第1感 「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい

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  • Amazon.co.jp ・本 (263ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334961886

作品紹介・あらすじ

人間には理屈を超えた"何か"がある。心理学で注目を集める「適応性無意識」とは?全米連続50週ベストセラー、世界34ヵ国で翻訳。

感想・レビュー・書評

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  • はじめての人と出合ったり、本物なのか贋作なのかわからない美術品とでくわしたり、そういったとき人は、無意識のうちに瞬時に正しい判断を下せるものなのだ、というのが、本書の大きなテーマです。逆に、情報過多になるくらいの情報をふまえて判断していくほうがよっぽど間違えるものだ、ということも明らかにしていました。様々な事例や研究から論立てしていく構成になっています。

    誰しも第一印象が正しかったケースを経験していると思います。同様に、第一印象で間違ってしまった経験もあるでしょう。それは偶然の産物ではない、と著者は論じていくわけです。最初の2秒での判断を、本書では「輪切り」と呼びます。その瞬間の輪切りから情報を取り出して、人の無意識は一瞬のうちにただしい判断をするのだと。でも、そこには個人差があります。経験や知識、訓練といったものが積み重なっていてこそ、輪切りによる判断はうまくいくようです。また、輪切りから引き出されるさまざまな情報のうち、どれがその場合においてもっとも重要なポイントなのかも判断するカギになる。たとえば、輪切りから10の情報を手に入れたとして、判断に使うのはそのうちでも重要な3つだとかになるわけです。そういった判断、選択、決定の精度が経験や知識、訓練によって上がっていくもので、そうやって精度の上がった「第一感」はより正しく瞬時に判断を下すものだし、「第一感」を信頼できるようにもなっていきます。

    また、アメリカでは警察による誤認発砲などで命を落としてしまう黒人のひとたちが多数いるのですが、そういう場合になぜ「第一感」が作動しないか、というところも本書の後半部で明らかにしています。そこには、自閉症の人とおなじように、人の心が読めなくなる心理が働くためだという理由がある。人の心が読めなくなるのは、興奮しすぎている状態がそうだといいます。また、同様に、心拍数が175を超えるなど過剰に血流がよすぎるようになると、これも興奮状態であって、人であってもモノとして捉えるような集中の仕方(これも自閉症的なのです)になってしまう。つまり、落ち着いていないと第一感を捉えられないのです。瞬時に判断する第一感といえど、自らが落ちつくための時間が必要であるのでした。あまりに短い時間での判断を強いられても、第一感以前の最低限の直観的反応しかできなくなるそうです。たとえば、とりあえず怪しい人物へと銃を構えるというような。

    本書で特におもしろかったのは、表情からピタリとその人の感情や嘘をついているかなどを当ててしまう教授の話です。目は口ほどにモノを言う、といいますが、顔全体は目よりもモノを言っているみたいです。表情筋の動きや、できた皺から、その人が寛容な人物なのか凶暴な人物なのかさえ判断できるとのことです。そんな人の顔から、僕たちは日常的に第一印象で無意識に判断していて、好感をもったり嫌悪感を抱いたりします。まあ、判断する側の価値観も関係するわけですから、そのあたりも鑑みる必要がありそうだと、僕は考えましたが、人の顔にはそれだけありありとその人の人間性が表出されているのだなあと知ると、ちょっと怖さも感じました。

    それと、この表情から人となりなどを当ててしまう教授が学生の頃に競馬の予想屋をやってかなり儲けたそうで、その予想の切り口がどうやら競走馬の心理を考えるものなのでした。あるレースである牝馬に負けた牡馬が、別のレースでその牝馬と一緒になり、となりのゲートに入ったならその牡馬は決して勝てない、だとか理論があるそうで。もうちょっと詳しく知りたくなりましたが、数行程度でその記述は終わっていて、惜しかったです……。

    というところですが、読み応えのある良書でした。翻訳もよみやすいです。2006年発刊ですが、内容はまだまだ古くなっていません。言語化することで第一感が鈍ってしまう、という章もありそこもなかなか肯けるのですが、言語化でアジャストしていくことが良いのだ、とする現在の認知科学の方法論と照らして読んでみると、自分なりの咀嚼ができるのではないかなと思います。

