ポイズンドーター・ホーリーマザー

著者 :
  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (245ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334910945

感想・レビュー・書評

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  • これぞ、湊かなえさん!という湊かなえワールド全開の作品だった。短編集なので読みやすかった。ハズレがなく、どの話も面白かった。

    「毒親」と「聖母」は紙一重だと思った。毒親はどこからが毒親なのか?「あの人よりはマシ」という対象を見つけて、この人は毒親、この人は毒親じゃないって誰にも線引きはできない。

    一番好みだったのは、『優しい人』
    「優しさに似た行為は跳ね返す際の助走となり、最初から何もしなかった人以上に傷つけてしまうことになる。」
    じゃあ、たとえ道端に倒れている人がいても無視をして通り過ぎよう。助けを求められても、聞こえなかったふりをしよう。誰かに助けてやれと言われても、嫌だと言って断ろう。太っていて 鼻の下にはいつも鼻水が垂れているような子とは手を繋ぎたくないとはっきり言えばよかった?嘔吐してしまった子に汚いとか臭いとか言えばよかった?
    この部分にとても考えさせられた。子どもは親から「優しくしなさい」って教えられるし、優しいっていうのは褒め言葉で良いことだとされている。でも最初から冷たい人に拒絶されるのと、優しい人に拒絶されるのとではダメージが違う。優しいことだけが正義なのか?と考えさせられた。

    答えはない、100人読めば 100通りの答えがあるような内容だった。事実なんて、見る人の目線によって幾通りもの「真実」になるんだと。
    作品内ではいくつもの真実があって、それぞれの真実を信じているからこそ、うまく噛み合わず、憎み合ったり、勝手に不幸になったりしていた。

    人の裏表が描かれていると同時に、たった1人から聞いた話だけで判断することの危うさにも気付かされた。

  • 毒親、毒娘。昨今取り沙汰されているが、いつもモヤモヤ感が付きまとう。もちろん、人が死んでしまうような身体的な虐待、性的虐待などを行う親が毒親と定義されても仕方がないとは思うが、子供に~になってほしい、とか、地元の大学に行ってくれ、とか、そういう要望まで毒親といわれるのは、どうか?と思う。
    教育がすべて、と思う人が多くいるようだが、そんなことはない、と私は思う。子供に適切な教育を施したい、適切な躾をしたい、と思う親が大半で、けれども、資金にも時間にもかぎりはあり、その結果はすぐに出るものではない。気づいた時には子供に毒親のレッテルを貼られていることが多いのではないだろうか。
    姉妹差別を扱った短編「マイディアレスト」。この短編が一番印象的だった。こんな風に思っている長女の方は多いのではないだろうか。もちろん、これは小説だから、いろいろ凝縮されているように思うが、妹や弟にお母さんは甘かった、と思うコメントがネット上では多いように思う。私は妹の立場だから、本当の意味では長女の苦しみは分からないが、妹の有紗にも共感できない。人の大事な心の部分をずけずけ入り込んではダメだろう。また長女の淑子にも共感できない。親が何と言おうと、自立して出ていけば良かったのに、と思ってしまう。毒になる親を持つ方々からは「毒親支配されてると、そう思えないんだ」と言い返されてしまうように思うが、その辺りがやはり理解できない。「毒になる親」も読んだが、訣別の手紙を書くことを推奨していたと思う。毒になる親でも、そうでなくても、子供は自立するものであることを子供も親も意識しておくべきだ。育児の最終的な結末は子供の自立ではなかろうか。

  • 2017.4.12 読了


    イヤミスの短編集~

    これぞ 湊ワールド。
    湊さん 苦手な人も これなら
    すぐに1編が終わるので
    いけるのでは??(笑)

    どの話も モヤモヤしますよ。


    私は 嫌いじゃないけど(笑)

  • 久々の評価☆5。
    最高に面白かった。
    まるで自分の気持ちをそのまま代弁してくれたような本で、作風も私好みだった。

    6話からなる短編集。
    「マイディアレスト」
    物心ついた時から母親に妹と差別されてきた女性。
    それは大人になってからも変わらず、母親は妹には甘く、彼女には理不尽に厳しい。
    妹が家を出てから穏やかな日々を送っていたが、できちゃった婚で妹が妊娠、実家に帰ってきてからまた差別されるようになる。
    それを淡々と受け止め、ペットの猫に愛情を注ぎ、猫の蚤とりをする彼女だったがー。

