遠乃物語

著者 :
  • 光文社
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感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (414ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334928360

作品紹介・あらすじ

明治三九年、台湾原住民の査察を終え、郷里の遠野に戻っていた人類学者・伊能嘉矩は、天ヶ森近くの熊野神社で、マラリヤの発作を起こして倒れる。目をさました彼は、介抱してくれた佐々木喜善とともに、「遠乃」という、郷里とは似て非なる町に迷い込んでいることを知る。違いはほとんどない。しかし、ここでは、昔語りも言い伝えも存在しないようなのだ-。

感想・レビュー・書評

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  • 難解。

  • 帯を東さんと京極先生が書かれてたので手に取ってみました。
    「遠野」ならぬ「遠乃」に迷い込んだ伊能嘉矩と佐々木喜善。ううん。
    藤崎さん初めて。SF作家さんなのですな。
    どうやらこちらは新境地のようで、他の作品も読んでみたい。

  •  遠野から「遠乃」へ迷い込んだ、台湾帰りの民俗学者と地元の学生。パラレルワールドで発生する様々な怪異は、現実世界の昔語りと呼応する。
     ホラーよりもSF色が強いが、不安定な世界観が発する違和感がじわじわと覆ってくるような感覚がお見事。

  • 遠野の乃の字が違ってるけど、その違いがこの物語の全てといってもいいかもしれない。
    怪しげな世界が共存しているのでなく、重なって存在しているという大好きな設定で楽しめました。日本の近世の伝奇というと遠野ですねぇ

  • 伊能嘉矩と佐々木喜善という、『遠野物語』に影響を与えた人物が、「遠乃」という別世界に誘い込まれてしまい、抜け出すために奮闘する話……と書くと、何だかチープなアクションファンタジーのように聞こえるが、ここで登場する妖怪をはじめとする「人でないもの」の存在は重く、それらが誕生するきっかけとなった事件は厭わしく悲しい。語ることの重要性や苦境から目をそむけたがる人間のさがと深層心理、受け継がれてきた血が生み広げる世界は恐ろしい一方で、たまらなく魅力的だ。
    これを読むと、『遠野物語』を読み返したくなったので、近々手に取ろう。
    久々に、日本らしさの薫る物語を読めたことを嬉しく思う。

  • マヨイガの話。

  • 遠野と似て非なる「遠乃」に紛れ込んだ学者の物語。おなじみの「遠野物語」の伝承が語られる中、現実にも起こる怪異の数々。遠野物語を知る人もそうでない人も引き込まれてしまう、少し恐ろしい幻想小説。
    描かれる怪異も怖いけれど。「ムカシッコ」に隠された真相が怖くて悲しい。昔の貧しい村なら、口減らしや間引きは当たり前のようにあったのだし。そういう点でもっとも恐ろしく感じたのは「郭公と時鳥」。この物語は知らなかったけれど。一番印象に残りました。

  • 遠野と似た「遠乃」に囚われた佐々木喜善と伊能嘉矩。そこは未生の黙されて語られぬ物語が現に立ち上がる場所であった。
    閉じこめられた二人はそれに立ち会いながら、脱出を試みる。期限は一年。

    柳田国男『遠野物語』の成立に関与した実在の二人を主人公に、『遠野物語』的世界を再構築した伝奇小説の傑作。
    民話や妖怪、伝承好きな人にお勧めです。

    私は大好きなので、この評価になりました。

  • 遠野ではなく、遠乃に迷い込んだ主人公である台湾帰りの人類学者・伊能嘉矩と佐々木君という、幽霊や妖が見える青年。遠乃から脱出する為、いろいろな手をつくしますが、さまざまな事件が起き、遠乃というマヨイガからなかなか脱出出来ません。遠乃では、いろいろな事が隠されている。主人公達が向かう先々で、遠野に伝わるむかしっこ(昔話)と似た悲しい事件が起こる。隠されているからといって、起こらないわけではない。遠乃は現代の大和民族の思いが固まって出来たマヨイガなのだそう。今日の続きの明日があり、明後日があり、来年があるとぼんやり過ごしていける毎日。そう。今の私たちの生活そのまま。でもぼんやり過ごす私たちの生活も、いつ災害に見舞われるかもしれず又、地球上には戦争や病気で常に危険にさらされている地域もある。今、目の前にある平和な日々が全てではない。たまには目を覚まして、周囲を確認する必要があるのかもしれない。

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著者プロフィール

ふじさき・しんご 1962年、東京都生まれ。米メリーランド大学海洋・河口部環境科学専攻修士課程修了。科学雑誌『ニュートン』編集室に約10年間在籍。英科学誌『ニューサイエンティスト』に寄稿していたこともある。1999年に『クリスタルサイレンス』(朝日ソノラマ)で作家デビュー。早川書房「ベストSF1999」国内篇1位となる。現在はフリーランス。ノンフィクション作品には生命の起源に関連した『辺境生物探訪記』(共著・光文社新書)のほか『深海のパイロット』(同前)、『日本列島は沈没するか?』(共著・早川書房)がある。小説には『ハイドゥナン』(早川書房)、『鯨の王』(文藝春秋)など多数。



「2019年 『我々は生命を創れるのか 合成生物学が生みだしつつあるもの』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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