向田理髪店

著者 :
  • 光文社
3.55
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  • Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334910891

感想・レビュー・書評

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  • 著者、奥田英朗さん、どのような方かというと、ウィキペディアには、次のように書かれています。

    ---引用開始

    奥田 英朗(おくだ ひでお、1959年10月23日 -)は、日本の小説家。主な作品に『最悪』(1999年)、『邪魔』(2001年)、『イン・ザ・プール』(2002年)、『空中ブランコ』(2004年)、『オリンピックの身代金』(2008年)など。

    広告プランナーなどを経て、出版社に持ち込んだ『ウランバーナの森』(1997年)でデビュー。『空中ブランコ』で直木賞受賞。巧みな心理描写で多彩な作品を紡ぐ。

    ---引用終了


    で、本作の内容は、次のとおり。

    ---引用開始

    北海道。寂れてしまった炭鉱町。通りにひと気はないけれど、中ではみんな、侃々諤々。心配性の理髪店主人が暮らす北の町は、案外にぎやか。身に沁みて、心がほぐれる物語。

    ---引用終了


    本作は、昨年映画化されたようです。
    以下は、ウィキペディアの引用です。

    ---引用開始

    森岡利行脚本・監督、高橋克実主演で映画化。2022年10月7日、福岡・熊本で先行公開。その他地域は同年10月14日公開。

    舞台となる寂れた炭鉱町は、原作では北海道の苫沢町であるのに対し、映画では福岡県の筑沢町となっている。

    ---引用終了

  • 市民図書館に、奥田英朗さんの「向田理髪店」と、荻原浩さんの「海の見える理髪店」が仲良く並んでいるのを、見つめ続けて2年ほど。
    話題だったどちらの「理髪店」も気になっていたのだが、とうとう、2冊一緒に借りてきた。

    まず、薄めのこちらから。

    ありきたりだが、ジーンときた。
    小説を読むのは久しぶりだったが、こんなささくれだった状況だからこそ、心に沁みた。

    舞台は北海道の苫沢町となっているが、夕張がモデルだろう。
    限界集落に暮らす人々の、時には遠慮のない、でも互いを思うからこその距離感に、本来ヒトはこうやって生きていくものだよなぁ…としみじみ。

    辻村美月さんの「島はぼくらと」にも通じるものがあった。怒鳴り合いをしても、翌日には顔を合わせる小さな町だからこその人付き合いの仕方。
    先細りと分かっていても、生まれた町を愛して行動しようとする若者。

    今の社会状況では、そんな助け合いも阻まれてしまいそうで、心が疲弊するが、小説を読むことで心が保たれる。

    奥田英朗さんの作品は、ずっと気になっていながら初めて読んだ。他の本も読もうと思う。
    2020.4.18

  • ☆3.5かな_φ(・_・

    北海道の過疎の町
    理髪店店主の康彦を主人公に町で起こる些細な出来事の物語です。

    生活の全てが知られているような小さな町
    息苦しさもあるけど助け合う優しさもある。

    奥田作品、前作が超シリアスだったので
    真逆のホッコリした作品でした(^ ^)

    もう少し奥田英朗を追ってみよう…

  • 古本屋さんでタイトルを見た時、荻原浩さんの「海の見える理髪店」を思い出し、きっと楽しい小説だろうと買ってみました。

    登場人物の描写がとても読みやすく、それぞれのキャラが分かりやすかった。
    まさに「ザ・田舎の人間関係」って感じです。
    うんうんあるあるって思いながら楽しく読めました。

    若者との感覚の違いや、それをそっと見守る年長者の視点。
    読みながらふと、自分が年長者側の見方に近い事に気づき苦笑い。

    テレビドラマ化しても面白そうですよねー。
    光石研さんとか理髪店のご主人が似合いそうな気がします。
    奥さん役は美保純さんかな。

    初めて読んだ作家さんでしたが、いい出会いに感謝!!!

