婚外恋愛に似たもの

著者 :
  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (196ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334928520

作品紹介・あらすじ

容姿も、仕事も、家族も、生い立ちも、社会における立ち位置もバラバラの5人の女。彼女らの共通項は、35歳。夫あり。そして男性アイドルユニット「スノーホワイツ」の熱狂的ファンであること。彼女たちの愛は、夫ではなくステージで輝く若く美しい「恋人」に遍く注がれる。哀れでも、歪んでいても、これはまぎれも無く、恋。だからこんなに愛おしい-。"最凶恋愛小説"。

感想・レビュー・書評

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  • タイトルの「婚外恋愛」、そして表紙の美しい女性から、てっきり不倫ものかと思い違いをしていた。よくよく表紙を見てみると、女性が持つうちわは「愛して」とどぎつい蛍光色の文字が入った…某アイドル事務所のコンサートでよく見かけるようなものではないか。
    「愛した人は、2.5次元」
    男性アイドルグループ「スノーホワイツ」にのめりこむ、35歳の5人の女性達を描いた連作短編集。激しさや滑稽さや哀しさを絡めながら、上流~中流~下流に属する5人の生き様が「疑似恋愛」を通して浮かび上がってくる。同じ35歳とはいえ、「スノーホワイツ」のファンという共通点がなければつながることもなかったであろう5人が交流を深めていく展開は、微妙にかみ合わない会話も含め、何だかんだ互いをけなし合いつつもほどよい距離感の関係性がよくって、こういう女の友情もいいなと思えた。
    のめりこむというほどではないけど、やはり自分も某事務所のアイドルに憧れながら生きてきたので、「疑似恋愛」に縋る気持ちが多少はわかる。子供がいてもいなくても、旦那がいてもいなくても、お金があってもなくても、それぞれの立場で七転八倒。今回もまた宮木さんらしく色んな意味で「容赦なく」って「ぶっ飛び」まくりだけど、そんな彼女の作風が大好きだ。根底に愛を感じるからね。
    あちこちにちりばめられた小ネタもツボで、「中流」奥さまの夫が脱サラして上梓した「火に油を注ぐ技術」「火のないところに煙を立たせたい人のための本」とか(笑)実在したら読んでみたいわ。

    • niwatokoさん
      こんな作品が出ているの、知りませんでした。すごくおもしろそうですね。宮木あや子さんて読んだことないんですが。
      わたしも、うちわもってコンサ...
      こんな作品が出ているの、知りませんでした。すごくおもしろそうですね。宮木あや子さんて読んだことないんですが。
      わたしも、うちわもってコンサートとかは行きませんが、わりとファンになりやすいというか疑似恋愛しやすい?性質を自覚しているので興味深いです。
      2013/11/08
    • メイプルマフィンさん
      niwatokoさん:コメント嬉しいです!宮木さんは作風が幅広く、今作のような「今どきの女の生き様」系は豪快で痛快で、いい意味でちょっと下品...
      niwatokoさん:コメント嬉しいです!宮木さんは作風が幅広く、今作のような「今どきの女の生き様」系は豪快で痛快で、いい意味でちょっと下品で(笑)クセになります。
      アイドルにハマった経験がある人なら、思い当たるところがちょいちょいあって「うっ…」となること必至です(^_^;)
      2013/11/09
  • 作者はよく理解をしているジャニオタとよばれる人たちの心理を。
    と思ったのが、大きい。
    作中に登場する彼女たちのようにジャニーズを好きになると、社会が広がることはある。今はSNSなどがあるから尚のこと(実体験なので、よく分かる)。本当に今までだったら知り合えないタイプの人に会える。
    その観点をうまく女同士の値踏みに似た観察劇に変えているところが作者の凄いところだと思う。

