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  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334928278

作品紹介・あらすじ

小学四年生。
世界は果てしなかったが、私たちは無謀だった。
どこまでも、歩いていけると思っていた。

感想・レビュー・書評

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  • 久しぶりの道尾作品。
    前にも書いたけれど、子どもの描き方がとてもおもしろく、生き生きしている。
    きっとこんなふうに子ども時代を過ごしたんだろうな、と親近感。
    お話自体は少し無理な展開も感じられたが、
    人物や動物のユーモラスな表現に何度も吹き出しつつ、
    楽しく読了。

  • 道尾版『スタンド・バイ・ミー』。
    ジュブナイル小説の傑作。
    と、いっても子ども向けという意味ではなく、遥かな未来に夢を馳せていたかつての子どもたちこそ読むべき作品。
    終業式の日。明日から始まる休みが永遠に続くように感じる下校シーンを最初と最後に配した構成や、映画『グーニーズ』を思い出させる最終章、息をもつかせぬ脱出劇のひりひりとした手に汗握る描写が見事。描かれているシーンが、まるで目の前で展開しているかのようだ。
    スティーブン・キングを評する際、よく“視覚的”と賛辞されるが、ここでの描写はキング超え。忌野清志郎のアルバムで表現するなら『GOD』。道尾さん、あんたスゴイ。
    風雨の中、女恋湖にゴムボート(…なんだけど)に乗ったワンダ、キュウリー婦人、ガニーさんが登場するシーンなんて、悶絶もののカッコ良さ。
    エピグラフに続くアポロ11号の交信記録には、唐突感を抱かずにはいられないのだが、後半、ノスタルジックに月日の経過を伝えるアイテムとなって効いて来る。
    「たまんないのねす!」by 慎司てな感じ。技巧派である道尾秀介の面目躍如といったところ。
    極私的には、読んでいる間、THE MOODY BLUESの'68〜'71年に発表された各作品『失われたコードを求めて』、『子どもたちの子どもたちの子どものために』、『夢幻』、『童夢』をランダムに脳内再生。
    今、ディスコグラフィを確認していたら『デイズ・オブ・フューチャー・パスト』を含めて聴きたくなって来た。
    聴こう。そうしよう。

  • いつからでしょうか、とりとめのないことに目を輝かせなくなったのは。齢を重ねるにつれて地層のように積み重なった常識や経験が、少年時代の記憶を埋もれさせ、僕はだんだんと大人になったような気がします。何にもとらわれず、ただ好奇心の赴くままに生活していたあの頃。この作品は読む人に、誰もが持つそんなキラキラした過去の記憶を呼び覚まさせてくれる物語だと思います。これまで道尾秀介さんの作風ともがらりと違う感じがしました。

  •  何だか、とても懐かしい気持ちになる作品でした。子供の頃はネットも携帯電話もなくても、町中を駆け回っているだけで楽しく、一人で電車に乗って隣町に行くだけでも大冒険だった。そんな、人生の中で一瞬にして過ぎ去ってしまう子供時代を、ほんのりと思い出させてくれる、そんな作品であったと思います。

    • kuroayameさん
      レビューで記載されていた内容を拝見させていただき、本当、便利なものがなくても、自転車でみんなと隣町へ出かけたり、バスに乗るだけでも行き先を間...
      レビューで記載されていた内容を拝見させていただき、本当、便利なものがなくても、自転車でみんなと隣町へ出かけたり、バスに乗るだけでも行き先を間違えてしまうのではと、ドキドキしたり(o^^o)。
      色々な子供の頃を思い出し、ほんわかした気持ちになりました(^O^)/。
      素敵なレビューを拝見させていただきありがとうございます(^з^)-☆。
      2013/01/25
  • 道尾作品3作目を読了。1作ずつに変化があって面白いのが実感です。先日読んだカラスの親指のようなどんでん返しがあるかと思いきやそうでは無く、でもドキドキ感や温かい場面もある作品でした。
    著者、道尾氏曰く「この最新作『光』は、僕自身が最高に楽しんだ作品です」と仰られる位、ワクワク感がありました。
    小学4年生の子供達が主役ですが、その頃って男子女子関係なく、探検や冒険にドキドキ・ワクワクしていた頃が、読んでいて懐かしく思い出されました。
    キラキラ輝かしい、夢いっぱいの光があったのでしょうね!

