屋上のテロリスト (光文社文庫)

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  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334774653

感想・レビュー・書評

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  • 1945年8月15日の玉音放送から始まる。東西冷戦時代を彷彿とさせる。ここからフィクション、近未来の日本は東西に分裂している。学校の屋上で自殺しようとした彰人はそこで出会った不思議な少女・沙希の仕組んだ壮大なテロ計画に参加していく。

    彰人の考え方には矛盾がある。行動にも矛盾がある。
    マンガチックなストーリーで、意外性や斬新性は感じられなかった。最後に出てきた人物は水戸黄門かと思った。沙希がやりたかった事が最後にわかる。そして沙希と彰人の関係も。

  • 設定は面白かったけどラストはハマらなかったかな

  • 現代では考えられない東西に分断された日本。何とか日本を統一しようと女子高生が奔走する。

    大企業の代表となった女子高生:沙希が軍隊を手玉にとったり、一見核爆弾と思えるような花火を花火師に作ってもらっていたりと、かなり設定には無理がある。
    知念作品らしく最後の伏線回収で助っ人に沙希が救われるのは見事の展開だったと感じた。


  • ポツダム宣言を受諾せず、東西が分断したIFの日本を舞台にした王道のエンテメ小説。爽快感があり、畳み掛けるドミノ倒しのような展開はテンポがあって一気に読めた。

    世界をぶっ壊すという期待通りの爽快感は存分にあるが、その反面、スリルや不安感などには乏しく、基本的には財閥の娘による財力パワーと人脈パワーで話が進むため、駆け引きめいたものが一切なかったのには興ざめしてしまった。特に少女の仕掛けた計画の中での、重要人物とのコネクションは全て少女自身の人格による口説き落としというのは、ややご都合主義的で説得力に欠けている。

    少女のキャラも奇抜に見せかけて、世界に馴染めない少年少女の邂逅というある種のテンプレートであり、馴染みやすくはあるもののオリジナリティは感じず、逸脱してもいないので面白みに欠ける。少女に限らず、キャラクターは全体的に書き割りめいた印象である。特に主人公の彰人はキャラクターがあまりにも普通過ぎて、物語の主人公としてはパンチに欠ける。自殺悲願者とでもいうべき面白い設定ではあるものの、それがほとんど付け足しのようにしか感じず、少女と関わる動機にしてもいまいちインパクトがない。ようはファッション自殺の厨二病の高校生で、それはそれで構わないのだが、世界をひっくり返すだけの異常性やどこか壊れた感じが見受けられなかったのが残念だった。少女から言い渡される傍観者の役目もそうだが、本当に傍観者として終わるとは思いもせず、この辺はガッカリしてしまった。傍観者を義務付けられたことによる無力感や理不尽さなどもなく、これではただただ普通の少年が事態を眺めていただけにすぎない。ならば最初からこういう設定にせず、完全に普通の高校生でも良かったのではないかと思うし、それで特に話に支障もないので、設定を活かしているとは言い難い。

    少女の沙希も最初はミステリアスだったものの、蓋を開けてみればスペック以外はあまりにも普通で、常人と一線を画した部分がまるでないのは残念だった。無垢な少女による世界の革命というのが描きたかったというのは分かるが、それにしては葛藤も薄く、全体的にあっさりしすぎている。少女の行為の正当性に対する疑問や、事態が逼迫して取り返しのつかなくなっていくことへの不安感を感じなかったのは、少女に悪意を感じなかったからだろう。少年少女ともに普通すぎたため、たぶん人死にもなく綺麗にまとまるという変な安心感があった。謂わば安全圏での革命であり、爽快感があった代わりにスリルを演出するための怖さが犠牲になった気がする。そもそも死にたがりの高校生とテロを計画する少女という組み合わせで、二人の関係に異常性や壊れた部分が一切ないというのは肩透かしに感じてしまった。