  • 北海道の過疎の町を舞台にしたお話し。若い人達が前向きで、町民もみな助け合う町。
    実際はこんなにいいことばかりではないのでは…と捻くれて読んでしまった部分もありますが、明るく穏やかな話しの方が読んでいて楽しいので、これでよし。

  • 北海道の寂れた街での出来事。
    方言の心地良さ。住民たちの親密さ。

    理髪店を継ぎたいと帰って来た息子。
    嫁の来てがないから、中国人女性と結婚した男性。
    映画のロケ隊が来て沸く街。
    地元の子が東京で事件をおこし、指名手配になってしまう。

    などなど、誰でも顔見知りの小さな町で起こる出来事なんだけど、言いたい事を言い合い、喧嘩もし合いながらも、ここでずっと顔を合わせて生きていかなければいけないから、
    協力し合い、みんなで一緒に成長していく姿がとても心地良かった。

    NHKあたりでドラマ化してほしいかも。

  • ★4と迷った…★3.5

    過疎の町を舞台にした、理髪店店主の視点からみた6編の連作短編集

    ・向田理髪店
    ・祭りのあと
    ・中国からの花嫁
    ・小さなスナック
    ・赤い雪
    ・逃亡者

    かつて炭鉱で栄えた苫沢町は、放漫な箱もの行政で財政破綻した。
    向田理髪店は、戦後間もなくから続く昔ながらの床屋さん。
    店主の康彦は53歳で父親から引き継ぎ四半世紀にわたって夫婦で理髪店を営んで来た。
    そんな康彦の目からみた、過疎の町で生活する人々の悲喜こもごも。
    札幌で就職した息子がわずか一年で会社を辞め、理髪店を継ぐと言い始め将来が心配…。
    近所の老夫婦の夫が倒れ、その妻や離れて暮らす長男で幼馴染を心配…。
    中国から花嫁を迎えた男性がお披露目をしたがらない…。
    数年振りにスナックが新規開店し、妖艶なママにオヤジ連中がソワソワ…。
    映画のロケ誘致に成功し浮足立った町民たちだったが…。
    町出身の若者が東京で事件を起こした…。

    田舎の悪い所は個人主義が通用しない点で、無邪気な善意が人の負担になったり、
    都会なら誰にも干渉されずに生きていけるが、しかし田舎にはその選択肢はない。
    しかし、町の誰もが顔見知り・同級生だったり知り合いだったりする。
    困った時には、手を差し伸べてくれたり心配してくれる。
    鬱陶しさと面倒見の良さ、お節介・不満・好奇心・優しさ・温かさ
    田舎の悪い面も良い面も奥田さんらしく、クスッと笑えるような
    ほっこりユーモアたっぷりに描かれていました。

    家シリーズより少し弱かったですが、心がほっこりした読後感でした(*˙︶˙*)☆

    • katatumuruさん
      しのさん、いつも私のレビューを見てくださり、イイネ!もありがとうございます(^^)
      私のレビューと違い、とても丁寧に詳しく書かれたレビュー...
      しのさん、いつも私のレビューを見てくださり、イイネ!もありがとうございます(^^)
      私のレビューと違い、とても丁寧に詳しく書かれたレビューだと感心しました。他のレビューに関してもいつもそんな風に思います。
      しのさんのレビューの「悲喜こもごも」という言葉、私も偶然に使いましたが、正にそんなお話でしたね。
      私も、評価は4にしましたが、本当の所は☆3.5くらいかな~と思います(^^)
      2016/10/26
    • しのさん
      katatsumuru★さん
      こちらこそ、いつも私のレビューを見てくださり、イイネもありがとうございます♪
      そしてコメントとっても嬉しか...
      katatsumuru★さん
      こちらこそ、いつも私のレビューを見てくださり、イイネもありがとうございます♪
      そしてコメントとっても嬉しかったです。
      簡潔に纏めるのがとっても苦手&すぐに内容を忘れてしまうので粗筋を少し書いてます。
      そうですね~田舎の良い所悪い所が表裏一体で描かれていて悲喜こもごもでしたね。
      奥田さんの家シリーズを先に読んでいたので、それよりはパンチが弱かった様に感じてしまいましたが、この作品もとっても素晴らしい作品でしたね♪
      2016/10/26
  • 北海道の過疎の町をテーマにした短編連作集。

    田舎ならではの地域とのかかわりは何もかも筒抜けになることで悪い印象に取られがちで、うっとうしさも感じるものかもしれないけれど、過疎の町で生きて行くためには、悪いばかりではなく、人との絆の深さや思いやりを特に感じました。

    理髪店を営む向田康彦の視点で描かれているけれど、ぶつかったりしつつも、温もりを感じさせる言葉が随所にありました。

    久しぶりの奥田作品、出会えてよかった!!

