- Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334978020
感想・レビュー・書評
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大学経営で成功している事例を知りたいと思い、読んでみました。
関西のローカル大学・近大こと近畿大学が、志願者数日本一になった要因を、関係者への取材を通して綴っています。
クロマグロの完全養殖成功の快挙といった大学独自の強みを伸ばしつつ、時代やニーズに合わせて学部を新設したり女性を呼び込むことで、大学イメージの刷新を図る。
キャッチーな広告、学生と一体になったオープンキャンパスなど、若者を惹きつける工夫もされており、大学全体が一丸となってよい方向に進んでいる様子がうかがえました。
読んでいていい意味で「大学っぽくない」と感じるところが多々あり、よい刺激を受けました。
これから大学だって競争していかなければならない時代、近大のように特色を押し出していく熱意が求められてくるのかも。
「一人の天才より百人の中堅を育てる」という考え方にも、ハッとさせられました。
著者の視点がやや近大に寄りすぎているように感じたことが少し残念でした。
もう一歩下がった視点から書かれたものがあれば、読んでみたいです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
⚫︎近大がno1になった理由
1,入試改革
①試験日程拡充②併願促進(全学部統一問題、センター利用)③ネット出願
2,女子学生の獲得
3,エコ出願、近大マグロのメディア露出
1,今までターゲット外だった女子に受け入れられるようにした。
-男子より2倍広く、パウダールームとしての役割を果たすトイレ
-キレイなキャンパス
-英語村E3(日本語NGのおしゃれなカフェ)
2,完全インターネット出願による受験料と手間の削減(エコ割)
3,オープンキャンパスでの細やかなホスピタリティー
-「来場ありがとうございます」などのへりくだった言葉
-夏場を考慮した水の配布
⚫︎マグロの養殖に成功した理由
-マグロの養殖が難しい理由
(そもそも)
1,動き続けなければならないため、大きな生簀と食費が必要
2,非常にナイーブ(薄く傷付きやすい皮膚、ストレス耐性の弱さ)
(さらに)
1,どこで受精しているかわからない
2,孵化したばかり、稚魚それぞれの段階での飼育法が全く不明。
これらを一つ一つ解決していった結果成功したが、他の研究機関と異なり継続できた理由は自主自立の精神による養殖ビジネスで研究機関費用を捻出できたから。
⚫︎近大マグロ店舗
小売していた時の人気から飲食店の可能性は考えていたが、サントリーの登場で一気に実現に向かう。結果、潜在的な日本人のマグロ嗜好性と世界初の完全養殖の注目度で大ヒット。
また、実学教育の場として文芸学部の学生が制作した陶芸の器の利用や農学部学生の考案したメニュー提供をしている。
⚫︎近大の広告戦略
1,広告の役割は、メディアで取り上げられたら終わりではなく、圧倒的な露出のもと、視聴者読者に記憶されて初めてPRになる。
豊田通商との協定という地味な記者会見においても、数多くのメディアに取り上げてもらうためワイドショーなどの要素やブロガーを利用した。
2,選択と集中。今までの広告媒体の見直し。
無料受験媒体誌や大学連合広告は大学の魅力をメッセージできないこと、通過率の悪さから掲載をやめ、自大学で作るメディアに力を入れることにした。
3,費用対効果の考え方→志願者が増えるかどうか。
+賞をとること。
4,広告出稿にあたっての3つの基本
①大学界の常識を逸脱したとしても目立つ
②大学名を隠しても近畿大の広告だとわかるようにすること
③クリエイティブを代理店に丸投げしないこと
5,広報(会社の活動の告知)において重要視していること。
プレスリリースの量→取り上げられる量を増やす&マスメディアの仲介のもとジャーナリストを介して取り組みや考えを伝えてもらう機会を増やすため。
スピード→ジャーナリストからすると即座の情報提供は嬉しいもので、先に来たものから精査する。結果取り上げられやすくなる。教授ごとの専門をまとめた冊子を報道機関に配布も。 -
【選んだ理由】
アマゾンで評価が良かったから。近大マグロが気になったから
【読んだ感想】
志願者が日本一になったことは、素直にすごいと思うが、マーケティングの一つな気がする。それよりも、近大マグロに代表される海産物系の話にもったページを割いて欲しかった。 -
☆信州大学附属図書館の所蔵はこちらです☆