  • OUTLIERS(THE STORY OF SUCCESS)
    天才!成功する人々の法則(マルコム グラッドウェル、勝間和代訳)
    天才、生まれながらの天才なんてい無い。
    たった一人で成功した者はいない。ビルゲイツやスティーブ・ジョブズも1950年代に生まれて、コンピューターにであって今がある。天才は才能に恵まれて、環境や出会う人に恵まれ、10000万時間の努力ができて初めて天才と呼ばれる人が生まれるのだ。
    成功者、天才は歴史と社会、好機と遺産の産物である。
    成功した人は自分が努力したからと思ってる人が多いが、努力しても成功出来なかった人は多い、本人の努力はもちろん必要だが、環境、時代背景、周囲の人に、祖先に支えられて初めて成功するものである。
    成功者の『努力と個人的資質が全てを決める』という考え方は間違っている。
    どんなに個人の能力が高くても環境が悪い時就職氷河期に当たった人達はその後不遇な人生を送ってる人は多い。これが現実だ。
    全て本人の努力不足と言う人は傲慢だ。
    そしてどんな天才もモーツァルトもビートルズも『1万時間』のスキル習得のための時間は必要であった。生まれてすぐに全て出来たわけではない。この『長期にわたってトレーニングを積める機会』こそが、『並外れた好機』なのである。今の若者にこのチャンスが失われている事が問題なのだ。
    どんなにIQが高くても父母が貧しかったり、理解がなくそれを発揮する機会が与えられなければ、成功するチャンスは減るだろう。
    我々が出来ることはそのような若者のチャンスを減らさないよう、むしろ増やしていけるようにする事だろう。能力が有っても機会に恵まれない若者を救う『ミスター•チャンス』
    (タイガーマスクみたいな)になる事が必要だ。
    我が国では今、相対的貧困家庭(年収が全国民平均の年収の中央値の半分に満たない家庭)に生まれる子供は全体の15%もいる。これが母子家庭に限っていえば、なんと60%にも達している。他の国にも貧困家庭に生まれる子供はいるが、主要OECD諸国で唯一税金の再配分後でも貧困率が上がる国となっている。これはおかしい話だ。 

  • 直感が他のいろいろなものに勝るときや、またその逆についていろいろな事象や実験をもとに書かれている

    面白いけど、それだけ、とも言える。

    行動経済学の本なんかにはよく書かれてあるけど、人間は選択肢が多いほど決められないということが1番納得した。


  • 本書のタイトルと、サブタイトルの「最初の2秒がなんとなく正しい」が表しているとおり、第一印象を科学的に分析した内容。

    面白い内容ではあるけど、読み終わってしばらくしたらあまり印象に残っていない。


    なんとなく、というのを判断の根拠にした時、基本的にあまり良い印象はないよね。
    「なんとなくじゃなくて、はっきりと根拠を!」
    と言われそう。
    特にビジネスの世界では。

    ただその「なんとなく」も、ちゃんと自分の人生で得てきた経験を無意識的にではあるが、バックボーン(作中では輪切りの能力と称してます)にしており、意外と馬鹿にできませんよ、っていう事を色々な事例を交えて紹介してくれている。


    ヨーロッパ系アメリカ人とアフリカ系アメリカ人の件は面白い。
    確かに、と頷かされます。

    しばらくして再読かな。

  • このタイトルに何らかの閃きを感じたり、シンパシーを感じる人には読む価値が無い。何故ならごちゃごちゃと論証しているが、直感が正しいと言うことに対して経験上そうなのだという以上のロジックは出てこないからである。

  • 最初の2秒の判断が正しい例と、正しくない例と、経験を積むと最初の2秒で正しい判断が出来る例と、経験を積んでも正しい判断が出来ない例と、まあどっちも出てきて、
    タイトルの「第1感 「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい」は、
    第1感 「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい(ことも結構ある)
    くらいがよいのではという印象でした。
    まあ、頼りすぎるのも良くないよね、っていう反論封じなのかも知れません。

  • 人はちょっとの情報で本質に近いことを把握する能力がある。それが第一印象であり、理由は分からないが、感じるものがあるということ。そして、それが正解であることも多い。
    ただ、消費者調査となると、第一印象だけでは評価できないのに第一印象だけで評価しようとしたり、斬新で違和感を感じていることを拒否反応と捉えたりと、エラーが起こり得る。もっとも、違和感が最初だけの場合もあれば、それがずっと続く場合もある。
    第一印象の重要性と、その理解の仕方の難しさが述べられており、ニューコークの事例などは興味深い。私自身、このタイトルに魅かれて、第一印象で買ってしまったのだが、この第一印象は正しかった。

