虚ろな十字架

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著者 : 東野圭吾
  • 光文社 (2014年5月23日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (326ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334929442

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虚ろな十字架の感想・レビュー・書評

  • 2014年5月発行の作品。
    罪の償いはどうあるべきか、死刑なら償いになるのか‥?
    重い課題を含んだ良心的な小説です。

    中原は11年前に、娘を喪った。
    強盗に殺されたのだ‥しかも、犯人は出所後の再犯。
    怒り悲しむ夫婦は死刑を望み、それは叶ったが、それで愛娘が戻ってくるわけではない。
    離婚し、中原は職も変えたのです。

    別れた妻・小夜子が通りで事件に遭ったという連絡が入り、驚愕する中原。
    力を失った元妻の両親を支え、離婚後の小夜子がどう生きたのかを調べ始めます。
    彼女は犯罪についてルポするライターとなっていた。
    思いがけない真実がそこに‥

    万引きをするにしても、そこにいたる事情や理由はさまざま。病的な状態で刑罰より治療を要するケースが多いとか。知りませんでした。
    殺人も、もちろんのこと、事情は極端に違ってくる。
    犯罪被害者や遺族は、償いを求めるが、何が有効なのか‥
    死刑はなくなるのが理想だが、抑止力として、否定はしきれません。
    しかし、死刑が決まっても反省することのない犯人では‥
    収監されている期間が、心から後悔する機会となればいいのだが。

    終盤で出てくるごく若い頃の罪については、まだ未熟な年齢の事件なので、起訴されないのも妥当なのでは。
    (当然という描き方ではなく、いろいろな成り行きあってのこと)
    いや、子供は大人に相談しなくちゃいけません!

    それと、何もなかったふりで生きていくのも、本人の気持ちの整理がつかないという問題があるという重さ。
    小説の読後感としてはすっきりはしないけれど‥
    割り切れない重さを抱いたままで終わるのは、致し方ないことかもしれません。

  • ミステリーの形を用いた哲学の書であった。
    重くて、簡単には答えの出せない、永遠の問題。
    東野圭吾さんは、随時こういった問いかけを掲げた作品を発表する。そのたびに、「自分ならどうするか」「私はどう考えるか」ということを考えさせられる。
    「人を殺したら自分の命で償うものだ」という考え方にも共感する部分はあるのだが、この考えを敷衍していくと、誰も生きていけなくなってしまう。
    「とりあえず刑務所に放り込めばそれでよし」とするのは違うと思うのだが、じゃあ、反省とか償いはどういう形をとればいいのか、に対する答えは浮かばない。
    反省すればそれでいいのか、とも思うし、「償う」って具体的にはどういうことを指すのかもわからない。
    「こっちの命が失われたのだからそっちの命も失え」という感情は、たぶん、公平さとかそういう感覚とつながっているんだろう。
    「自分の子どもが殺されたら」という仮定は、とても冷静に考えられる問いではない。それでも、誰もが誰かの子どもである、という事実を思い浮かべると、追求の手が少し緩みそうになるのも事実だ。
    人が作り出したシステムは、あちこちほころびだらけで、矛盾だらけである。その、ほころびや矛盾の中で、自分はどういう価値観を持って生きていくのか、ということを時々は自問したほうがいいと思った。
    「愚かである」というのは、もっとも悲しい罪の一つだと思う。

  • 東野圭吾さんの本はこの本で75冊目。

    中原道正、小夜子夫妻は8歳の娘を殺害される。
    犯人の蛭川は強盗殺人罪で無期懲役の判決を受け仮出所中に、この事件を起こす。
    夫婦の希望通り、死刑判決が下りたが、その後、夫婦は離婚。
    娘の事件から11年後、小夜子が殺害される。
    別れた妻・小夜子が殺された真相を追うことで、小夜子が娘を殺された家族としてどのように生きようとしていたかを知ろうとする中原。

    前半の中原夫妻の娘が殺害された事件の犯人と、後半の事件の犯人とを同じように死刑とするべきなのか…… 
    作者は文中で平井弁護士にこんな風に語らせている。『それぞれの事件には、それぞれにふさわしい結末があるべきです』 さらに、『死刑は刑罰ではなく、運命。死刑は被告を変わらなくさせる。死刑は無力』と。

    この本の重いテーマ、死刑制度。
    廃止か存置か。
    議論が繰り返されてきているが、何が正解なのか…
    裁判員制度により、考えさせられる機会が増えたが…
    裁判員裁判による死刑判決が翻されることが続き…


