シネマコンプレックス

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  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (252ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334911942

感想・レビュー・書評

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  • あなたは『一億円持っていても、うちで働きますか?』と言われて、それでも働きます!と答えるでしょうか?

    この世には数多の”お仕事”があり、私がこうしてレビューを書いている瞬間にもさまざまな場所でさまざま”お仕事”に従事されている方がいらっしゃいます。私たちの人生は有限であり、当然にそんな”お仕事”の全てに就くことはできませんし、そんな”お仕事”の全てを知ることさえできません。

    一方で、今、私が”お仕事”と書いた時にあなたはその先にどんなイメージを思い浮かべたでしょうか?例えば、あなたが興味のある”お仕事”を挙げていただけますか?と私が質問した時にあなたが答えるのは”弁護士”です、”看護師”です、そして”政治家”です、と具体的にイメージできる職業をあげるのではないかと思います。しかし、世の中はそんな職業の人たちの存在だけで回っていたりはしません。”弁護士”さんの周りにはそんな仕事を支えるように受付や経理のスタッフがいると思います。”看護師”さんだって、配膳をサポートするスタッフや病棟の事務を回していくクラークさんの存在なくしては回らなくなります。”政治家”など、秘書の存在なくしては”お仕事”自体成り立たなくなってしまうのではないかとさえ思います。

    そうです。この世は誰もが容易に名前を挙げられる職業に就く人たちだけで成り立ちはせず、そんな人たちを支える職業に就く人たちを含めた総合体として回っているのだと思います。

    さて、ここに『シネマコンプレックス』で働く人たちに光を当てる物語があります。私たちが気軽に訪れるそんな場所では、チケットを買い、パンフレットを買い、ポップコーンを買うというそれぞれの場で働くスタッフの姿を見ます。一方で映画を見終わって立ち去った後、次の観客のために座席周りを清掃するスタッフが、そして、そもそも私たちがその場を訪れた最大の目的である映画をスクリーンに上映してくれるスタッフがいるはずです。そう、私たちがそこで働く人たちに特に意識を向けるでもない場所にも、日々”お仕事”に向き合うたくさんの人たちが存在するのです。

    この作品は、『総勢で百人弱いる』という『シネマコンプレックス』のさまざまな部門で働く人たちに順番に光を当てていく物語。『シネコンのアルバイトって、もっと楽だと思っていた』と勤め始めたものの『アルバイトの人間関係は難しい』と思い悩みながらも、お客様に笑顔をもって対峙していくスタッフたちの物語。そしてそれは、『クリスマス・イブ』という一年の中でも『今日は特別』というそんな一日にも、情熱を持ってそれぞれの”お仕事”の場を守るスタッフたちに光を当てる物語です。

    『今年も、映画館でクリスマス・イブを過ごす』、『三十人から四十人のバイト仲間と一緒だ』と更衣室で着替えるのはこの短編の主人公・島田貴実(しまだ きみ)。そんな時、更衣室に入ってきた千秋は『今日、忙しいですよ』、『クリスマス・イブですしね』と語りかけてきました。『大学生になってすぐにここでアルバイトをはじめて、クリスマス・イブは毎年必ず働いて』今年で九回目になると振り返る貴実。そんな貴実は『ショッピングセンターに入っているシネマコンプレックス』で働いています。『系列のシネコンは、全国に二十五館ある。その中で、うちは中堅くらいだ』というその『シネコン』。そんな『シネコン』で働くスタッフは『チケットのもぎりや館内の案内や清掃をするフロア、飲食売店のコンセッション…』などに分かれています。そして『年に何度か異動があ』ります。『フロアからはじまり、ボックスに異動して、コンセに異動して… 今年の夏休み前にフロアに戻ってきた』という貴実。『総勢で百人弱いる』というスタッフは『半分が学生で、残り半分がフリーターか主婦』というその陣容。そして、更衣室を出た貴実は『ストアの加藤君が右手に制服を抱えて、左手に持った赤い三角帽子を見つめて』いるのに気づき声をかけます。『これってかぶらなきゃいけないんですか?』と訊く加藤に『クリスマス・イブだからね』と答える貴実は、『休憩室の棚に』並んだ無線機を装着しました。そして『長くて短い一日のはじまりだ』と持ち場へと向かう貴実。『わたしは二十七歳でもバイトの中では若い方』という貴実は『このシネコンがオープンした時からいる一番の古株』でもありました。そんな貴実は、『五年前のクリスマス・イブ、大学四年生の時にわたしはここで事件に遭った』という過去のことが忘れられません。『警察沙汰になるほどのことでもなかった』ものの『あの時に感じた「怖い」という感情は、今も微かに残っている』という貴実。そんな貴実が『クリスマス・イブ』のフロア担当として働く姿がリアルに描かれていきます…という最初の短編〈フロア〉。物語の全編に渡って登場し、アルバイトながら『シネコン』の他のスタッフからも一目置かれる存在に成長した貴実のプロフェッショナルな姿と、その”お仕事”の舞台裏を垣間見ることのできる好編でした。