  •  明示されてはいないけど、いわゆるジャニオタ小説といっても過言ではないと思う。同じグループを応援する女5人の連作短編集。
     家柄や財力、ルックスに家族関係、全部人それぞれだけど、持つ者持たざる者みんながどこか満たされない思いを抱えている。そんな彼女たちを支えるアイドルの存在は大きいよなぁ。とはいえアイドルは決して性欲の対象ではなくデトックスであるということに大いに共感した。儘ならないことだらけの日常を一瞬でも忘れさせてくれる眩しいアイドルに夢中になりながら、日々と折り合いをつけて生きていこう、というか生きていくしかない彼女たちにリアリティーを感じる。
     あと、コンサート終わりの彼女たちの顔が度々「なんとなく白っぽくなった」と描写されていたのが上手いと思った。人の熱気と高揚感とでファンデーションがうっすら浮いて白くなるの、ものすごく分かる。

  • テレビドラマみたいな感覚でするするっと読めた。
    納得できるところもあれば、そうでもないこともあったり。
    5人いればそれぞれ推しに対してのスタンスが違うように、
    私もこのどれでもないタイプだな~と自覚した。

  • 女にとってのアイドルはデトックス

    この言葉がとても印象的でした。
    私もあるアイドルのファンですが、この物語に人ごととは思えないくらいどっぷり共感してしまい、読み終わったあと静かに「マズイな。」とつぶやいてしまいました。

    好きなものは好き、それでいいとは思います。でも、現実と夢の境界線はしっかり見極めておかなければ、一生現実と真正面から向き合うことはできない気がしました。

    感想がマイナスなことばかりですが、ひとつ良かった点として、女の友情が晴れ晴れしく、ヲタクで繋がっていられる関係性の肯定が随所に散りばめられていたところをあげておきます。
    同じアイドルグループのファンでなければ出会うことのなかった友人が私にも大勢います。そういった奇跡の出会いはこれからも大切にしていきたいとおもいました。

  • これは、題材はアイドルに向けた愛情だとされてますが
    本当に描きたいものは違うと思います。

    アイドルを他の何かに置き換えても、成立するお話だからです。

    生活に余裕のある上から三人は、不満があってもその美しさや
    能力・お金で、まだ自分に夢を見せることができます。

    でも、あとのふたりは…いつかやっと維持している夢の繭までも
    破り、破壊されてしまうかもしれません。

    婚外恋愛なんてショッキングなタイトルをつけられているから
    何事かと思いますが、ここに出てくる女たちは、現実を生き抜くために
    命をかけて現実から遮断された世界を持っているだけです。

    実際に不倫を勧めてみたら、全員がおそらく拒否するでしょう。
    現実の自分に、更に足かせになるだけの、傷しか作らないと
    わかっているから。

    小説ではこのあとを描いていませんが、読者の現実は続きます。

    益子さんと片岡さん…生き抜いて欲しい。
    ひとりで生きるのは痛ましいこともあるし、いまさらもう遅いっていう
    こともいっぱいあるけど、彼女たちにはせめて、間に合って欲しい。

    自分の未来が怖くなりました。

  • 現実でアイドルファンをしている身としては、こういうファンめっちゃいる!ってなった。描写されるアイドルたちにも既視感ありまくりで、あの子がモデルかな、あの時のこと参考にしてるのかなと思っていたら2012年刊行。もはや予言の書だった。

  • 3.3 人生満たされない女子たちのアイドル追っかけの物語。人の幸せは何かを問う哲学的な内容。エンタメがしんどい日々を救うことは間違いない。

  • ちょうど友人に「推しがいると人生潤う」と言われ。
    あーナルホド、こういう感じなのかな、と。
    全然接点のない女達が「推し」で繋がって、一緒に泣いて笑ってするのも、何だか大人の部活動って感じで楽しそう。
    1つ共通の好きなことがある繋がりっていいな。
    またその中の女のカーストも、そういうのあるよね、と。
    女社会の良いとこ悪いとこ、うまいなぁと思った。




  • モデルであろうジャニーズアイドルが思い浮かび、非常に面白く読みました。
    アイドルオタクの女性5人それぞれのエピソードは5人5様で階層も人生も異なりますが、そんな彼女たちが「スノーホワイツ」を好き、という一点で出会う。
    ちょっとアダルトでダウナーなガールミーツガール。

  • 初作家さん。
    名前の響きとタイトルからもっと大人っぽい内容かと思ってたら。
    美醜についてやたら鼻につくフレーズは趣味が合えば普段つるまない組み合わせが生じることを言いたいのかな。
    こういう熱量って独特。