    本文から
    ■いったいどこの誰に「この殺人犯は刑務所に○○年入れておけば真人間になる」などと断言できるだろう。殺人者をそんな虚ろな十字架に縛り付けることに、どんな意味があるというのか。

    ■『人を殺せば死刑ー そのようにさだめる最大のメリットは、その犯人にはもう誰も殺されないということだ』

    ■人を殺めた人間の自戒など、所詮は虚ろな十字架でしかない。

  • 冒頭
    ───井口沙織には、母親に関する記憶が殆どない。物心つく頃には、もうこの世にいなかったからだ。

    若い中学生二人の微笑ましい恋のエピソードから始まるこの物語。
    その始まりからは想像し得ないほどの重い話であった。

    東野圭吾氏ほどの売れっ子作家になると、新しい作品を書く上でのモチベーションは一体何なのだろう?
    読者を楽しませるため? 謎解きミステリーの新しい構築? それとも人間として数多ある生きていく上でのテーマの追求か?
    読者やファンを裏切らないような作品を世に次々と生み出すその底力には心底敬意を抱く。
    この作品も、ミステリーの範疇に収まらないレベルの高い問題作だ。

    小学生の娘を殺された或る夫婦。
    娘を殺した犯人は、夫婦や関係者の執念によって、一審では無期懲役だったものを、二審ではその判決を翻し死刑にされる。
    それでも、その出来事は夫婦に深い傷を与え、生きる目的を失ってしまい、離婚する。
    それから、数年後、今度は別れた妻が------。
    自殺か、他殺か?
    そこには、若い恋人たちの過去の過ちが関係していた。

    生に対する尊厳。死に対する絶望。
    この二つの心情が絡み合って、物語は核心へと進んでいく。

    死刑制度は必ずしも必要なのか?
    死刑になったからといって、遺族の気持ちは治まるのか。
    なかなかに考えさせられる作品だった。
    東野氏、単なるミステリーではない良作を書き切る抽斗がまだまだ健在のようである。

    *最後に一点だけ、違和感を覚えた記述が------。
    P37
    事情聴取では、なぜ八歳の子を一人にしたのか、という点をしつこく訊かれたそうだ。
    「ふつうの親ならそんなことはしませんよね、そんな無責任なことはって、そういわれちゃった」

    そうかあ?
    八歳の子を家に一人にしておくぐらい、当たり前じゃないの?
    小学校二、三年生なら、もう一人でお留守番しても全然おかしくないんじゃないの?
    俺なんて、数十年前になるけど、小学校一年生の時に両親が共働きで鍵っ子だったから、一人で家にいたんだけど??
    と思ったんだけどな。
    これに関しては、「そんな無責任なことは」と母親を責める警察の(東野圭吾の)感覚が明らかにおかしいと感じたのだ。

    以上

  • 何を書いても賛否両論、皆が納得できる共通解のない問題、ということを十分解った上でのこの話なんだろうけど。
    時々こういうの書くよね、「殺人の門」とか。

    一気読みでしたが、読んでいて楽しいおもしろい要素は全くないです。
    それこそ、小夜子の書いた原稿のような生々しい悲痛な叫びが聞こえてきそうでした。

    死刑は是か非か。どちらでもないのか。
    全ての殺人は死刑に値するのか。
    罪を償うとは、更生するとは、どういう生き方なのか。

    個人的には、死刑という選択肢はあるべきと思うけど。
    「死刑は無力」というのは真理かもしれない。どうだろう。
    小説の結末としては、誰も幸せにならなかった気がして救いがない。
    人を殺めるということは、加害者の家族も遺族も重い十字架を背負わされることになる。
    何かでもほんとにやりきれないよね。

  • 罪と罰、そして償いとは、と問いかける。
    東野圭吾は、読みやすいが、問いかけは重い、「さまよう刃」に連なる作品。
    殺人を犯した犯人は、死刑にすべきか。死刑制度を問いかけ、さらに犯した犯罪も証拠がなければ、罪に問われないのか。
    最終頁の、刑事の言葉に肯かなければならないのかも。「確かに矛盾だらけだ。人間なんぞに完璧な審判は不可能、ということかもしれませんね」

  • この人物が ここで繋がってるのか!
    と、東野圭吾ならではの 人物の絡み。
    いろいろなことを 考えさせられる作品。

  • 犯罪者が裁かれるべきなのは間違いないけど、どのように裁かれるのがいいのかはその人との関わり方によって考えが変わってくるものだと思った。
    贖罪の難しさを感じた。

