東雲(しののめ)の途(みち)

  • 光文社
3.86
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感想 : 80
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  • Amazon.co.jp ・本 (333ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334928049

作品紹介・あらすじ

「断ち切れ、断ち切れ、過去の一切を断ち切って生きろ」宿命に抗う男たちの悲痛な叫び。同心木暮信次郎、商人遠野屋清之介。屍体に隠された瑠璃石が、因縁の男二人を突き動かす!あさのあつこが放つ時代小説に目眩がする。

感想・レビュー・書評

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  • 弥勒シリーズ 4
    まだ明けきらない初秋の江戸の町。
    岸辺近くの橋に男の死体が見つかった。
    町人のなりをしているが、どうやら、侍らしい。
    死の間際に、自らの手で、己の身体に押し込んで隠したと思われる「瑠璃」を、同心・木暮信次郎が見つける。

    信次郎と、岡っ引き・伊佐治が、その「瑠璃」を遠野屋に持ち込んだが、遠野屋清之介は、過去に、同じ物を見たと気づく。

    「過去に怯えて逃げ回るより、向かって行かなきゃならないなら、覚悟を決めて、戦うべきだ」
    と、伊佐治に諭されて、遠野屋清之介は、己の過去を、二人に話す。

    そして、清之介は、刀を使うのではなく、商人として生き抜く為、伊佐治と二人で、生国への旅に出る。

  • 弥勒シリーズは新旧の作品を順に従わす読んでおり、遡って清之助の過去がつまびらかになった。生国の嵯波藩、はて?どの辺りを仮想してるんだろう。そんなんも思い巡らせて、清之助と伊佐治の旅に従う。しかしまあ、旅立つまでに信次郎と清之助が重ねる応酬は、いつにも増してしつこい。そのしつこさを愉しませるのが不思議というか、毎度心惹かれる。今回は瑠璃の謎解明の一点勝負で、流れは単純だ。よって、おなじみ登場人物の魅力が存分に披露される。神がかりな洞察と体術。我関せずの二人にさえ心を開かせ、真に導く術。結末は美し過ぎるかも。

  • 弥勒シリーズ第4弾。この巻で清之介が信次郎と親分に自分の過去を打ち明けるとは。「星消える」と銘打った章では親分が死んでしまうのではと勝手にハラハラしてしまった。おりんの仇討ちを諦め心の中の暗い星を消したということだったのだろうか。商人として生きていくことを決意した主人公の強さがとても清々しかった。清弥ではなく清之介としての人生を全うするのだろう。
    木暮さんの出番が少なかったのが少し残念。
    親分の存在にいつもほっこりするのはあたしだけなのだろうか。

  •  全体を通して、これまでと違いとても爽やかな感触で、起こる事件や旅先での様子もとてもスムーズに進みます。読み応えが少なくて、全体に物足りないという印象でした。

     遠野屋清之介が主人公のシリーズなので、これで終わりではないかと思いながら読んでいたけど、清之介の最後の言葉に思わず小躍り。
     そう、この作で終わったら心残りばかりです、進次郎の戦も是非みたいよね。やはり次作は、進次郎が中心の話になりそう。。。。とは言っても、本当に次作があれば、ですが。

  • L 弥勒の月シリーズ4

    最初シリーズ一作目から同心木暮信次郎を中心とした話と思い読み進めると足元救われるので注意。三作目まで結果的に遠野屋清之介の清弥名時代の己の過去、しがらみに関わる話で、この作品は同心木暮信次郎の推理云々ではなく遠野屋がいかに過去から脱却するかがメインということに重きを置いて読み進めないと四作目で足元掬われる。信次郎はただの脇。いかに殺人マシンの清弥が敏腕商人に生まれ変わるのか、の話。
    それにしても生国に入ってからの遠野屋、あまりにとんとん拍子で拍子抜け。いままで散々遠野屋をいたぶっておきながらそんなことでチャラにするのとはいささか急ぎすぎた感もあり。

    信次郎と信次郎の手下伊佐次、遠野屋の絶妙なやり取りが秀逸なだけにここでシリーズを終えるのは惜しい。弥勒の月シリーズではなく新たなシリーズモノとしてスタートしてほしいところ。