  • とんでもsideの宮木あや子さんの作品は元気が出る。読了後、よーし今日は自分の食べたい物だけ作って食べるぞー!って拳を突き上げた。

  • 外見も収入も持っているものは全て違うアラサー女性5人の共通点は同じ男性アイドルグループのファンということ。
    アイドルに熱を出しててもかわいいですまされる10代じゃない。仕事や家族、生き方がそれぞれにあるなかで、アイドルにはまっているそれぞれの物語。欲しいものが全て手に入るわけではない。そのなかで何を諦め何を得るために動くのか。

  • 上から3番目の女、桜井 こどもがいない
    下から3番目の女、益子 不細工で馬鹿な息子あり
    常に一番、隅谷 経営者
    真ん中が定位置、山田 凡庸な容姿の娘あり。夫の稼ぎで優雅にくらす専業主婦
    常に底辺、片岡 BL小説家

    女性のヒエラルキーの中でそれぞれ違った位置にいる5人が、アイドルグループの大ファンという共通点で繋がる。

    アイドルにハマる様子や、コンサートのわくわくドキドキ、私も経験があるがものすごくうまく描写されていた。言葉で伝えるのが難しい、、とおもっていたがまさに書いてある表現がぴったり!

    ストレートだが、それゆえスカッとする笑
    女性の話ばかりだが、ネチネチした感じがないのが好印象。下ネタ要素も多々あるけれど、馬鹿馬鹿しくて笑える

    私は山田にちかいのかな〜、というか、そうであってほしいなー
    宮川さんはどんなひとなんだろう
    こんなに異なる立場の五人の心情をどれもうまくかけるなんて!
    山田と姑のやりとりは最高に気持ちよかった〜♡

  • 図書館で借りたもの。

    「ジャニーズ」ならぬ「ディセンバーズ」の「スノーホワイツ」という男性アイドルグループにハマった35歳の既婚女性たちの連作短編集。
    各章のタイトルは寒かったけど、内容は面白かった。
    ジャニヲタあるあるなのも多くて(笑)
    自分が好きなグループが人気になって、嬉しいけど寂しい気持ちとかね。
    「校閲ガール」もそうだったけど、言葉遣いが悪すぎるところが、ちょっと気になる。。

  • 何においても上から三番目の人生を送ってきた桜井。TV局に勤める夫への愛情も冷めた彼女は35にしてディセンバーズのデビュー前アイドルグループ「スノーホワイツ」神田みらいに夢中。二十歳でデキ婚、15のヤンキー息子をもつ益子は千葉から東京までパートに行くスーパーでコンサートの当選を受けた時、落選した桜井と出合い声をかけるー

    ◆常に一番だった隅谷雅、凡庸ながら商社勤めの夫が小説家になってた山田、デブでブスな腐女子片岡、そんな濃い面々がアイドル追っかけて繋がるのが面白いww

    アイドル追っかけも腐女子に偏見ないつもりだけど、理解はできても共感ができない。飲み仲間で、嵐追っかけてチケット取れれば北海道でも大阪でも行く姉さんと、韓流追っかけて韓国まで行く腐女子な友達がいるけど多分私はそんなに熱くなるほど好きなアイドルとかいないからなんだろうな-。でも、三番目の女「桜井」の、金も美貌もあるけど子供いないことを姑に言われる閉塞感、不良息子に手を焼く庶民益子の3人に対するクソセレブ発言、なんでも一番だけど自由には生きられないのを周りに理解されない雅、夫との価値観の相違に悩みつつ娘の苛めを心配しながらも強くなった娘に喜ぶ山田、あまりのコンプレックスにヒモみたいな夫にたかられてた片岡の一歩、なんか野良ルームでの凄い回収に拍手だよ-。なにしろ山田娘の姑へのナイスプレーがいい(笑)

  • 35歳、夫あり、男性アイドルユニットの熱狂的ファンである彼女たちは、今日もステージで輝く彼らに愛を注ぐ。連作短編。

    何においても上から3番目の人生を送ってきた、美佐代。子なしそこそこセレブ。夫との離婚危機?ーアヒルは見た目が10割

    19歳でデキ婚、ろくでなし夫とグレた息子と貧乏暮らしの益子。下から三番目のポジション。息子が万引きをして呼び出しを食らう。ー何故若者は35年生きると死にたくなるのか

    いつもトップを取り続けてきた雅。ある日怪文書が出回ったが、その犯人は?ーぬかみそっ!