  • 2024/02/27読破 
    一言 ファーストチェス理論

    感想 徳間さんのおおすめの本にあり読みましたが、目新しいことはありませんでした。海外での体験記は面白いので、読み物としてはいいかもしれないです。

    下記は印象に残った点

    p66
    前頭葉腹内側部に損傷があると、知識と行動の繋がりが断たれてしまう。
    →理性が働いた行動ができない

    p142
    余計な情報はただ無用なだけではなく、有害でもある。
    →人に伝えるときは、過不足ないことが大切。

  • タイトルからはHOW TOか自己探求ものかと思ったが、心理学実験や実際の事件を通して人間の感情や判断力のもとを読み解くというもの。科学ドキュメンタリー番組を見ているような感じで楽しみながら読めた。「謝辞」を読んだ後、カバーの写真に気づいた。なるほど。

  • 瞬時の判断には、蓄積したデータと経験が必要。プロは無意識に積み重ねた経験を基に判断している。 第一印象は、無意識のステレオタイプや言語化できない部分を最もらしい理由に合わせてしまう傾向があり、判断を間違うことが多分にある。 第1感は存在している。 正しい判断をしていくために、直感的な思考と熟考のスキルを鍛えていきたい。

  • 前著ティッピングポイント、邦訳「急に売れ始めるにはワケがある ネットワーク理論が明らかにする口コミの法則」が面白かったので手に取った。

    瞬時に下した判断は、慎重に時間をかけて下した結論と比べて決して見劣りしない。
    適応性無意識と言うらしい。脳が瞬時に結論を導き出してくれる。常に専門情報をインプットしておくとそのレベルは上がりそうだ。

    但し、第一感の判断を言語化して表現するには訓練を要する。マヨネーズやコーラの各社の微妙な味の差を言語で表現する料理のプロ等の様に常日ごろ自分の興味と情熱をそそぐ何かについて表現する努力が求められる。逆に、素人が無理に言語化しようとすると記憶が捻じ曲がる可能性がある。市場調査では今までに存在しない新商品の体感を素人にヒアリングする時に気を付けたい。消費者は本当にそのモニターしている製品が嫌いなのか、それともまだ慣れていないのか、新商品との未来を想像できなければそもそも評価・表現できないものを、その場のセリフをそのまま間に受けると落とし穴にはまるかもしれない。マーケティングには心の行間を読み取り、プロとしての美意識や判断が必要になりそうだ。

    また第一感の弱点は、環境に左右されやすい点。
    偏見ですぐに判断が歪んでしまうし、ストレスがあっても判断が狂うし、時間が無さ過ぎても判断を間違えてしまう。

    これはハロー効果が一定の効果があることとも解釈できる。
    例えばある人に対して第一印象、外観が良い方が信頼感があるように評価したり能力がある様に評価をしてしまう効果のこと。

  • 影響力の武器の続編。
    ナポレオンの言葉はよくわかります。

  • 美術の贋作を見抜いたり離婚しそうな夫婦を見抜くのに綿密な調査や分析がなくても人間の直感で案外当たるものだ.ということを書いた本.事例が豊富.

    じゃあ応用する(第一感をいい方向にはたらからせる)子にはどうしたらいい?と考えるが,膨大な経験を積むしかないように見える.ハンターハンターのクラピカの念修行的な.
    ”どうやら私たちは自分の得意なこと,いつも気にかけていることに関しては,経験と情熱で第一印象の質を高めていけるらしい”

    至った第1感に論理的説得力を付与するのが能塚椎野と同様,第1感を身につけること自体も体系を確立することは難しく経験主義,帰納的アプローチを取るしかないみたいだ.