http://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BB17332662 -
「近大」と言ったら「マグロ」という単語以外、全く何も知らない私が読んでみた。
逆に言うと、他の何も知らない私が「近大」と言ったら「マグロ」という単語を条件反射的に連結してしまうくらいに「近大マグロ」という言葉が知れ渡っているということになるだろう。
読んでいるうちに、(テレビで観た)つんく氏が入学式に登壇していたのはここ近大だったのか、ということを知る。
また、大学の創設者の珍しい苗字から、こういう苗字の議員さんが居たなあなんて思っていたら、思いっきり一族であり関係者であった。
へ〜と思うような内容を興味深く読み進めたが、半分あたりでなんだかもう食傷気味になってきて、6割の所で飽きてきた。
近大、なかなか頑張っていて偉いと思う。
半分くらい読んで、その頑張りがわかってきた時、ふと、本書は近大のしたたかな戦略のひとつとして、近大側が打ち出したコマーシャル本なのではないか?と思ったら急に冷めたという面もある。
以降飛ばし読み。
なので自分ルールに基づき読書状況は「未設定」とする。
追記:「未設定」があまりに増えてきてしまったので、読み終わってないけど「読み終わった」に登録変更。
2020/12/20 -
18歳人工が2018年から減少に転じる、いわゆる「2018年問題」。来るべく少子化高齢化社会に、近大はどんな対応策を練っているのだろうか?
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近代マグロでおなじみの産近甲龍の一角、近畿大学の最近の躍進ぶりの裏側を描いている。やはり広報部門に極めて優秀な人材がそろい(といっても一人のカリスマが引っ張っている)、そのアイデアをバックアップする理事会側の体制がなければ成功しなかったであろう。
文中でも触れられているが、ちょっと前までは男臭く野暮ったい大学で、憧れの対象ではなかった。かといってFラン大学でもなかったので中途半端であった。「超近代プロジェクト」と銘打ったプロジェクトには400億の資金が注入されたとしている。マンモス大学であっても、その金額を広報戦略につぎ込むことはかなりの冒険であったはずである。
近畿圏に付属の小学校を開講させて、エスカレーター式に学生を取り込もうとしている。少子化が待った無しであり、これから弱肉強食の時代がやってくることは間違いがない。近大のブランドがあれば、冒険しなくともある程度の学生集めはできるであろう。ただ、下り坂になった途端、再び戻ることは現実にはできない、だからこそ先行投資の意味があるのであろう。
とはいっても、東大を頂点とする学歴は今後崩れることはないだろう。現状の地位を維持するだけで精一杯かもしれない。それでもこれだけ力を入れるのはなぜだろう。
学生募集に対策を打つがこれといった効果のない大学は、おしなべて戦略に一貫性がなく、コンサルに言われた最低限のことをいやいややっている。それが学生にはお見通しで、だんだんと志願者数の減少となり、目的のない死んだような学生が集まることになる。そんな学生を見た将来の大学生(高校生)が、受験を取りやめる。負のスパイラルである。 -
派手な入学式は不本意入学者にここで頑張ろうと決意させるため。中退につながれば、大学経営にとっても打撃が大きい。
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近大マグロで話題になった近大が志願者数日本一になった理由が書かれている。近大目指してやってくる学生だけではなく、思い破れて入学してくる学生にも近大に来てよかったといえるよう改革を続けている。
卒業までには息子も満足できるようになってほしい。 -
「世界初のマグロの完全養殖」「志願者数日本一」で注目を集める近畿大学(近大)について、なぜそのような快挙が成し遂げられたのかを取材により解き明かしている。
実学重視の近大の校風がよくわかるとともに、広報戦略をはじめ近大の大学経営の卓越ぶりを感じた。偏差値により振り分けられてしまっている大学序列の現状に問題を提起し、「不本意入学者」にもいかに近大に満足してもらうかと試みる姿勢にも共感を覚えた。
本書を読んで、近大は今まで思っていた以上に良い大学だな、と感じた。しかし、本書はあまりに近大を持ち上げすぎているような印象ももった。いわば、近大の提灯記事的な本のようにも感じる。もう少し、政治家を含む同族経営であることの問題点など、批判的な視点もあったほうがよかったのではないだろうか。