思いわずらうことなく愉しく生きよ

著者 :
  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (396ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334924355

感想・レビュー・書評

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  • 江國香織作品を読むのはもう何年も前に読んだ『神様のボート』以来。江國さんの書く文章はとても優雅で、思わず紅茶とスコーンを食べながら読みたくなってしまうような感じ…
    と思っていたら、この作品は思った以上に扱っているテーマは重めで、結構しんしんと読みました。

    暴力を振るう夫と決別できない長女。
    愛する恋人がいても自由奔放に生きたいバリキャリな次女。
    複数の男性と肉体関係を結ぶことがやめられない三女。
    それぞれがそれぞれに女の人の人生の複雑さ、煩わしさ、宿命みたいなものを三姉妹が背負いすぎていて、特に麻子(長女)のシーンは読んでいてとても辛かった。個人的には三姉妹全員「理解はできるけど共感はできない」みたいなキャラクターだったので、いまいち物語には没入できないまま終わってしまった(自分の人生経験の足りなさもあるのかもしれない)
    でもやっぱり江國さんの書く文章はとても煌びやかで素敵だった。また他の作品も読みたいなあ。

  • 三姉妹
    DV夫
    二番町の家
    潔く健やか
    豚の角煮
    酒豪

    久しぶりに再読
    日常の場面場面がおしゃれ
    スーパーでの買い物場面が特に
    帯にある長女の言葉「そばにいるときよりも離れているときに、結婚はその効果を発揮する」に妙に納得

  • すごくよかった。
    「わたしたちはのびやかすぎるのよ」っていう言葉が、すごくツボ。

  • 手に取ったきっかけは、タイトル。
    思い煩っていた。

    側から見ればチグハグなようで、けれど視点によっては筋が通っていて、避けたと思えば近づいていて、自分には見えず、他人には丸見え。登場人物みな、砂地で足をとられたように生きているようでした。そしてそれは、本の「外側」の自分も。周りも、誰しも。自覚があっても、そうでなくても。時に素直で、時に裏腹で。

    初めて読んだ作品であるが、おそらく、人生の経過によって人物への印象が大きく変化するのだろう。大抵の物語がそうであるかもしれないが、行動の裏にある思惑や動機が見えるようになっているかで深さが変わる面白さ。表面でさらりと読み流してしまえばそれで済ませることもできる、興味深さ。登場人物の誰に心を動かされるかも、人によって違うんだろうなと想像する。これがもうひとつ楽しみになる。

    自分なりに味わって愉しんだあとはいつも、作家って…なんていうか…すごいなぁ…と思わずにはいられません。最終的には、途端にシンプルすぎる表現しかなくなってしまいます。ジャズを流しながら、余韻にひたろうと思いました。

  • 長かった…。面白くないわけではない、文体が重厚なわけでもない、内容の理解に困難なわけでもない。ちょっとずつ読んでいたとはいえ一か月もかかったのは、現実離れしているのにどこか現実的すぎるからかも。前半のどこかふわふわした「物語っぽい」感じと、後半のヘビーな内容を“言い訳なしに”書けるところが江國さんの持ち味なんだな、と本書でやっと感じた。

  • この3姉妹のお話、ちょっとしんどかった。

  • (以前に読んだので記憶違いがあるかもしれない)

    出てくる男性はロマンティストが多い。
    女性はリアリスト。

    女性の容姿については説明がない。
    思い思いの魅力的な女性を思い浮かべて欲しいとの願いだろう。
    言うなれば女性の代弁者としての三姉妹と母、そして
    そこに関わる女性たち。
    と受け止めていい。


    実際この小説がそうだと言うよりも現実に男性はロマンティックで
    女性のほうが現実主義だ。

    この小説は三姉妹と母を中心に女性が自由に生きるには
    あんまり楽じゃないことを示唆してる。

    特によく稼ぎよく遊ぶ次女・治子は女性に疎まれて陥れられる。
    そして最愛の熊木と別れることになる。

    熊木が治子の不貞を意に介さなければ問題はなかったが
    そうはいかなかった。
    大抵の男は熊木のように落胆し別れを考えるだろう。

    それに治子が熊木どのように愛し、どれほど愛していたかは
    態度には出ていても丁寧な説明はなかった。
    そしてその説明があったとしても熊木は別れていたろう。