  • 田舎のことをよーく知っている著者ならではの佳作。ああそう、田舎ってそうだよねえと、うなずきながら読んだ。町おこしとか村おこしって言葉を聞くたびにモヤモヤとしていた気持ちが、お話になって形をとっている。

    「家」シリーズと同様に、問題は何も解決しないし、先のことは不透明で、希望に満ちているとはとても言えない。それでもまあ、いいこともないわけじゃないでしょ、という気分にさせてくれる。

    ラストはちょっと前向きな感じで、こういう考え方もありかなあとは思う。みんながお互いのことを知ってるから気がラク、と私自身は思わないけれど。

  • おもしろい! 北海道の夕張市とおぼしき苫沢町にある向田理髪店を舞台にした苫沢町の物語。連作短編6つ。主人公の向田康彦は53歳で、昭和25年から続く理髪店を28才の時に父から継いで25年。最初の短編は小説宝石2013年4月掲載。設定が同時代とすれば康彦は1960年生まれ。となると床屋を継いだのは1988年・昭和63年で主人公は奥田氏とほぼ同い年の設定か、などと想像する。

    苫沢町は炭鉱で栄えたが、廃坑になり人口は減り、一時のハコモノ行政のおかげで図書館や遊園地が閑古鳥が鳴いている。町の助役は総務省から出向してきた若いキャリアで、しかし家族も一緒にきたから本気か、などと実際の現知事などを思い浮かべたりする。

    町に残っているのは長男と訳ありUターン。康彦とて広告代理店で限界を知り親父が病で倒れたのをいい口実と戻ったのだ。幼馴染のガソリンスタンド経営の瀬川、電気工事店の谷口、この3人を主軸に、息子のUターン、町おこし、中国人の花嫁、映画のロケ地になった、自慢の息子が詐欺罪で逃亡? など小さな町に小さな事件がぽこぽこと起きる。そんな苫沢の人々を奥田氏は生き生きと動かす。

    町おこし講演会でのやりとりがいい。カフェをやりたいFM局をやりたいという息子たちに、親たちは「おれたちはいろいろやったがだめだったんだ」というと子供たちは「おれたちはまだやってねえ。おれたちがやる権利までは奪うなよ、俺たちは苫沢が好きなんだ、おじさんたちには迷惑はかけないから好きにやらせてくれ」といい沈黙が訪れると、「いいぞ、年寄りに負けるな」とヤジが飛び、司会の助役も「ということでよろしいでしょうか」となり、会場に爆笑が・・ 

    ドラマにしたらおもしろそう、と思ったら映画化されていた。

    初出「小説宝石」
    「向田理髪店」 2013.4月号 息子も理髪店を継ぐのに札幌から戻ってきて・・
    「祭りのあと」 2013.11月号 隣の馬場さんの爺さんが倒れた。が一人になった婆さんは隣町の病院に見舞いに行くついでに羽をのばして・・
    「中国からの花嫁」 2014.7月号 40歳の専業農家の野村が中国に行ってお嫁さんを連れて来たが・・
    「小さなスナック」 2015.2月号 42歳の早苗が戻ってきてスナックを開くと男たちは入りびたり・・
    「赤い雪」 2015.10月号 苫沢町が映画のロケ地に。しかも主演はアイドル。が出来上がった映画はR15指定。かまくら作りは小中学生も手伝ったのに・・
    「逃亡者」 2016.2月号 札幌の進学校から東京の有名私大に進んだ秀平が指名手配?

    2016.4.20初版第1刷 図書館

    映画「向田理髪店」2022.10.14劇場公開 向田康彦:高橋克実 瀬川:板尾創路 谷口:近藤芳正
    舞台は九州にした? ロケ地は大牟田
    https://www.yomiuri.co.jp/local/fukuoka/news/20211214-OYTNT50150/

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著者プロフィール

おくだ・ひでお
1959年岐阜県生まれ。プランナー、コピーライターなどを経て1997年『ウランバーナの森』でデビュー。2002年『邪魔』で大藪春彦賞受賞。2004年『空中ブランコ』で直木賞、2007年『家日和』で柴田錬三郎賞、2009年『オリンピックの身代金』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『最悪』、『イン・ザ・プール』、『マドンナ』、『ガール』、『サウスバウンド』、『無理』、『噂の女』、『我が家のヒミツ』、『ナオミとカナコ』、『向田理髪店』など。映像化作品も多数あり、コミカルな短篇から社会派長編までさまざまな作風で人気を博している。近著に『罪の轍』。

「2021年 『邪魔(下) 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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