逃避行

著者 :
  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (278ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334924157

感想・レビュー・書評

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  • 犬も家族

  • 隣の子どもを噛み殺してしまったレトリバーと主婦が家族を捨てて逃げるお話。
    追いつめられて行く感じでどんどん読み進めてしまう篠田さんの安定の文章力。
    いつもながら、色んな物事の裏と表を考えさせられるストーリーとなっています。
    私は動物は大好きだけれど、ストーリーとは関係なく、この先ペットを飼うという事はもうしないと思います。

  •  ゴールデンレトリバーの愛犬・ポポが、隣の家の男の子を噛み殺してしまった。再三注意していたにも関わらず庭に忍び込みイタズラを繰り返し、ポポの鼻先で爆竹を鳴らした故の出来事だったので刑事責任は問われなかったのだが、マスコミの報道や世間では悪者はあくまでも犬と飼い主だった。夫や娘達も誰も味方になってかばってくれない、このままではポポは処分されてしまうと悟った主婦・妙子はポポを連れて逃げることを決める。

     主人公がポポを処分できない気持ちはもちろんわかる。しかしそこで、50を過ぎた仕事も無いただの主婦が旦那のヘソクリを持って犬と逃避行というのはあまりにも現実的でない。それでうまくいくなんてやはり小説か・・・と最初は思っていたのだが、そんな甘い話では決してなかった。行く先々でニュースを知る人々に追われるのは当たり前にせよ、ポポの野生化(野獣化?)に拍車がかかって悩まされる妙子。ポポの描写ではそれこそ鳥肌が立つようなショッキングなシーンもあってびっくり。本当に犬がここまで変貌するものなのか?わからないが、ポポが完全に”善”の立場で物語が進まないところが著者らしいなぁと思った。どういう着地点におさまるのかと思ったが、そこにも少し意外性あり。まさか○○○○○○○○○なんて。切ないだけでなく、現実も思い知らされるリアルな話。

  • 私は今33歳です。まだなのかもうなのか時と場合によって気持ちは変わります。でももっと若い頃から年をとることに不安を感じることはありました。今回この本を読んで私が年を重ねることで1番不安に感じるのは何よりも独りぼっちになってしまうことなのだと思いました。そう思う私には例え愛犬と一緒であっても妙子の生き方はとてつもなく寂しく悲しいものに感じました。私が動物を飼ったことがないのでそう思ってしまうのかもしれませんけど。でも妙子が家を出たいと思う気持ちは良く分かります。もう少し夫との間にコミュニケーションが取れていたら違ったのかもしれませんがもはや夫は誰よりも自分を理解してくれている存在ではありませんでしたからね。最後まで何となく寂しさを覚える作品でした。妙子が出て行った後の家族の様子を知りたいなと思いました。

  • 2007年読了。

  • 一気に読めました。妙子に共感できるかどうかは別として、そういう人生もありかな、と思います。

  • 子供のいたずらにおびえてその子をかみ殺してしまった犬とその買主の女性の逃避行。法的に悪いことをしたわけではないけれど事故のあまりの重さに逃げ出してしまった1人と1匹。つらい逃亡生活のお話で読んでいて苦しくなってしまいました。結末も悲しくてせつないお話です。

  • 愛犬とともに、家庭から世間から逃げ出した中年女性の行く先は…

  • とある事件をきっかけに愛犬と逃避行を始める中年主婦。
    全体的な話は面白かったのですが、事件・家族との関わり・逃亡先での隣人との関係・愛犬の変化、どの項目をとっても内容が薄いような印象を受けました。子供もいなく、犬を飼ったこともない私にとっては、作者が伝えたかったことが100%読み取れたか...。

  • 彼女の作品は好きなので、新作が出るたびに読むようにしています。

    これは女性誌に連載されていた物を一冊にした作品。
    帯びを見れば少しだけ『逃避行』の意味がわかります。



    物語は、ペットショップで不細工な為処分寸前のゴールデンレトリバーを買うことで始まります。
    顔は悪いけど、性格は良く、人に危害を加えるような犬ではなかったのに、隣家のいたずら坊主の度重なる悪戯から事件が起きてしまいます・・・



    彼女の作品は決して、一筋縄ではいきません。
    読んでて全く退屈しないのです。

    驚くのは、その題材が多岐に渡っている事。

    だから彼女の作品が好きなのです。



    彼女の作品で一番好きなのは『ハルモニア』これはドラマにもなりましたね。
    あのドラマからエルガーの愛の挨拶が大好きになりました。
    HPでも、とっておきの時のBGMに使っています。



    この本を読んで、犬と暮らしたい病がさらに悪化してしまいました。
    独身時代にはいつも一緒に暮らしていた犬と、住居環境などから結婚してから一緒に暮らしていません。

    上の娘も二十歳・・この家にいる間に、犬と暮らす暮らしを知ってもらいたい・・

    この本は動物と暮らすことによるプラス面とマイナス面をともに知らしめるようなところがありました。
    いいことばかりじゃない、大変なこともあるんだぞ・・さあ、どうする?


    GOサインを出してくれたような気がしています。

著者プロフィール

篠田節子 (しのだ・せつこ)
1955年東京都生まれ。90年『絹の変容』で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。97年『ゴサインタン‐神の座‐』で山本周五郎賞、『女たちのジハード』で直木賞、2009年『仮想儀礼』で柴田錬三郎賞、11年『スターバト・マーテル』で芸術選奨文部科学大臣賞、15年『インドクリスタル』で中央公論文芸賞、19年『鏡の背面』で吉川英治文学賞を受賞。ほかの著書に『夏の災厄』『弥勒』『田舎のポルシェ』『失われた岬』、エッセイ『介護のうしろから「がん」が来た!』など多数。20年紫綬褒章受章。

「2022年 『セカンドチャンス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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