    “同一の施設に複数のスクリーンがある映画館”を指す『シネマコンプレックス』、略して『シネコン』を舞台に描かれたこの作品。七つの短編が連作短編の形式をとる短編集となっています。そんな各短編のタイトルはスタッフが働く部門の名前になっており、短編ごとにそれぞれの部門の”お仕事”に光が当たり、そんな部門の中の一人が主人公となって物語は展開していきます。では、そんな部門を各短編タイトルとともにまず見てみたいと思います。

    ・〈フロア〉: 『オープンした時からいる一番の古株』という27歳の島田貴実が主人公。『チケットのもぎりや館内の案内や清掃を』担当。

    ・〈コンセッション〉: 『バイトをはじめてもうすぐ六年』という26歳の菊池が主人公。『飲食売店』を担当。

    ・〈ボックス〉: 『二世帯住宅』で義母、夫、息子と暮らす35歳の宮口が主人公。『チケット』販売を担当。

    ・〈ストア〉: 『映画の主演女優』の元カレで大学二年生の加藤が主人公。『グッズ売店』を担当。

    ・〈オフィス〉: 『ここで働きはじめて五年半』というフリーターの千秋が主人公。『備品を揃えたり…電話を受けたり…スケジュール』確認を担当。

    ・〈フロア・新人〉: 『OJTと呼ばれる研修プログラムが終わり、今週から一人になった』大学一年の片山が主人公。新人としての働きが見れる。

    ・〈プロジェクション〉: 『実家は、小さな町の小さな映画館』で島田と同じく古株で27歳の岡本が主人公。『映写』を担当。

    作品は上記した七つの短編に分かれています。わざわざこのように整理して書いたのにはこの作品の構成を理解いただがないとその魅力を十全に説明できないと思ったからです。

    では、そんな作品の三つの魅力を順にご説明したいと思います。まず一つ目は、この作品が”お仕事小説”の側面を持っているという点です。さまざまな分野の仕事に光を当てる”お仕事小説”は数多あります。辞書を作る編集者を描く三浦しをんさん「舟を編む」、ピアノの調律師を描く宮下奈都さん「羊と鋼の森」、そしてスピーチライターを描く原田マハさん「本日は、お日柄もよく」など、この世にはこんな仕事があるんだと、それぞれの仕事に真摯に向き合う人たちの姿が描かれていく”お仕事小説”は人気のジャンルとも言えます。そんな”お仕事小説”に対してこの作品で描かれるのは『シネコン』という場所全体に光を当てる物語です。それは一つの会社全体に光を当てるのと同じことです。あなたが会社員であれば、営業、総務、経理…とそこにはさまざま部門があり、会社を動かすためにそれぞれに働くスタッフの姿があるはずです。この作品はそれを『シネコン』に見るものです。似たようなイメージとしては、”遊園地”のスタッフに光を当てた寺地はるなさん「ほたるいしマジカルランド」があります。寺地さんの”遊園地”という舞台も、そして畑野さんの『シネコン』という舞台もそれ自体は知っていても、そこで働くスタッフを私たちが特別に意識することは普通にはないと思います。しかし、上記で整理した通り、それぞれの担当を見ると、まさしくなるほどと、頭の中にそんな各部門で働く人たちの姿が思い浮かぶのではないでしょうか?しかし、イメージは浮かんでも実際にその場で働くスタッフたちの苦労や喜びといったものは経験したことがなければ知る由もありません。この作品では、『上映スケジュール』のことを『パフォスケ』、『トイレチェック』のことを『TC』、そしてポスターなどを『宣材』と呼びながら私たち利用者の目に見えるところ、見えないところでこの瞬間も走り回るスタッフたちの姿が描かれていきます。それぞれに、へえーっ!と感心させられることの多い描写の中で、なるほどと思ったのが〈ボックス〉の仕事でした。『ボックスの仕事は、混んでいる日の方が楽だ』というその理由は『すいている日だと、お客さまが密集しないように考えて席をとらなくてはいけない』というものです。『お客さまとお客さまの間に一席あくのが理想』、しかし『あけた一席をインターネットで購入するお客さまがいる』という難しさがあると言います。そして、ネットでその理想が崩れた場合は仕方がないとしても『スタッフが売ったチケットによって崩れた時には、誰かを責めるような空気が狭いチケットボックス内に充満する』という実際の現場の苦労が描写されるなど、『シネコン』という現場が”お仕事小説”としてリアルに描かれていきます。『十年以上前、私は都内にある某シネコンで、アルバイトをしていた』と語る畑野智美さん。『朝も昼も夜も、ひたすら働いた』と続けられる畑野さんは一方で『とても楽しくて、毎日が夢のようだった』とも語られます。リアルな現場を実体験された畑野さんだからこそ、細部に渡って極めてリアルなこの物語が描けるんだと思いました。決してメジャーとは言えないこの作品ですが、こんなところに”お仕事小説”の傑作が隠れていた!と、お宝を掘り当てた喜びを感じさせる一冊だと感じています。

