切腹: 日本人の責任の取り方 (光文社知恵の森文庫)

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著者 : 山本博文
  • 光文社 (2014年3月12日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334786441

切腹: 日本人の責任の取り方 (光文社知恵の森文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 江戸時代に多く見られた切腹の事例を通して、現代にも通ずる「日本人の責任の取り方」を論じた興味をそそられる一冊。

    そもそも世界でも類例のない切腹という非合理的な現象がなぜ定着したのか。そこには自ら腹を切るという自主性が重要な役割を果たしていたという。

    「武士たる者は、善悪の弁えがないようではいけない。自分のしでかしたことを、自分で処罰出来ぬようでは、とても自主独立は出来ない。ですから、刑罰などの上においても、士は切腹ということになっておりました」(p.101)

    つまり切腹は、斬首刑と異なり、武士のみに認められた特権的で名誉ある刑罰であったのだ。ときに現代の価値観からは考えられないような理不尽な理由で主君から切腹を命じられることもあっても、家臣はそれを粛々と受け入れた。その理由を著者はこう説明する。

    「やがて江戸幕府が成立し、諸藩も同様に藩政を確立させてくると、武士は自分の属する組織以外では生きられないようになる。……そのような社会にあっては、主君から死ねと命じられれば、死ぬしかなかった。そしてその代償として、死を命じられる際には、武士身分の重さに配慮し切腹が許されることになったのであろう」(p.112)

    身分制度が撤廃された明治以後、切腹は姿を消すことになったものの、「切腹文化」はしぶとく生き残る。しかし、合理的な近代国家システムと非合理的な近世武士道精神の結合がどのような悲惨な結果をもたらしたかについては、歴史を見れば明らかであろう。著者のこの指摘は重要だ。

    「責任を取って切腹するという潔い態度は、個々の人間の精神としては美しいと思う。しかし、それが上から強制される時には、上の者の体のよい責任逃れとして使われることが多い。現在の日本でも、そのような構造は、官僚組織や会社組織などに根強く残っているのではないだろうか」(p.236)

    「部下の手柄は上司のもの、上司の失敗は部下の責任」という不条理に立ち向かったドラマ「半沢直樹」が、あれほどの喝采をもって受容されたことの意味について改めて考えてみたい。

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