    ・断片的な情報による直感的な意思決定は実は役に立つ
     美術品の真贋判定
     あるゲームにおける攻略法への気づき
     夫婦の未来を数分の会話で見分ける
     医者がシンプルな質問事項である病の有無を判定する
    ・それとは反対の情報を可能な限り集め整理した情報が前者に劣ることもある.
     軍事演習(意思決定システムvs直感司令官)
    ・情報を集めれば集めるほど良いとは限らない.
    ・その道のプロでも大衆の反応を読めるとは限らない
      ある音楽家のプロデュース

    ・口では合理的説明な難しい直感的判断が大衆の意思決定を変えうる 感覚転移
     マーガリンのプロデュース,味や食感といった製品そのものの質ではなく色や包装に着目し支持を獲得:感覚転移
     専門家に不評だった椅子が市場に出て徐々に評価されキャズム超え

    “市場調査には問題がある.よくない製品となじみがないだけの製品の違いを捉えられない場合が多いからだ”
    →質が悪いことと,馴染みがないことという対比は使えそう.
    →革新的テック企業やブロックチェーン・暗号資産業界に対する認知にも説明できそう.


    ====================

    カード巡り実験結果
    認識よりも早く直感的に危機察知

    意識的な働き 経験に学び、情報を蓄積し、整理、ら論理的

    無意識的働き 手のひらに発汗、時間がかからない
    →"適応性無意識"

    ”輪切り”ー>直感的判断の材料となる.断片的な情報

    ★”私たちは、判断の質はそれに費やした時間と努力に比例すると信じてきた"

    直感的アプローチで正解に気づけない理由
    ・科学を信じやすい
    ・こうであってほしいという願望が混じっている


    15分の夫婦の会話ー>1秒ごとに夫婦間の感情をスコアリングー>15年後の夫婦を予想できた.
    ジョン・ゴットマン

    戦争中のモールス信号の傍受
    暗号化された信号内容そのものではなく各担当が無意識に出してしまう信号の癖(信号長やリズム)から「誰が」通信しているか割り出し通信兵の数やシフトの推定にまで発展.筆跡鑑定
    →OSINTだ.

    夫婦の中を見極める顕著なサイン
    防衛,はぐらかし,批判,軽蔑. 特に軽蔑.

    医療訴訟ー>
    医療ミスの有無や診察の質ではなく医師の患者への接し方(声の調子など)によって訴訟の有無が分かれる

    プライミング実験ー>事前に見聞きしたことがその後の判断や行動に影響を与えること
    ・人種を意識させるだけでテストのスコアが低下
    ・落ち着き,忍耐や我慢を肯定する言葉を浴びることでその後の待つ動作の時間が実際に伸びる.

    前頭葉腹内側部を損傷した人に対する実験ー>”輪切り”が働かないー>ある意思決定に些末なメリットでメリットを挙げてノロノロと検討.
    (意思決定の筋が悪い人やができない人,ノロノロとした人への悪口に使えそう…)
    ー>直感的判断が我々の日常生活を支えている.システム2の思考だけでは良く生きていけない.
    ー>婚活イベントのペアをどんどん入れ替えて様々なパートナー候補と喋らせるのも.”瞬時の判断”機能を使うイベント.

    ”輪切り”の負の側面ー>見た目で人を判断してしまう.
    アメリカ第29代大統領ハーディング

    P91
    “人種や性別といった事柄に対する人の態度には二段階あるということだ.ひとつは意識的な態度,〜,無意識的な態度”
    →第一印象を捜査するという月並みな答えしかないが、人は見た目に騙されるという悲しい現実。意識的には平等・公平に人を扱うマインドを持っていたとしても無意識には。
    "第一印象は経験と環境から生まれる"
    "常にマイノリティと接し、一緒にいてうちとけられるようになり、彼らの文化のよい面に親しむ"
    →第1感が働くのを否定せずいい方に作用する経験を積む

    「感覚転移」:パッケージ(見た目)が品定めに影響
    “客は美味しいアイスクリームには金を出す.チョコチップが大きくなった場合と同じように,丸い容器に入っているほうがきっとおいしいに違いないと消費者は考える”

    ききジャムー>専門家と大学生で似たような結果になった.しかし評価の理由を書かせたら大学生側がダメダメに.
    ー>プロとアマチュア巻の「自分の考えを知る,表現する能力」の違い
      プロの方が第一印象を的確な語彙で再現できる.

