いました。

  • 全五話となっているが、一話完結型ではなく、なだらかにつながっている。
    残業税のコンセプトはフィクションだが、実在する組織や「三六協定」などの記述、ひいては実在の企業をモデルにしたかのような設定もあいまって、読み進めるごとに現実の話に思えてしまうように、巧妙に描かれているなと思った。

  • 途中で断念

  •  舞台設定や人物、展開などの構成がとにかく魅力的。全体に文章は平易だし制度の説明もそう難しくなく、読みやすい。ちゃんと本としての盛り上がりもある。五話で娘と話すシーンは感涙した。主人公コンビも筋が通っていて、葛藤も変化もあり気持ち良い。
     解説にもある通りのひとつのシミュレーションとしていろんな人と共有したくなるし、架空の制度だけど現実の労働問題もたくさん盛り込まれていて、小説を読みながらそれらに触れられることにも意味があると思う。

  • 残業をしたら残業税を払う。

    長時間労働が問題になっているだけに、リアルな話にも思えました。経団連が真っ先に批判することになるとな思いましたが。

    お金を時間で買うのが労働かもしれませんが、その時間で何ができるか、お金は目的ではなく手段。とわかっていてもお金はあるに困ることはありませんよね。

    矢野と西川の労働基準局と税務署の職員コンビ。西川の真っ直ぐな態度を見て、こういう人がいたら、仕事も楽しいのかなと思いました。

  • どの業界でも過労死レベルに働いている人は沢山いる。わたくしも直近1ヶ月は150時間を超えている。

  • 設定がすごく面白い!残業税というタイトルと、POPに書かれたその仕組みに惹かれて、思わず購入。
    超マジメな残業税調査官と熱血労働基準監督官のコンビで、いろいろな企業の脱税と荷重労働に立ち向かう物語。
    前半の方はお堅い感じの流れなんだけど、後半のブラック企業相手に戦うところは盛り上がってきて面白い!過労による自殺という重い内容に踏み込むけど、その含めて物語に厚みが出てると思う。
    そして超マジメな残業税調査官ケンオウさんの親子の絆もジーンとくる!この娘さんを育てた奥さんは素晴らしいわ。しかし、実家を潰されてここまでの対応が出来るかな。出来過ぎかな。

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著者プロフィール

小前亮/1976年、島根県生まれ。東京大学大学院修了。専攻は中央アジア・イスラーム史。2005年に歴史小説『李世民』(講談社)でデビュー。著作に『賢帝と逆臣と 小説・三藩の乱』『劉裕 豪剣の皇帝』(講談社)、『蒼き狼の血脈』(文藝春秋)、『平家物語』『西郷隆盛』『星の旅人 伊能忠敬と伝説の怪魚』『渋沢栄一伝 日本の未来を変えた男』「真田十勇士」シリーズ(小峰書店)、「三国志」シリーズ(理論社 / 静山社ペガサス文庫)などがある。

「2023年 『三国志 5 赤壁の戦い』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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