- Amazon.co.jp ・本 (251ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334785116
感想・レビュー・書評
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「あの世」「妖怪」「占い」をキーワードに、私たちの生活の中に潜む「異界」を考察する。遺影はどのようにして登場したのか、鬼門とは何か、日本と韓国の都市伝説の比較、思慕から生まれた死者との対話、異界・妖怪の起源を探る京極夏彦氏と小松和彦氏の対談他。
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京極の名前だけで読むとちょっと当て外れに感じるところもあるでしょうね。
でも、いたこの話とか、鬼門の話とか興味深く読むことができました。
特に鬼門についてはこれまで常識と思っていたことが実は違っていたという、歴史推理に近い楽しみ方ができました。
Q.E.D. シリーズ(小説のね)が好きな人にもお勧めな感じです。 -
2001年に国立歴史民俗博物館で開催された「異界万華鏡」という企画展示にあわせて刊行された本で、京極夏彦と小松和彦の対談のほか、歴博の研究者たちが「あの世」「妖怪」「占い」といったテーマに関する研究成果を、わかりやすく解説している論考が収録されています。
妖怪についての京極と小松の対談のなかで、水木しげるや宮崎駿などの作品のうちに、現代の日本人の神観念のあたらしいありかたを見ようとするという、非常に刺激的な提言がおこなわれており、とくに印象的でした。 -
光文社知恵の森文庫ということで比較的イージーに書かれているのだろうと舐めてかかったのですが、おもしろい。
一番の見どころは京極夏彦さんと小松和也さんの対談だけど、実はそれ以外も面白かったという方もいるけど、本当にその通り。というか、そっちの方が面白かった。
この本は国立歴史民俗博物館での企画展示『異界万華鏡』のフォーラムや講演会をもとに刊行されているという。
行きたかったなあ・・・。
土佐の民話
遺影
韓国の都市伝説
音
妖怪
イタコ
鬼門
テーマが秀逸ですよね。いいねえ。
「人間は想像する動物です。見えないもの、どこにあるかわからないもの、不思議なものを一生懸命に想像してきました。それは科学をも生み出しましたが、同時に、日本における精神文化、さらには妖怪文化をも生み出してきたのです」
神とか仏とか、天国とか浄土とか、その転写としての鬼や地獄や、そんな説教めいた仏教の説く抹香臭い死後観ではなく、民衆が自分たちの感性や感覚や生活や習俗や儀礼の中で、肌で感じてきた異界観。それは死者であり、自然現象であり、ほとばしる感情であり、憎しみであり、そういうものの混交混在が異界の物語を想像して生む出しているのでありますね。
では最後に、池上良正さんの『死人に口あり』という秀逸なコラムから備忘録。死者との向き合い方3か条です。
死者は生きている者を癒すことができる。
死者に対する「つつしみ」の態度を失ってはならない。
死者たちの声を、この世を支配する道具にしてはならない。 -
古本で購入。
2001年に国立歴史民俗博物館で開催された企画展「異界万華鏡‐あの世・妖怪・占い‐」に関連して催された講演会やフォーラムなどを元に構成した本。
「異界」という我々の生活領域の外側に広がる時空間への想像力の文化を、多面的な視座から捉えた内容になってます。
収録されているテーマは様々。
異界に棲む存在である妖怪の民俗的背景やそのキャラクター化の歴史。
死者を象徴するモノの変遷と遺影の誕生。
韓国の都市伝説。
音による異界の表現と「聴く」異界体験。
死者との対話と民間巫者。
風水をめぐる異界観と風水成立の歴史。
おそらくこの本の最大の「つかみ」であろう小松和彦と京極夏彦の対談を目当てに買ったけれど、それ以外の部分もなかなかおもしろい。
「想像」という、人間にだけ許された行為(と言うか「あそび」)が生み育てた文化の分厚さと複雑さがよくわかる。
異界は想像の中にある。
「でも存在しないものだろ」というのは身も蓋もないしある意味で正しいかもしれないけど、それではおもしろくない。
時に心のよりどころとなり、時に恐怖の対象となる「異界」を楽しむ一助になってくれる本。
それにしても企画展「異界万華鏡」、見たかったなぁ…