吸血鬼と精神分析

著者 :
  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (803ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334927837

感想・レビュー・書評

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  • 死をタブーととらえるか、一種の救済ととらえるかによって
    死体の定義も、吸血鬼の定義も
    さらには人間の定義も180度変わってしまう
    そして、それぞれの定義を司る神々を
    共倒れさせようとする人間もいる
    ところでオイディプス症候群は吸血鬼にも感染するのか?

  • 秋葉原ブックオフにて購入。十部作後半戦の緒戦たるこの6作目にして遂にイリイチ御大のご尊顔(横顔のみだが)とお声を拝むことができ、物語が佳境に入ったことを感じずにはいられない。一作につき一哲学者という従来の展開を覆し、ラカンとクリステヴァを向こうに回すというゴージャス感もナイス。思想戦とミステリパートの乖離は確かに顕著だが、本編の現象学探偵がアレな態度で事件に臨む以上、むしろ力業で融合を図らなかった点をこそ評価すべき。終盤絡みで『黒い仏』に言及している書評を見かけたけど、宜なる哉。こういうテイスト大好き。

  • 矢吹駆シリーズ

    ルーマニアから亡命してきた将軍チモチュフェ中将の殺害事件。現場に残された「D・R・A・C」の文字。捜査に当たるモガール警視。同時に起きる「ヴァンピール」事件。被害者の女性は身体の血を抜かれての死。「ミノア島」事件の後遺症により精神科医の治療を受けるナディア。ルーマニアからの亡命者で元体操選手タチアナ。タチアナとともに亡命したコーチ・ルブリョ氏。チモチェフ殺害の影にあらわれるルーマニアの諜報部隊とニコライ・イリイチ・モルチャノフ。

     2011年11月6日読了

  • 何年も何年も待ち続けた作品。
    読了すると、たった800ページしかないのか…と切なくなる。


    今回の思想対決は、いつもより難しく思えた。所々ただ文章を読んだだけという箇所が結構あった。
    難しいのはいつもだけと、再読しながら少しずつ理解していくのがこのシリーズの常なので、難しいのもまた味だ。


    今回、一番面白かったのは、第六章“否定の神学”かな。

    カケルの“男の現象学的意味と女の本質”の話はとても面白い。
    前にも出てきた『むきあい』『ならびみ』『わたしみ』の話は、前回よりも、今回の方が上手く話に乗っかってて、わかりやすかった。
    “男も女もない、存在するのは母と子だけだ”

    この章の後半、カケルとルブリョフの否定神学の話から、『サマー・アポカリプス』のシモーヌの思想が重みを増したのも興味深かった。
    “神は存在しないと思いながら神に祈らなければならない”


    シリーズを読み進めて行くと、前の作品を更に深く読めるようになる。だからまた最初から読みたくなる。読む度に、新しい発見がある。
    だからこのシリーズはやみつきになる。このシリーズを愛してやまない理由はここにある。


    ま、最後に、バートリ・エルジェベト出てきちゃって、『あれ?』って思ったのは確かなんだけど(笑)

著者プロフィール

作家・評論家。1948年東京生まれ。
79年『バイバイ、エンジェル』でデビュー。98年編著『本格ミステリの現在』で第51回日本推理作家協会賞評論その他の部門を受賞。2003年『オイディプス症候群』と『探偵小説論序論』で第3回本格ミステリ大賞小説部門と評論・研究部門を受賞。主な著作に『哲学者の密室』『例外社会』『例外状態の道化師ジョーカー』他多数。

「2024年 『自伝的革命論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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