敬語で旅する四人の男

著者 :
  • 光文社
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感想 : 59
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  • Amazon.co.jp ・本 (276ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334929558

感想・レビュー・書評

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  • 斎木くんが良い一冊。

    なんだか良かった。
    なんとなく寄り集まった男子4人が旅をするストーリー。

    みんなそれぞれ心に曇りを抱えていて、旅することで晴れやかの一歩手前まで…という自然さが良い。

    中でも言葉を正直に受け止める斎木くんの存在が良い。

    アスペルガーゆえと思われる正直な言葉が時に救いに時にナイフのような両局面を併せもつ、その描き方も良かった。

    飴と鞭のような笑いがあるけれど実際、自分がアルエさんだったら斎木くんの言葉と態度には泣いちゃうだろうな。

    大切なのは時間と理解なのかな。

    マニュアルを残したお母さんの愛には涙。

  • 初読みの作家さん。
    他の方々のレビュー同様、私もタイトルが秀逸だと思う。
    タイトルに惹かれた。

    内容は、面白さが半分、「わけわかんないな」が少し、「嫌だな」がその残り。

    「わけわかんないな」は、2章の最後の方、風呂場からの逃走シーン。
    この新しい彼女とのシーン要る?

    「嫌だな」は、京都の元妻の気味悪い家族や、3章のヤバイ彼女。

    主役の4人の男性は嫌いじゃない。
    斉木は、友人や同僚としてなら私も付き合えるかもしれないが、恋人や家族としてはとても難しい。

  • 第7回小説宝石新人賞を受賞した作品。タイトルが面白いなと思って購入。
    選評にもあったが、必ずしもずっと敬語を使ってるわけじゃない。ただ、登場人物の距離感が「敬語を使う」くらいの距離感なのかなと。踏み込むようでいてふと離れる。そのつかず離れずの、でも、ふっと寄り添ってくる感じがあたたかい。
    斎木さんはおそらく発達障害なのだろう。文中にも「専門医の診断がおりている」という記述があったし。こういう人が「ただの変な人」ではなくて、そういう特性を持った人だときちんと描写されているのがいいなと思った。真島くんのお母さんについても、侮蔑した感じがなくて、きわめてフラットに語られているのがよかった。でももうちょっと書き込んで欲しかった気もする。
    仲杉くんのエピソードは読んでいて胸が苦しくなってきた。新開さんとの思い出は切なくて苦くて、ふと涙がにじみそうになる。繁田さんはちょっとキャラがつかみづらかったな。スク水好きのおじさんで登場してるのに、子どもや元妻との関係ではけっこうちゃんとしてるので。でもそういう二面性が人間らしさなのかもしれないとも思う。
    読みやすかったし、物語世界もしっかりしていたので、次回作も読んでみたいと思った。

  • 敬語で話す微妙な距離感が絶妙で面白かった。
    斎木先輩がいい味出してます。
    しかも、毎回4人での旅じゃないところもまた好き。

  • 敬語で旅する四人の男
    麻宮ゆり子

    ୨୧┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈୨୧

    特別親しい訳でも無い関係の男性4人が一緒に佐渡へ旅行をし、4話に渡ってそれぞれの生い立ちや現在背負っている悩みが語られる。

    真島の両親は彼の子供の頃から仲が悪く、ある時両親は離婚し、実は母は好きな女性と一緒にいるのだと告げられる。その母に会うために佐渡へ訪れる。

    繁田は研究者で、結婚はしていたが子供が産まれた後に京都を離れられられないと言う妻と離婚。そんな元妻は両親に依存。その元妻家族に命じられ、子供のヤスと一緒に愛宕山へ登山する。

    仲杉には自由がなく、上司や客には謝ってばかり、帰れば束縛してくる彼女の相手もしなければならない。学生時代に事故で亡くなってしまった彼女が行きたがっていた鳥取砂丘へ。思い切って携帯の電源を切って。
    現在の彼女が歳を誤魔化していたと知り「なぜ嘘をついてた」と言うと「離婚届には印鑑をもらっている」と言う別の秘密を聞かされる。

    そして斎木。彼は特別枠として入社。気に入らないことがあっても、母に教わった言葉でその場を上手く切り抜けられるようにはなっていたが、ある男性の言葉に怒りを覚え力任せに扉を壊してしまう。
    気になるアルエさんをご飯に誘い、恋愛なんて分からないと思いつつも、恋愛について意見を述べるところが印象的。アルエさんが手を広げたら抱きしめるって合図も可愛い。そんな彼女と熱海へ旅行するがぬるぬるするものが苦手な斎木は彼女の躯を拒絶する。

    斎木が、言いたいことあるけど言い難いという場面で、言ってくれてスッキリする時もあるんだけど、ときに障害の力を借りてる感じが否めず。とは言え繁田の元妻家族に「変な家族」と面と向かって言ってくれた場面はよく言ってくれた!って思った。全体的に斎木の突飛な発言に振り回されたり助けられたりしてて、かなりの存在感がある。

