彼女の家計簿

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  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334929251

感想・レビュー・書評

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  • P220
    あたしもまた、誰かにつながるような生き方をしたい。

    自分にとって大切なもの。
    加寿にとって大切なもの。
    里里にとっても大切なもの。

    一部、里子さんの話はちょっと強烈だったが、再会した永田も強烈だ。
    表紙の可愛いピンクとは裏腹、地になんとか踏ん張って立つ女性が出てくる。しなやかで何とか今を生きようとする姿が、なんとも。啓の成長が今後楽しみ。

    P192
    「あんまり感情的に

  • 夕顔ネットというわけあり女性達の就労支援をするNPOが舞台。
    家計簿というより、家計簿に書かれてた日記のに関する話で、家計簿感はない。
    今でも、市販の家計簿には日記欄があるものがありますね。戦中からある文化なんだなぁ。

    戦中戦後に綴られた祖母の家計簿の文章が、すごく心を打つものがあった。
    戦時中、子供が先生へ「疎開先に会いに来て。すぐに。」と訴える手紙が、子供らしくて。
    大人からしたら無理だよね、心配かけちゃうし、と忖度して遠慮するところ、そういうのが無くて、純粋さを感じた。

  • 主人公が母親に母性を感じられずに育った心細さや悲しさが、ひしひしと伝わってくる。誰かが誰かを想い、それがその人を支え、成長する力になることが、作中謎の女性「加寿」の戦中の家計簿のとの関わりから、感じられた。冒頭は時代や場面をまたぎ、複数の登場人物が交錯するので我慢かな。最後は女性たちが抱える悲しさ、寂しさがすべて連なっていく。誰かを想うこと、想われることで人が強くなれる。

  • ある女性が残した家計簿。そこには「男と駆け落ちして心中した女」の秘密が隠されていた…

    「クローズド・ノート」を読み終えたばかりで、次に何を読もうかと図書館を物色中に手に取った一冊。
    ノートと家計簿の違いはありますが、ある女性が残した強い想いと、それを受け取る女性、そういう大きいくくりでの共通点を感じながら読みました。

  • 図書館でぱっと目について借りる。

    シングルマザーの里里。
    戦時中を生きた里里の祖母と思しき加寿。
    加寿が全面的に援助した女性向けNPO団体の
    代表の美晴。

    里里は祖母は男と心中したと教えられて成長し
    母はそれが原因なのか娘に対しては無関心で
    愛情のかけらもない態度を示す。

    里里は祖母のことなどまったく知らなかったが
    美晴がNPO団体の荷物の中で見つけた加寿の
    家計簿を里里に送ることで物語が始まる。

    謎を追いながら物語が進むのと
    戦時中の家計簿というその当時の様子を
    垣間見られる内容と現代における女性たちの
    いろいろな悩みや問題をうまく絡めてあって
    あっというまの読めてしまった。
    そしてとても面白かった。

    里里の母親との確執も少しだけとけかけ、
    里里のシングルマザーとしての暮らしにも
    美晴という頼れる友人ができて安定してきて、
    美晴も過去の重い事実を乗り越えて一歩進もうとする。
    とても前向きで明るい物語だった。
    またこの作者の新刊が出たら読んでみたいと思った。

    新しい作家さんの本だと流行り物やおいしそうな
    ご飯風景などを適当におりまぜて軽いみんなすきそうな
    話を作りましたーって感じの本も多い中、とっても
    重厚で作りこまれた話でとてもよかった。

  • 家計簿を通して進むストーリーとは?と読む前は不思議だった。家計簿兼、日記ってことですね。加寿さんのひたむきさがすごい。現代の私から見ると辛すぎる。けど、女は強いね。加寿さんが必死に生きてくれたから、私が居て、娘が産まれて、あなたとも知り合えた。今はこじれた関係でも、難しい状況でも、必死に生きて繋ぐことが大切なんだよ。って本なのかな~
    読みやすくてよかったです。

  • シングルマザーの里里が、夕顔ネットの晴美と共に家計簿を通して祖母のことを知るお話。
    母との折り合いが悪いが、最後には少し氷解したかなー。大袈裟でない感じが原田さんらしい。出てくる人がみんないい人で、曽我さんの気持ちもわかるし、最後に晴美に言った言葉も突き刺さる。
    個人的にはみずきちゃん大丈夫かな?本人が望むように働けるかな?微妙に有名人なだけに、これからいろいろ大変かもしれないなーと、勝手に思ってしまった。

  • 主人公?の里里、祖母と思われる加寿の家計簿、家計簿を預かっていた三浦、三者の語りで物語が進んでいく。最初は読み慣れるのに時間がかかったけれど、慣れてくるとそれぞれのその時の思いが伝わってくる。
    温かい気持ちで終わる物語だった。

  • あんまり叱っちゃだめよう、そんなに叱ると、会えなくなった時に後悔する、って

  •  昭和初期、代用教員となり、徴兵された夫に代わって婚家を支えた加寿。
     平成の世、その加寿と関わりを持つ2人の女性、里里と晴美は、加寿の残した家計簿の記述を辿ることで、自身の生き方を見つめていく。
     3人それぞれの視点で描きつつ、女性の生き方を浮き彫りにしていく問題作。

          * * * * *

     いつの世も、女性にとって生きづらい。原田氏が数々の作品で取り上げるテーマです。 ( 多くの女性作家たちも扱っていますが。)

     けれど本作は他作品と比べ、明らかに趣が異なります。こんなしっとりした作品も原田氏は書けるのかと意外に思ったほどでした。

     また、2つの時代の主人公たちが、どこでどのようにして交錯するのかを1つの焦点にした設定は見事で、つられて最後までひと息に読んでしまいました。

     婚約者の心を奪った晴美の目前で頸動脈を掻き切って自殺するというのは作りすぎだと思うけれど、その他はストーリーに無理がなく、読み進めるに従ってどんどん惹き込まれていきました。
     さらにエンディングも後味がよく、ぜひ映像化して欲しいと思える作品でした。

     原田ひ香さんの長編作品としてはピカ1だと思います。

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著者プロフィール

1970年神奈川県生まれ。2005年『リトルプリンセス2号』で、第34回「NHK創作ラジオドラマ大賞」を受賞。07年『はじまらないティータイム』で、第31回「すばる文学賞」受賞。他の著書に、『母親ウエスタン』『復讐屋成海慶介の事件簿』『ラジオ・ガガガ』『幸福レシピ』『一橋桐子(76)の犯罪日記』『ランチ酒』「三人屋」シリーズ等がある。

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