与楽の飯 東大寺造仏所炊屋私記

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著者 : 澤田瞳子
  • 光文社 (2015年8月18日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (305ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334910426

与楽の飯 東大寺造仏所炊屋私記の感想・レビュー・書評

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  • 『与楽』とは、仏が与えてくれる慈悲のこと。
    奈良時代、聖武天皇が発願し、東大寺に巨大な毘盧遮那仏が造立されることとなった。
    全国から役夫が集められ、作業にあたる。
    近江から招集された「真楯」は「造仏所」に配属となり、直接、大仏の鋳造にかかわることとなる。
    その、造仏所の「炊屋(かしきや)」(食堂のようなもの)には、やたら旨い飯を作る「宮麻呂」という男がいた。
    彼が大きな過去の秘密を抱えていることが、やがて明らかになる。

    「大仏」というもの。
    大量の費用と労力を費やしてつくる、いわば中が空洞の、ブッダの巨大なフィギュアである。
    「仏作って魂入れず」ということわざがあるけれど、このフィギュアが仏像になるためには、魂を入れる必要があるわけだ。
    仏教の儀式的には、開眼供養会を行って、魂が入ったことになるけれど…
    儀式とは別に、様々な人が大仏に寄せる様々な思いこそが、この巨大な像を、仏になさしめて行く。

    故郷に帰ることなく造物所で病に没した役夫の信仰。
    行基の元に集まる信者たちの信心。
    技術者たちの、匠としての矜持。
    真楯も、次第に、自分は世に残る大きなことに関わっているという誇りから、自ら作り上げてきた大仏に大きな愛着を持つようになる。
    大仏の空洞内は、そういった人たちの形の異なる思いや願いがたくさん詰まっているのだろう。

    作業所では、様々な事件も起きる。
    宮麻呂はなぜか仏教に大きな反発を抱き、「仏より、生きている人間が大事」という独特の考えを口にする。
    仕丁(全国から招集された役夫)にとって一番大切なのは、大仏を作り上げる事よりも、生きて故郷に帰ること、と彼は言う。
    徴兵された兵士に「一番大切なのは敵を殺すことより、自分が生き残ること」という考えと似ている。
    だから彼は、仕丁たちのために、手間を惜しまず、儲けを考えず、心をこめた食事を作り続けるのだ。
    それは、彼の贖罪でもある。
    「仏の業」という物もさまざまなのだ。

    奈良時代というと、あまりに昔過ぎて、知らない国のことのように思えるが、キャラクターたちの喜怒哀楽は生き生きと身近に感じられる。
    ただ、現代では良くわからない単語が出てきて難しかった。
    面白い小説だったが、かなり仏教・哲学を考えさせる内容でもある。

  • 「孤鷹の天」をすでに読んでいるので、この作家の古代の描写のうまさは折り紙付き。

    東大寺大仏建立事業に全国から労役に狩り出された男たちと、炊事係の男。食事はいかにもおいしそうなのだけど、表紙をみて、ふとこの時代の庶民には箸を使う習慣があったのだろうか、と考えてしまった。

    第一話だけはもの足りなかったが、第二話以降から、炊男をめぐる謎と、仕丁や奴婢のいざこざ、政治的対立、過去の因縁が明らかになっていく。

    東大寺大仏という国家事業なのに、賦役の男というよりも、その食事世話係にスポットをあてたのかと思ったのだが、実はただのグルメ話にあらず。

    根底にあるテーマは、『満つる月の如し』で定朝を描いたときと同じく、魂の救済とは何か、ということである。

    奈良の大仏を見物したとにとき、その造形やスケールに圧倒されはしても、その建立に関わった人々がどのような想いを抱いていたかに考え及ぶことなどなかった。

    帚木 蓬生の『国銅』とはまた違った趣をあたえた、奈良大仏建立記。最後はみんなが丸く収まるまとめ方。宗教がほんとうはこういう機能を果たしてほしいと願わざるを得ない。

  • 食事を通した人間模様?
    読み応えあり。雄足様はいい人になったのかな…

  • 途中からどんどん引き込まれた。読了感が良い。ひとはみな仏。挿絵も良い。

  • ブクログで知った本。
    舞台は奈良時代、東大寺の造仏をめぐるお話。日本各地から徴発された人々の悲喜こもごもを描く。
    大仏に救いを求める聖武天皇をはじめとした皇族や貴族。一方、汗水流して働く仕丁らは炊男の宮麻呂、行基らに生きた仏をみる。そして、各々が、その先にいるのかもしれない、観念的な仏に思いを馳せる。
    たくさんの個々人の願い・執念を呑み込んで積み上げていく大事業、というのは現代では果たしてあるのだろうか。建物の規模こそ大きくなったが、観念的なスケールのデカさ、そこに文字通りの命を、全身全霊を賭ける人々の思いの濃密な結晶は、これから先作られることはあるのだろうか……。いや、サグラダ・ファミリアがあるか?ううん……。

    世界はひらけた。便利になった。その分、小さく、ちっぽけになった。そんな気がした。

  • 2016.8 これを読んでから奈良の大仏様を見学に行っていたら、もっと感慨深いはず。こんどまた行こうと思う。

  • 5月1日読了。図書館。

  • 奈良時代を描いた時代劇はあまり読んだことがないし、まして、貴族ではない働く人々の話が生き生きと描かれているものは。物語は、詳細な時代考証を重ねた世界で、仕丁(しちょう)とよばれる地方から徴用されたもの、奴卑などの厳しい身分におかれたものたちが、奈良の大仏を建立してゆく。
    「抜苦与楽」 仏陀や修行者が,その慈悲心によって,生きとし生けるものの苦を除き,彼らに楽を与えること。(コトバンクより)
    炊屋(かしきや)で宮麻呂がつくる食事が、身分の隔てをこえて振る舞われる。そして、ちょっとした騒動がもちあがる。全7話。
    時代に浸ることができました。作者が、厳しい時代の制度や生活にむける視線が暖かいです。古式ゆかしいことばのかずかず、それに、奈良時代の食べ物にも興味津々。帯に書いた猪汁、笹の葉で巻いた糯飯、甘い糟湯酒、などの文字に踊らされて、手に取ったのも事実ですが、それだけでなく、帯のコピーもよかったです。

  • 面白かったです。
    もう少し前の時代の話を書いてほしいです。

  • お城を見た時
    誰が城主であったかはほとんど興味が無い
    その瓦は誰が作ったのだろう
    その柱は誰が立てたのだろう
    その壁は誰が塗ったのだろう
    が 気にかかる

    大仏も然りである
    名も残されぬ無名の工人たちのことが
    気にかかる

    いつの時代でも
    人は食べなければ生きていけない
    工人たちの、その食べ物を作る料理人の
    物語が
    面白く無いわけがない

    いつ弱き立場の視点
    すぐ慣

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