    唯一、治子と熊木の関係が上手くいくとするなら
    熊木が治子の性生活に全く頓着しない事だった。
    それはかなり難しいことなので、劇中も関係が破綻した。

    (TV版ではよりが戻るが、もう治子が浮気をしないも
    熊木が何を許したのかもよくわからない形で終わっている。)

    原作では三女・育子だけがハッピー・エンディングだった。
    しかし最初から最後まで観察者というスタンスは変わっていない。

    (TV版では恋慕する)

    男性の態度について
    心も体も興味があって興味のままに
    関係を重ねるという、クールな三女。

    イージーであったり自堕落な男との、自由な関係が多い。
    真面目でかしこまった男との出会いに
    次第に変化していく。
    それも手順を重ねるという男の律儀さに興味が惹かれているだけで
    恋をするかはまだ先の話のようだった。

    次女治子は運がなかった。
    三女育子は運が良かった。
    運が良かったから新しくとても興味をそそられる男性と知り合えた。
    (ちょっと運が悪ければ浮気相手と出くわしてご破算になりそうだった)

    次女治子はその奔放さは三女と大差ないが、浮気相手の奥さんに憎まれ、
    陥れられた。
    三女育子もいずれはそうなるかもしれない。そうならないかもしれない。
    ただ、今はうまくいっている。

    この小説の主題はタイトル通りだけど
    示されているのは、それほど上手くいかないという現実。
    だからといって避けようと言いたいわけでもないだろうし
    どうにかしたい、どうにかしようと言いたいのだと思う。

    男のロマンティシズムを面白いとも可愛いともおもいつつ
    結局それを裏切ってしまうから男は離れる。
    そこを見越してあまりその辺に重きを置かないことが肝要なんだろうね。

    これは女と男を入れ替えても同じ事になるのだろうか。

    リアリストとロマンティストのせめぎあい。
    そして規範意識を何処まで取り入れるか
    自由に振る舞うのは何処まで取り入れるか。

    支配と被支配。
    セックスをどう扱うか。
    自由と束縛。
    感情の変化と肉体の変化。

    話せばわかる。とはなかなかいかない恋愛と人間関係。
    僅かな希望は未来があることだけど
    本当にそれが希望かというのもその人次第で、その時次第だと
    物語はいう。

  • NHKでドラマ化されるとのことで、再読しました。3姉妹とその夫、彼氏、男友達の話。久々の江國さんの作風や雰囲気に心地良かった。以前読んだ時の印象とは全く違っていたし、暴力のところなど淡々と冷静に書かれている分、恐かった。

  • 長女、麻子:暴力をふるう夫を愛し、ずっと一緒にいたいと思っている。専業主婦。
    次女、治子:色々な男と愛し合い、今は熊木と同棲中。さばさば、感情的な性格。キャリアウーマン。
    三女、育子:教習所の受付係。「愛」とは「生きる」とは、の意味を模索して、特に「愛」については体のみの関係にしか至らない。自由奔放。

    3人姉妹と離婚した両親の、不思議に強く、でも遠い関係。

    次女を除く2人は自分の好きなように行動しているようであって、流されているだけのような気もする。
    次第にそれに気付き、自分の意志で進むべき道を見つけていく様子が良い。
    育子は危なっかしいけどかわいいなぁ。

  • 面白かった。
    全然違うけど、共感もできる。
    「のびやかすぎる」という表現がすごく好きだなと思った。
    自由に生きているようで、それぞれが抱えている家族へのこだわりとか、不安定さも描かれていて。
    江國香織さんは何冊か読んでいるけど、1番好きかもしれない。
    自分が3姉妹だからかも。

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著者プロフィール

1964年、東京都生まれ。1987年「草之丞の話」で毎日新聞主催「小さな童話」大賞を受賞。2002年『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』で山本周五郎賞、2004年『号泣する準備はできていた』で直木賞、2010年「真昼なのに昏い部屋」で中央公論文芸賞、2012年「犬とハモニカ」で川端康成文学賞、2015年に「ヤモリ、カエル、シジミチョウ」で谷崎潤一郎賞を受賞。

「2023年 『去年の雪』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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