さようなら、猫

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著者 : 井上荒野
  • 光文社 (2012年9月15日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (214ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334928445

さようなら、猫の感想・レビュー・書評

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  • 夕日に浮かび上がる大仏様のように三角な(笑)
    哀愁を帯びた猫のシルエットの美しく儚げなこと。
    この表紙の破壊力に抗える愛猫家は
    果たしているんだろうか?(笑)

    「猫」がキーワードとなり、物語が動き出す短編集だけど、
    そこは短編の名手、井上さん。
    そんじょそこらの短編集とは違い、
    ヒヤリとした切れ味と、
    噛めば噛むほど味の出る旨味でいっぱい。

    どの話も余白のある作りで
    予想の斜め上をいく意外性があります。
    (はっきりしたオチがあるわけでもなく、ほとんどの作品が唐突に終わりを迎えます)

    それだけに読み終わりの余韻も
    かなり後を引くので、
    また始めから読み直したりして(笑)
    読むたびに緻密に作られた構成や
    独特の比喩表現や味のある言い回しにニヤリとできます(笑)

    ただ、一話一話猫が主役の短編ではなく、
    あくまでも猫を通して揺れ動く男女の心の機微を描いているので
    猫に和む話を期待すると
    想像したのと違う~!って
    がっかりする危険性もあるのでご注意を…(汗)
    (あからさまなハッピーエンドの話はありません)
     

    で9つの短編の中で
    僕が印象に残った話を挙げると、

    家で待つ子猫のことばかり考えてしまう自分に嫌気がさした美那は、
    酔った勢いで子猫を譲ることを約束してしまうが…
    『自分の猫』、

    妊娠したのを機に
    「うさぎ」と名付けた飼い猫を貰って欲しいと持ってきた妹だったが…
    『赤ん坊と猫』、

    玉の輿に乗って結婚したものの
    鬱屈した心を抱え毎日をやり過ごす瑠美は
    ある日、栗の木のてっぺんで降りられずに鳴く猫に自分を重ね、救出しようと試みるが… 
    『降りられない猫』、

    一回り以上年下の美容師と初めての不倫旅行に来た50歳の主婦頼子は
    旅館で野良猫と出会うが
    野良猫は怪我が元で瀕死の状態だった…
    『ラッキーじゃなかった猫』、

    自分が働く自然食品店の店長の部屋の
    サクタローという猫の世話に毎週訪れるかなえの悶々とした葛藤を描いた
    『他人の猫』、

    兄壁(あにかべ)という男がひとりで切り盛りする奇妙なレストラン「兄壁」。
    常連客の洵(しゅん)は「兄壁」の看板猫であるペルシャ猫のボサノバの肝臓移植のために
    なけなしのお金をカンパするのだが…
    『さようなら、猫』

    かな。

    読みながらずっと感じていたのは
    井上さんの持ち味である
    ほの暗い情念とゾクゾクする底意地の悪さと(笑)、
    (褒めてます!)
    行間から沸き立つ淫靡な匂い。

    読む人を選ぶだろうけど
    個人的にはかなりハマりました。

    それにしても猫って
    なんでこんなに人を魅了するんやろ。

    猫ってわがまま気ままで
    情が薄いように思われがちやけど、
    決してそんなことはないんです。

    ただ犬のようなストレートな愛情表現が苦手なだけ。

    あさっての方向向いて知らんぷりしながらも、
    身体の一部は飼い主に密かにくっ付いてたり(笑)、

    遊んでやろうとしたら逃げるクセに、
    こっちが本や新聞を読んでると
    必ず開いたページの上に
    ヨイショっと
    スフィンクス座りを決め込んだり(笑)
    (絶対ワザとやってる)

    その苦笑いするしかない「甘え下手」なところが
    どうにも心くすぐるのです♪


    たとえチョイ役であっても
    猫が物語に出てくるだけでラッキーと思える人、
    毒のある井上荒野さんの文体が好きな人、
    大人な短編集を読んでみたい人、
    みなまで言わない余白を残した物語に浸れる人にオススメします。

  • 背中をむけてぽつんと坐る猫の表紙と、章ごとにはさまれる可愛い猫のイラストに
    猫とのほのぼのしたやりとりを期待してしまった猫好きさんは
    「あれ?あれれ?」という気分になってしまう本かもしれません。