    そして、二つ目には、短編ごとに視点の主、つまり主人公を変えていくその手法です。もちろん、連作短編で短編ごとに主人公を変えていくという作りは決して珍しいことではなく、ごく一般的な作りとも言えますが、この作品ではそんなスタッフの面々をそれぞれの短編で噂話で取り上げたり、全く同じ場面を再度視点を変えて描いたりというように、短編と短編が密接に紡ぎ上げられていくかのように描かれているのが特徴です。例えば〈フロア〉の主人公・貴実は、〈ボックス〉の主人公・木口から『アルバイトの中で、特別な存在だ… 仕事ができて、社員からも頼られている』と思われていることがわかります。また、〈フロア・新人〉の片山からは『フロアのリーダーではないけど、リーダーより偉いと言われている』と認識されています。しかし、〈ストア〉に登場する土屋からは『隙を見せないし、警戒心が強いし、常にイライラしてるし。何が楽しくて、ここで働いてるんだろ』と見られていることがわかります。これはどこの組織でも同じことでしょう。万人に好かれる人も万人に嫌われる人もいません。人は人との関係性の中で色んな顔を見せていきます。それを好む好まない、合う合わないは当然出てきます。この作品ではそんな風にそれぞれの短編に登場するスタッフが他の短編のスタッフからどのように見られているか、その良い面悪い面含めて洗いざらい描くことで、物語の最初に朧げだったそれぞれのスタッフのイメージが、最後に本を閉じる時には、まるで自分も知っている同僚のように深く知った気分にもなる、それくらいに登場人物が細かく深く描かれているのがとても魅力に感じました。そして、恐らくそれは上記した通り、実際の現場で働かれていた畑野さんが感じた『シネコン』の舞台裏の感覚そのものなのだと思います。

    そして、最後に三つ目が、連作短編を貫くように存在する一つのミステリーの存在です。この作品では短編間を貫くように走る一種のミステリーが存在します。それは、『五年前のクリスマス・イブ、大学四年生の時にわたしはここで事件に遭った』と冒頭の〈フロア〉で貴実によって暗示されるものです。『一番奥にあるスクリーン四番で何かが起きた』というそのミステリー。そして、その結果として〈フロア〉の主人公・貴実と〈プロジェクション〉の主人公・岡本の間に何かが存在することが常に匂わされながら物語は進んでいきます。『五年も経つのに、貴実ちゃんも岡本さんもあの日から動けずにいる』と物語の核心であることが匂わされもするそのミステリー。そんなミステリーは物語が展開する中でスタッフたちの会話の組み合わせの中でぼやかされることなく全てが明かされ、さらにフィナーレの土台ともなっていきます。これからお読みになられる方には、このミステリーがどう決着されるかにも是非期待いただきたいと思います。