    伏線を張った箇所はほぼ全て途中で分かってしまい、仕込みは鮮やかではあったが特に騙されはしなかった。ただ分かりやすいということは印象に残りやすいということでもあり、読者も覚えているためパズルがハマっていくかのような分かりやすい快感はある。ただ、ある程度読み慣れた読者には子供騙しに過ぎない。少女が仕込んだ大統領側のスパイもバレバレで、官邸サイドで名前の出ている人物が少ないため特定が容易なのと、一番裏切りそうにない人物を考えれば自ずと正体は分かってしまう。唯一天然痘の部分だけは分からず、そのひっくり返しも面白かったので、こういう医療ウンチクのひっくり返しはもっと読みたかったように思う。

    舞台である分断された日本という奇抜な設定は非常に素晴らしく、面白い設定なのだが十分に活かしきれておらず、単なる革命をやるための舞台装置でしかなかったのは非常に残念だった。こういうIF歴史を舞台にした時の醍醐味は現実の世界との差異であり、もう少し西日本や東日本の文化や風土の違いをイマジネーション豊かに描いて欲しかった所である。舞台が魅力的なだけにこのあたりはとても惜しい。わざわざこういう設定を用意したからには、東日本と西日本の文化の違いによる壮大なひっくり返しがあるものだと期待して読んでいたのだが、あてが外れてしまった。

    文章はクセがなく読みやすいが、「◯◯は××〜した」という表現が多すぎる。例えば99頁の中では4回も沙希は××した〜というのが会話文の後に添えられており、このあたりは削ってしまったほうが読みやすいように感じる。全体的に副詞も多く、平易ながらも少々無駄が多いように感じてしまった。読みやすい文章ではあるのだが、ここまで説明しなくてもいいとは思う。

    長々と書き連ねたが、文句や不満点が沢山あるのはそれだけ熱がこもった作品だからこそで、読者としても厚く返答するのが読み手としての義務だろう。つまりは読み応えがあったことの証左でもあり、決して駄作ではなく時間を無駄にしたとも思わない。リアリティの面では好みが非常に分かれるだろうが、爽快感に極振りした青春エンタメとしては悪くないとは思うし、こういう真っ当なハッピーエンドを奇をてらわずにしっかり描ききるのはとても素晴らしいことだと思った。

  • 低学年向け

  • これはテロなのかな?潤沢なお金と軍や政界におけるコネクションを使った大晦日の大イベントは最初から二階堂大統領、芳賀書記長の協力を得てやれなかったのかな。この物語のなかで沙希も彰人も死んでしまうことはなさそうだと思い始めたら、沙希が言うようにタネのある手品だからすべてが想定内になってしまった。話しが大きいからなお更かな。血を流さずに東西統一にことを進めることに関しては好感を持つけど、勧善懲悪な上にテロリストが善玉役になってるからいくらシチュエーションでドキドキさせられても、『どうせ最後は勝つんだよな』って冷めちゃったんだよなぁ。

  • 一人の少女が国を変えようと大胆に行動を起こす。
    結末に向けて用意周到に話が進められていたなと思う。早く結末が知りたくなるが、あまり意外な展開ではなかった。

  • メインの仕掛けは好きでした。ですが土台にある破天荒なかわいい女子が強制的に俺を巻き込むドタバタストーリーが平成のラノベすぎて読むのが辛かったです。

  • 設定は面白かったです。ちょっと気持ちに共感できなかったと言いますか、展開についていくことができず、私はそこまで心に残らなかったです。

  • 予想どおりな展開。
    なーんにも面白くない。

著者プロフィール

1978年沖縄県生まれ。東京慈恵会医科大学卒業。医師。2011年、第4回「ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」を受賞し、12年、同作を改題した『誰がための刃 レゾンデートル』で作家デビューする。代表作に、「天久鷹央」シリーズがある。その他著書に、『ブラッドライン』『優しい死神の飼い方』『機械仕掛けの太陽』『祈りのカルテ』「放課後ミステリクラブ」シリーズ等がある。

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