  • 道尾版「スタンド・バイ・ミー」。これまででもっとも後味の良い作品かもしれない。ちょっとした謎はあるけれど、それがメインではない。発端は夏休み中、秋を経て冬の大事件へとつながっていく一連の出来事を駆け抜けていく小学生達の姿が、懐かしくやるせなく胸を打つ。この作者は子どもを書くと本当にうまい。特に今回は(もちろん陰翳はあるけれど)基本的なトーンが明るいので、気持ちよく読むことができる。

    一方、天の邪鬼な読者としては、そろそろ以前のような「世界を反転させるワザ」を繰り出す作品も読みたいもの、などと思っていたらば、最新作「ノエル」はどうやらその路線らしい。いやあ楽しみ!

    「文学賞メッタ斬り!」で読んだのだが、かの宮部みゆきさんが直木賞の選考会で、道尾さんがどんでん返しを封印してしまった(ように見える)ことを非常に残念がって「翼を持っているのになぜ地上に降りてしまったのか」という趣旨のことをおっしゃってたとか。その気持ちはよーくわかる。

    それはそれとして、本作はとても良くできた少年ものだと思う。ふりかえってみると、この作者の書く「罪を犯す人」は、最近の一連の作品はもちろん、ホラーであってもミステリであっても、いつも悲しみを背負っていることに気づく。そこが良さだなあと思った。

  • ああ、良いなあ。素直にそう思える読後感だった。さすが道尾秀介、文章のセンスが光ってる。巧い。読み終えたらタイトルがとても心に響くのも良い。素敵な小説だった。[2012.07.04]

  • 最近の道尾さんの作品は、「子どもが抱えるどうしようもない無力感」について書かれているものが多く、さらにその無力感がわりと陰惨な印象を残すことが多かったので、実はこの作品も買ってからしばらく手が出せなかった。
    しかし、読んでみて、当初思っていた印象とは少し違って、いつもよりほんのり明るい、まさしく「ひかり」を感じる作品だった。
    小説の構成はミステリの手法が効果的に使われていて、単なる少年小説には終わっていない。伏線が回収されるときのカタルシスを、章ごとに味わうことができる。
    道尾さんが描く少年の姿を見ていると、しみじみ、「男と女はこんな子供の頃から全く違う感性を持っているんだなあ」と思う。
    思いつきを試さずにはいられない無鉄砲さとか、冒険に憧れて、さらには実行してしまう無邪気さは、女の子に皆無とは言わないけれどもまず見られない傾向だと思うから。
    男の子を包んでいる光と、女の子を包んでいる光は、とてもよく似ているんだけど、たぶん本質的に違うんだろうなと思った。

    道尾さんの作品の読後感はいつも、「哀しみ8割、爽やか1割 割りきれなさ1割」ということが多いのだけれど、この作品に関しては「哀しみ2割、爽やか7割、やりきれなさ1割」という感じだった。

  • 道尾秀介さんの作品を読むのは、これが2作目。
    連作短編集のような体裁だけど、話は繋がっています。
    少しずつ読むつもりでしたが、中盤から終盤にかけて俄然面白くなり、最後は一気読みでした。
    とても面白かったです。

  • なんだか今まで読んできた著者の作品とは毛色が違う感じ。
    これはこれで好きな人も多いと思う。

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著者プロフィール

1975年生まれ。2004年『背の眼』で「ホラーサスペンス大賞特別賞」を受賞し、作家デビュー。同年刊行の『向日葵の咲かない夏』が100万部超えのベストセラーとなる。07年『シャドウ』で「本格ミステリー大賞」、09年『カラスの親指』で「日本推理作家協会賞」、10年『龍神の雨』で「大藪春彦賞」、同年『光媒の花』で「山本周五郎賞」を受賞する。11年『月と蟹』が、史上初の5連続候補を経ての「直木賞」を受賞した。その他著書に、『鬼の跫音』『球体の蛇』『スタフ』『サーモン・キャッチャー the Novel』『満月の泥枕』『風神の手』『N』『カエルの小指』『いけない』『きこえる』等がある。

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