    人の感情を捉えるって障害の人だけでなく本当は誰にでも難しいことだと思う。言葉だけでは分からないことも多いし、仲杉みたいにいつもニコニコしてても内心すごく苦しんでる人もいるわけで。分かってるような気になってるだけってことも多いと思う。でもだからこそ斎木の言うことには裏表がなくて説得力があって真っ当な感じがするのかな。

    2022/12/11 読了 (図書館)

  • 真島くんと斎木先輩の関係から芋づる式に、繁田さん、仲杉くんと誘い合わせ、四人で佐渡まで旅をすることに。
    いわゆる、『世間が決める規則』通りには上手く生きて行けない人たちや、そこに優しくからんで行ける人たちの物語。
    少数派を認めよう、と声高に言い立てるのでなく、日常のありふれた出来事の中で、時には切なく、時にはユーモアを持って描かれているのが良い。

    斎木の、空気を読まない、正直で純粋な発言が、時に胸がすく。
    そして、仲間を気遣う人なんだろうなと、感じる場面もあり。

    『敬語で旅する四人の男』
    僕・真島圭太のこと。
    四人の始まり。
    父と離婚して出て行った母を、佐渡に訪ねる。
    一人でこっそり訪ね、すぐに帰るつもりだったのに。

    『犯人はヤス』
    俺・繁田のこと。
    バツイチ、京都の元妻の元に子供がいる。
    というか、種だけ取られ、俺は必要なかったんだ。
    身勝手な元妻の実家に、子供を愛宕山に登らせろと命じられる。

    『即戦クンの低空飛行』
    俺・仲杉幸彦のこと。
    「人なつこく愛想のいい」仲杉くんを悩ませる、職場、病的な束縛彼女、結婚・子作りを迫る実家。
    鳥取砂丘で懐かしい面影を偲ぶ。

    『匡(たすく)のとおり道』
    僕・斎木匡の恋。
    人との関係を上手く築けない斎木も、「相手を思いやる」気持ちを少しづつ学ぶ。
    熱海。

  • 新聞の書評で気になって読んでみました。敬語の持つ距離感がいい。男同士ならではの、踏み込み過ぎない、でも思いやりのある関係性に憧れます。大人の発達障害についても自然に描かれていてそこも良かった。登場人物みんな、幸せになってほしいです。

  • なんかおもしろい題名だなーっと思い手にとる。

    そして、おもしろかった。
    それほどの繋がりがあったわけでもない男4人が、
    なぜか泊まりの旅行に。
    しかも、その縁は切れることなく、続いていき、
    それぞれが抱えた問題(母との関係に始まり、彼女との関係、子ども、元妻との関係などなど)
    を含みつつ、佐渡から始まった旅は、京都やら鳥取やら、と。

    旅はするけれど、旅行小説、ではないな。
    抱えてる問題はそれぞれに大変だったりするんだが、
    結構、そこここでくつくつと笑える部分が多く、
    なんだかとっても楽しく1冊読み終えることができた。
    ラクダで登場には爆笑だった。

    斎木さんはいわゆる、最近よくきくようになった、
    自閉症、じゃないな、えっと、なんだっけ?あーまーよくわかんないけど、いわゆるそーゆー精神的な、障害(?)的なものなんだろう。
    本人も大変なんだろうが、周りも結構大変なんだろーなー。
    が、この小説の中では、その大変さは、どっちかとゆーとユーモアな部分を演出している感じで、実際の大変さとは少し解離があるんだろうが、小説としてはとてもおもしろかった。

    真島くんの斉木さんへの感情のベクトルが、
    ちゃんと届いているような届いていないようなところが面白い。

    仲杉さんの顔色が土色なのを指摘する斎木さんと
    本気で心配する真島くんがいい。
    なんか男の友情!!ってゆー熱い感じではないんだけど、
    あったかいなにかがあるようで。

    期待した以上によかったので、
    他の作品も機会があれば読んでみたい。

  • 面白いマンガを読むような興奮があった。
    アスペルガー症候群の斎木先輩が素敵。
    4人のイケメンでドラマになりそうだし、この4人であと数冊書けるんじゃないかという気がする。
    30前後とはいえ、今どきのこれくらいの男って、少年のようでもあり、大人のしがらみとも無縁ではなく、でもまだ夢を見る余地もないわけではなく、物語にしやすいのかも。『まほろ駅』とかもそうだし。
    一気に話題になって消費されて終わるかもしれないけど、ほんものの作家なら残る。これからが楽しみ。

  • タイトルが気になり、読みました。
    初めて読む作家さん。
    面白かったです。
    周りの人は大変だと思いますが、斎木さんがイイ。
    他の3人も優しく面白い。
    続編読みたいです。

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