    『わたしたちが働いているのは、ショッピングセンターに入っているシネマコンプレックスだ』。

    『総勢で百人弱いる』というスタッフの”お仕事”に光を当てるこの作品。そこには、『フロア』、『ストア』、そして『プロジェクション』と、私たちが映画を見るという特別な時間を快適に過ごすために館内を駆け回る真摯なスタッフの姿がありました。『時給が安くても働きたいという人しか雇っていられない』という厳しい経営の舞台裏に、それでも映画のために働きたいと思いそれぞれの場を責任を持って守り続けるスタッフたち。

    そして、この作品で光が当てられたのは『クリスマス・イブ』という一年の中でも何かが起こる予感に満ち溢れた特別な一日でした。そんな特別な日が怒涛のように終わり、静かに訪れるその日の終わりを見る結末に、”いい本を読んだ”感いっぱいに包まれた傑作だと思いました。

  • 学生時代のアルバイト
    を思い出しました。

    登場人物たちの言動が
    なんだかリアルで、

    当時の自分自身や周り
    にいた先輩や後輩たち
    のことが、

    そのまま描かれている
    かのよう。

    ノスタルジーにひたる
    作品でした。

  • シネコンで働く人たちの話。従業員がたくさんいて、それぞれの部署での出来事や人間関係の話がメインかな。シネコンのバックヤードが知れて良かった。【映画館に行く→チケットを買う→トイレに行く→飲み物を買う→上映する部屋に入る】これが私の映画を観に行く時の行動。この行動をしている時、バックヤードでは従業員が走り回ってるんだろうな。そういうのを想像しながら読むのは楽しかった。

    連作短編で各話の主人公が、どういう風に人間関係を築いているのか読むのは面白かったな。こういう人いるよねー、それすごく分かるわーとか共感してしまった。作中で出てくる嫌な人は、詮索好きな人、仕事が出来るわけではないのに威張る人、上から目線、マウントをとる人、責任を押し付ける人、などなど。(これ以上言うと私も嫌な人間になってしまいそう。)もちろん良い人も登場する。優しい人、サポート上手な人、空気が読める人、仕事ができる人、人望がある人、などなど。(これはほぼ私がなりたい人だな。)色んな人たちが登場し、煩わしい人間関係、いい人間関係ができる。この人間関係も部署が違うとまったく違うものになる。みんなに嫌われてる人も、部署によっては良い人だったり。その逆もある。固定観念で物事を見てはいけないな。これが面白いな。こうやって社会が形成されるんだろうなと思った。
    この人間関係を読むのは面白いと思いつつ、私にはちょっとなーと思った。私にはリアル過ぎる。現実の私の人間関係をそのまま見てる感覚になる。物語の中でも人間関係を考えたくないな。

    このシネコンで一番信頼されてる2人、島田さんと岡本くん。この2人が最終的にどうなっていくのか?が気になってた。一つの話が終わるごとに、2人の関係が明らかになっていく。最後の最後でおぉーとなる結末だったけど、私はもう少しキュンキュンが欲しかったな。

    この物語を読んで、久しぶりに映画館に行って映画を観たくなりました。

  • シネマコンプレックス...略してシネコン。
    ひとつの施設の中に複数のスクリーンを有した映画館である。

    そこで働くスタッフ達のクリスマスイブの一日を描いた連作短編集。

    初めての畑野さんの小説でしたが面白かった。
    何でもない、でも特別な一日を上手く切り取り、最後まで興味をひっぱってくれる手腕に舌を巻いた。

    各短編の主人公は立場も様々。
    それぞれに人間関係や将来に悩みを持ち、働いている。

    過去のある‘事件’のせいで時間が止まったままのオープニングからのベテランの島田さん。可愛い顔でいじられながらも愛されている大学生の加藤くんの秘密。家に居場所がないと感じている主婦の宮口さん...。

    主人公だった人が他の短編では脇役にまわったり、ひとりの人物が他の人の視点から見ると印象や評価がまた違ったり。
    見えるものが違うってすごく大切なことだと思う。

    それぞれの主人公達はクリスマスイブというこの日にある‘決意’を胸に秘める。
    その‘決意’で明るく未来が照らされればいいな、と思った。

  • 【収録作品】フロア/コンセッション/ボックス/ストア/オフィス/フロア・新人/プロジェクション

     お仕事小説。そして、一歩踏みだせなくなっている人たちが踏みだす話。
     立場が変われば視点も変わり、互いの見え方も変わるというわけで、章ごとに視点が変わるのは面白い。