    「ベストフレンド」
    脚本家を目指す女性が主人公。
    彼女は脚本新人賞に応募し、作品が優秀賞に選ばれる。
    その時、最優秀賞に選ばれたさえない見た目の女性に彼女は敵意を抱くが、それを隠しながら彼女とメールでやりとりをし見当違いのアドバイスをする。
    そして、彼女を出し抜き、自分は着々と脚本家への道を進んでいるつもりでいたがー。

    「罪深き女」
    無差別殺人をおかした男性と子供の頃に同じアパートに住んでいた女性の告白。
    彼はその頃母親から虐待されている様子で、それに気づいた彼女は食べ物をあげたり、何かと優しくしてきたという話をする。

    「優しい人」
    バーベキュー広場で殺された男性と彼を殺した同僚の女性の事を話す周囲の人々、そして殺人をおかした女性の告白からなる物語。
    周囲の人々は口をそろえて殺された男性は優しい男性だった、と言う。
    それに対して殺人者となった彼女の告白から見えてくるものはー。

    「ポイズンドーター」
    母親に支配されてきた女性の話。
    今は女優となった彼女は、実家にいる間、母親にされてきた事、言われた事を振り返り、それをテレビ番組で語る。

    「ホーリーマザー」
    「ポイズンドーター」の主人公の女性の同級生の目線から描かれた話。

    全てという訳でないけど、全体的に娘を苦しめる母親が登場し、この本では大きな存在感となっている。
    もし、ここに出てくる主人公の女性たちと同じような経験がなければ「ふん。ふん」とただの読み物として読む事ができ、ただの読み物として「面白かった~」となる本だと思うけど、私にとってはすごく深くて読んでいる間色々考えさせられる話だった。
    ミステリ調で、深く考えさせられる、という作風の本ではないのに・・・。

    とにかく、ここに登場する母親の言動があまりにリアルで、読んでいて「何でこんなに分かるの?」と思った。
    もし、作者が同じような経験がなくてすべて想像で書いたのだったら、すごい!としか言いようない。
    細かい部分、ちょっとしたさりげない言動・・・自分が経験した事とシンクロする事が多かった。
    「悲劇のヒロイン」なんて言葉。
    そのまんま母親が言った事だったので「うわっ」となった。
    他の人が書いた、いわゆる「毒親」を書いた本でここまで「書けてる」と思った事はない。

    この本のタイトルでは「毒母」でなく、娘の方は毒となっていて、母親は聖母となっている。
    私は親から言われた事、された事で怒りや憎しみみたいなのがヘドロのようにふつふつと今も自分の中にあり、それが毒になっていると思っている。
    私こそが毒そのもので、そんな風にした親の方は自分が何をしたか分かってなくて、毒を吐き出し清々しく、人から見ると向こうは「いい人」に見えたりする。
    最後の話には正にその事が書かれていて、私も人からはこんな風に見られてるんだろうな・・・と客観的に見た。

    どれもブラック味があり、感動作だとか、考えさせられる、なんて仕上げにしてないので、暑苦しい感じはない。
    最終話のように、受け取る人次第で印象の変わる本だと思う。

    • しのさん
      こんにちは(*'▽')
      ★5つの大満足だったのですね♪
      自分の経験と重なっていたのですね。
      凄く共感して、読んでて苦しくなったのではな...
      こんにちは(*'▽')
      ★5つの大満足だったのですね♪
      自分の経験と重なっていたのですね。
      凄く共感して、読んでて苦しくなったのではないですか?
      湊さんの作品には毒母を描いた作品が沢山ありますよね(*_*;
      湊さん自身の中にも何かあるのかもしれないって思ったりしています。
      2016/11/12
    • katatumuruさん
      しのさん、コメントありがとうございます(^^)
      久々の評価5です!こだわりが強くて中々「いい!」と思える本がないので、自分の読みたい本に出...
      しのさん、コメントありがとうございます(^^)
      久々の評価5です!こだわりが強くて中々「いい!」と思える本がないので、自分の読みたい本に出会えると嬉しいです(^^)

      確かに・・・。
      湊かなえさんも何かあったのかも・・・?
      そうでなければこの本は書けないものだと感じました。
      他の作品にもそういう経験が反映しているように感じます。(「母性」とか)
      この物語のどの母親も私が言ったりされたりした事があり、「ああ、こういう事あったな・・・」と思いだしました。
      特に最初の話とか。
      こういうちょっと恐いダーク調で書かれていたのが私にとっては救いでした(^^)
      2016/11/12
  • すごい話を淡々と書いているので、普通の話に思える。
    人間の奥深い黒いところを、よくもまぁ、こんな風に書いたもんだ。
    女じゃなくて良かった・・・!