    『自分の猫』、『わからない猫』、『降りられない猫』など、
    猫をタイトルにした短編が9つ並んでいるのですが
    物語の中で猫が描写されるのは数行、というお話がほとんどで
    中には、猫が本当にいるんだかいないんだかわからないまま終わったり
    昔飼っていた猫を、惚け始めた父が呼ぶ声しか出てこなかったり、
    猫はあくまでも物語を進める上での薄めのエッセンス、といった感じです。

    初めて自分だけの猫を飼うことになって、狂おしいくらい夢中になり、
    なんとかイマドキの若者らしい生活に戻るため手放そうとするも
    やっぱり離れられなくて、クロエのバッグに仔猫を入れて逃走する
    19歳の美那を描いた『自分の猫』、

    疎遠だった姉を訪ねる口実に「うさぎ」と名付けた猫を連れてきて居座り
    それでも素直な口がきけない妹にほろっとする『赤ん坊と猫』の2作には
    ほのぼのとした部分もあって救われるけれど

    その他の作品は、どこで誰と一緒にいてもヒリヒリとした淋しさを抱きしめている
    登場人物の孤独が伝わりすぎて、頁をめくる指先からどんどん身体が冷えていくようで
    打たれ弱い私が手を出してはいけない作品だったのかも、と思ったのでした。

  • 読んでよかった。でも私、なんでこういうタイプの作品が好きなんだろう…。たぶんこれ、猫だからクールにドライ、ビターにきまるんだろうけど、「犬」だったら号泣していたかもしれない。…『さようなら、犬』。タイトルだけで悲しみがあふれて耐えられない。猫は孤独が似合うから、この作品に合うのかもしれない。


    =猫も、愛も、幸せも、閉じ込められない。=帯の紹介文もビター。(猫が横切る、ままならない人間世界。)


    うちの猫も8か月でうちにたどり着いて居ついたので、この眼で人間の様々なことを見てきたのかな、と思うと、なんとも言えず、(嫌がるけど)ぎゅっと抱きしめたくなる。(ツンデレ子なので、引っかかれるけど…)




    「自分の猫」予定外の妊娠…子供産めない、子供嫌い。でもやっぱり産みたいわ~。手術当日に病室から逃げ出す…というパターンに似ている。逃げるならシングルも覚悟して、ハッピーとずっと一緒に大事にしてあげてほしい。



    「わからない猫」野衣さん!そんなところで猫を放しちゃダメ。なんてひどいの。けどこんなひどいことをする私よりも、もっとひどいのはあなたよ、後藤さん。私にこんなことさせるのは、あなたよ。責めきつい…。



    「赤ん坊と猫」園美の猫「うさぎ」。姉の紫穂。マリッジ&マタニティーブルーなんじゃないの?淋しいのは姉の私じゃなくって、園美あなた自身なんでしょ。うさぎは淋しいと死んじゃうっていうじゃない…。猫の名が何よりも物語っているじゃない。



    「降りられない猫」豊かな暮らし、将来は安泰。けど結婚1カ月で、もう冷え始めている居間の雰囲気。あなた猫を飼っていいかしら…。(本当は何を飼う気なの)。もしかしたら大きなオス猫?電話で終わる不穏な空気。(これ面白い♪)



    「名前のない猫」亜生・半ひきこもり→キャットシッター。お客様の猫・たまは姿も見せずに隠れて、どこかでじっとそている。電話には出てはいけないのに出ちゃうし、報告書に嘘は記入するし…亜生、あなたが本当は猫なんじゃない?



    「ラッキーじゃなかった猫」不倫旅行先で見つけた(たぶん)ラッキーという名の猫。あなた達、二人のエゴがラッキーを不幸にしたんじゃない?



    「他人の猫」店長月島の猫を預かる、都合のいい女、かなえ。本当に長野の彼女のうちに行って、父親を説得しているの?本当は衣津子と会っているんじゃなの?(これも好き)



    「二十二年目の猫」認知症になり昔飼っていた猫の名を叫ぶ父。その父を口実にして沢を呼んだんじゃない?父にはもしかしたら「カオル」が本当に見えているのかもしれないよ。あなた達の関係も敏感に察しているんじゃない。



    「さようなら、猫」ボサノバ…兄壁に盗まれた猫。兄弟猫の肝臓を移植できるから、元に戻すなんて。今さらジローだと思うんですけど…。無責任だよ、兄壁。存在そのものが…胡散臭いよ。




