虚ろな十字架

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  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (326ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334929442

感想・レビュー・書評

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  • 難しい問題だと思う。
    犯罪者だからと言って、どう扱ってもいいとまでは
    思わない。
    でも、犯人を尊重することよりも、被害者の方が
    大事なのじゃない?って思うし。
    作中で、万引き犯依存症の人間をすごく擁護してた。
    だけど、そのせいでお店の経営が危うくなる可能性は
    どう考えるのかには触れていない。一方的。

    そして、やっぱり、東野氏の女性観に、違和感が
    ぬぐえない。作品が面白くないとは思わない。
    なのに、どこか好きだと言い切れなくなった自分がいる。

    難しいテーマを含んでいるから、というのではなく。
    今回のラストも、ちょっとすっきりしない。
    いろいろ考えさせてくれるという意味ではいい作品
    なのかもしれないけれど。

  • 考えさせらる一冊でした。
    殺人という罪への刑罰と贖罪。
    死刑は無力だと、いいながらも、死刑を求めずにはいられない。
    人それぞれ考え方はあるとは思います。
    わたしは死刑廃止には反対派ではありましたが、自分の考えの甘さを痛感させられました。
    そんな簡単な問題ではないし、多くの殺人事件においてひとつの答えでは済まされない。そんなことを学ばせてくれた一冊です。
    リズムがいいので、すぐに読み終えました。

  • 以前読んだ、「さまよう刃」を思い出しました。
    あちらは、遺族が加害者に報復する、
    こっちは、遺族が死刑制度とは何かを訴えている間に殺される、というミステリー要素もあり。

    重たい話だったが、読むのは、ほぼ一気に。

    しかし…
    仁科史也の母・妙子は、父親が殺人者だからという理由で妻と離婚を迫っているけれど
    その息子が殺人者と知ったら、どうなっちゃうんだろう?

  • 死刑制度の是非をテーマにしたミステリ。
    重いテーマだけど、東野さんの割と淡々とした文章とバランスが良く、読みやすかったです。

    私自身は、刑罰というのは、犯人の更生のためではなく、また被害者や遺族の癒しのためでもなく、抑止力なのだと思っています。

    自分の罪の重さを感じられる人は、法に裁かれても裁かれなくても重い十字架を背負うし、そうでない人は、刑罰を加えても、その辛さに「もうしないでおこう」と思うことはあっても、心からの反省につながることは難しいのではないかな、と、そんなことを思いました。

  • 文句なし。面白いです。

  • 小さな娘を殺された母親と21年前の嬰児殺人に悩む女がクロスしたときに物語は大きく動く

    被害者のある殺人事件と被害者のいない殺人事件。これが構図の骨子か
    死刑制度の是非論まで飛び出して、ちょっと重いテーマが展開される
    読後感もすっきりしないが、このテーマではやむを得まい

    それにしても父親が殺人者だからという理由で仁科史也に妻、花恵と離婚を迫る母親の妙子
    その史也が殺人者と知ったときの驚きと悲しみは如何ばかりだろう
    他人事ながらとても気になった

  •  こういうテーマは『さまよう刃』以来だろうか。覚悟して読み始めたが…。

     娘を殺された中原は、犯人を死刑台に送ることだけを生きがいに、妻の小夜子と奔走してきた。望みが果たされた後、離婚。現在はペットの葬祭業を営んでいた。そんな彼を、娘の事件の担当刑事が訪ねてきた。中原の別れた妻、小夜子が殺されたという。

     もし、あのとき離婚していなければ、私はまた遺族になるところだった。そんな帯の一文に、読み始める前から気乗りしない。東野圭吾さんの作品でなければ手に取らなかった。中原の過去の回想は、比較的淡々とした筆致で進む。十分重いし、書き切れないほどの葛藤があったのだろうが、『さまよう刃』の序盤の方がもっと重かった。

     小夜子を殺した犯人の量刑は、最高でも無期懲役に留まる見込みという。それでも、かつての義父母は、せめて死刑を求刑したいと、中原に協力を求めてくる。彼に断る理由はない。中原と別れた後、小夜子はライターとして活動していたことを知る。編集者は、彼女の遺稿を出版したいという。タイトルは、死刑廃止論という名の暴力…。

     死刑に関する議論が尽きることはない。作中の弁護士は言う。死刑は無力だと。しかし、こうも思う。死刑廃止論者は、愛する人を殺されても、同じことが言えるのか。遺族になったことがないから、言えるのではないか。実際に悲劇に直面した小夜子の主張も、わからなくはない。死刑は無力かもしれないが、少なくとも無意味とは思わない。

     物語は思わぬ方向に進む。中原には直接の接点がない人物たちの過去の闇。成り行き上、中原は真相に肉薄していく。そもそもの発端からして「彼」に同情はできないし、身勝手に過ぎる。それでも、こうするしなかったのか、もやもやが残る。中原を突き動かしたものは何か。亡き元妻の意思か。おそらく、彼自身わかっていない。

     小夜子の悲痛な生き方は、誰よりも自分を追い込んでいたようでならない。中原もまた、生涯傷を抱えて生きていく。やや中途半端な結末は、意図的なのだろう。今回も読者に投げるだけ投げて、答えは各自で考えろというわけだ。

  • 東野圭吾さんは、白夜行以来読んでませんでした。読む側のメンタルが安定していないと
    持っていかれそうで敬遠してました。

    しかし、流石東野圭吾ですね。
    冒頭から引き込まれました。
    ん?ポケベル?これいつ刊行されたの?と
    言う疑問から始まり、ストーリーが行ったり来たりするのでメモを取りながら読みました。

    性は愛なのか?罪なのか?虚な十字架。

    誰目線で読むか?親としての視点から、、
    娘を留守番させてしまったこと。
    優秀な息子の性教育を怠ったこと。
    父子家庭で仕事優先にしてしまったこと。
    善良な一般家庭の親にもよくある光景で悪気など
    なかったはずです。



    「このくらい」という油断から始まる不幸の連鎖、
    読み終わったあと身が引き締まる感覚になりました。

  • 死刑の是非には答えが見つかりません。
    人の心は他人には伺い知れないが、裁くのはその他人なので。
    再犯率の高さを考えさせられました。

  • 最後まで引き込まれて読めました。死刑は無力という言葉が印象的でした。人は他人から自分を尊重して貰いたいけどそうならないことは多いので思いを持たないことで生きるのが楽になると思いました。

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著者プロフィール

1958年、大阪府生まれ。大阪府立大学電気工学科卒業後、生産技術エンジニアとして会社勤めの傍ら、ミステリーを執筆。1985年『放課後』(講談社文庫)で第31回江戸川乱歩賞を受賞、専業作家に。1999年『秘密』(文春文庫)で第52回日本推理作家協会賞、2006年『容疑者χの献身』(文春文庫)で第134回直木賞、第6回本格ミステリ大賞、2012年『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(角川書店)で第7回中央公論文芸賞、2013年『夢幻花』(PHP研究所)で第26回柴田錬三郎賞、2014年『祈りの幕が下りる時』で第48回吉川英治文学賞を受賞。

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