晴れたらいいね

著者 :
  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (242ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334910419

感想・レビュー・書評

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  • 太平洋戦争末期の南方戦線へタイムスリップしてしまった看護師の話です。
    戦場に投げ込まれた非戦闘員である看護婦が、どのように日常を過ごし、死んでいく人々を見送り、いつ果てるとも分からない戦争を駆け抜けて行ったのか、息苦しくなる思いで読みました。
    いつ戦争が終わるのか分かっている状態で読んでいるので、早く終われーと思いながら読んでいましたが、当時の人々はこれがあと何年続くのか分からない状態だったんだから、なんともやりきれないです。
    詳細に資料を読み込んで紙面に反映しているのでしょう、なんとも言えないやるせない気持ちになりました。普通の人々が政府の愚策で死地に追いやられて行った現実。これは本当に忘れてはならない歴史です。
    主人公がもたらす明るさのようなものが、少しでも当時に有あったならば救いです。

  • 高橋沙穂ちう若い看護師が、ふとしたはずみに担当患者の雪野サエという老婆の記憶の世界に迷い込む。そこは、終戦間際のフィリピンで、沙穂は、従軍看護婦として働いていた雪野として戦地での壮絶な1年間を体験するというお話。筋立てとしては荒唐無稽に見えるが、ほとんどが戦時中の話で、平和な時代の若者が見た戦地というストーリーになっていて、これはこれで面白い。あまり生々しい描写は多くないが、戦争末期の戦地での従軍看護婦たちの壮絶な生き様の一端を教えてくれる。感動もののラストが待っている。

  • 小学生(高学年)から中学生に向けて、戦争の悲惨さを伝えることができる作品だと思います。
    「従軍看護婦」の視点から描かれている小説、という点も珍しいですし、現代の看護師が戦時中のマニラにタイムスリップし、平成の感性で戦場での治療行為にあたる、ということも、主人公が感じる率直な疑問も、YA作品としての読みやすさ・わかりやすさにつながっていると思います。

    もちろん、フィクション作品ですから(読後感の良さも含めて)ラストシーンの描かれ方は納得できはするものの、もう少し「リアル」に描いても良かったのかな、とも思います。
    救いのない、戦争という歴史を描いたにしては、すこし「キレイ」な終わらせ方すぎるかもしれません。

  • サエさんが亡くなった後で、サエさんと紗穂がどのように入れ替わり交差していたか、などな疑問はいくつもあるが、概ね読んで良かったと思える作品であった。

    特に、戦争の悲惨さは、まるで自分がそのさなかに放り込まれたかのような臨場感を持って体感できる。
    怖かった。

    ありふれた言葉になるが、自分は今の時代に生まれて幸せだ。

  • 戦争の話になるとやっぱり学徒出陣の話になるけど、女性も看護師で赤紙がきて戦地に行った人がいることもっと知られるべきだと思う。

  • 今の日本人の平和ボケはなんぞ!と自分含めて叫びたくなる作品。生きたい、と願いながらも口には出せずに散っていった命の上にある私達なのに。過酷な戦場での看護。これも戦争を語る重要なファクター。このまま戦争のない世界を(実際にはあるけど)続けていけるように思えない昨今。賢い政治家さん達に何とか頑張ってもらわねば。過酷な戦禍を潜り抜けて長らえた命の尊さに最後は涙でした。

  • 戦時中に迷い込んでしまった現代人の主人公。
    終戦の日を知っているからこそ耐えられたであろう過酷な日々。
    当時の人は終わりの見えない絶望の中で、何を支えに生きていたのだろう。

  • 小説としては上手くないし、タイムスリップものとしても良くできてるとは言えない。キャラクターの書き込みも足りない。
    しかし、著者の思いは主人公の言動を通じてよく伝わった。そしてその思いは現代の大部分の若者の思いと同じなのではないかと思う。若い読者は、戦争の残酷さと愚かさを知るだろう。なにより読みやすい。これは若者に薦めるのに十分な理由となる。
    戦中の人間はあんなしゃべり方しないとか、現代の看護師が戦中の物資乏しい中、どれだけ役に立つのかとか、タイムスリップとしてはあまりにお粗末な終りかたとか、まあ年をとった人間は考えがちだけど、どんなに立派な文学もドキュメンタリーも、読まれなければ意味なく、若者に読んでもらえる本は大事にしないと。
    しかし、ドリカムの「晴れたらいいね」が流行ったの、20年以上前なのに、現代の24才の女性がすぐ口ずさめるほど今も愛唱されているのだろうか?そこらへんの事情には疎いのだが、それにしてもちょっと古いのではないかと思った。

  • 読んで良かった。少し、それ、やっちゃダメじゃない!?的な印象を抱くのだけど。

  • 従軍看護婦の話。
    現代の看護師が、タイムスリップして1944年8月15日のマニラの病院に。
    ここから終戦直前までの、従軍看護婦の苦労話。
    昨日の、参議院で安保法案が可決されたが、この話のような時代が2度と来てほしくない。
    しかし、このはなしにもあるように、常識が違うと命に対する考え方も違うようであり、交戦の好きな政治家にいいように使われないか心配である。
    この話の中で、若い看護婦が命について語る場面が、安保法案に対する多くの若い母親がやっていた、反対演説場面と重なった。

著者プロフィール

藤岡 陽子(ふじおか ようこ)
1971年、京都市生まれの小説家。同志社大学文学部卒業後、報知新聞社にスポーツ記者としての勤務を経て、タンザニア・ダルエスサラーム大学に留学。帰国後に塾講師や法律事務所勤務をしつつ、大阪文学学校に通い、小説を書き始める。この時期、慈恵看護専門学校を卒業し、看護師資格も取得している。
2006年「結い言」で第40回北日本文学賞選奨を受賞。2009年『いつまでも白い羽根』でデビュー。看護学校を舞台にした代表作、『いつまでも白い羽根』は2018年にテレビドラマ化された。

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