- Amazon.co.jp ・本 (803ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334927837
感想・レビュー・書評
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死をタブーととらえるか、一種の救済ととらえるかによって
死体の定義も、吸血鬼の定義も
さらには人間の定義も180度変わってしまう
そして、それぞれの定義を司る神々を
共倒れさせようとする人間もいる
ところでオイディプス症候群は吸血鬼にも感染するのか?詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
秋葉原ブックオフにて購入。十部作後半戦の緒戦たるこの6作目にして遂にイリイチ御大のご尊顔(横顔のみだが)とお声を拝むことができ、物語が佳境に入ったことを感じずにはいられない。一作につき一哲学者という従来の展開を覆し、ラカンとクリステヴァを向こうに回すというゴージャス感もナイス。思想戦とミステリパートの乖離は確かに顕著だが、本編の現象学探偵がアレな態度で事件に臨む以上、むしろ力業で融合を図らなかった点をこそ評価すべき。終盤絡みで『黒い仏』に言及している書評を見かけたけど、宜なる哉。こういうテイスト大好き。
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何年も何年も待ち続けた作品。
読了すると、たった800ページしかないのか…と切なくなる。
今回の思想対決は、いつもより難しく思えた。所々ただ文章を読んだだけという箇所が結構あった。
難しいのはいつもだけと、再読しながら少しずつ理解していくのがこのシリーズの常なので、難しいのもまた味だ。
今回、一番面白かったのは、第六章“否定の神学”かな。
カケルの“男の現象学的意味と女の本質”の話はとても面白い。
前にも出てきた『むきあい』『ならびみ』『わたしみ』の話は、前回よりも、今回の方が上手く話に乗っかってて、わかりやすかった。
“男も女もない、存在するのは母と子だけだ”
この章の後半、カケルとルブリョフの否定神学の話から、『サマー・アポカリプス』のシモーヌの思想が重みを増したのも興味深かった。
“神は存在しないと思いながら神に祈らなければならない”
シリーズを読み進めて行くと、前の作品を更に深く読めるようになる。だからまた最初から読みたくなる。読む度に、新しい発見がある。
だからこのシリーズはやみつきになる。このシリーズを愛してやまない理由はここにある。
ま、最後に、バートリ・エルジェベト出てきちゃって、『あれ?』って思ったのは確かなんだけど(笑)