絶叫

著者 :
  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (522ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334929732

感想・レビュー・書評

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  • マンションの一室で見つかった、女性の孤独死体。なぜ彼女はこんな死に方をしなければならなかったのか、そして彼女の人生には何があったのか。それを探るうちに浮かび上がってくるとある事件との繋がり。「鈴木陽子」という一人の女性の人生を軸に現代の生きにくさを描いた、圧倒的な息苦しさに満ちた一作。
    現代の日本は、たしかに豊かな国なのだと思います。それでもその中で落ちこぼれてしまう人は一定数いて、その人たちは特別に愚かだというわけでもなく。誰でもちょっとしたきっかけで落ちてしまうことがあり得るのだなあ、と。案外と身近で他人事ではない恐怖と哀しさを感じてしまいました。
    繰り返し語られる「自然現象」の原理。そう思うことができれば、生きるのは楽になるのでしょうか。それとも苦しくなるのでしょうか……。

  • いゃあ、なんとも壮絶な1人の女性の人生。最後は何となくホッとした?というか、良かったと思った。陽子は、頭の回る女だったんだと納得。転んでもタダでは起きない強さを持ってたんだ。こんな人生あり得ないと思いながらも、案外誰もが陥る人生の転落劇かもと思うと読んでると薄ら寒い気持ちになって来た。家族神話は本当に崩れたのか?誰も懲りないという漫画を読んでたので、それと被り虚しさが。始めに書いたように最後で救われた?気持ちにはなったが、読み応えのある本だった。葉真中さんのロストケアもだけど、捨てられ人生の軌道から外れた人の話は読んでいて痛い。

  • 一行目:「その部屋には、死の海が広がっていた。」
    これはスゴイよ。重たいよ。
    ロスト・ケアの時は、ミステリという枠にこだわるあまり、若干無理があった。が、今回は書きたいものをしっかりと書き、人物置き換えという手法を手に入れたことで、ぐっとミステリ要素を入れることに成功した。
    NPO法人の代表が殺された事件。重要参考人の女が逃亡中、とあるマンションで女の遺体が出る。鈴木陽子、とみられるその女の人生は、大きなものに流されながら、社会の隙間に落ちていったのだったー。
    母子の関係、夫との関係、いつしか保険金殺人にすら手を染めた、彼女が自分自身で選んだ結末とはー。
    「ケモノの城」と似ている。最初は突拍子もない遠い世界の事件に聞こえるが、彼女の人生を辿っていくことで、ヒタヒタとどこにでもいるような、平凡な女が近づいてくる。また、事件を捜査する女刑事綾乃との共通点からも、いつでも社会の隙間は人間を飲み込むのだ、と感じられる。
    マンションの遺体は、デリヘル時代の同僚を身代わりにしたもの。自分だけが生きていくために、母をも殺す。怖い。
    一気読みがオススメ。

  • コレはやられました。けっこう深読みしたつもりではあったのですが、さらにその上を行く驚愕のラストに感服。最後から4行目で「そうやったんかぁ」と思わずうならせる伏線はお見事の一言。

  • 色々複雑・・・。
    陽子には幸せになってほしい・・・ような
    なってほしくないような・・・。
    ちょっとした歯車が狂うことで人生が思いもかけない
    方向に転がって行くのは・・・「嫌われ松子」に
    似てるかも。。

  • 2014/11/01読了

  • 絶叫

    前作の「全選考委員をうならせた骨太エンターテインメント」でミステリ賞をとり、デビューした葉真中顕の期待の新作、だそうである。
    なんとなく切れが悪いのは私がその前作を読んでいないから。会社にあってなんとなく手に取ったという、理想的でない読者だったから。

    前作が介護がテーマだったらしいのだが、本作品は、ホームレスにからむ利権?の話なので、その意味でこの人は、新人ながらきちんと狙って、テーマを絞っている人なのだろう。
    また、飼い猫に食われた腐乱死体となって発見された「鈴木陽子」の生涯を、「あなたは〜をした」と順行するいわばA面と、その彼女がなぜこんな死に方をしなければならなかったのか、バツイチの女刑事の目線で遡るB面で交互に進める、展開も丁寧で盛り上げる。
    ただ、どこの時点でどう交差するのか、ハラハラ追いかけさせるのはよいのだが、女刑事自身の踏み込みが微妙で、狙いとしてはネグレクトの側面を引き出したかったんだろうけど、そのかみ合い方がいまひとつ不十分だったような気がした。
    謎の女を追いかける社会派的な展開としたら宮部みゆきの火車とか思い浮かぶのだけれど、追う側の執念とかが感じられなったからなのかも。さらっと終わり、読み終わって「骨太」とは思えなかったような。

    しかも、かなり早い段階でネタがばれてしまう、というか予測できてしまう。丁寧なA面構成があだとなっているというか、だって、これだけ思考の癖を見せつけられたら、その思考がどこに着地するかはわかってしまうものねえ。

    あとは、ファミリーとしての結束力の根拠が希薄とか、罪悪感へのあまりの鈍感さとその画一的すぎるところが薄い気がしたなあ、とか。綻びのなさが不自然すぎてちょっと嘘っぽすぎというか。

    テーマはいいし、だけに、そこが真実味を帯びたらすごいんじゃないのかな、って思う。派手なシリアルキラーものでもサイコでもない、だけどしんみりとした狂気を、もすこしねちっこく書いてもらえたら、なんて思いましたとさ。

  • どうしてこんな風にしか生きられないのだろう、なんでこんなことになってしまったのだろう、可哀想だ、なんとかならないのか、と、思いながら読むだろう。
    ただ、その生を祝福され、認められ、そばにいて笑顔で語り合う。たったそれだけのことをなぜだれも彼女に与えられないのだろうか、普通の幸せってそんなに手に入れにくいないものなのだろうか、と…
    全身で彼女に対して同情をしその「死」を悼ん…で…いたのに…なんてこった!!
    いや、途中でいくつか疑問が生まれていたのだ。そして多分その疑問にたいする答えも見えていたのだろう。けど、気付かないふりをして最後まで「不幸な女に同情する私」を味わいたかったのだ。最悪の人生と最悪の「死」、孤独死のあと飼い猫にその身体を食い尽くされる、不幸の極地に住むオンナの人生を同情したかった、のに。なんてこった…

    そして最後のページで気付く、作者のしかけ。そうかそうか。そうだよな。そんな気がしたんだよ!

  • ある孤独死からはじまる物語。

    すごくおもしろくてページをめくる手がとまらなかった…
    正直バカな女だなあって思いながら読んでたところもあるんだけど、全然違った。生き抜くために強く賢く行動でき、どう生きるかを「選んだ」女だった。しばらく余韻にひたります…

  • 一人の女が亡くなった。発見されたのは数か月後。社会から捨てられて墜ちていく彼女の人生。いろいろと苦しくなる展開だった。

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著者プロフィール

葉真中顕

1976年東京都生まれ。2013年『ロスト・ケア』で第16回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞しデビュー。2019年『凍てつく太陽』で第21回大藪春彦賞、第72回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)を受賞。

「2022年 『ロング・アフタヌーン』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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