     強いショックや決意を表すのだろうけれども、決まっている就職を蹴るということを軽々しく扱って欲しくないな、と思ってしまう。

  • 働くことって案外楽しい、と思えたのは
    今の仕事に転職してからだ。

    あくまでも個人的な意見だけど
    その重大要素はおそらく興味と人間関係。
    どっちかがだめでもたぶんだめ。

    だけどすごくわかるなと思ったのはこの言葉。
    「嫌いな人がいないわけじゃないけど、
    そういう人が世界を広げてくれる気もする」

  • とある郊外のショッピングセンター内のシネコン。そこで働くフリーター、学生、主婦…語り手を替えながら描かれるクリスマスイブの一日。
    畑野さんの連作短編が好きだ。淡々としているようで、時にググッと心をえぐるような描写も秀逸だけど、連作短編集のテーマ選びも新鮮で、シネコンが舞台というのはなかなかユニークと思った。フロア、コンセ、ボックス、プロジェクションなど、実はシネコンの業務をよく知らなかったと今更ながら思う。同じ映画館と言っても、ミニシアターや名画座とはまた別の施設なのだと、別だからこその苦悩もあれば面白さもある。お仕事小説として、とても興味深く読みました。畑野さん自身がシネコンでのバイト経験があるとのことで、エピソード一つ一つのリアルさに納得です。
    20~30代の登場人物らが抱えるそれぞれの想いにも共感ができる。くすぶる恋愛感情、未来への不安、こんなはずじゃなかったという後悔。業務の忙しさに翻弄されながら、そんな鬱屈した気持がこぼれてくる描写が絶妙で、ああこういう感じわかるなと思う場面多数。フリーターや学生の男女が多い中、30代半ばの小学生ママの章は、仕事復帰したばかりの当時の自分を思い出して胸がキューっとした。
    クリスマスイブの派手さはないけれど、静かに沁みてくる展開が心地よい。登場人物達が様々な角度から描かれているので、最初は「コイツ嫌~な感じ」とイラッとても、読み進めるほどに「そうでもないかも…?」と思えてくる。今度シネコンに行くときは、ボックスからコンセ、フロアまでじっくり観察しそう。従業員の皆さんの見えない努力で、私達は心地よく映画を観ることが出来ているのだな。

  • クリスマスイブ、舞台はシネコン、スタッフたちの一日。章ごとに主人公が変わる短編集。大きな波はないけれど、恋や未来の悩みが綴られる。同じ物事でも登場人物により当然だけれど感情の違いがあり、それが面白く感じました。こういうタイプの人、うちの職場でもいるな〜なんてそういったことでも読み進められました。シネコンの仕事ってこんな風になってるのねっていうのもあり。派手さはないけれど、悪くなかったです。それぞれのその後、続編みたいなのあるといいな。

  • 特に大きな事件もなく、クリスマスの映画館で働く人間模様を描いた作品。

    特に大きな事件はなく、日常なんだけど、そこがリアルで良い。
    同じ1日を複数人の視点から描いていて、そこも良い。
    同じ1日でも、人によって違う1日なんだよなぁ…あたりまえだけど。

    同じ人物も、他人から見たら「いい人」だったり「悪い人」だったり。
    最近 他人の気持ちを考えられない、他人視点に立てない人が多く感じるから、こういう作品を読んで勉強してほしいなぁ。

  • シネコンを軸にそこで働く人たちの物語。
    一人一人の話があっさりしていてサクサク読めます。
    クリスマスにサンタの帽子被るのどこのバイトでもよくありますが、私も嫌だったな笑

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著者プロフィール

1979年東京都生まれ。2010年「国道沿いのファミレス」で第23回小説すばる新人賞を受賞。13年に『海の見える街』、14年に『南部芸能事務所』で吉川英治文学新人賞の候補となる。著書にドラマ化された『感情8号線』、『ふたつの星とタイムマシン』『タイムマシンでは、行けない明日』『消えない月』『神さまを待っている』『大人になったら、』『若葉荘の暮らし』などがある。

「2023年 『トワイライライト』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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