利他主義と宗教

著者 :
  • 弘文堂
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784335160677

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  • 著者:稲場圭信

    【書誌情報】
    1,700円+税
    出版年月日:2011/12/15
    9784335160677
    4-6 224ページ

    東日本大震災という未曾有の災害に、人々の中に眠っていた思いやり、お互いさまの感覚、共感する心が再生したのではないか。利他主義、他者への思いやりと実践に関する教えをもつ宗教が今こそ社会の崩壊の危機に際して果たせる大きな役割があるのではないか。日本と英国でフィールドワークを重ね、宗教と利他主義の関係を探ってきた気鋭の宗教学者が、研究の成果をかけて熱い思いを語る、宗教人、ボランティア必読の書。<
    http://www.koubundou.co.jp/smp/book/b156054.html

    【軽いメモ】
    ・講演録。
    http://www.relnet.co.jp/kokusyu/brief/kkouen43.htm


    【目次】

    I章 東日本大震災と宗教 
        震災における宗教団体の動き
        救援の拠点としての宗教施設
        阪神淡路大震災からの変化
        宗教者・学者の連携の動き
        心のケアと共感する力 

    II章 宗教的利他主義・社会貢献の可能性 
        利他主義
        宗教的利他主義
        宗教の社会貢献の定義と分類
        ソーシャル・キャピタルとしての宗教
        社会参加仏教
        宗教的利他主義・社会貢献への期待 

    III章 宗教的利他主義の構造 
        利他主義のフィールドワーク
        JAとFWBOの社会的特性と価値観
        利他主義の意味内容
        利他的行動の動機
        利他的精神の発達要因
        シェアされるスピリチュアリティ
        新宗教信仰者の利他主義 

    IV章 無自覚の宗教性と利他主義 
        ソーシャル・キャピタルとしての宗教への期待
        現代の日本社会
        日本人の意識構造
        日本人の宗教性
        ソーシャル・キャピタルとしての無自覚の宗教性
        利他主義への契機を含む無自覚の宗教性 

    V章 宗教の社会貢献活動に関する文化・歴史的背景と法制度
        社会貢献活動に関する文化的・歴史的背景
        社会貢献活動に関する制度と宗教団体
        宗教団体の社会貢献活動と社会的基盤
        宗教NGO
        アメリカのチャリタブル・チョイス 

    VI章 グローバル化とシェアすることの意味
        現代都市の多民族的環境
        多民族都市における信頼と憎悪
        岐路に立つ多文化主義と市民社会
        ハワイの宗教受容~現地化する灯籠流し 

    終章 宗教的利他主義のゆくえ 
        利他行ネットワーク
        教団の社会的関わりと方向性
        公共性と宗教
        阪神淡路大震災から東日本大震災へ
        共感縁の誕生
        現代社会 今、求められているもの 

  •  fb友達の推薦。人から推薦される本ははずれがすくない。

     この本は、宗教団体が東日本大震災の復旧活動に活躍した話と、そもそも宗教団体横断的に利他主義がどう位置づけられ、意識され、活動しているかを分析した話の二本だて。

    なるほどと思った点と、勉強になった点。

    (1)私たちの中にある、苦難にある人へ寄せる思い、共感だ。あらゆる縁が弱まった社会に、今「無自覚の宗教性」に基づいた「共感縁」が生まれたのだ。(p203)

     やはり、3.11以降、意識が変わりましたよね。この意識を今度はわすれないように、被災地はまだまだ苦しんでいるので、わすれないことが大事と思います。

    (2)もちろん、青少年をあたたかく見守る中高年も多いが、社会全体をみると若者へ差し伸べられるあたたかい手、それが減っているのではないか。(p205)

     次ぎの世代に善い経済社会、いい共同体を残すという意識、自分では中年になって強く感じのですが、やはり減っているのでしょうか。

    (3)イギリスは、古くから団体結社の自由を認めていることから、宗教団体も他の団体と同じ、チャリティ法で規律しているのに対して、フランスは結社の自由を厳しく規制した歴史があることから、宗教団体は他の団体とは別のアソシオン法をもつ。アメリカは、世俗化している英仏と違い、教会に国民の4割がかよい、そして宗教団体を母体とした社会貢献活動が7000万人以上を支援し、その額は年間2兆円を超える。(p145)

     ちょっと、簡単にまとめすぎたが、学術的にもキリスト教社会といわれる英米仏で、歴史的経緯、世俗化の状況の違いなどから、宗教団体の社会貢献の状況が違うのは、おもしろいと思った。

     自分は、統一教会とかが大学に盛んに勧誘していた時代、某有力宗教団体の信者の友人に下宿に押しかけられた経験をもつ大学生活を送ったので、どうしても、宗教団体にはしりごみをしてしまう。

     その誤解を説く意味でも有意義な本であった。

     あと、この本のカバーする範囲ではないが、原発の安定化のような通常の国民には手のだせない分野の災害について、国民が「原発の収めてください」と祈ることも、うまく説明できないが大事だと思う。自分は原発それ自体にはそれしかできないが、いつも、仏壇で朝晩原発の沈静化を祈っています。

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著者プロフィール

2000年ロンドン大学大学院博士課程修了。Ph.D.(宗教社会学)(2000年)。現在、大阪大学大学院人間科学研究科教授。専門分野は、宗教社会学、共生学。

主要著書
『利他主義と宗教』(2011年、弘文堂)
『アメリカ創価学会における異体同心』(2018年、新曜社、川端亮との共著)

Dr. Keishin INABA is Professor of Graduate School of Human Sciences, Osaka University in Japan. He studied religion at the University of Tokyo and obtained his Ph.D. in sociology of religion at King’s College, University of London in 2000. He is the author of several English and Japanese books on religions and altruism.

「2023年 『“Many in Body, One in Mind”』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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