絶叫

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著者 : 葉真中顕
  • 光文社 (2014年10月16日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (522ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334929732

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絶叫の感想・レビュー・書評

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  • 鈴木陽子の生育歴のパートを読んでいて、萩尾望都さんの「イグアナの娘」を思い出した。本人にはまったく自覚がないまま、子どもをくっきり差別して育てる母親。差別してますよなんて言われようものなら、烈火のごとく怒って反論してくるであろう母親。子どものころの陽子は次第に母親の本質に気づく。しかし、おとなになってからの陽子の生き方を読んでいると、そんな母親にそっくりになっている。自分に都合の悪いことからは徹底的に目をそらす。
    保険業界に入って仕事を始めたときも、上司と不倫関係に陥ったあとも、何度だって立ち止まって考えるチャンスはあった。それでも、どうしてもこんなふうになってしまうんだよなあ。このあたりを読んでいるときは、やるせなく、虚しく、哀しい気持ちになった。

    金魚の幽霊は、純の姿を借りた、陽子の本質部分だったのかもしれない。彼女が不幸のどん底から浮かび上がってくるきっかけが「自然現象」だったというのは興味深い。人間の生き死にもすべて自然現象、という考え方は私にはしっくりくる。

    「見えざる棄民」という言葉が胸に残った。
    暴力団の追放や、ホームレスの排除、障害者やニートの存在のことを考える時にいつも思うのだ。
    汚いもの、悪いもの、都合の悪いものを排除したいと思うのはわかる。でもゴミのように焼却できるわけじゃないのだから、街から排除したって、そういう人たちはどこかに存在する。追放して、排除して、その先どうしようというのだろう。
    ヤクザや貧困業者がなくならないのは、結局そういう人たちの行き着く先になっているからなんじゃないのか。
    生活保護の基準を厳しくすることが、どうしてちゃんとした社会になっていくことにつながるのだろう。みんな働けばいいのだ、というけれども、現実には、一部の頑健な人と同じようには働けない人だってたくさんいるのに。
    神代がやっていたことはおぞましいことかもしれないが、それは一般社会がオブラートにくるんで捨てたものの中身をむき出しにしてさらけ出しただけのことなんじゃないのか。
    殺されたからかわいそうと言うが、殺される前には見向きもしないのが一般社会なのだ。
    終盤での「あなたは」という語りかけのパートでの一文には鳥肌がたった。そうか、そういうことか、と腑に落ちる感覚。彼女の絶叫に打ちのめされた。そうくるのか、と。なんだかひどく納得してしまった。

    女性刑事の話ももうちょっと読みたかったな。スピンオフで書いてくれないかしら。
    私は作者は男性だと知って読んでいたつもりだったのだが、途中で「あれ?女性だったかな」と思った。それくらい、女性心理や女性の生理がリアルに描かれていたから。でもやっぱり男性なんだよね。なんであんなこと知ってるんだろう。

  • あなたとわたし。本来はあり得ない主観と客観をうまく織り交ぜ、事実と心情を破綻することなく融合させている。でもそれすらもすでに騙されてる。
    あらすじを呼んで、どん底の女が、どん底の最期を迎える話だと全522ページ中の471ページまで信じてた。もしや、これはどんでん系なのか?
    しかしまだ甘い。505ページで彼女の名前を見るまで真相には気づけず。間違いなく読み終わったあと、ページを遡ることになる。

    すべては必然であり、己で選びとれることなんかひとつもない。分岐のない一本の線の上を転がっていくだけ。でもそれを俯瞰して見通すことなんかできない。何もわからない。その事実の本質はつまり自由だということ。「あの時ああしていれば」はない。今と過去は一直線、今と未来も一直線。当たり前と言えば当たり前。ぷちぷちと笑う悟りを開いた金魚の対極にいるのが素敵な選taxi竹野内豊ですね。分かります。

    物語の軸の両端にある綾乃と陽子の視点が、物語の終着であり真実でもある中心に向かって歩み寄ってゆく構成。核心にせまるにつれてその切り替わりが早くなってゆくのも、こちらの焦りや高まりを煽り、ページを捲る指が止まらない。

  • 久しぶりにすごいミステリーを読みました。生活保護や性風俗など、社会の暗部をこれでもかと抉り出し、ドキュメンタリーかと思わせる圧倒的な文章力。それでいて、緻密な伏線やラストに待っている衝撃などミステリーとしての構成力も抜群です。夕飯抜きで読み切り、大満足でした。(twitter)

  • はじめは、三文週刊誌の記事みたいな出来ごとのあれこれに違和感を感じつつも、次第に共感をもってしまう。良質なサスペンスになっているのは、鈴木陽子をはじめ、登場人物たちの心理描写がグイっと心に入ってくるから

    主人公、鈴木陽子の人生、母親に愛されないところからはじまって、ゴロゴロ落ちては膨らんでいく、不幸の雪だるまっぷりがすさまじい。
    正直読んでいてげんなりする場面も少なくなかった。それでも読み進めるうちに、堕ち方と反比例するように、なんだか分からない力強さを感じるようになってきて、明らかに転落しているのに、何故かアカンことと分かっていても喝采をおくりたくなる。
    ラストは「おぉ、よう頑張った」とエールを送ってしまい、なんだか元気と勇気をもらってしまうような。倫理や道徳的なこと考えたら、絶対アカンことだけど、明日自分が陥いるかもしれない社会の闇の中で、洗濯機のごとく翻弄されつつも生き抜いていくしたたかさに、俺の陰や負な部分がジンジン刺激されてページ繰る手が止まらなくなる。

