コクーン

著者 :
  • 光文社
3.21
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本棚登録 : 216
感想 : 58
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  • Amazon.co.jp ・本 (307ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334911249

感想・レビュー・書評

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  • 1995年3月「シンラ智慧の会」という、カルト教団が丸の内で無差別乱射事件を引き起こす…。教祖は天堂光翅、1958年に呪われた子として生を受けている…。この作品は、無差別乱射事件で息子を奪われた母親、教団の教祖である天堂光翅と過去に友人として同じ時を過ごした青年、無差別乱射事件で逮捕された信者の妹、教団に妻を洗脳され奪われた男性などの視点から描かれている…。それぞれの場面において、金色の翅を持つ蝶が現れ、登場人物を導いていく…。

    今回の作品は、カルト教団に重きをおいた内容だと感じましたが、他にも戦中戦後から始まり、近親相姦、売春、子供の貧困、行路病院、生活保護、ネット自殺、震災被害、詐欺被害、高齢者の孤立、性的マイノリティ…様々な社会的問題が描かれています。もしも、あの時--の分岐点を、考えたら止めどもなく想像が広がっていき…あの時の判断は間違っていないとすべてを正当化できたりするのかな、そう思うとあまりよい読後とはなりませんでした。カルト集団に洗脳されることに、大きな恐怖感を抱きました。だけど、葉真中顕さんの作品は、読みごたえがあって好きです!

  • ねっとりと纏わり付く後味の悪さ。最終章を読む前に僅かながらにも明るい終わりを期待してしまった故に叩きのめされてしまった。
    生きているからには全てに選択肢があり分岐点であり、ifなんか無限にあるのだけれどそれを考え出したらきりがない。
    始めに手にした葉真中作品がこの本だったら、他作は読まなかったかも知れないif。

  • 新興宗教、貧困ビジネス、震災、被害者家族など、現代の様々な事象・問題が、登場人物それぞれの視点から語られる。
    登場人物は少しずつ繋がっており、バタフライエフェクトがモチーフ。

    過去と現代も入り混じり、誰と誰がどのように繋がってるか、わからなくなってくる。
    著者が扱ってきたテーマを散りばめ、複雑な構成によって読ませているようだ。
    (図書館)

  • オウム事件を下敷きにした壮大な物語です。色々な人々色々な時代でどのような行動をとったかで変わっていく世界。そしてときおり黄金の蝶が見せる平行世界と思われるまぼろし・・・。
    バタフライ効果を題材とした物語で、殺人者が産まれた瞬間に既に運命が決まっていたのか、色々な分岐点を通過して来たが為に起こってしまったのか。こういう運命論的な事を考え始めると終わりは無いですが、考えられる余裕が有るのは当事者以外なのかなという気がします。
    行きつ戻りつ難しい題材を物語として成立させるところは、やはり力量があるなという感じがしました。
    ぐいぐい読ませるというよりは、淡々と読ませながら惹きつけられるという感覚です。こういう本って後々効いてくるような気がします。

  • バタフライエフェクト。多分、幸せでも不幸せでも「あの時・・・」と思う事は誰にでもあると思う。いわゆる「たられば」なんて無意味なんだけど、この作品の場合は幻が現実にリンクされてるので、こっちの方がマシだった、とかそんな風に思ってしまいそう。でも、そうじゃなくて。過去は必然だし、やり直せないし。弱さに付け込む宗教は神も何もあったもんじゃないと思うけど、そこに至る不安やコンプレックス、生い立ちや貧困が根本にある事は間違いなく。読み休める事が許されない、とても複雑な読後。カバーを取ってまた複雑な気分。うまいなぁ。

  • オウム真理教がモデルなのかなぁと。

    金色の蝶が舞いながら色々な人の夢を見せてくれる短編集。(でも、繋がりがある)

    もしもこうだったら?という、もしもの世界。
    人間は絶えず選択肢があり、もしも違う方を選んでいたら?という話です。

    そしてテーマは、もしもこうだったら?って言うけど、大して変わらないよ。と言いたかったのかなぁと。

    個人的にこの作家さんにはまりつつあります。

  • 「絶叫」のインパクトがすごくてこちらの本も読んでみました。
    オウム真理教の事件をモチーフにした物語。今回も引き込まれました。一羽の蝶の羽ばたきが巡り巡って地球の裏側で竜巻を起こす、バタフライ・エフェクト。あの時あの道を反対に曲がっていたら…人生は全く違ったものになっていたのかもしれない。あの時選択しなかった方の世界線では何が起こっていたのか…善良な人が殺人鬼になっていたかもしれない。というパラレルワールドの話でもありました。そして、物語が終わった後の最終章にゾッとした。沼の存在をすっかり忘れていた。図書館で借りた本なので最終章は巻末に貼りつけてあったのですが、本来どういう風に差し込まれてたんだろう。
    面白いなぁ葉真中顕。他の本も読んでみよう。

  • 葉真中作品がしっくりくる今日この頃、今年最後の読了になりそうな予感がするので一言、今年もお世話になりました、皆さん良いお年をお迎えください♪

    それはさておき、この作品も著者らしい重いテーマを扱ったもの。実際に起こった事件や災害をヒントにしているけれど、フィクションであることを念押しする但し書き。ずばりオウム真理教の地下鉄サリン事件と東日本大震災のことであることは誰しもが分かること。

    満州国、終戦が絡んだ時代から現代まで大きなうねりの中で、更に宗教、ネット自殺、近親相姦、大阪万博、行路病院、生活保護、世界終末時計…たくさんの要素がありすぎて少々ややこしいのだが、全ては繋がっていたのだ。これぞまさしくバタフライエフェクト。偶然は必然。”原因と因果は、常に強力な因果律によって結びついているのだ”

  • 2019/1/6 300ページ本を1日で読んでしまう。わかりにくいが凄いスケールの大きい本

  • 1995年3月20日、丸の内でカルト教団が起こした銃乱射事件。
    事件で子供を亡くした母、教団の教祖の同級生、教団が起こした事件で逮捕された兄を持つ女性、教団によって妻を奪われた男性など、一つの事件を軸に様々なピースで物語は紡がれる。
    明らかにオウムの事件をモチーフにした作品であるが、事件そのものではなく、その事件の周りにいた人々のその後の人生を描いているのが、社会派ミステリーを得意とする作者らしい。
    読後は決して良くないが、いろいろ考えさせられる内容ではある。またラストの章がカバーを取った本そのものの裏表紙・表紙に描かれているのが珍しい。そして、その内容にまた驚愕を覚える。悪の連鎖は完全に消えることはないのか…
    こうしている今も、実際に起きているかと思うと、やはり平和な世の中を手放しでは信じられない。

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著者プロフィール

葉真中顕

1976年東京都生まれ。2013年『ロスト・ケア』で第16回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞しデビュー。2019年『凍てつく太陽』で第21回大藪春彦賞、第72回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)を受賞。

「2022年 『ロング・アフタヌーン』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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