    表情を作る筋肉と自律神経の動き
    →感情があって表情ができるだけでなく、表情が感情を想起する→顔色を読む、マインドリーディング

    自閉症患者 人を認識するときにものを認識するときと同じ脳領域が活発になる→人はただのモノ。目線を合わせる意味がわからない

  • たぶん、ほとんどの人が知ってた、っていうと思う。
    経験則からくる直感の話。
    人の表情とか仕草から判別している、もしくはそれまで培った経験と知識を無意識の内にデータベース化して結論を導き出していると。
    そういった意味では鍛えることができるし、逆に自閉症の人は人の顔色を読むことができないので難しいというのも興味深かった。

  • 読んで外れのない作家のひとりが書いた本作も、興味深い事例が扱われている。
    第4章「瞬時の判断力」では、米国史上最強の知的リソースが与えらえた青軍と実績ベースの赤軍によって、どちらが勝つかの予行演習が行われた。その結果は・・軍司令部の思惑とは逆に赤軍が勝ったのだが、実際に本戦に採用されたのは青軍だった。
    また、犯人を目撃した人物の記憶は、(自分の)言葉で安易に書き換えられる(特徴を言葉にした瞬間、記憶はその言葉に引きずられ変容する)という事実を、警察や裁判所は知っているのだろうか?
    第6章「心を読む力」では、4人の警察官が挙動不審な黒人を41発もの銃弾で射殺した。その原因は、先入観と勘違い、さらには被害者がどもり癖のある黒人だったことも輪をかけた。その後、パトロールは警官の一人乗車が主流になった。
    その他にも、マインドリーディングやクラッシック楽団の女性奏者受難の話、専門家の瞬間的違和感による贋作を見破る確率の高さ、ブラインドテストの限界など面白い話題がてんこ盛りです。
    全集中でお勧めします。

    著者:1963年イギリス生まれ。
    カナダ・トロント大学トリニティカレッジ卒。
    『ワシントン・ポスト』紙のビジネス、サイエンス担当記者を経て、現在は雑誌『ニューヨーカー』のスタッフライターとして活躍中。邦訳には『天才!』『ニューヨーカー傑作選』ほかがある。
    ある製品やメッセージが突然、爆発的に売れたり広まったりする仕組みを膨大な調査とユニークなフレームワークによって解き明かした最初の著書『ティッピング・ポイント』(邦題『急に売れ始めるにはワケがある ネットワーク理論が明らかにする口コミの法則』)、人間は、長時間考えてたどり着いた結論よりも、最初の直感やひらめきによって、物事の本質を見抜くという仮説を検証した2冊めの著書『ブリンク』(邦題『第1感 「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい』)は、いずれも世界で200万部を超える大ベストセラーになっている。

  • 面白かった

  • 直感は必ずしも正しくないということ、プロの直感は感覚によるものではなく、長年のトレーニングから生まれたものであるという話。

  • 直感は意外と正しいし、かつ養えるものという話。時間をかけたり、言語化することで正しかったものを間違えてしまうというのは面白い。また、時間がないと「自閉症」になり、情報を処理できずに誤った直感が働くというのは悲しい現実だと思う。話の趣旨は面白いが、文体は若干あきる。

  • 人間の無意識さの性質、判断においておこりうる事象の理解を進められる1冊。

    「Adaptive unconscious/適応力無意識の力」
    ・人は無意識のうちに素晴らしい判断を下す能力を持っている。
    綿密に時間のかかる理性的な分析と同じ位に、瞬間のひらめきには大きな意味がある。このことを認めてこそ、私たちは自分自身を、そしてそのそして自分の行動よりよく理解できる。
    ・審美的な判断よりも科学的な議論のほうがずっと客観的だと信じてきたが、そうではなかった。
    ・しかし無意識の判断の全てが正しいと言う保証は無い。体内コンピューターがいつでも正しい判断を下すと限らないのだ。時として、直感的なひらめき「第1感」を曇らせる何かが存在する。早く目玉商品が欲しいとか、初恋の相手だとかと言う類の事情である。そうだとすれば、第1感を信じて良い場合と信じてはいけない場合を区別する事は可能なのか。どんな時に体感は曇るのか、どんな時に体内コンピュータは来るのか曇るのかを理解することが重要。
    ・また、第1感は養うことができ、自由に操れる。

    第一章:輪切りの力
    ちょっとの情報で本質をつかむ
    ・人間の関係性に関しては、4つの感情に注目すれば良い。防衛、はぐらかし、批判、軽蔑である。その中でも軽蔑の感情が最も重要である。

