読書の腕前 (光文社知恵の森文庫)

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  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (301ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334786618

感想・レビュー・書評

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  • フリーライター、書評家としての顔を持つ岡崎武志さんの読書遍歴&読書術。
    「古本道場」で角田光代さんの師匠としても登場していただけあって、古本のことにも言及している。
    これは、面白い。そして読みやすい。
    親しみやすい語り口で、「はじめに」に書かれた「桟橋で読書する女」ですぐ心を掴まれた。
    特に強い主張があるでもなく、読者向けに指針があるわけでもない。
    本への向き合い方や読み方のみならず、私自身の読書というものへの考え方と重なる部分が非常に多く、終始共感しながら楽しく読み終えた。
    読書だって芸事やスポーツと同じ。何度も繰り返し学んで少しずつ「腕前」が上がるのだという。岡崎さんの腕前自慢では、決してない。

    本文中に怒涛の如く様々な本が出てくる。
    読んでいる最中に無性にそちらを読みたくなってくるが、読書について書かれた本はそれがベストなんだそうで。そういう時はいつでも放り出して別の本を読んでくださって結構、でもまた戻って来てね、と書いてある。
    私はメモを取りながら一気に読んだ。傍らのノートが新しい書名でいっぱいだ。

    第一章 本は積んで、破って、歩きながら読むもの
    第二章 ベストセラーは十年後、二十年後に読んだ方が面白い
    第三章 年に三千冊増えていく本との闘い
    第四章 私の「ブ」攻略法」
    第五章 旅もテレビも読書の栄養
    第六章 国語の教科書は文学のアンソロジー
    第七章 蔵書の中から「蔵出し」おすすめ本

    という章立てで、四章の「ブ」はブックオフの簡略表記。
    ここの攻略法はかなりお役立ちで、見た目に綺麗な本が最優先されるから「ブ」で買い取りを断られても他の古本屋で打診してみると良いらしい。
    目録やネットでは本を買わないという著者の、目で見て触って選ぶという古書店や古本市での高揚感が伝わってくる。

    非常に心躍ったのは、和田誠さんの装丁について書かれた箇所。
    カバーがあの絵であるというだけで買った本がずいぶんあるという。
    おまけに、苦手なドストエフスキーも和田さんが装丁してくれれば読んだのにと言うから、笑ってしまった。しかもどうやら本音であるらしい。
    ユーモアのある明るいカバーがかの文豪の作品にかかっていたら、確かに手に取りやすいかも。
    そして話はここから絵本に繋がっていく。それも大人向けの絵本をお薦めしている。

    六章では岡崎さんの生い立ちから読書歴の紹介になるが、ここでも和田さんの装丁を絶賛。
    読書は小難しく陰鬱なものという印象を、あのカバーのおかげで避けて通ることが出来たと。「装丁物語」を先に読んでおいて良かったな。

    ひたすら読んで、楽しんできた著者が、これからもずっと楽しみとして本を読んでいきたいと語る。本を読むためだけに生きる、そんな人生もアリなのだ。
    初めての岡崎さんの本としてもお薦め。もっともっと楽しく読んでいきたいと、そう思わせる。何度も読んで「ああ、そういうことが書いてあったのか」と分かったとき、私の腕前も上がっているのだろう。
    追いかけたい著者が、またひとり増えてしまった。。

  • 本が好きでたまらない、という著者の気持ちが伝わってくる。
    帯にピースの又吉さんの言葉が載っている。

    一行読むごとに「共感」や「発見」があり、ますます本が好きになりました。本を愛する僕にとって、岡崎さんは偉大なる先輩です。

    又吉さん、私も大同意!
    岡崎さんの文章は読者を上にも見ず下にも見ず、単なる本好きの仲間として見てくれているような気になる。
    特に「はじめに」と第一章「本は積んで、破って、歩きながらみるもの」の内容は「共感」することが多く、本への偏愛も相まり、まるで本への‘ラブレター’を岡崎さんに代筆してもらったような陶酔感と満足感(笑)
    あ、他のレビュアーの方にも同じような事を書かれている方もいらっしゃいますね。