  • 信次郎と清之介のシリーズ第4弾です。
    今回は、清之介が故郷に向かいます。
    刀を捨てた清之介が、捨てたままで生きられるのか…。

    因縁の二人ですが、親分・伊佐治が上手く二人を繋げてくれます。
    柔らかい物腰、きっぱりと信次郎を諌める親分が頼もしいです。

    明け方の空の色、まさに刻々と変わる空の描写や故郷の風景に使っている言葉の数々がとっても素敵でした。

  • 大好きな「弥勒」シリーズの四作目。ここにきて大きく話が動いて驚きの展開が。


    同心木暮信次郎、商人遠野屋清之介、そして2人の間で煩悶する伊佐治親分。

    これまでに見たこともない人間的歪み、というか、親分曰く「欠落」を抱える同心・木暮。彼の、人の心を逆なでする言動の奥には深い闇があり、その彼を描写するあさのさんの筆の今回も冴えること!

    また、優れた商人として穏やかな佇まいを見せる遠野屋も、奥知れぬ闇を背景にし、この2人が巡り合ってしまったのは偶然なのか、お互いに求め合ってのことなのか。

    今作では、親分の目線から物語が語られることが多く、不穏な2人だけではなく、真っ当な好人物に見えた親分がこの負の2人になぜ惹かれるのか、伊佐治自身の驚きは読者の驚きでもあったから、とても面白く読んだ。
    そして、ごくごく当たり前の生活を送りたいと願う伊佐治のおかみさん・おふじから見た親分の日々。うん、そうだよねと、日常の中でふっと感じる陰の部分の怖ろしさの予感がぞくっとした冷たさで感じられた。

    伊佐治の息子の嫁・おけいが言う、「遠野屋の旦那と木暮様は、根っこのところが同じじゃないか」という指摘を聞いた時のおふじの動揺を示すページがとてもいい。

    引用すると・・・

     なぜか喉がひりつくほどに渇く。
     水瓶か柄杓で一杯、水をすくう。(中略)その貴重な水を柄杓から喉にじかに流し込んだ。
     渇きはいささかも癒されない。
     「聞かせてごらんよ」
     はすっぱな娘さながらに、手の甲で口元を拭い、おけいを促す。

    ほんの脇役であるはずのおけいやおふじの向日的な面が急に闇に対峙してしまう怖ろしさ。
    あさのさん、上手いよ~~~!

    また、
    「うちの旦那だけは何もかも掴み所がござんせんよ。」
    「確かに底の深いお方ではありますね。」
    「深いんじゃなくて、曲がってんですよ」
    なんていう、伊佐治と遠野屋の軽口めいた会話も、それまでの重いあれこれがあるだけに妙に心に沁みたりして。


    ただ、後半、遠野屋と伊佐治が旅に出るため、木暮との絡みがなくなってしまうのが残念だった。3人がいるからこそお互いの化学反応で進む探索があるわけで、それがそのまま人間を描いてもいたのだから。

    そっか、そうだったのか、という全てが明らかにされた遠野屋清之介の生い立ち。
    彼の殺陣の場面はこれも今まで読んだことのないような独特な怖ろしさ、面白さなのだけど、
    弥勒シリーズはこれで終わりなのだろうか。

    木暮がそれでは置き去りではないか・・・と、あの歪みと欠落の甚だしい男のことを私は好きだったんだなぁ、と気づいたという。

    これは、シリーズの最初から読まないといけません。
    このドキドキはそうじゃないと治まらないと思うから。

  • 弥勒シリーズ4作目。遠野屋の過去の自分と向合う姿勢にこのシリーズの新しい展開を見た。紅花を商うことで大店にのし上がっていくのも楽しみ。信次郎もこれから変わるのだろうか?このままの小暮信次郎でいてほしいのだが。

  • 新作待ってました!
    出だしからピリピリ緊張した空気漂ってて、これだよ!!って興奮してたんだけど意外とあっさり終わっちゃった。
    でも信次郎は相変わらずだったので満足。
    次はいつかしら?

  • 2022.03.07

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著者プロフィール

岡山県生まれ。1997年、『バッテリー』(教育画劇)で第35回野間児童文芸賞、2005年、『バッテリー』全6巻で第54回小学館児童出版文化賞を受賞。著書に『テレパシー少女「蘭」事件ノート』シリーズ、『THE MANZAI』シリーズ、『白兎』シリーズなど多数。児童小説から時代劇まで意欲的な執筆活動で、幅広いファンを持つ。

「2013年 『NO.6〔ナンバーシックス〕(8)特装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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