    主人公の気持ちや存在が宙ぶらりん。宙に浮いている感じが哀しい。猫はそういう人の間をささっとすり抜けて生きてゆく。立ち止まったりしない。この本好き。☆4.5くらい。読んでいる途中でなぜか江國さんを思い出した。

  • 猫をモチーフにして若者の生活を描いた短編集です。猫好きでも、そうでない人も気持ちが伝わります。ちいさくて、か弱い存在に見えるけれど、愛しい猫たちの存在は心の隙間を埋めてくれること間違いなしです。それぞれの見出しを挙げておきます。この中のどれかに自分自身が隠れているような気がするんですけれどね♪ 「自分の猫」「わからない猫」「赤ん坊と猫」「降りられない猫」「名前のない猫」「ラッキーじゃなかった猫」「他人の猫」「二十二年目の猫」「さようなら、猫」(3.5)

  • 猫にまつわる短編集。
    猫がクッションとなっているせいか、井上さんのいつもの短編集よりソフトな感じがする。でもさすがに井上作品、裏切らない。日常から逸脱しそうでしないそのぎりぎりのラインにいる危うい人々を巧みに描いている。
    巧いな~、どの作品も甲乙つけがたい。
    自分が猫好きなせいか、高評価。うん、うん、分かるなどと思いながら読んでしまった。
    「赤ん坊と猫」と「ラッキーじゃなかった猫」が特に良かった。
    考えてみたら井上作品の登場人物ってみんなだれも猫っぽい。つかみどころがなくて自由気ままで。突然びっくりするような行動をとったり。孤独を愛するのか、ぬくもりを求めるのか。それも気分次第か。

  • 猫って(犬もだけど)、私達の人生には切っても切れないものかな。
    ちょっとした事柄の隣りには猫、みたいに。

    「二十二年目の猫」が1番好きかも。
    あと装丁もね。

  • 年末年始に向け、猫関連の本を借りてきた第四弾。
    井上荒野さんの本を読むのは初めてだが、ちょっと失敗したかもしれない。こういう世界観は好き嫌いが別れるんじゃないかと感じた。私には、少し分かりにくかった。
    猫が出てくる短編集。内容は暗めで掴み所がなく、結末も突然やってきて尻切れトンボ的な感じ。出てくる猫もあまり境遇が良くない。でも、こういう暗めの話にも寄り添えるのはやはり猫しかないなとも感じた。

  • 井上さんの短編はやっぱり良いな〜。

    今回は猫にまつわる作品ばかりでしたが、そこに出てくる登場人物との絡み方がなんとも言えない。特に男女の話になると格別。

    猫の無邪気で自由気ままな性格と、人間の隠しておきたい嫌らしい部分をズシリと突いてくる描き方が最高です。

    どれもスッキリとは終わりません。日常のほんのひとコマ、人生のほんの一部を切り取っただけの様な終わり方が逆に良いですね。余韻に浸るも良し、その後の展開を想像するのも良し、読み手に小さなドキドキ感を残してくれます。

    無類の猫好きというわけではないけれど、猫と生活するのも悪くないのかな〜と思ってしまった。関係ないけど犬好きなんです…。

    自分の猫/わからない猫/赤ん坊と猫/降りられない猫/名前のない猫/ラッキーじゃなかった猫/他人の猫/二十二年目の猫/さようなら、猫

  • 猫がいる日常。人間に振り回される猫も、たいへんだ。

  • タイトルにあった「猫」の文字と装丁の写真にそそられて読んだ。猫はそこに居るだけなんだよ、きっと。だけど、そこにいる人たちが猫を媒介として物語にしてるみたいな感じ。猫って、そこにいるだけで周りを温かな気持ちにしてくれると思うんだけど、ここにでてくる猫はそんな役割をさせてもらえない。シュールでミステリーでちょっとオカルトだったりする物語は決して猫のせいではないと思う。登場する人たちがシュールでミステリーでちょっとオカルトなのだ。これは猫の物語ではなくて、人の物語だ!オイラはやっぱり猫が好きなのでそう思うのだ。

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乾いている人、求めている人、愛している人、憎んでいる人、何も考えたくない人。彼らの日々にそっと加えられる一匹の猫。猫も、愛も、幸せも、閉じ込められない。短編の名手が紡ぐ魅惑の九編を収録。

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