    第二章は「ベストセラーは十年後、二十年後に読んだ方がおもしろい」第三章は「年に三千冊増えていく本との闘い」第四章は「わたしの「ブ」(ブック○フ)攻略法」第五章「旅もテレビも読書の栄養」第六章「国語の教科書は文学のアンソロジー」ときて最後の第七章「蔵書の中から「蔵出し」おすすめ本」

    紹介されている本も多数。
    私の好みと全然被んないけど(笑)岡崎さんの熱に当てられ読みたくなった本が...多すぎて...嬉しい。

    エリック・ホッファーと佐藤泰志とアン・タイラーがすごく読みたい。

    でもこの本も目録ついてないのね。
    本を紹介するなら巻末に目録をつけてほしいです。

  • 「本の本」や「読書の本」などを読むヒマがあったら「本」を読め、といつも言い聞かせているのだけれど、「本の本」や「読書の本」を無性に読みたくなる時というものが確実に時々やって来る。そして、今回その時がやってきて、そのタイミングで手にしたのが本書。
    この類の本は、著者が感銘を受けた本や推薦本が紹介されているのが常で、本書もしかり。結果、自分への課題図書が増える。と同時に、自分が読んだ本が紹介されていたりすると、妙に嬉しくて小躍りする……と書ければよかったのだけれど、実際には「そうだろ、そうだろ。良く分かってるじゃん、岡崎さんは。」などとつぶやいて、理由なき上から目線で満足感を覚えるという器の極小ぶりを発揮してしまうのであった。

  • 2007年初版の本であり、年代的な差は感じる部分がありましたが、「本好きな人が書いた本!」だと感じることができる本でした。
    本が読みたくなる本です!
    ぜひぜひ読んでみて下さい。

  • 本っていいよねと感じる本。
    読書中は読書しかできないところがいいだとか、散歩と読書は似ているとか、少しでも自発的に本を読む人なら共感できるのではないでしょうか。
    今本を読んでいる自分を全肯定されているようで気分がよく、人の好きなフレーズを知れるのも楽しい。作者は語感や韻が気になる様子で、私が好きなフレーズはですね...と語りたくなります。何より、好きなものを語る人の姿っていいですね。

  • 本は「即効性」がないメディア

    誰が本を殺すのか 延長線佐野 
    「幻想かもしれないけど、僕は本というものは、時間の流れを一瞬で止めてみせることができるメディアだと思うんです」

    「書物を読むことで得る大切な収穫のひとつは、他者を知ることだと思います」

    弱者が演じる特異な役割こそが、人類に独自性を与えているのだ

    少年探偵シリーズがでてきてびっくり。
    本好き少年はみんな通ってきた道なのかもね。

  • 著者の岡崎武志さんは、本当に読書が好きなのだというのが良く伝わるし、「いくらでもどこからでも読みたい本が向こうのほうから飛び込んでくる。」という感覚、とても共感できる。
    著者にとってだけでなく、読書が人格形成に与える影響や人生においてどれほどの彩りとなるか、改めて納得したし、これを読んでまた読みたい本リストに作品が増えてしまった。

  • 読書は不自由という著者の意見に、確かにと思った。古本をめぐる話が多いので、久々にブックオフでない古本屋巡りをしてみようかと思った。ブックオフでぶらぶらしてふと飛び込んでくる書名に我慢できず買うという時代が過ぎた私の「ブ」活用法は、これは新刊本屋にはないという本を探して「確信をもって」ブックオフに行って果たして100均棚で見つけるという方法。本当に見つかるからね。しかしkindleを購入してからこれもまた変わった。著作権切れの作品は只でダウンロードできるもんね。著者の生い立ちから読書にのめり込むようになった経緯を書いた章ではなぜか目から汁が...。自己啓発本が売れている本の上位に多く入っているという最近の状況に、「本一冊を読んで、いきなり自己を変革しようというのはあまりに安易だ」と書く著者の勇気に胸のすく思い。文学が好きなのでこの本から佐藤泰志の『海炭市叙景』をkindle版で購入した。庄野潤三も気になるなー。こういうときkindle買っといてよかったと思うわ。どの章も楽しかったけど、星マイナス1したのは、私が詩が苦手だから。最後の章はほとんどななめ読み。こればかりは克服できない。短歌や俳句は大丈夫だし、音楽に乗った歌の歌詞は平気。だけど詩になると途端に拒否反応が。

