甘露梅: お針子おとせ吉原春秋

著者 :
  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (261ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334923464

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  • 岡っ引きの亭主に死なれ、弔いも早々に息子が所帯を持った。狭い長屋で3人は暮らしが大変だが、かと行ってもう一部屋借りるのも先立つものが。口入屋に針子で働ける住み込みの仕事を探してもらうと、吉原の置屋に住み込みのお針子の仕事があった。

    元々が岡っ引きの女房だったおとせは、金で女を買うそんな吉原になかなか馴染めない。
    引き手茶屋の亭主凧助は元武士の出。おとせのような、まっとうな意見を持つ人を見るとホッとすると言う。

    推量の良さはさすがは岡っ引きの女房。
    おとせはいつしか、いろいろな事件に首を突っ込む羽目にはなるが、花魁にも頼りにされるようになった。

    だが、凧助の女房お浜には目の敵にされる。

    嫌な噂に辛い気分にもなったが、息子に隣の長屋が空いたから帰って来ればと言われ、、帰る気持ちに。

    最後には、一線を引いていたはずの凧助と、老い先のわずかな時期を心安らかに楽しく生きてみたいと、おとせから胸に飛び込む。

    二人とも孫がいるような年。
    愛憎紡がれる吉原で、幸せをつかめず一生を過ごす女郎達の哀愁を覗くたびに、おとせにも涙が溢れる。

    どう生きるのが本当の幸せか?と、一瞬の啓示にすがりつくおとせ。

  • この世には、様々な夢のかたちがある。遊郭で
    お針子として働き始めた町屋の女房が出会った、
    哀しくもやさしい恋。人情味たっぷりの
    「読ませる」時代小説。

  • 2019.1.27
    廓で働くようになったおとせ
    お針子をして勤めている。
    世話焼きで、常識的なおとせは、みんなに信頼されている。
    遊女の事情が悲しい。
    その中で矜持を持ってプライド高く過ごす遊女はすごい。
    言葉やしきたりが美しく、光景が目に浮かぶ。
    老いらくの恋に踏み切り、幸せな老後を過ごし何よりだ。

  • とても面白かった。
    ”みをつくし”を読んでいたから、時代背景やらしきたりやらがすんなり分かった。
    これが初めてだと少し説明が足りないかも。
    この時代吉原にいる女は特に強く感じる。
    それに関わる人間も色んな意味で強い。
    最後の最後がとても良い。
    思い返せば宝物のような日々だろう。
    ありんす言葉は可愛い。

  • 地に足をつけて踏ん張っている主人公の周りに、吉原故の終わりの見えている悲しい物語が巡っている。主人公の幸せと、それが、繋がっているのに、余所事のようで、なんだか割り切れないのだけれど、人の幸せって、そういうものなのかもしれない。

  • もちろん江戸時代で過ごしたことなんてないけれど、吉原の情景や江戸時代に生きた人たちがキレイに頭に浮かびました。
    なんていうか、「ああ、こんな感じだったのかな」と。

  • 遊郭でお針子として働くおとせの周りで起きる様々な人間模様を丁寧に描く。最後は妻子持ちの男と一緒になる道を選ぶという、通常では考えられないエンディング

  • 辛過ぎず、悲し過ぎず、人間が生きていくのはこんな感じかな。時代小説だからか、人情味も嫌味なく読める。

  • 甘くて切ないキュンと胸を鷲掴みされたよ。

  • 岡っ引きの夫に先立たれた町家の女房、おとせ。時を同じくして息子が嫁を迎えたため、自分は手狭な家を出ることに。吉原で住み込みのお針子となったおとせの前には、遊女たちの痛切な生の営みがあった。さまざまな恋模様、その矜持と悲哀。そして自身にもほのかな思いが兆しはじめ……。今宵ひと夜の夢をのせて、吉原の四季はめぐる。哀切の傑作時代小説!

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著者プロフィール

1949年函館生まれ。95年、「幻の声」で第75回オール讀物新人賞を受賞しデビュー。2000年に『深川恋物語』で第21回吉川英治文学新人賞、翌01年には『余寒の雪』で第7回中山義秀文学賞を受賞。江戸の市井人情を細やかに描いて人気を博す。著書に『十日えびす』 『ほら吹き茂平』『高砂』(すべて祥伝社文庫)他多数。15年11月逝去。

「2023年 『おぅねぇすてぃ <新装版>』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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