象の墓場

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著者 : 楡周平
  • 光文社 (2013年12月14日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (420ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334929176

象の墓場の感想・レビュー・書評

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  • 思えば、ぼくが会社に入った昭和50年代は、新聞や雑誌の広告原稿の入稿が新聞社によってはまだ凸版という鉄の板で行われていた時代だった。
    それから数年して凸版は完全に姿を消し、フィルムに取って代わられた。
    また、そこから10年以上を経て、フィルム入稿からMOのデータ入稿が一般的になっていった。
    僅か20年弱の間に広告の原稿入稿形態も大幅な技術革新が起こったことになる。
    それはひとえにコンピュータによるIT化の流れに起因している。

    この小説は、アメリカの巨大フィルムメーカーが、時代の趨勢により業態革新を迫られ、その先の未来をある程度予見しながらも、乗り遅れ、衰退していった物語である。
    その期間、僅か15年。
    小説の冒頭である1992年には、誰にも予想できなかったことだろう。

    しかし、1990年代から、世紀を経て21世紀に入ると、アナログからデジタルへの変化によって、世界や日本の産業界は劇的な変貌を遂げた。
    フィルムメーカーの世界は、その象徴でもあった。
    当時、街のあちこちにあったDPEショップなど、今では影も形もない。
    せいぜい、コンビニがその代役を果たしているくらいか。
    銀塩写真から、現像を必要としないデジタルカメラの世界へ100%移行するなど、コダックも富士フィルムも考えだにしなかっただろう。

    ところが、ウィンドウズ95発売以降のPC普及による低価格化、デジタルカメラの驚異的な速さでの技術革新、印刷機械の高性能化などによって、事態は一変する。
    さらには、カメラ付き携帯電話やプリクラなど、それまで考えもつかなかった商品が新しい市場を産みだし、世の中の根本を変えていく。
    技術革新に終わりという言葉はない。
    今流行っている商品やサービスにしたって、いつ何者かに取って変わられるか分からない。
    まさに、何が“象の墓場”に向かっていくのかは誰にも予見できないのかもしれない。

  • コダック社がモデル。世界最大のフィルム会社・ソアラ社が、デジタルの時代が来ることを予想しながらも、自らの高収益なビジネスモデルを守るために対応が後手に回ってしまう。日本法人に勤める最上栄介は、新事業のデジタル製品の販売戦略担当となるが、デジタル化へと急速に変化する環境にどのように立ち向かうのか・・・
    昔はあちこちに街の写真屋(現像屋)があり、年賀状なども依頼していたことを思い出した。デジタル・ネットの普及により、写真を撮るという行為は比べ物にならないほど以前より多くなっているのだろう。紙に印刷された写真といえば、そのうち卒業アルバムなども、データ支給などという時代がくるのだろうか?

  • 自分で自分の首を絞めるというか・・
    切ないなぁ。

  • 「筋のいい商売はトントン拍子に決まっていく」、「仕事のできるやつは1つのきっかけで想定される幾つもの事態を思いつく」とか何かがコトリと音を立てて転がり出すようなそんな感じだよなぁ。さて、次の墓標は何処に立つのだろう。

  • リアル。主人公の仕事とオーバーラップする部分があり、身につまされる感覚。読み物としてもすごく面白かった

  • デジタルカメラとスマホ、パソコンとインターネット。今や当たり前となっているものが、フィルムとFAXの時代から考えると想像上の産物だった。それがイノベーションによって現実となった。企業の大小や業界に関わらず、技術進歩のスピードにより業態の変化や自動化に伴うリストラが加速度を増していく可能性があることを述べている。身につまされる思いで読み終えた。

  • 一応ソアラという架空のフィルム会社の話になっているが、どこからどう見てもコダックのお話。テクノロジーの進化で、今までのビジネスが文字通り蒸発してしまうという、一言で言えば「諸行無常」の中でもがく人物を追ったストーリだが、まさに奢れる者は久しからず、色々と考えさせられる。
    個人的に初めて買ったデジカメがコダックのDC3800という機種だったこともあって、余計に感慨を感じてしまった。

  • 実在の企業を想像しながら楽しく読みました

  • 明らかにコダックを意識した企業を通じ、フィルム業界がデジタル、ネットの波に飲み込まれていく様子を描く。
    デジカメ時代を早くから予想しつつも、 既存ビジネスを捨てきれなかった様に、 自分の会社をダブらせて読んだ。
    これは変化のスピードの早さは凄まじく、どの業界にも起こりうる話。

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