    第二章:無意識の扉の奥
    理由はわからないでも感じる。
    ・瞬時の判断や瞬間的の日は閉じた扉の奥で起きる。どうも何が判断の根拠になったのか説明しようとしても正確にはできない。

    第3章:見た目の罠
    第一印象は経験と環境から生まれる。つまり第一印象を構成する経験を変えれば、第一印象を生む輪切りの方法を変えられるのだ。瞬間的なひらめき「第1感」のパワーを認め、結果はさておき第一印象が日々の生活に及ぼす影響力を認めるからには、そうしたパワーを管理し操作するために積極的にに行動する必要がある。

    第4章:瞬間の判断力
    論理的思考が洞察力を損なう
    ①正しく判断するには熟考と直感的な思考のバランスが必要だ。
    ②優れた判断には情報の節約が欠かせない。正しく判断下すには情報の編集が必要。選択肢が多すぎると、無意識の情報能力を超えて、麻痺してしまう。瞬間の判断を瞬時に下せるのは、情報が少ないからだ。瞬間の情報を邪魔したくなければ、情報を減らすことだ。
    第5章:プロの勘と大衆の反応

    「感覚転移」
    消費者がスーパーやデパートで製品を買うとき、製品のパッケージに対して抱いた感覚や印象を、知らず知らず製品そのものに転移ことである。
    要するに無意識のレベルでほとんどの人がパッケージと製品を区別しないと考えた。消費者にとって製品のパッケージと中身は一体なのだ。
    マーガリンの例として、白ではなく黄色にし、当時高品質の印であったアルミ箔で包んだ。消費者に良いと言われて訳ではないが、間接的に尋ね、本当の動機を理解した。
    コカコーラ、ペプシのケースでも同じことが言える。試飲調査の結果を重視しすぎただけではなく、ブランド名を伏せて飲み比べさせる「ブラインドテスト」の調査方法そのものが的外れだった。従来のコークがブラインドテストで負けたことなど気にするべきではなかったし、ペプシがブラインドテストで勝ちながら市場で勝ってなかったことにも驚くには当たらない。なぜなら実際にはコークの名を伏せて飲むことなどないからだ。コークを飲むときはブランド、イメージ、缶、見間違えようのない赤いロゴといった無意識の連想全て、コークの味の感覚に転移させるからである。
    コカコーラの失敗は、ペプシにシェアを奪われた原因が全て製品にあると考えた点にある。効果やペプシの売れ行きは、ブランドイメージに左右されやすい。彼らはそこ見落として、製品そのものを変える事しか考えなかった。一方、ペプシは若者に狙いを定め、マイケルジャクソンのイメージキャラクターに使って、イメージアップを図った。もちろんシーンでは甘い製品が好まれるわけだが、消費者は試飲によって購入する製品を決めたりしない。コカコーラの問題は白衣を着た研究者たちの力が強すぎたところにある。

    ・革新的製品は市場調査になじまない
    良くない製品となじみがないだけの製品の違いを捉えられない場合が多い。消費者がまだ見慣れないため当の理由で言語化できないことが多い。
    第一印象を再現できるプロ、訓練されていて言語化できるプロと、言語化するように訓練されていない消費者たちの違いは理解しておくべき。

    第6章:心を読む力
    以下の場合のように正しい判断ができなくなる状況を理解し、無意識を訓練するのが重要である。
    興奮すると相手の心が読めなくなる。
    人は時間がないと先入観に引きづられる。感覚という現実の証拠に頼るのをやめて、融通の効かないシステム、ステレオタイプに頼る。
    「仕切り越しのオーディション」女性だとわかっていたら採用されなかった、情報をシャットアウトした最初の二秒がやはり重要なのだ。

  • 読み終わるのに時間がかかった本。
    結局、何が伝えたいのかがわからない。

    第1感が正しいこともあるけれど、
    極限状態なると、それも怪しい。

    実例を列挙して書いてあるけれども、
    アメリカの話でピンと来ない。

    アメリカの警察官の実例がいくつも
    出てきたけれど、これを読むと、
    アメリカには住みたくないと思った。

    そんなことが伝えたい本質ではないと
    思うのだけど、ただ座っていただけで、
    勘違いされて、銃で撃たれるとか、
    絶対にイヤだなぁと思った。

    この本に書かれた研究、それぞれは、
    素晴らしい研究だと思えるのに、
    本になったら、その研究の素晴らしさが
    薄れてしまっているのが、もったいない。

