避雷針の夏 (光文社文庫 く 20-1)

著者 :
  • 光文社
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感想 : 18
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  • Amazon.co.jp ・本 (376ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334774936

感想・レビュー・書評

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  • 不快で嫌な話なんだけど嫌いじゃない笑。
    田舎町の閉塞感、そこで暮らす人達の鬱屈とした思いや、人が持つ醜い感情と悪意がギューッと詰まっていて、登場人物に苛立ちながらもグイグイ読めた。
    梅宮と真保美が、特に嫌。
    終始不穏な空気が漂っていたけど、ラストは溜飲が下がる思いで読後は悪くない。

  • 暗い。暗い。暗い。
    それでも、読むのはやめられない。
    誰もがプツンと切れてもおかしくなかったし、これからどうなっていくのか、気になって仕方がなかったのだ。

    「ゲスとクズとグズしかいない」
    解説を読んで、なるほど。

    登場人物たちに感情移入できた人は少ないだろう。
    不快感を覚える。軽蔑する。イライラする。

    だが、登場人物と同じことをしていないだろうか?
    してこなかっただろうか?

    何かから逃げ続けたり、ネットに依存したり、弱いものをいじめたり、、、
    睦間は人の弱い部分を丁寧に映し出した町なのである。
    そして、誰もが避雷針にはなりたくないが、避雷針がなくては成り立たないほど、脆い町だったのだ。

    睦間は消えてなくなったが、睦間で燃え盛っていた業火は未だ燻り続けている。

  • ネタバレかも。
    イヤミスが好きで。
    真梨幸子さんも好きですけども、櫛木さんはまた毛色が違う気味の悪さを表現してて。
    本作もエンディングまでのうわぁ…って思わせるような感じが堪らなかった、けども最後、最後もう少しあったんじゃないかなって。
    誰かが救われる話は誰かが奪われる話に近似している、そう感じました。

  • 中二冬、読了。
     暗い、ひたすら暗い。でもちょっと好きだった。
     ホラー小説とかが好きな方には、おすすめ。

  • 余所者を一切受け付けない町、睦間。いくらこの町に引っ越して何年たとうとも……

    梅宮は仕事がない。
    友人に誘われて塾へ講師として睦間に引っ越してきた。要介護の母と妻、娘と一緒に。
    しかしすぐに嫌気がさし介護の母を妻に押し付けて家を出る。
    たまに帰るが一声かけてすぐに家を出る。
    この町の住民はどこかおかしい。
    地元民が起こした犯罪はもみ消され、余所から来た者に対してはいじめ抜く、何年も。
    放火、レイプ、殺人、ありとあらゆる犯罪が起きて犯人がわからなければ余所から来た者に罪をなすりつける。
    年に一度の祭りは誰もが気が高揚しほとんど暴動になる。店は襲撃され、余所者の家は何人もの人間によって破壊される。
    梅宮の家の方向が赤く燃えている。もしかして家に火が……

    余所者を全く受け付けない町というのは探せばどこかにありそうですが犯罪がまかり通るというのは大問題でいやーな気分になりました。
    もっと人間関係がドロドロしてホラー寸前までのくらーい感じを予想していたのですが何か軽い感じになっているのが残念でした
    (本文中のSNSのツイートが軽い感じを出しているのかも)

  • 田舎特有の閉鎖感。
    悲しいし、悔しいし、なかなかの胸糞。

  • 閉鎖的な田舎を舞台にした暗黒小説。これを読んだら田舎になんか住みたくなくなっちゃいますよね。
    ただ、作者がいいたかったのは、田舎=閉鎖的で鬱屈している。ってことではなく、たまたま舞台を田舎にしただけで、人間の心理的に嫌な部分だとかを描きたかったのだと思います。

  • 想像していた以上に嫌な話で、面白くて一気読みだった。よくもまあこんなにも嫌な物語を思いつくものだと思う。特に梅宮の思考は本当に不愉快で、男の身勝手さと甘えを煮詰めて凝縮したようだ。真保美の性格もあまりに歪んでいて、性根からの悪魔っているんだなぁと思う。オタマジャクシって……『なるたる』のミミズジュースを思い出したくらいに酷いいじめ。
    しかしある意味でリアルで、集団心理の怖さ、人間の業の深さを描いている。この世で一番怖いのは人間の悪意だ。それだけにラストのカタルシスが素晴らしい。後味もさほど爽快ではないが、これで良かったと思える終わり方だった。賢く強かな少女たちの今後の人生に、光があることを祈りたい。

  • 私なんかは容易に複数の映画館に行ける立地の町でなければ住めないと思うのですが、それでも田舎暮らしにはある種の憧れがあります。町の誰しもが顔見知りでまるで大きな家族のよう、あったかくて、困ったときは何の見返りも求めずに助け合う。田舎とはそういうものだと思っているし、そうであってほしいと思っている。そんな思いが見事にぶった斬られるのが、坂東眞砂子の『くちぬい』であり、この櫛木理宇の『避雷針の夏』であり。

    地元の人間であれば、たとえ殺人犯であっても赦されるどころか英雄視。よそものならば目立たず慎ましやかに暮らしていても難癖をつけられる。そんな町に越してくるはめになった家庭の娘ふたりは何を企てようというのか。

    娘のうちのひとりの父親には虫酸が走る。実母の介護を妻に押しつけ、自分は家にも帰らずに好き勝手。悪いのは俺じゃないとひたすら言い訳する奴に限って「業腹だ」と言うんだわ。そんなあなたに業腹です。

    これを読んで田舎暮らしなんてまっぴらごめんと思ったあとは、乃南アサ原作の映画『しゃぼん玉』(2016)を観て、やっぱり田舎もいいなぁと感じることをお勧めします。

  • 強烈な男尊女卑、容赦ない余所者いじめが蔓延する閉鎖的な町・睦間町。異常な猛暑で死者が相次ぐ夏、積もり積もった人々の鬱憤が爆発する。不快指数100%の胸糞悪サスペンス。
    登場人物の中にいい人無し。唯一のまともっぽい女子高生二人も、純粋な心の持ち主ではない。よくぞここまで嫌な物語を書けるものだと思うと、逆に清々しさを感じる。避雷針の役割を果たした倉本家がなくなったとき、被害は町全体に起こるというタイトルの巧さが秀逸。

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著者プロフィール

1972年新潟県生まれ。2012年『ホーンテッド・キャンパス』で第19回日本ホラー小説大賞・読者賞を受賞。同年、「赤と白」で第25回小説すばる新人賞を受賞し、二冠を達成。著作には「ホーンテッド・キャンパス」シリーズ、『侵蝕 壊される家族の記録』、『瑕死物件 209号室のアオイ』(角川ホラー文庫)、『虎を追う』(光文社文庫)、『死刑にいたる病』(ハヤカワ文庫JA)、『鵜頭川村事件』(文春文庫)、『虜囚の犬』(KADOKAWA)、『灰いろの鴉 捜査一課強行犯係・鳥越恭一郎』(ハルキ文庫)など多数。

「2023年 『ホーンテッド・キャンパス 黒い影が揺れる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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