忘れがたい場所がある 遠藤周作エッセイ選集II 旅と歴史 (知恵の森文庫)

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著者 : 遠藤周作
  • 光文社 (2006年10月5日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (276ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334784478

忘れがたい場所がある 遠藤周作エッセイ選集II 旅と歴史 (知恵の森文庫)の感想・レビュー・書評

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  • [ 内容 ]
    <1>
    ときに病み、悩み、つまずき、迷いながらも、生きることについて読者と共に考え、語り続けてきた著者による、人生の名エッセイを新たに精選。
    弱虫、意気地なしにも、きっと生きる力、信じる力がわいてくる。
    待望の遠藤周作エッセイ選集の第一巻。

    <2>
    作家は生涯「人間を見るための旅」を愛した。
    ときに悲哀を秘めた歴史の地に身を寄せ、ときに生きる意味を求めて異国の地を訪ね、ときに気ままに小さな裏路をぶらぶら歩く。
    遠藤文学の作品背景となる土地・場所を巡る旅から、狐狸庵節が楽しいユーモラスで遊び心に富む旅まで、妙味あふれる紀行・随想を集成。
    遠藤周作エッセイ選集の第二巻。

    <3>
    遠藤周作は「作家・遠藤周作」だけではない。
    狐狸庵山人と称して珍妙な滑稽話を語り、文壇ではイタズラ小僧となって笑いを招き、一個人ではダンス・演劇・コーラス・碁・英会話・釣り・競馬・お茶に挑戦する「自楽」の達人である。
    仲間・家族・読者から珍客・動物にいたるまで、面白くも心温まる出会いと交遊と話の数々。
    遠藤周作エッセイ選集第三巻。

    [ 目次 ]
    <1>
    1 人生のことを語りたい(何一つ無駄ではなかった;人生のことを語りたい;窓からの情景 ほか)
    2 共に生きたということ(恋を失ったとき;安定は情熱を殺し、不安は情熱を高める;秘密は秘密として活かしたい ほか)
    3 自分がいつ、どこで死ぬか(死について;合わない洋服;私とキリスト教 ほか)

    <2>
    1 そこに住んだ人の人生(歴史の旅;信長のこと;天下を変えたマヌケ男 ほか)
    2 異郷にある自分(仏蘭西にいく船に乗って;旅人と猿と;ペナン島の異邦人 ほか)
    3 ぶらぶらと小さな裏路を歩いて(はやってない仙台の狐狸庵;秋風に焼くラブ・レター;知らない町を歩いてみたら ほか)

    <3>
    1 狐狸庵いたく感動感銘(悪戯のすすめ;あわて者実録;思いちがい ほか)
    2 小説家たちとの交際(飲みはじめた頃…;道玄坂の酒と食べ物;四畳半のスラバヤ殿下 ほか)
    3 自楽を持ちたい(私と唄;江戸の漢詩;自ら楽しむ ほか)

    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]

  •  狐狸庵こと遠藤先生はスケベを装って人を騙す。やっぱり狐か狸だ。

     ある廃墟を訪れ、「四百年前にも1人の人間の眼にこれと同じ風景が眼に入った時、なにを考えたかと思うだけで眩暈のするような興奮をおぼえる」
     本書に収められている「廃墟の眼」に、そう書かれている。
     その興奮は「出刃亀男」の覗きの快感と同じで、つい「ニタニタと」笑っちゃうとも記されている。かつて、先生の文学作品を知らず、軽妙な随筆ばかりを読んでいた高校生の頃の私もすっかり騙されていた。
     純文学作家として追求している真理の深遠さと、目の前の読者の下世話さとはあまりに隔たりが大きい。その隔たりを埋める手段が「スケベ」や「おとぼけ爺さん」を装うことであったことを、近頃ようやくわかるようになった。

     先生の熱烈なファンだという人に、シリアスな小説のうち最もお薦めなのは何か尋ねた。『沈黙』と『侍』でしょうというのが彼女の答えだった。
     代表作といえる『沈黙』がなぜ書かれたのか。どのようにして書かれたのか。本書の中で、先生自身がヒントを語っている。
     「私は踏み絵というものに彫られたキリストのくるしい哀しげな眼をかつて見たことがある」
     「もし私があの時代に生まれたら、私はおそらく踏絵に足をかけていたでしょう。しかしその時、基督はこちらのつらさ、哀しさがよくわかっていた筈だ。
     『ふみなさい。早く、ふみなさい』
     と彼はそう言ったに違いないのである。彼の眼はその時、人間のみじめさを愛し、それに同化している眼だったのでしょう」
     
     本書のように、著者の没後に再構成して出版された随筆集は多い。だが初出時の本より一段低く見られている。さらに、れっきとした純文学の作品群よりは劣るかのように誤解するむきもあるかもしれない。
     しかし、旅と歴史についての随筆を集めた本書は、著者が数々の代表作の取材のために訪れた地での思いや、かつて描いた物語の地での追想がちりばめられている。得がたい好著である。
     永らく取っ付けずにいた『沈黙』も、最早読まざるを得ない気分に追い込まれてしまった。

     私の住所地の隣町は「支倉町」という、支倉常長にちなんだ町名だ。迂闊なことに、『侍』の主人公「侍」とは常長のことだと知らなかった。
     彼は四百年も前に仙台からメキシコ、スペイン、ローマまで渡り、法王にも謁見して帰ってきたけど、戻ったときにはキリシタン禁令で居場所がなくなっちゃった悲劇の人。歴史の教科書にもそう記されている。 
     『侍』は80年の発行だが、著者は前の年にメキシコで取材している。その上で使節団の目的はローマ訪問ではなくて、メキシコとの通商開始であったと、大胆に推理している。
     信仰と藩への忠節の矛盾、藩と幕府、日本と世界の相克、それらの中で悲運のうちに闇に葬られた「侍」常長、最早彼のことを避けて通ることはできない(なにしろ毎朝支倉町を通らなきゃ通勤できないしねえ、ってまた冒涜しちゃった)。

     しばらくは『侍』と支倉常長にのめり込むことになりそうだ。

  • 寝る前は小説よりもエッセイを好んで読む。人の話をただうなずいて聞いている感じに似ていていい。登場人物や話の展開を忘れてもいっこうにかまわない。ただこの本で忘れられないのは著者がアウシュヴィッツに訪れたときの衝撃とフランクル博士の証言を交えた述懐。一日300グラムのパンとスープ。それだけで強制労働を強いられできなければガス室送り。そんな状況の中でも最後のパンの一切れを病人に与えた人間がいたこと。死んだように疲れ果てた一日の労働のあと、ふとした夕暮れを見て「ああ、世界って、どうしてこう美しいんだ」と呟く囚人がいたこと。この人たちのお陰で私たちは人間がどんな状況下でも美しいものを求めていることを知り、自分がこれを口にしなければ死ぬかもしれぬ状況でも他人にそれを譲ることができる強さ。思いやり。その人たちのお陰で私たちは人間をまだ信じることができる。たまに眠気が一瞬で覚めるようなエッセイもある。。

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