    視覚情報について書いてある部分、
    表情が精神に与える影響、
    自閉症の人が見ている世界についての
    記述が印象に残った。

    ただ、伝えたかった本質はなんなのかが、
    わからない。

    ブクログのレビューをいくつか読んでみたけど、
    人それぞれ、書いていることが違うので、
    読んだ人も、内容が掴みきれなかったのではないかと
    推測する。

    良いことが書いてあるのに、印象に残らないのは、
    ちょっと残念な感じがする。

  • 「最初の2秒」の「なんとなく」という感覚がいかに物事の本質を捉えているか、を実験を通して証明しる。この「なんとなく」の感覚を第1感とし、人は無意識の中で現象を輪切りにして物事を見ていると結論づけている。
    面白かったのは、この第1感は超能力でもなんでもなく、その人が繰り返し習得してきた感覚によって得られるものだということ。本文中に登場してきた美術評論家やテニスコーチも、言葉にはできないが「なんとなく」わかるとあるので、あらゆる専門家が専門性において第1感が働くのだと思う。
    ただし、人種や性別、相手の容貌によってそれが歪んで働くこともわかった。ディアロ事件が紹介されているが、同様の事件は現在アメリカで絶えず起こっているのではないかと思われる。差別をしているつもりなどなくとも無意識の行動にでるのは、なかなか恐ろしいことだと感じた。

  • 結構、直感はあたる。

    直感でも外れる事もある。

    直感できる経験が必要。

    熟考しても直感で判断してもさほど変わらない。

    時間がない時は直感を信じるのもあり。

    先入観と事実は異なる。


    以上から、今後の自分への教訓

    感受性を磨くために何事も経験が必要。
    時間がなく判断に迫られた場合、間違ってもさほどダメージが大きくない場合などは、直感を信じて判断した方が生産性がある。

  • 原書タイトルは「Blink」…瞬き、転じて一瞬、さらに見て見ぬ振りをするの意である。普通なら第六感と呼ぶべきところを、このタイトルにしたのは、なかなかの策士である。題名にとどまらず、かなり濃い内容。これを、一気読み。もっと知りたいと思わせる箇所が多々あった。
    導入から面白い。
    カードを引く実験。赤はハイリスクハイリターン、青はその逆。被験者は50枚ほどめくったところで赤は危ないと言う仮説に至る。さらに30枚ほどめくることで、その仮説を検証することができる。しかし、被験者の手にストレス測定器(汗の量を測る)を取り付けると、最初の10枚の時点で既に明るカードにストレス反応を示し始めた。なんとなくルールがわかったと意識する(40枚目)はるか以前から、実は危険を回避する行動を取り始めていたこととなる。
    このように手持ちの情報を遍く用いることなく一気に結論にいたる脳の動きを「適応性無意識」と呼ぶ。
    (トンとツーだけの)モールス信号にも「筆跡」が出てしまい、その通信士が所属する舞台の所在地や通信頻度による戦況分析ができてしまう。
    夫婦の会話15分を1分ごとに「輪切り」にすることで90%の確率で15年後を「予言」できる。

    終盤、表情を作ることで、それに類した感情が喚起されるという。著者は、竹中直人氏の「笑いながら怒る人」のネタは知らないと思うが、あれなどは、どう解釈すれば良いのか? まあ、本論とはあまり関係のない話なのだが…。

    最後の警察官のエピソードは、冒頭の台詞に戻って「お気の毒」と言うしかないが、15年前のアメリカの現実なのだろう。

    「#第1感」(光文社、M.グラッドウェル著)
    Day235

    https://amzn.to/3hpW9b7

  • 面白い

    それぞれのエピソードが面白いし興味深い

    丁寧に読めば気づくこともありそうだが、読後感は意外と残らず

    結局経験がものを言うのか?