    普通が一番と言われ続け、凡庸な生活を送ってきた山田。娘が学校でいじめられ始めたようで…ー小料理屋の盛り塩を片付けない

    どうしようもないデブスな片山はBL小説家だが仕事がなくなって3年に。底辺にいる女。-その辺のフカフカ

    茄子のグリエ~愛して野良ルーム2


    久々の宮木作品はやっぱりおもしろかった。

  • とあるアイドルグループで活躍する子が好き、という共通点で繋がっている5人の女性。
    頂点、底辺、平凡、と異なる層で通常ならば交わらないであろう女性たちがある1つの輝きをもとに集う。

    毎度思うことですが、本当に宮木さんの守備範囲は広い。
    BL小説の描写まで出てきてびっくり。
    意外な感じはもはやないですが、ただただ感心するばかりです。一体どれだけいろんな世界に興味があるんだろう。

    さて、作中に登場する女性ですが、みな住む世界が違って面白いですね。誰も彼もが個性的。
    下からは上がよく見えないし、上からは下を見ようともしない、という階層分けされた社会がリアルですよね。
    上にいくほどにポジティブなのも興味深い。
    むしろちょうど階層の狭間にいる方が軋轢が生じて厄介かもしれないですね。セレブの子が公立の学校に通おうとしていじめられる、みたいなことも、あるかもしれないですね。

    とはいえ、どんな階層にいようと、キラキラ輝く夢や宝物のような存在があることで、幸せと思える瞬間が確かに存在するのでしょうね。
    完璧な人ばかりではないから、ふいに虚しくなったり、寂しくなったりするだろうけど、やっぱり幸せな瞬間があることで生きていてよかったって思えるんでしょうね。

    人生のパートナーがいること、子どもがいること、あるいは一人で生きていくこと、いろんな形があるけれど、どんな生き方をしてもそれを肯定していけたらいいですね。

    何でも1番で、好きなもののために道を作り出す隅谷さんも、
    上から3番目だけど不器用で頑張り屋な桜井さんも、
    とことん平凡だけど娘を守る最高の母親である山田さんも、
    口が悪いものの息子を大事に思う益子さんも、
    妄想を昇華させて仕事にまでしたしろたんも、
    それぞれが違う世界で懸命に生きてるんだなと、ところどころに散らばる鋭い言葉に刺されながらも思った次第です。

    それから、もし人生やり直すことができたら、何歳に戻って何をしたいか、なんて話が出てましたが、私は、人生やり直せるとしても、やっぱり過去に戻りたいとは思わないなあ…と何度考えても同じ結果になることに、誇らしいような、寂しいような気持ちになりました。

    ところで、
    「会釈し、私は(゚∀゚)←こんな顔した彼女たちの前を通り過ぎた。」って描写に笑いました。
    これ確かに、変に回りくどく描写するよりも一発でどんな感じかわかる、最高の表現ですね。

  • 夢のような現実と、リアルな現実のギャップがおもしろく切ない。
    それぞれの短編で境遇の違う女性たちが登場するのですが、アイドルが好きという共通の趣味でも、育ちや生活が違うと悩みも違うので、各々のエピソードが長編でもよさそうな濃い内容です。

  • 男性アイドルグループ「スノーホワイツ」の熱狂的ファンである5人の女性の話。35歳、人妻、容姿も境遇も異なる彼女らのそれぞれの自己認識が面白い。
    推しメンへの思いや逃避もよくわかるし、歓喜する姿がとても愛しかった。
    (図書館)

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著者プロフィール

1976年神奈川県生まれ。2006年『花宵道中』で女による女のためのR-18文学賞の大賞と読者賞をW受賞しデビュー。『白蝶花』『雨の塔』『セレモニー黒真珠』『野良女』『校閲ガール』シリーズ等著書多数。

「2023年 『百合小説コレクション wiz』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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