京都魔界案内: 出かけよう、発見の旅へ (知恵の森文庫 c こ 8-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334781439

感想・レビュー・書評

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  • おびただしい数の怨霊が発生し、それにおびえ、
    またそれとの戦いを繰り返してきた都市――
    それが京都であった。(p.72)

    物の怪が跋扈し、恨みを抱いて死んだ者の怨念に
    人々が怯えた平安時代の痕跡を辿る、
    妖怪論の大家でもある民俗学者によるガイドブック。
    京都を洛中(中央部=一章)、洛北(北部=二章)、
    洛東(東部=三章)、洛外(洛西・洛南=四章)、
    宇治・大津(京都外縁=五章)に分けて、
    それぞれの歴史・曰くのある、
    俗な言い方をすればパワースポットを紹介した、
    京都新聞連載記事に加筆・修正した一冊。
    この本を携えて、新たな視点で改めて京都を旅してみたい。

    ところで、洛外「帷子の辻」の項で、
    写真(p.198)に付されたコメント
    「四つ角にある店は繁盛しないという俗信」に心当たりあり。
    今、住んでいる町にも、
    条件に当て嵌まる場所があって、七年間で
    コンビニ→長いブランク→ファストフード→
    再び長いブランク→パン屋さんが去り、
    以来、半年以上空き店舗なのだが、果たして……。

  • 千年もの間、権力闘争の敗者たちの無念を怨霊として恐れ、鎮め封じ祀る場所がこんなにあるんですね。

  • 京都が好きでよく訪れますが、寺社を訪れると、どことなく冷やりとした、おそろしい雰囲気を感じることがあります。
    古い歴史を持ち、幾多の伝説に彩られた京都の光と闇の、闇の部分に目を向けて紹介しているのが、この本です。

    後書きとしての解説を京極直彦氏が書いていたためか、てっきり小松左京氏の著書かと勘違いして読み始めました。
    国際日本文化研究センターの副所長である著者は、京都に造詣の深い民俗学者。
    京極氏は著者に熱烈なラブコールを送っています。

    どこかで聞いてきたような民間伝承が多く載っています。
    そのテのものが地域別にまとめられており、立地的にわかりやすくなっています。
    不気味な言い伝えのほかに、京都の豆知識も掲載されており、長らくの疑問がクリアになったことも多く、千年王都、京都の理解に役立ちました。
    今までより以上に、京都散策を楽しめそうです。

    以下、箇条書きのまとめです。
    ・鵺(ぬえ):おそろしいい業の動物とされるけれど、もともとはトラツグミだったとのこと。
           闇の中で鳴く声が不吉とされて、イメージが大きく膨らんだ

    ・ゴイサギ=五位鷺、天皇が五位の位を与えたから。

    ・安部晴明の母は葛葉姫。(コミックでの晴明の妻の名は真葛)
     晴明神社には、主祭神の晴明大神と同格の扱いで稲荷神が祀られている

    ・貴船神社:縁結びの神は縁切りの神
          和泉式部は相当なプレイガール

    ・鞍馬=暗魔? 奥の院は地主神=奉ることで封じられた、先住の荒ぶる神。慎重に扱わねば祟りをなす。
     天狗:仏法が広がるのを妨害する仏敵

     御伽草子『天狗の内裏』:源義朝は阿弥陀浄土で大日如来に生まれ変わっている

    ・八瀬の人々は酒呑童子を先祖として祀っている

    ・産寧坂:清水の子安観音へお安産祈願の参詣道だから

    ・大酒神社:酒に関係ない
     世阿弥の「風姿花伝」猿楽の始まり
     秦氏が秦の始皇帝を祀る→大荒(おおさけ)明神 荒ぶる祟りの神→道教の神、摩多羅神を祀る

    ・稲荷とは狐の霊を祭っている神社ではない。
     狐は眷属(お使い)。誤解の元に狐を祀る稲荷社も多くある
     「狐の稲盗み」昔話 狐が中国から稲穂を一つ盗んで日本にもたらした←ギリシャ神話のプロメテウス/泥棒でもある二重性

    ・橋姫神社:縁切り←→県神社:縁結び(コノハナノサクヤヒメを祀る)