    宮部みゆきの「理由」「火車」あたりを思い出すような作風。
    残念ながら、さすがに(当時の)宮部超えまでに至らないと思うが、これは十分に傑作。

    余談。新刊帯には「ラスト4行目に驚愕」ってなことを書いてあったらしいが、帯がなくて良かった。読んでたら☆の数減らしたいぐらい陳腐な煽りだと思うぞ。

  • よくできている。
    よく練られていて確かに面白かったのだけれど…なんとなく予想していた結末だったのと、女ならではの苦しみや暗部のようなものをさもわかったように男性が描いているという印象が拭えず、どうにも居心地が悪くて、一歩引いてしまっている自分がいた。そのせいで目一杯楽しめなかった。
    どう、女ってこうだろ?わかってるだろ?的にどうしても見えてしまって…。

    実際の時代の流れや社会の出来事などを絡めているので舞台の臨場感はあるのだか、それが余計に、主人公の嘘臭さ、想像で描かれた作りモノっぽさを際立たせていたように思えた。
    ごめんなさい、単純に好みの問題です。

  • 「すごいな、」と思った綾乃の感情と一緒。
    まさかそうきたか感が、読んで良かったと思わせました。
    内容的には、ある不幸な女性の人生なんだけど、
    こういうのがあるから、ミステリー小説は止められないんです。

  • TBSラジオのsession22で紹介されているのを聴き、手にとりました。これを読むために早く退社するほど、結末が気になってしょうがなかった!!
    始まりは、マンションの一室で女性の変死体が発見されるところから。近年増加している孤独死かと思われたが、その真実は…。女性の貧困、日本のセーフティネットのザルさ、といった社会問題が織り込まれている物語にはリアリティがあり、より恐怖を覚える。ノンフィクションといわれても信じるかもしれない…。併せて「最貧困女子」を読んだのもよかった。最後はハッピーエンドなのか、そうでないのか、意見が分かれそう。わたしはハッピーエンド派…

  • 『ロストケア』で知った葉真中作品の2冊目。ロストケア読了後、この『絶叫』が気になってしまい、すぐに読みたかったが、たぶん続けては無理だろうと、間に荻原浩作品を挟んでから読み始めた。長編ながらグイグイ引き込まれ、一気に読めるのは二つの事件が並行し、女刑事のプライベートもはさみつつの語りを入れた作りだからであろうか。どっぷり重いのだか、転げ落ちる陽子の人生、同じ女性としてここで自分だったら…と思わずにいられない。
    「あなた」という表現は誰からの「あなた」?
    常に考えながらも分からず。ラストのラストにして理解する。このまま殺され無惨な最期はあまりにも…と思わされてしまうだけに、そうか負けなかったのだと感じてしまう。そして生まれかわり、居場所を作った。中盤での伏せんに気づかなかっただけにザワザワしてしまった。本当に恐ろしいが、たくましい凄い女。
    そして凄い話だ。

  • +++
    平凡な女、鈴木陽子が死んだ。誰にも知られずに何カ月も経って……。
    猫に喰われた死体となって見つかった女は、どんな人生を辿ってきたのだろうか?
    社会から棄てられた女が、凶悪な犯罪に手を染め堕ちていく生き地獄、魂の叫びを描く!
    +++

    まず冒頭に、ひとりの男性が殺害された新聞記事が置かれている。それに続くプロローグで、物語の主人公である鈴木陽子は、多数の猫に食い荒らされて死因すらわからない孤独死状態で発見されるのである。物語は、陽子が幼いころから順を追って、彼女を「あなた」と呼ぶ誰かによって語られる章と、捜査する刑事・奥貫綾乃の視点で語られる章とが交互に繰り返される形で進んでいく。無残な死体となるまでの陽子の生き様は、ほんの少し踏み出す角度がずれていたら、誰もが陥ってしまったかもしれない道筋のように思われ、そのときどきには抗うことができなかっただろうと、絶望的な気分にさせられる。それでも、なんとかならなかったのは、やはり彼女の育った環境と、それを跳ね返せなかった彼女自身の弱さゆえなのだろうか。さまざまな汚れ仕事を経験し、犯罪の片棒を担ぐまでになってしまった彼女だが、彼女を「あなた」と呼ぶ人物に光が当たったとき、驚きに目を瞠るとともに、なぜか少しだけほっとしてしまったのも事実である。読み始めたら目を離せなくなる一冊である。

  • #読了。初読み作家。
    自分の体を食べた猫の死体と共に死後数カ月経って発見された女、鈴木陽子。凶悪な犯罪にまで手を染めていく、彼女の堕ちていく様を、現代社会の問題とともに描く。
    視点が3つに分かれるのに一瞬戸惑ったが、その構成自体も面白かった。陽子が堕ちていく様は、ありがちといえばありがちだが、旨く描かれていて物語に引き込まれていった。一気に読めた。

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