さすらいの舞姫 北の闇に消えた伝説のバレリーナ・崔承喜

著者 :
  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (904ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334927202

作品紹介・あらすじ

1970年代初め、雑誌編集者だった「わたし」は、文豪川端康成のふとした一言から崔承喜というバレリーナの存在を知る。以来三十有余年、物書きとなった、「わたし」は、川端が激賞してやまなかった彼女にあらためて興味を持つ。承喜は1926年(大正15年)、10代半ばにして、日本の統治下にあった朝鮮半島から日本へ。日本近代バレエの創始者石井漠の秘蔵の弟子となり、やがて世界的に知られる存在となる。太平洋戦争終結後、マルキストだった夫と共に北朝鮮に渡った彼女は、金日成の寵愛を受けて出世するも、粛清の嵐に巻き込まれて北の闇に消えた。「わたし」はその足跡を追って歴史の迷宮に分け入った-。世界で名を轟かせながら、人々の記憶から消し去られてしまった実在の人物の謎に迫る超大作。

感想・レビュー・書評

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  • 1930年代から40年代にかけて名声を得たモダンバレエの伝説的名ダンサー、崔承喜をモデルにした小説です。日本統治下の朝鮮半島出身者として、名声が高まるとともに波乱に満ちた人生を歩まざるを得なかった悲劇の女性です。著者は精力的な調査に基づいて、基本的な事実関係は正確に踏まえて書いていると思われますが、登場人物の心理描写などはあくまでも小説です。
    それにしても、崔承喜さんのまともな記録、特にその全盛期の踊る映像が残っていないのは大変残念です。

  • 直木賞作家西木正明氏が第二次世界大戦前後に活躍し、そのご消息を絶ったというバレリーナ崔承喜さんの数奇な運命を丁寧に描いた作品「さすらいの舞姫」を読了。丁寧な取材による実の積み重ねと歴史資料とそれを映像を見ているかのように感じさせる著者の筆力とによって完成された戦前戦後のバレリーナがたどった栄光の道と哀しい結末の物語は、崔承喜という名を一度も聞いた事が無い人も静かな感動を得る事が出来ると思う。彼女のバレーの師匠はかの自由が丘駅の由来に関係する二人の明治の男のうちの一人石井漠舞踊研究所の所長石井漠氏(もう一人は自由が丘学園の創始者手塚岸衛氏)で、彼の人生もそうとうに面白いのだが、この小説ではそこには踏み込まずに、崔承喜さんとその家族に焦点を当ててている。それだけでも900ページを超える大作なのだが。朝鮮半島分断の歴史も深く学ぶ事が出来、人々の利益とはまったく別に蠢く政治家達の恐ろしさも感じる事が出来る作品となっている。一読の価値ありです。

  • 断捨離本、2013春。

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著者プロフィール

1940年秋田県生まれ。出版社の雑誌編集を経て、作家活動に入る。88年『凍れる瞳』「端島の女」で直木賞、95年『夢幻の山旅』で新田次郎文学賞、2000年『夢顔さんによろしく』で柴田錬三郎賞を受賞。

「2011年 『ウェルカム トゥ パールハーバー(下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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