- Amazon.co.jp ・本 (803ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334927837
作品紹介・あらすじ
パリ市東部に位置するヴァンセンヌの森で女性の焼屍体が発見された。奇妙なことに、その躰からはすべての血が抜かれていた。続いて、第二、第三の殺人が起こり、世間では「吸血鬼」事件として注目される。一方、体調不良に悩まされていた女子大生ナディアは友人の勧めで精神医のもとを訪れる。そこでタチアナという女性に遭遇し、奇妙な依頼を受ける。各々の出来事が、一つの線としてつながったときに見えてくる真実とは…。ナディアの友人である日本人青年が連続殺人の謎に挑む。本格探偵小説「矢吹駆」シリーズ第6作。
感想・レビュー・書評
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矢吹駆シリーズ第6作。相変わらず分量的にも内容的にもすごいボリュームで、もはやミステリというより学術書。
女性が血を抜かれて殺されるという連続殺人にモガール警視をはじめ警察が翻弄される中、ナディアは前回の事件の後遺症に悩まされて精神医のもとを訪れる。そこで知り合った少女に奇妙なことを頼まれたことから、彼女も事件に巻き込まれ…
ラカンをモデルにした精神分析、ルーマニアのドラキュラ、キリスト教義などさまざまなピースが組み合わさって複雑な話を織り上げているが、もう少しシンプルに書いてくれないものか…と思うのはこちらが年をとったからだろうか。
今回はカケルの出番も多いし、イリイチもチラッと登場。ラストの黒幕(?)には驚いたが、ムーミントロールの存在感が(ストーリー上)すごいのにはちょっと笑った。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
鏡像段階
シニフィアン/シニフィエ
装飾殺人
現象学
精神分析
母子論
オイディプスコンプレックス
アブジェクシオン(棄却)理論
ヨブ記
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好きな人はすごく好きな内容だと思う。
あまりにも講義のページが長くて私には合いませんでした。 -
今回はジャック•ラカンとジュリア•クリステヴァ。浮世離れした観念的議論ばっかりしてるカケルは毎度楽しそうでうらやまけしからん・・・というだけじゃなくて、猟 奇連続殺人事件の謎解明へと繋がっていく。過去作のような強烈な論敵がいないからイマイチ盛り上がりに欠けるが、思弁的な内容でリーダビリティが高いのは単純 にすごいし、地母神信仰のメタファーに吸血鬼もってくるとは恐れ入った。それはそうと前からちょっと 思ってたことだけどイリイチって若干ドジっ子属性あるように思う
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事件はテンポ良く起きるんだけど、どうも進まない。
飛ばし読みしようかと思ったけど分量が多いので挫折。
読んだのは1/5程度。。。
難解すぎたかな。私の気力が足りなかった。
評価は高いので自分が残念!! -
頑張って読破
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読了感満載。何度か理解不能に陥りましたが、今回も多くのことを学ばさせて頂きました。もはや学術書。想像するに難い笠井さんの知的情報量。
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いやぁ、読んだ!
哲学と宗教学と精神分析学の蘊蓄が凄い。これに耐えられなきゃ、この本は読めない。 -
『オイディプス症候群』でひさびさに復活した矢吹駆(カケル)とナディア・モガールが送る哲学ミステリー。怪異な要素を多分に帯びた連続殺人事件を現象学を駆使した「本質直観」よって解明するというスタンスは変わらないものの、『哲学者の密室』で極点に達した実存を巡る差し迫った危機感は和らいでおり、安心してページをめくることができる。題名から明らかなように、本作ではこれまで笠井潔が固執してきた観念論から距離を置き、身体論に重きを置く心理学に焦点を当てている。フロイト、ラカン、クリステヴァなどを批判的に検証することで、「神とはなにか」という命題に迫ろうとしている。そもそも現象学やそこから派生した実存主義も、コリン・ウィルソンが指摘しているように生々しい身体論に行き着くように思う。カケルの宿敵であるイリイチが『オイディプス症候群』でHIVに感染したという設定を複線として、笠井潔がどこに論点をもっていくのか。免疫疾患とは異物を「異物」と認識できない状態であり、他者性が曖昧になるという視点から、いろいろ転回できるように気がする。
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タイトルからして奮っているので、シリーズ未読ですが手に取ってみました。
さあ果たしてどう絡めてくるのかとわくわくしながら読み進めてましたが、うーん…難解な言い回しはしているけど、理解は表面的で通俗的な思いこみの域は脱してないような印象。私は分析派ではないし、ラカンは好みではないのもあるかもしれないけれども。
小説ではなく教科書書き写したものを読んでいるみたいで、端的に言って面白くない。
例えば同じように分析を語っていた京極さんの狂骨なんかは、そのものの専門用語使ってなくても本質的にしっくりくる感覚があって、物語に上手く落とし込めてるなあと思うんですが。 -
今回はジャック・ラカンを中心にした精神分析に、矢吹駆が挑みます。今回は現象学的推理がスムースに適応できず、どうなる事かと思いました。最後の犯人との対決部分のオチはちょっとびっくりしましたが・・・
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少し推理部分が冗長
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死をタブーととらえるか、一種の救済ととらえるかによって
死体の定義も、吸血鬼の定義も
さらには人間の定義も180度変わってしまう
そして、それぞれの定義を司る神々を
共倒れさせようとする人間もいる
ところでオイディプス症候群は吸血鬼にも感染するのか? -
秋葉原ブックオフにて購入。十部作後半戦の緒戦たるこの6作目にして遂にイリイチ御大のご尊顔(横顔のみだが)とお声を拝むことができ、物語が佳境に入ったことを感じずにはいられない。一作につき一哲学者という従来の展開を覆し、ラカンとクリステヴァを向こうに回すというゴージャス感もナイス。思想戦とミステリパートの乖離は確かに顕著だが、本編の現象学探偵がアレな態度で事件に臨む以上、むしろ力業で融合を図らなかった点をこそ評価すべき。終盤絡みで『黒い仏』に言及している書評を見かけたけど、宜なる哉。こういうテイスト大好き。
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ふうっ、長かった。
因縁と宗教と精神分析。理屈っぽくて、横溝正史っぽいおどろおどろしさと、ほんの少しの胡散臭さ。 -
待ちに待ってた矢吹駆シリーズ六作目。相変わらず分厚い……ミステリーとは離れた哲学・神学的パートの方が多く、これまで読んできた中で一番、途中目が滑るまま読み進めてしまった。それでもお話の動きが青銅の悲劇の時よりも好みで(青銅の悲劇が個人的に非常にアレだったので、その後出てきたこの作品が大丈夫なのか実は不安だった)、一気読み出来る面白さがあって良かったなと。なので★は4つくらいで。
最後にきた「!?」となる仕掛けがあまりに不意打ちだったのだけど、小説だしな……と思いつつなんとか飲み込んだ。あと相変わらず、駆と一緒の時のナディアは可愛く思えて癒しだった。
既に連載は終わっているという次の「煉獄の時」の単行本化が楽しみです。 -
2012/02/05読了
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哲学の装飾を剥ぎ取ってもミステリとして良作であるのが作者の持ち味だったはずだが、本作はミステリの筋はやや平凡、前々作あたりからかもしれない。
そろそろ、装飾の方が自分の専門から外れてきているようなので、あまり無理をしないでミステリの本筋のほうに力を入れてはもらえまいか。6.5