臨場

著者 :
  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (329ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334924294

作品紹介・あらすじ

臨場-警察組織では、事件現場に臨み、初動捜査に当たることをいう。`終身検視官'の異名を持つ倉石は、他の者たちとは異質の「眼」を持っていた。`終身検視官'、死者の人生を救えるか-。組織と個人、職務と情、警察小説の圧倒的世界。

感想・レビュー・書評

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  • 2020/11/30読了
    #このミス作品55冊目

    終身検視官と噂される倉石が
    主人公の警察小説。短編8作品。
    いずれの作品も濃厚な傑作で
    正直肉付けして其々の作品として
    出版できるのではという上質。
    とても面白い。

    • ことぶきジローさん
      光文社文庫から『臨場スペシャルブック』も刊行されています。『臨場』未収録の短編も掲載されています。現在は絶版かもしれませんが。
      光文社文庫から『臨場スペシャルブック』も刊行されています。『臨場』未収録の短編も掲載されています。現在は絶版かもしれませんが。
      2020/11/30
  •  「こちら〇〇警察署です。事件ですか事故ですか?110番通報をすると一番先に問われる。事件性が確認されれば、いち早く現場へ急行するのは機動捜査隊だ。
     
     警察小説を読むと必ず機捜(鑑識)が登場し刑事が主役になるが、この作品は検視官が主人公になっている。変死体が見つかった場合は、「検視官」が臨場する。組織上の名称であり、資格が存在するわけではないそうです。

     物語は、L県警本部刑事部捜査一課を中心に八篇の短篇で構成され、赤い名刺、眼前の密室、鉢植えの女、餞、声、真夜中の調書、黒星、十七年の蟬、に分かれています。初動捜査の要というべき鑑識の検視官の役割は大きく、決断の間違いで他殺と判断したら、多くの捜査員を動員することになります。逆の場合は、犯人を野放しにしてしまう。

     巡査を拝命以来、鑑識一筋の目利きにかけて倉石義男は、歴代検視官の中でも図抜けているという。倉石が警視に昇任して丸七年で、上司にあたる人にとっては煙たいと感じる場面もある。人事権を持つ倉石の上司は配置換えを考えるのも確かだ。倉石の鑑識の部下たちは専ら「校長」と呼んでいる。倉石より先に現場に到着した刑事が、死体を見て自殺に違いないと思っていても、倉石にかかれば他殺と断定することもあり、的確な判断は敵わない。しかし、倉石は鬼ではない。警察官にとって義理人情は禁物だが、部下に対して技術や技量、人徳も兼ね備えていてるから「校長」と呼ばれる。刑事の中で暗黙の了解事項は倉石の暗い過去で、倉石自身の信念で警察官であり続けているのだと思う。

     短篇の物語は、どれも面白いが、僕が一番好きな物語は「餞」でした。
     読書は楽しい。

  • 開いた最初の数行でもう惹きつけられる。読みながらも先に先に進みたくてもどかしくなる文章。
    ドラマから先に入ったけれど、原作の人物像は映像に負けないくらいのインパクトと実在感があって、人間臭く、生臭く、弱さが見えて愛おしい。それぞれの人生を生きている懸命さと悲哀があるから、短編でもずっしりと重みを感じる。科学の粋による解決ではなくて、主人公の圧倒的な知識と経験を基にした勘がハマって事件の本質が透けてくる。「十七年蟬」だけは無理やり嵌めた感じがして違和感があるが、それ以外は全てよかった。

  • TVドラマ化されてまふ。
    短編集でサクッと読めまふ。

  • 奥さんが観ていたTVドラマに興味が惹かれて元の短編集を読んだけどなかなか秀逸でした!槍のような細い身体と鋭角な顔付きという設定の終身検視官の異名を持つ倉石義男に纏わる8編の短編集。各40頁前後の短編ですけどとりわけ日本的な機微の濃い短編「餞」と「黒星」が印象に残りました♪
    やはりTVドラマよりは原作が勝りますよ。

  • 「半落ち」は正直おもしろくなかったが、これはよかった。短編集。キャラクター設定がむちゃつよい倉石検死官が主役で、キャラクターだけでつっぱしることができるところを、きちんとほぼ毎回謎解きも踏めた展開にしているのは大変よい。「鉢植えの女」は、長編で読んでもいいんじゃない。読んでよかったです。

  • 横山秀夫の本は『半落ち』『64』以来の3冊目。キャンプ中のハンモックで揺られながら、小気味のいい短編ミステリを堪能した。いや、ミステリというよりも人間ドラマに趣が置かれているのか、主人公の倉石を囲む刑事たちに、新聞記者の妻・智子や美鈴ママの軽妙なキャラクターに、魅了される。続編があるのか、いやあるだろう。死相の表れた主人公がどんな生き方を全うするのか、気になるんだから。

  • 死体は死んでいるのであって(当たり前だけど)、その死に方が自殺か他殺かの判断が初動で起こる。
    単純でシンプルで明確な違いであるにも関わらず、そこが重要なポイントであり、スタートがずれるとボタンの掛け違いのように、ずれは大きくなっていく。
    正確性が当たり前とされる世界で、極限にまで死者の世界に近づいた倉石は、もはや生と死の境目を超え、生と死の分水嶺に立つ孤高の存在である。
    会話だけで一節を成り立たせたり、サゲをきっちり決めたり、さすが横山秀夫氏と感心する話であるが、普通の人間が立ち入ってはいけない世界の孤独と、倉石の最後に残っている人間味で孤高を表現されており、解脱した一人の人間の姿を、そこにはたどり着けない第三者の視点から描き出す。

  • 横山先生の短編は本当に面白いですね!
    全ての登場人物に事情があり、隠したいもの、探しているもの…、
    それらが明るみに出ることで事件の真相が見えてきます。
    特に「餞」には胸が熱くなりました。
    小松崎さん、よかったなぁ…。
    「黒星」も、部下のことをそこまで考えてくれるのかと、
    優しい倉石さんに惹かれました。

    他の作品では二渡や楠見が好きなのですが、
    倉石さんのような刑事も格好いいですね。

  • ドラマ『臨場』の原作。まさか短編しかないシリーズだとは思いませんでした。
    スーパー検視官の倉石さんはホームズ的「探偵」で真犯人をすぐに見抜いてしまうため、語り部は脇役の人々です。ドラマを見ていなかったら、同じキャラクターが出ていることに気がつかなかったかもしれません。
    倉石さんの不器用な優しさが心にしみます。
    ドラマ化に当たって続編が4本収録された『臨場スペシャルブック』も読みたいですね。

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著者プロフィール

1957年東京生まれ。新聞記者、フリーライターを経て、1998年「陰の季節」で松本清張賞を受賞し、デビュー。2000年、第2作「動機」で、日本推理作家協会賞を受賞。2002年、『半落ち』が各ベストテンの1位を獲得、ベストセラーとなる。その後、『顔』、『クライマーズ・ハイ』、『看守眼』『臨場』『深追い』など、立て続けに話題作を刊行。7年の空白を経て、2012年『64』を刊行し、「このミステリーがすごい!」「週刊文春」などミステリーベストテンの1位に。そして、英国推理作家協会賞インターナショナル・ダガー賞(翻訳部門)の最終候補5作に選出される。また、ドイツ・ミステリー大賞海外部門第1位にも選ばれ、国際的な評価も高い。他の著書に、『真相』『影踏み』『震度ゼロ』『ルパンの消息』『ノースライト』など多数。

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