名画裸婦感応術 (知恵の森文庫)

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著者 : 横尾忠則
  • 光文社 (2001年6月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (242ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334781026

名画裸婦感応術 (知恵の森文庫)の感想・レビュー・書評

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  • [ 内容 ]
    裸婦は絵画の主題でも最もポピュラーで、裸婦に挑戦しなかった画家を探す方がむしろ困難なくらいだ。
    もし「素」の気持ちで絵を観ることができれば、逆に絵の方からどんどん情報を伝えてくれるものである―。
    知識に頼るのではなく、五感を通して楽しむ絵画との旅。
    書下ろしを多数含む、特別オリジナル作品。

    [ 目次 ]
    今でも新鮮な作品の秘密―エドゥワール・マネ「草上の昼食」
    激しく愛し合った二人の女―ギュスターブ・クールベ「眠り」
    乳房の不思議な位置―ポール・ゴーギャン「ネヴァモア」
    生と死を同時に描く―エドヴァルド・ムンク「マドンナ」「少女と死」
    エロスがなくても美しい絵―ポール・セザンヌ「大水浴図」
    ピカソの四次元論―パブロ・ピカソ「アヴィニョンの娘たち」
    無防備な裸女―アンリ・ルソー「夢」
    愛が昇華する瞬間―エゴン・シーレ「夢で見たもの」
    人間の深奥の魂を描く―グスタフ・クリムト「死と生」
    筆の自由な動きに酔う―ピエール・オーギュスト・ルノワール「水浴びする女たち」〔ほか〕

    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]

  • 横尾さんの自由で平易で核心を突いた文章がとても魅力的な、絵画の解説エッセイです。横尾さんはもちろん一通りの美術史には通じている方ですが、ここではあえて、アカデミックな知識の披瀝ではなく、「画面から感じるもの」に内容を絞っています。それはヌードという、人間の肉体的感性に結びついた画題だからこそできた切り口かもしれません。
    ある程度美術をかじった人が読むと、「こんな見方もあったのか!」と新鮮な驚きの連続だと思います。

    例えば日本で1,2を争う人気画家のルノワール。ふつうはその光や影の表現や、多幸感あふれる画題に目がいきますよね。横尾さんは細かな筆のストロークに快感をおぼえ、抽象絵画を見ているように感じるのだとか。あの豊満な裸婦の肉感を見ていると、少し酔ったような感覚が起こる理由が初めて分かりました。

    また、ピカソの項では、発表当時批難の嵐にさらされ、キュビスムの端緒となった「アヴィニヨンの娘たち」を取り上げます。「娘」の顔がアフリカの仮面にインスパイアされているのは有名な話。ですが横尾さんの文章はそこでは終わりません。なぜピカソは彫刻の表面にのみ関心を持ち、仮面を作ったアフリカ人たちの霊感に興味を持たなかったのか、と泣く子も黙る大巨匠に軽くイチャモンをつけるのです(笑)

    19世紀末から20世紀初頭にかけて活躍した、有名な絵画を選んだ前半ももちろん無類に面白いのですが、この本の真の価値は、あまり日本人になじみのない画家や、ポップアートや現代絵画の作家を中心に取り上げた後半にあるかもしれません。
    ハミルトン、トルイユ、バルテュス、ウェッセルマン、リンドナーetc.、初めて知る画家にたくさん出会わせてもらいました。

    道徳的なタブーがなくなり、扇情的な主題をも扱うようになる現代絵画。エロティックな感覚もユーモアを交え正直に綴る横尾さんの文章を読んでいると、だんだんに自分の感じ方もさまざまな既成の価値観に縛られているのに気づきます。絵を見て自然と引き出される感情をありのまま語ることは時に恥ずかしいものです。私たちはそんな自分に向かい合うことを避けて、上っ面の知識だけを語ってはこなかったでしょうか?

    最後はセザンヌの項からの引用で締めくくりましょう。
    「女の裸の絵を見て、胸をときめかしているあなたは、絵を感性で見ないで頭で見ているのである。頭できれいな女だなあ、とかエロティックだなあと思っているのである。<中略>だけれども、もしあなたが感性で絵を見ることができるようになると、セザンヌのリンゴの絵や山の絵を見てもゾクゾクされると思う。このゾクゾクは頭が思っているのではなくあなたの肉体が感じている力なのである。この感覚がつかめれば、壁のしみや泥水さえも美しく見えるようになるだろう。世界全部が美しく見えるようになるかもしれない。」

  • (S)

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