  • 原題はblink。まばたきする程度の短い時間ということだろう。
    最初の2秒での、正しい判断と結論はどこからやってくるのか。やはり、相応の学習と訓練が大事。また、多すぎる情報量はむしろ迷いをもたらすそうだ。要約するとこんなところか。
    いくつもの事例を取り上げているが、アメリカの警察官が黒人青年を誤って撃ってしまった件を取り上げている。この本のテーマはなぜ誤った判断をしたのかというところだが、黒人だからという点は判断に影響を与えなかったのかという点は言及されていない。そこを追及するとこの本のテーマとずれてしまうのだろうけれども。蛇足だがこの件に関わった警官4人はいずれも無罪。この本はもう15年も前に出版されたものだが、人種差別問題は全く変わっていないのだと伺わせるエピソードであった。

  • ここでは「理想と現実のずれ」について紹介したいと思います。スピードデートというのはご存知だろうか。

    これは、短いデートをして○か×をつけて、さらにその人と4回デートをして未来のパートナーに何を求めているのか、短いアンケートに答えてもらった。

    例えばこの実験で、仮にメアリーとジョンという名前の人がいたとしよう。この二人はジョンがメアリーの前に座った途端に、お互いに気に入っていることがよくわかった。

    典型的な一目惚れのケースに見えたが、ここで少し深ぼって簡単な質問をする。メアリーの評価は彼女が求める男性の要素として事前に答えたい内容と一致するだろうか。

    すなわちメアリーは男性のどこに惹かれるか正しく予測していただろうか。答えは簡単に出た。理想とする性格と、男性に会った瞬間に惹かれる性格は一致しなかった。

    例えばメアリーが知的で誠実な人がいいと事前に答えているが、ジョンは特に誠実でも頭が言い訳でもない。

    どちらかというと魅力的で面白い性格である。そしてさらに面白いのが、もし魅力的で面白い性格の人を気に入った翌日に、

    理想の男性の性格を聞いてみると、魅力的で面白い性格と言うだろう。だが翌日だけで、一ヶ月後に同じ質問をしたら、最初のように知的で誠実な人がいいと言うだろう。

    つまり、皆さんの想像してほしい。今まで好きになった人の共通点はなんだろう。決まった共通点があって好きになっただろうか。

    もしあると言う方は、それは後付けで考えた共通点ではないだろうか。周りにも、タイプの異性と付き合えたと言う人は少ないと思う。

    異性を好きになる時は結局、説明のできない何かがある。

  • 専門家や経験豊富な人は直感的に正しい解答を導きだす。一方で、無意識のバイアスによる偏った判断も多々あるし、情報を集めすぎても正しい判断はできない。事例は豊富で勉強になるが、タイトルと一貫性のない事例から、読書感想のまとめづらさを感じた。

  • 1

  • 直感が学術的なアプローチに勝つことがある。
    彫刻の年代を調べるのは、科学的なアプローチよりも職人たちの眼で見ることが重要だった。
    美味しいジャムを判断するのは直感でわかる。
    だが、その理由について説明を求められた途端、直感のときと評価が異なってしまう。
    プロしか直感を正しく表現できないのだ。

    一方で、直感に騙されることもよくある。
    警察が夜の見回りで怪しいと思う。
    仕事はともかく、風貌が大統領に見えるので当選する。

    また、直感とバイアスが相互に作用することもある。
    直感では素晴らしい演奏だとわかるが、女性であることがわかると良い演奏ではないと言う。
    仕切り越しかどうかで評価が変わるのだ。

    結局、どういうときに直感が有効なのか、直感を鍛えるにはどうしたらよいか、よくわからなかった。

  • 沢山の事例が載っていて退屈せずに読める。

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著者プロフィール

1963年イギリス生まれ。
カナダ・トロント大学トリニティカレッジ卒。
『ワシントン・ポスト』紙のビジネス、サイエンス担当記者を経て、現在は雑誌『ニューヨーカー』のスタッフライターとして活躍中。邦訳には『天才!』『ニューヨーカー傑作選』ほかがある。

ある製品やメッセージが突然、爆発的に売れたり広まったりする仕組みを膨大な調査とユニークなフレームワークによって解き明かした最初の著書『ティッピング・ポイント』(邦題『急に売れ始めるにはワケがある ネットワーク理論が明らかにする口コミの法則』)、人間は、長時間考えてたどり着いた結論よりも、最初の直感やひらめきによって、物事の本質を見抜くという仮説を検証した2冊めの著書『ブリンク』(邦題『第1感 「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい』)は、いずれも世界で200万部を超える大ベストセラーになっている。

「2014年 『逆転! 強敵や逆境に勝てる秘密』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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