  • 読書好きの方、この本を一度読んでみるとまた違った角度から読書という物を楽しめるように思います。
    最近読書離れが進んでいるご時世で本の魅力、効能などが再認識できたように思います。

    週末ウイスキーを片手に読書する時間を設けてみたいと思います。

  • 読み終わって、この本に肩を抱きしめられたように読書欲が増した。

    実は、この何年かは一生のうちで一番本を読んでいる気がする。だからこんなに沢山読まなかった若い時の時間が、惜しいと痛切に感じていた。

    で、こんな文章に励まされる。本を読む時間がないという人は、読む時間がないのではなく、読む気になる時間がないのだろう。

    「本なんて、いつだってどこからでもいくらでも読めるものなのだ。」(P154)

    そう読書の時間、読書の量は、いつだってどこだってかまわないのだ!そうなった時がお日柄なのだ。安心した。

    読書について書かれた本はいろいろ読んだけれど、こんなロマンチックなのは初めてだ。読書案内で涙する?してしまったんだ。

    たとえば、「本の熱病は伝染する―佐藤泰志を求めて」(P161)

    懇意の古本屋があって、店主と会話する。「先日こんなお客さんが来た。佐藤泰志という作家ご存知?」著者「知っている」店主は知らなかった。自殺した芥川候補に何回かなった地味な純文学作家という。5、6冊しか著書がなく絶版。古本屋でもなかなかない。

    こんな地味な作家を探している人が、「しかもどうやら中年の主婦らしい。悲しみよこんにちは、と言いたくなる年代である。」とユーモアたっぷり。「いい話だなあ」と胸を熱くした著者は「佐藤泰志」を頭に入れて、他の古本屋巡りの時探してしまい、見つかればその店主に知らせてあげる。

    そうしているうちに「佐藤泰志」熱が感染してきた。調べてみた。「あつ!」と意外な事実がわかった。(それは伏せます)ガツンと錨をぶちこまれ、自分も買い始め読んでみた。そうしたらいいんだ!この作家の作品が、と著者。「見知らぬ人から本の熱が伝染した」という話。

    ほろり。私も読みたくなった、紹介されている佐藤泰志の『海炭市叙景』というオムニバス作品。

    こんな挿話がところどころにはさまって、本好きの本読み応援歌&心得指南。たまらない。

    もちろん私の知らない作家、作品を話題にしたものが多く、読みたい本が沢山できてしまったけど、私には『悲しみよこんにちわ』、『ヘンリ・ライクロフトの私記』、『アレキサンドリア四重奏』、堀辰雄などが、つぼにはまって親しみを覚えたのである。

著者プロフィール

岡崎 武志(おかざき・たけし):1957年大阪府生まれ。立命館大学卒業後、高校の国語講師を経て上京。出版社勤務の後、フリーライターとなる。書評を中心に各紙誌に執筆。「文庫王」「均一小僧」「神保町ライター」などの異名でも知られる。『女子の古本屋』『古本で見る昭和の生活』(筑摩書房)、『これからはソファーに寝ころんで』(春陽堂書店)、『人と会う力』(新講社)、『読書の腕前』『蔵書の苦しみ』 (光文社)、『古本道入門』(中公文庫)、『憧れの住む東京へ』(本の雑誌社)など多数。

「2024年 『古本大全』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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