  • 人が人を殺してはいけないのは、誰もその罪の償い方を知らないからだ。。。

  • 英恵の訴えが辛い。

    「主人は21年前に1つの命を奪ったかもしれません。でもそのかわりに…医師として多くの命を救い続けています。
    …それでも主人は何の償いもしていないといえますか。刑務所に入れられながら反省しない人間など、いくらでもいます。そんな人間が背負う十字架なんか、虚ろなものかもしれません。
    …ただ刑務所で過ごすのと、主人のような生き方と、どちらのほうが真の償いだと思いますか」

    人の命を奪うのも人間、
    その罪を裁くのもまた人間、
    そこに情をわずかでも入れた瞬間、ギリギリで保っていたものが崩れる。そんな気がした。

  • 死刑制度について考えさせられる話。

  • 「死刑は無力だ」この帯とともに、本当の贖罪とは何かについて考えさせられる1冊。
    そして誰も救われない1冊。
    罪を犯す、人を殺めるということ自体がそういうことなのだろうとひしひしと感じる。
    誰も救われない。
    それでも生きていかなければならない。
    そのうえで「死刑」という制度は一体誰を救う事ができるのだろう。

    正直なところ、話の展開は序盤からうすうす予感できる内容。だが再犯率の高さやそれは金銭的な困窮によるものであるといった内容、犯罪者の社会的受け皿の低さ、等々の課題についてもきちんとふれられている。
    そのうえで、「死刑」制度についての問題提起がなされている。やはり帯の「死刑は無力だ」のこれに尽きるのかもしれない。それは制度廃止論者だというわけではなく、本当の意味での「贖罪」を死刑に全てを託してしまうような法のあり方、制度のあり方自体に疑問を抱かざるをえない。
    だからといって、最後の花恵の「ただ刑務所で過ごすのと主人のような生き方と、どちらのほうが真の償いだと思いますか」の言葉には違和感を感じざるを得ない。
    法における罰を受けてからの更正ではないかと感じた。ただ、罪の内容がまたなんともグレーゾーンというか、、、。「中絶」についての贖罪意識にも関わってくるのではないかと、、、。わざとなのか?そういった経験のある方は読んでいてかなり揺さぶられてしまうのではないかと。

    そうでなくとも、内容自体とてもヘビー。
    でも、どこかで客観的に捉えられるような描き方は意図してのものなのか。それとも自分自身が感情移入できなかったのか。東野作品は容疑者Xの〜等読んでいるが号泣してしまったので、おそらく意図してのものなのだろうか。それだけ作者の問題提起としての意味合いが強いのかもしれないなと感じた。ただ、ラストの佐山刑事の「人間なんぞに完璧な審判は不可能、ということかもしれませんね」に作者の想いが集約されているのかもしれない。

    2014年5月 光文社

  • 前評判が微妙だったが、電車広告を見て読みたくなりました。自分の子供が殺されたら貴方はどうしますか?といった問いで、東野圭吾だったらそれをどう展開させるのかに興味があったからかもしれません。

    11年前に子供を殺され、その辛い経験からペット葬儀業を誠意を持ってやっている父親、その別れた妻・小夜子は遺族会に入っておりルポライターとして、それぞれが過去と向き合っています。そしてずっと苦しんで生きています。

    娘の死を乗り越えるというところには共通点があったけれど、選んだ道は正反対というのがズンと来て考えさせられました。

    更には小夜子も殺されますが、またそこで置いた両親が同じように娘の死と向き合っていく辛さといったらありません。こんなに不幸な家族は滅多にいないかもしれませんが、ドラマ向き?な展開です。

    そしてそして小夜子を殺害した犯人、仁科花恵の父、無職の町村作造。何気にこの人が、愚かだけど侘しくもあり1番印象的でした。

    結局、どんなことをしても死んだ娘は帰らないというのが題名のとおりでとても虚しいし悲しい物語でした。

  • 久しぶりの、ノンシリーズ東野圭吾。死刑論とミステリと親子愛、という三題噺で一気に読ませるクオリティ。さすが。でも、この人の作品は、いっつもこんな印象になるのよね。

    •ストーリーがめっちゃ巧緻でスゴイ
    •でもキャラに可愛げがなく萌えない
    •動機がすごーく見えにくくて、誰にも共感できない
    •でもなんだかんだ言っても、読みごたえがあって面白い