    ・蝉丸神社・逢坂山(大津市)
     蝉丸は虚構の人物。琵琶の名手で「今昔物語」では源博雅が3年通ってようやく琵琶を教わった
     醍醐天皇の第四皇子でありながら、盲目だったので逢坂山に捨てられた 
     能楽『逆髪』:姉(逆髪)は髪が逆立つために放浪の身。能楽『蝉丸』

    ・『平家物語』三井寺の頼豪僧:白河天皇の皇子誕生の祈祷→ほうび→戒壇建立の悲願→延暦寺反対→天皇認めず→頼豪憤死→皇子死亡→怨霊が鼠となり経典を食い破った→社を作って祀って霊を鎮めた

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「どことなく冷やりとした」
      ・・・ひょっとして、霊感がお強い方ですか?
      「どことなく冷やりとした」
      ・・・ひょっとして、霊感がお強い方ですか?
      2013/02/04
    • リカさん
      いえ、霊感はまったくありませーん!!
      多分気のせいだとは思いますが、長い歴史を経て残っているものには、なにかしらパワーがあるように感じます...
      いえ、霊感はまったくありませーん!!
      多分気のせいだとは思いますが、長い歴史を経て残っているものには、なにかしらパワーがあるように感じます。
      そういった古いものが、京都や奈良にはワンサカありますからね・・・!
      2014/02/05
  • 日本を代表する「雅」の都・京都は、陰陽師や呪術僧が活躍する、呪いや怨念の渦巻く霊的空間でもあった。晴明神社、神泉苑、貴船神社…、名うての「魔界」を巡り歩くうちに、「異なる者」たちが跳梁跋扈する刺激に充ちた時空が蘇ってくる―そんな「魔界」発見の旅へようこそ!読んでから行くか、行ってから読むか。(表紙裏)

    これは良い。
    やたらめったら歴史ある京都、その一面にのみスポットを当てた案内書。
    一面とは『魔界』であり、古の時代の想いの結晶ともいえる場所場所だ。
    もとより行きたい場所の多い土地だけど、この本だけで14か所も増えてしまった。楽しい。

  • 幽霊や呪い等の伝承は概ね平安初期〜鎌倉時代初期の話が多い。平安京自体元々呪術が背景にあるから、とりあえず悪霊のせいにしとけ的思想が残っていたのだろうか。女の呪いの話が多いのは、男が根本で女を「恐ろしいもの」と捉えている現れかもしれない。今もそうだな。

  • 写真がたくさんあってカラーで面白いです。

    ただ、ずっと読み続けていると飽きてくる。
    元々は京都新聞に連載されていたコラムてきなものを
    再録した本だそうです。

    でもどんな由緒があってなど、とても興味深く面白く読みました。
    この本を手にして民俗学に興味をもってくれる人が増えるといいなって思います。

  • さすがは1千年以上の歴史を誇る京都。
    あちこちに「魔」の空間が存在する。
    しかしその「魔」と上手に付き合っているんで、現在もこの町は元気なのかも知れない。
    これこそ京都を知る真のガイドブックでしょう。
    写真も豊富やし。

    ウォーキングで夜の産寧坂に行った嫁が走って帰ってきたときがあった。
    この本を読んで合点がいった。

  • 京都のよく知る名所から地元の人しか知らないマニアックな場所まで、いわく付きのスポットが紹介されてます。
    神社仏閣がなぜそこに存在するのかは、やっぱりバックグラウンドがあるわけで。歴史の長い京都ならなおさら。
    華やかな京の都の裏側、ダークでミステリアスな一面が集められた一冊でした。

  • 気楽に読み始めたけど、読み進めほどに怖くなってきた。
    京都って面白い。古くから文字文化が存在し遺されているって貴重で豊かなことだと改めて思う。

  • 様々な昔話と、その舞台になった京都の寺や神社、場所などをセットで説明する本。話の元になった絵画や、現在の写真が多くて軽めに読める。そこに行くまでの交通手段が書いてあるのは個人的にツボだった。
    昔話としては知っているものが多かったが、今もその場所が残っていることを知らなかったものも多く、実際にあった場所を舞台にした話だったんだなと感心した。
    逆に言ってしまうと、ある程度いわく付きでなければ現代まで残らなかったかもしれず、そういう意味で寺社のプロモーションは抜群に効果的だったんだろうなと思った。

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著者プロフィール

国際日本文化研究センター教授、同副所長

「2011年 『【対話】異形 生命の教養学Ⅶ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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