- Amazon.co.jp ・本 (305ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334910426
感想・レビュー・書評
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奈良の大仏はやっぱりすごい。
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著者・澤田瞳子は澤田ふじ子の娘で、肩書的には歴史学者(専門は奈良仏教史)の方が先に書かれていたりします。
奈良の大仏鋳造をめぐる短編集。
といっても帚木蓬生さんの『国銅』のように大仏鋳造工事そのものを描いた作品ではありません。作事場の炊所(かしきどころ;食堂)を主な舞台にして、主人公の真楯(またて)が新人仕丁(役夫)として作事場に連れて来られてから、1段毎に鋳造される大仏工事の進捗に沿って描かれる7つの連作短編です。
最近、食事や料理屋を舞台にする時代小説が流行りですが、流石に奈良時代と言うのは無いですよね。しかもその時代を専門にする学者さんですから、見慣れない当時の様子がそこかしこに描かれ、なかなか面白いのです。ただし詳しい説明は少なく、どうもビジュアルが浮かばないし、ここまで読んでお判りかも知れませんが、用語や人名などの漢字はちょっと面倒です。
ミステリー仕立ての話の内容はまあまあかな、ただし最後の「すべてが丸く収まった」終わり方にはかなり無理を感じますが。。。 -
食事を通した人間模様?
読み応えあり。雄足様はいい人になったのかな… -
ブクログで知った本。
舞台は奈良時代、東大寺の造仏をめぐるお話。日本各地から徴発された人々の悲喜こもごもを描く。
大仏に救いを求める聖武天皇をはじめとした皇族や貴族。一方、汗水流して働く仕丁らは炊男の宮麻呂、行基らに生きた仏をみる。そして、各々が、その先にいるのかもしれない、観念的な仏に思いを馳せる。
たくさんの個々人の願い・執念を呑み込んで積み上げていく大事業、というのは現代では果たしてあるのだろうか。建物の規模こそ大きくなったが、観念的なスケールのデカさ、そこに文字通りの命を、全身全霊を賭ける人々の思いの濃密な結晶は、これから先作られることはあるのだろうか……。いや、サグラダ・ファミリアがあるか?ううん……。
世界はひらけた。便利になった。その分、小さく、ちっぽけになった。そんな気がした。 -
2016.8 これを読んでから奈良の大仏様を見学に行っていたら、もっと感慨深いはず。こんどまた行こうと思う。
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5月1日読了。図書館。
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奈良時代を描いた時代劇はあまり読んだことがないし、まして、貴族ではない働く人々の話が生き生きと描かれているものは。物語は、詳細な時代考証を重ねた世界で、仕丁(しちょう)とよばれる地方から徴用されたもの、奴卑などの厳しい身分におかれたものたちが、奈良の大仏を建立してゆく。
「抜苦与楽」 仏陀や修行者が,その慈悲心によって,生きとし生けるものの苦を除き,彼らに楽を与えること。(コトバンクより)
炊屋(かしきや)で宮麻呂がつくる食事が、身分の隔てをこえて振る舞われる。そして、ちょっとした騒動がもちあがる。全7話。
時代に浸ることができました。作者が、厳しい時代の制度や生活にむける視線が暖かいです。古式ゆかしいことばのかずかず、それに、奈良時代の食べ物にも興味津々。帯に書いた猪汁、笹の葉で巻いた糯飯、甘い糟湯酒、などの文字に踊らされて、手に取ったのも事実ですが、それだけでなく、帯のコピーもよかったです。 -
面白かったです。
もう少し前の時代の話を書いてほしいです。 -
お城を見た時
誰が城主であったかはほとんど興味が無い
その瓦は誰が作ったのだろう
その柱は誰が立てたのだろう
その壁は誰が塗ったのだろう
が 気にかかる
大仏も然りである
名も残されぬ無名の工人たちのことが
気にかかる
いつの時代でも
人は食べなければ生きていけない
工人たちの、その食べ物を作る料理人の
物語が
面白く無いわけがない
いつ弱き立場の視点
すぐ慣 -
大仏建立のために各地から3年の期限で司丁として徴用された真楯の視点から、その作業所である造仏所の食堂「炊屋」を中心に造仏所で起こる事件を描きながら大仏の意味、真の仏の意味を探る物語。
一方の主人公、炊屋の宮麻呂が語る「仏や神がいったい何をしてくれる。人を助け、人を食わせる者は同じくこの世を生きる人間だけ。ならばわしは生き仏一人より、お主ら百人を食わせる方を選ぶのじゃ」という台詞が最終章でいきいきと輝く。