ニュータウンクロニクル

著者 :
  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (243ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334911737

感想・レビュー・書評

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  • 1970年代、高度成長期に造られ始めたニュータウン。

    団地で暮らしていた画一的に見える家庭、それぞれの家族一人一人の想いや暮らし、その後の生活。

    前半は懐古的な感じで星3つって印象でしたが、中盤から後半にかけて、かつては同じように暮らしていた親、子供、孫の世代まで人や町の歴史が続いていき、印象は星5に変わりました。

    50年経ち、高齢化と過疎が進む町は、そこから新たな未来へと続いて行くはず…というラストは良かったです。

  • 昭和のニュータウンを舞台に、1971年から2021年までを、10年ごとのエピソードで綴る連作短編。

    著者とまんま同世代。団地住まいの経験もあり。
    各物語の中のどこかに自分がいてもおかしくないなと思いながら読みました。

    読み始めは、なるほどね~と軽めの印象でしたが、なんの、話が進むにつれ、それぞれが重く大切なことを語る物語で、すっかり魅了されてしまいました。

    最終話はこれからのニュータウンへの期待を込めた話。
    実際にこういうことは進んでいるのでしょうか。
    理想的な街づくり、高齢化社会に向けて、いろいろ考えながら読み終えました。
    おすすめです。

  •  首都圏郊外のニュータウンの50年を描く。
     建設初期の1971年から再開発計画が具体化された2021年までのニュータウンの変遷を10年ごとのスパンで6章に分けて描かれている。

         * * * * *

     ニュータウン建設はそれまでの価値観と新たな価値観のせめぎ合いを生む。それがよくわかる作品でした。

     急激な変化を望むか否か。
     在来住民にとっては勝手が変わることに抵抗があるのはわかりますが、新住民にとっては公共インフラの整備や地域の合理的なルール作りが急務なのは当然だし、死活問題でもあるでしょう。
     保守と革新、双方の主張は互いに相容れず軋轢を生むのも、創生期ならやむを得ないことだと思います。

     再開発により甦るニュータウン。1971年に新住民だった春子と理恵子は、2021年には健児と同じく在来住民となり、新住民を迎える立場となりました。

     こうして生活拠点としての町はバージョンアップしていくんだなと(当たり前のことながら)しみじみ感慨に耽ってしまいました。

     個人個人の物語というより町の物語として読むと、なかなかおもしろかったです。

  • ちょっとイマイチでした。ただ、小山田さんのその後が気になるだけ。

  • 1971年から2021年の若葉ニュータウン。
    1971年役若葉町場に勤める健児。健児の父は大地主で土地を売り払い、恵まれた生活をしている。そのニュータウンの新住民たちの話。
    1981年、当初1万人の住民が7万人に達したため、小学校も新設することが決まった。その最後の年の5年1組の話。
    1991年、健児のおじとおばの話。おじは株で儲け、おばは不倫に落ち家を出てしまう。
    2001年、おじが開店させたプールバー、そこを息子の浩一は再活用するため、工房を作る。
    2011年、5年1組の同窓会、新設した小学校は廃校となっている。家族を持ち、悩んでいる。
    2021年、50年後の若葉ニュータウンの再生。

  • 多摩ニュータウンに住み続けている身として
    自身の歴史を見ているようで客観的には評価できない前提ではあるが、読後ほっこりさせる良作。
    多摩ニュータウンの歴史を10年毎に短編にしており、小さな繋がりが一つのテキスタイルに織り込まれていくようで読後感は良好。
    多摩の旧住民と新住民の考え方の違い。
    土地持ちとサラリーマン階層の違いは実際あった話だ。
    バブル期、多摩地域はロケ現場に頻繁に登場している。
    実験的な都市として作ったため、都心と多摩地域の物足りなさなどの違いは登場人物同様感じた点であった。
    バブルによる商業地域の発展、同崩壊による高齢化した街の衰退などが商店街の衰退とともに描かれている。これもバブル崩壊後から徐々に感じていた点だ。
    そういった心象風景を的確に表している点で作者にも同様の感情があったことが推察される。
    本書でも指摘されているがニュータウンは人口的に作られた街のため画一化された文化風俗の無さが一つの背骨となっている。
    しかし初期入植から50年。街区は人口的に作られているが、住民が街を作ると言う意識から考えると充分な歴史を持っている。
    後は、ニュータウンの新しい文化を形成したいと考える住民を受け入れることを考えることに力を入れるべき時期なのかもしれない。

  • 登場人物の一人が私と同姓同名、という理由で選んだ本。
    いやいや面白い。
    多摩ニュータウン(とは書いてないけど)の凋落っぷりはぼんやり知ってはいたけれど、最終章で希望を感じられて読後感は爽快。

  • 1971年から10年ごと、2021年までの6つのお話。

    地方とはいえ73年生まれのせいか懐かしさも。
    ニュータウンとはほど遠い実家の周囲は団地が建ち並んでいる。
    ここ10年くらいで、ほぼリニューアル。
    新しい世代が暮らしはじめ、高齢者サービスセンターも創られた。

    当時の小学校は、おそらく7割が団地から通う子どもだった。(現在は少子化で廃校)
    転校生も毎年、数人あった。たまに中国出身の子も。
    本に描かれた住民活動や、馴染みにくい転校生は記憶にないが
    仲良しグループの焼きもちなんかは懐かしい。
    校舎に忍びこんだ最後は、高校生だったような?笑

    好きな章は『工房』。
    引きこもり君をじょうずに巻きこんでいく手腕が鮮やかで爽やか♪
    染めと織というのも魅力。

    さまざまなことで苦悩したり、一時的な感情で不本意な言動をしてしまったり。
    イヤだし情けないし怖いことも結構あるけど(笑)
    ささえたい相手とタッグを組んで生きていけたらいい。

