大学の危機: 日本は21世紀の人材を養成しているか

著者 :
  • 弘文堂
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  • Amazon.co.jp ・本 (277ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784335551413

作品紹介・あらすじ

国を超えた熾烈な知的競争が始まっている。社会を牽引する優れた人材を生む「教育の質」が問われている。いま大学が奮起しなければ日本の将来はさらに危うい。

感想・レビュー・書評

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  • 元・文部省の役人の方ですが、大学の問題を良く理解していただいています。「大学の授業はそれほど価値がないものなのか。物事を論理的に考える能力、真実を探求する精神、批判的な思考力、人生や価値についての深い考察力は課外活動では身につけることができない重要な知的能力」との主張は全くその通りです。知識ではなく、思考と体験を重視する立場から教養教育の中に社会体験を取り入れるということもこれからしていきたいことである。ハーバード大学が1年間の海外経験をさせる方針ということは、翻って面白いものです。海外留学が減って「若者の内向き志向」が言われるが、実は大人がそうなのでは?という問いかけは全く反論の余地がありません。それが外国人採用、外国大学出身者の採用という形で少しずつ変わっていこうとしていることは大変望ましいことなのですが・・・。日本は高学歴社会ではなく、今や大学院進学率では世界各国に大幅に遅れを取っている!!そのことの危機感はもっと持つべきなのでしょうね。これからは東大も外国大学との競争で受験生を奪い合う時代になってほしいものです。東大の新入生のための「今日のためのブックガイド」370冊の本が紹介されているということで、ぜひリストを知りたいのでものです。

  • 著者の草原氏は学長も務められた元文部官僚。
    タイトルから想像する以上に具体的な大学改革方策が述べられている。
    しかも内容と文章が極めて明快である(痛快なくらい)。

    大学の機能としては、①教養ある社会人の育成 ②質の高い専門家養成 ③知見の創造者の育成 ④多様な人生設計を可能にする の4つをあげている。

    ・狭い専門領域の学部組織を廃止・統合して、文理学部や教養学部といった幅広い組織に再編するくらいの思い切った方策をとることも検討すべき(p97)
    ・専門職養成を目的としない修士課程については、今後は規模を縮小するなり教育内容を改善するなりの思い切った措置が必要(p139)
    ・「啐啄同時」が教育の要諦(p207)
    ・職業大学の創設(p217)
    ・(大学改革は)「上から引き上げる」発想(p221)
    ・大学行政に初等中等行政的な手法を持ち込んではいけない(p223)
    ・認証評価の在り方についてはきちんと議論する必要がある(p234)
    ・政府の主導により個別プロジェクトのレベルで大学の教育活動を競わせるのは競争原理のはき違い(p249)
    ・地域別の法人化(p255)

    など共感できるものや自大学で実施したいものがたくさんあった。

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著者プロフィール

1941年北海道生まれ。東京大学教養学部卒。文部省に入省後、コーネル大学経営行政大学院留学、ユネスコ本部勤務を経て、文部省大臣官房審議官(高等教育局担当)、生涯学習局長等を歴任した後、拓殖大学副学長兼拓殖大学北海道短期大学学長を務め、現在は拓殖大学名誉教授。その間に日本ユネスコ国内委員会委員、日米文化教育交流会議委員、日米教育委員会(フルブライト委員会)委員などを歴任し、現在も(一財)英語教育協議会理事長、(公社)日本空手協会会長、(公財)合気会理事を務める。
主な著書:『近代日本の世界体験』(小学館スクウェア、2004年)『日本の大学制度』(弘文堂、2008年)『「徳」の教育論』(共編、芙蓉書房出版、2009年)『大学の危機』(弘文堂、2010年)『新渡戸稲造 1862-1933 (新版) 我、太平洋の橋とならん』(藤原書店、 2021年)『新渡戸稲造はなぜ「武士道」を書いたのか』(PHP新書、2017年)『武道文化としての空手道』(芙蓉書房出版、2019年)

「2022年 『新渡戸稲造に学ぶ近代史の教訓』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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