  • 今作のキャッチコピー。
    「湊かなえ原点回帰!人の心の裏の裏まで描き出す極上のイヤミ
    ス6編!!」
    そんなワケで、湊かなえの新作は得意の連作短編集である。

    最近の湊かなえの著作は“イヤミス”という自らが作り出した
    ジャンル内に納まらない作品が多い。コレは決して悪いことでは
    無く、「告白」で付いてしまったある種負なイメージを時間かけ
    てゆっくり払拭していった結果。僕も初期からの湊マニアである
    が故に、女史の新作には必ずイヤミスを期待していたのだが、
    最近ではその期待すら無くなった。強烈なイヤミスでなくても、
    普通に面白い作品をコンスタントにリリースしてくれる。そうい
    う、違う信頼感が出てきたところで、こんなのを持って来やがっ
    た(^^;)。

    「ポイズンドーター・ホーリーマザー」。
    直訳すれば「毒娘と聖母」。タイトルからしてもうなんかアレな
    雰囲気を醸し出しているのだが、今回の作品はそういう期待を全
    く裏切らない気合いの入ったイヤミス。“元祖イヤミスの女王”
    の面目躍如。そして結構な問題作でもある。

    テーマは母娘(おやこ)。
    全6篇のどの話も、必ず歪んだ母娘関係を基としたエピソードと
    なっている。自分の行き場の無さを母の所為にする娘、自分の考
    えや育て方を強要する母。ドロドロ過ぎて収拾の付かない状態を、
    丹念に拾って物語を構築するテクニックは一段と研ぎ澄まされて
    いるし、読人の神経を逆なでする嫌悪感満点の言葉選びも秀逸で
    ある。完全なる劇薬。下手すればここまでで築いてきた何かを失
    い兼ねないのだが、いいんだろうか?(^^;)。

    男性の僕ですら、あまりの嫌悪感にページを捲る手が止まったほ
    ど。だから、女性の読むところを想像するだけでかなりの恐ろし
    さを感じる。

    イヤミス同好の士には必読図書。
    そうでない人たちは、結構覚悟してから読んだ方がいい。
    ・・・湊かなえって、やっぱり本当に恐ろしいのかもしれない。

  • 短編。どれもが心にズシンときた。読み応えがあり、でも捲る手が止まらなかった。

  • 6編からなる短編集ですが、どの作品もドロドロしたイヤミス!いや~な気持ちになるけど、それがなんだかクセになる面白さだった!

  • 湊さんの作品だったので読んだ。
    視点による認識の違い、状況の違いがとても面白い。白雪姫殺人事件や母性と同じ感じがした。
    教員となる上でも想像力を大切にしつつもその想像に囚われないように意識していきたいと思った。

  • 姉妹のいざこざ、女の嫉妬、毒親、毒娘、こじれた男女関係などなど。短編集。
    物事を一面からしか見ないとその人の都合のいいように解釈されちゃうけど、実はそうじゃなかったってネタばらしがぞわっとして本当に怖いな。
    湊さんこういうのすごく上手い。

    一人称での語りだとやっぱり自分が中心に世界が回っていて、外野から見たらそうじゃないってことが往々にしてあるなと。

    読んでいてザワザワする感じ。

    結構どれもこれも救いがなくてしんどかった。

    ポイズンドーターとホーリーマザーは連作な感じで語り手が入れ替わったから余計にそう感じた。
    自分も娘であり、娘の母でもあるから感情移入がすごくできた。こんな母親になりたくないなと思ってしまったし、自分が娘の為を思ってしている行動も、娘にとったら迷惑でしかなくて、支配でしかなくて毒親認定されたらすごくきついなと思ったし、娘の立場でもあったからここまで介入されたくないなと思ったし、どちらの立場もわかって読んでいてしんどかったというか…
    リアルだったなーと感じた。

著者プロフィール

1973年広島県生まれ。2007年『聖職者』で「小説推理新人賞」を受賞。翌年、同作を収録した『告白』でデビューする。2012年『望郷、海の星』(『望郷』に収録)で、「日本推理作家協会賞」短編部門を受賞する。主な著書は、『ユートピア』『贖罪』『Nのために』『母性』『落日』『カケラ』等。23年、デビュー15周年書き下ろし作『人間標本』を発表する。

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