    だれかを想う、いたわる、つながりに心がぬくもる。

  • 一九七一年から二〇二一年までの十年毎、六編の連作群像劇。団地群というより落ち着いたニュータウン的イメージ。浮いた転校生との小学生女子の話やその同級生男子が同窓会後母校に忍び込む話が特に印象に残った。バブル等も知らないなりに寄り添えた。他の著作では感じなかった途中でリズムの狂う文体に度々引っ掛かった。

  • 中澤さんらしい。なかなかよかった。上手くなってるな〜。

  • ニュータウンの過去から未来を舞台にした小説。おもしろさはいまいちの印象。舞台は多摩ニュータウンかと思いますので、この地域や団地に興味がある人には良いと思います。

  • ニュータウンで暮らした人々の群像を、1971年から10年ごとに6編の短編で構成している。かつてニュータウンと呼ばれていた町は、いまはどこもかしこもオールドタウンになってしまっているが・・・

  • あと少しが読む気がしない。

  • ニュータウンの知らない時代、知っている時代が様々だったから興味深かった。

  • 新興住宅地って出来始めに一時輝いて、やがて住民の高齢化と一緒に静かに老いていく宿命なんだよね。どの団地もニュータウンもそうなんだと思う。
    そこらへんを舞台にした連作短編集。

  • タイトルから想像した通りの内容だった。
    舞台は、東京都心から電車で1時間以上かかる郊外に造成されたニュータウン。

    新たに里山が切り開かれ次々と団地が建設されて旧住民と新住民の間に軋轢が生まれた1970年代からはじまり、高度経済成長、バブルを経て、急速に住民の高齢化が進み、若い世代がニュータウンを離れていく現代から近未来を連作短編のかたちで描いている。

    同じ登場人物がニュータウンと同じだけ年老いて登場し、時代の流れを感じさせる。

    主題とは関係ないのだけれど、親を困らせる子供、というのが出てきて、そういえば自分も子供の頃は相当なわがままや身勝手なことを許されると思っていた、子供というだけで親に存在を肯定してもらえると信じていた傲岸で甘ったれた人間だったなとしみじみ思った。

    町も人も年をとり、新しい顔を見せ、変わってゆく、そういう当たり前だけど忘れがちなことが描かれている。

  • 郊外に建設された大規模なニュータウン。バブルのころに最大の住民を抱えてにぎわったものの、時の経過とともに廃れていく。数十年のそのニュータウンのうつろいと、住まう人たちの絆を描いた物語。

    郊外の団地の高齢化問題、入居者減少、という話題は耳にしたことがありますが、その容赦ない移ろいを描きつつ、そこに住まうしかない、または選んで住んでいる人たちの悲喜こもごもな人間模様が温かな視線で豊かに描かれていてます。

    密やかな想いを秘めた純粋な青年、少女同士のつかの間のふれあい、激情に流されゆく主婦、引きこもりの少年と真逆の明るさを持つ少女…、団地を舞台にさまざまな年代のさまざまな想いを抱える人びとが交差してゆきます。

    多くの人々のそれらの感情の激動を飲み込んだ団地は、少し形を変えつつもこれからもまだ、存在しつづけるのでしょう。人々の無数の物語を内包しながら…。

  • 1970年代〜
    子どもだったけど、自分の親も自営業立ち上げて
    そこそこやって
    バブルとともに廃業したことを重ねると、
    あー時代なのか…
    いい時代だったのか…
    どっちかわかんないけど、それはそれでありかなーとか。
    今よりはいいのか、
    ニュータウンというひとつの時代の象徴を通していろいろ考えれる本。
    健児の人生をたどる構成もよかった。

  • 1960~70年台にかけて造成されたニュータウンが抱える問題を、それぞれの年代で群像劇として描いた作品。
    近所にもありますが、当時建てられた団地は問題山積ですね。
    うまく後世につないでいくためには、官だけでも民だけでも難しいでしょう。小説のようにうまくバトンがつながればよいのですが。

  • んー。まあまあ。おもしろかったけど、すごくよかった
    とも言えなくて、まあまあ。不可はまったくないです。本をかたっぱしから読んでた頃ならよかったけど、本にかけられる時間が限られている今、どうしても読みたい本ではなかった。

  • 1971年から10年ごと2021年までのニュータウンの物語。
    このくらいの時代にあちこちで団地が建設されたのね。
    あたしは、子供の頃に一時住んだ社宅を思い浮かべてしまうけど。多分、その頃の団地と間取り、雰囲気はほぼ同じじゃないのかと思う。
    ニュータウンに限らず、今はどこも高齢化が進んでいる。若い頃には気づかなかったことが、その年齢になって不便だなと思うようになったり。
    そうだね、誰しもそんなに先のことまで考えてないもんね。その時々で対応できる余力を残しておきたい。

  • 人々の大きな夢と希望を集め、郊外に開発された巨大な人工の町--若葉ニュータウン 高度経済成長、バブル景気、震災、そしてすぐそこの未来まで……。.ニュータウンで各年代を生きた人たちの息づかいを鮮やかに書き切った、群像小説の傑作誕生!

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著者プロフィール

1969年東京生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。出版社勤務の後、劇作家として活躍。2007年「ミチユキ→キサラギ」で第3回仙台劇のまち戯曲賞大賞、12年「春昼遊戯」で第4回泉鏡花記念金沢戯曲大賞優秀賞を受賞。13年に『お父さんと伊藤さん』で第8回小説現代長編新人賞を受賞し、小説家デビュー。著書に『おまめごとの島』『星球』がある。

「2017年 『PTAグランパ! 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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