    ええ、面白かったんです。でも、…大非難覚悟で言っちゃうと…宮部みゆきでこのお話が読みたい(>人<;)…ゴメンナサイ!!単なる作風の好みですっ。

  • 読書を再開して1冊目の本だったけど、内容がかなり重かった。
    死刑制度…いろいろな考えもあるし当事者にならないと分からないと思うけど、すごく考えさせられる内容でした。
    すごく引き込まれて一気に読んだけど後味はあまり良くなかったかな。

  • 罪を償うとは人が人を裁くとはどういうことなんだろう、「復讐するは我にあり」の福音が脳裏に横切った。

  • 重い気持ちで読み終える。ハッピーエンドかバッドエンドかといえば、バッドエンド。
    償いとはなんだろう、死刑制度の是非。。。。。
    幸せを守る気持ちが殺意になり、正義を貫く強い思いが刃になる。
    ほんのすこしの身勝手な選択が、多くの不幸の連鎖を生む。。でも。その身勝手さは自分のなかにもあって、胸が塞ぐ。そんな話。
    楽しくはないけど、考えさせてくれる1冊。

  • 死刑が題材というのは最初から解っていましたが、想像以上の重苦しさに大分メンタル持ってかれました。「さまよう刃」や「手紙」を読んだ時も胸にずしっと来るものがありましたが、こちらはそれ以上ですね。
    死刑制度については人を殺めた代償は重くあって然るべきだという考え方で、寧ろ反対派の意味が解らないとも思ってたけど、本書を介して多方面からの見解をみて正直よくわからなくなってしまった。それでも花恵の様な女は大嫌いです。

  • 読み始めたらぐいぐい引き込まれ、3時間ほどで読み終わってしまった。こんなに本に集中したのは久しぶり。内容はとても重いもので、少々考えたくらいではとても答えが出ないし、結末もスッキリとはいかない。けれど、考えるのをやめてはいけない問題だと思った。

  • とても考えさせられるテーマでした。
    死刑について、罪について、人の心の弱さについて・・。
    難しいテーマですね。
    本のカバーの森の絵は、どういう意味なんだろうと、最後は一気に読んでしまいましたが、本を閉じた時に、とても怖い気持ちになりました。

  • 東野圭吾らしい作風

    読み終えて
    貴方はどう思う?
    って課題を与えるとこが相変わらず。


    ☆若気の至りからの犯罪
    ☆子供を殺害された親の心境
    ☆万引き依存症の心理
    ☆犯罪者の身内の葛藤
    ☆死刑廃止論
    ☆死刑廃止論という暴力

    ★果たして死刑は無力なのか・・・
    ★殺人者は何十年刑務所に入れておけば、
     真人間になるのか・・・
    ★どうして再犯率が高いのか・・・
    ★死刑の最大メリットは・・・

    犯罪というのは矛盾だらけ・・・
    人間なんぞに完璧な審判は不可能、
    と締めくくられている。


    疲れたので今は思考停止したい。

  • 前に一度読んでいたことを忘れていて、読み始めた途中で気づいたものの、最後まで面白く読み切りました。
    主題となっている日本の刑罰に対することも考えさせれますね。

  • やっぱり東野さんの文章は惹きこまれますね。
    続きが気になって読むのをなかなか止められない。
    内容も面白かったし、最後までちゃんと物語として完結しててさすがだなーと思いました。
    私は死刑廃止は反対ですが、読んでるとどっちの気持ちもわからなくもなく。
    こればっかりは遺族の気持ちを大事にしてほしいって思うよね。
    そういう意味では赤ちゃん殺しの遺族とは?に共感できたし。
    殺した罪は罪だけど堕胎とどう違うと言われるとそれもそうだよねと思ったり。
    色々考えさせられる奥が深い内容でした。
    自殺の方法にhideちゃんと思われる描写があってhideちゃんを思い出してしまいました(悲)

  • 幼い娘を殺され、その後離婚した元妻も殺害された中原は、元妻の離婚後の行動を辿りはじめる。そこに隠された思惑や秘密が明らかになるにつれ、死刑制度や真の償いについて考えさせられる・・・と言った展開。重い、答えのないテーマをそつなく書き上げているのはさすが。ただ、どうも心に響いてこなかった。

  • 死刑制度の意味を考えさせられる作品。序盤より、この物語の終着点はどこだろうと思いながら読んでいたが、読後はさすが東野圭吾だなと重いテーマにも関わらずすっきりした。死刑を刑罰と捉えるか、運命と捉えるか…。遺族にしてみればどういう答えなら満足なのか。色々と考えさせられた。家族みんな元気で一緒にいられる日常が、何よりも幸せなのだと改めて実感した。

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