現代社会学事典

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制作 : 大澤 真幸  吉見 俊哉  鷲田 清一  見田 宗介 
  • 弘文堂 (2012年12月3日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (1648ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784335551482

現代社会学事典の感想・レビュー・書評

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  • 【構成】
    序 [i-iii]
    執筆者一覧 [iv-ix]
    使用の手引き [x-xi]
    分類一覧 [xii]
    項目分類表 [xiii-xlviii]
    〔01 社会/02 近代/03 自我・主体・アイデンティティ/04 他社・関係・コミュニケーション/05 身体/06 知・言語/07 歴史・記憶/08 宗教/09 文化/10 ジェンダー/11 セクシュアリティ/12 ライフコース/13 教育/14 医療・福祉/15 権力・支配/16 法・政治/17 経済・市場・産業/18 都市・地域/19 家族/20 階級・階層・労働/21 消費/22 メディア・コミュニケーション/23 日本社会/24 グローバリゼーション/25 環境/26 社会構想/27 社会調査/28 社会学史/29 理論と方法/30 集合・集団/31 科学・技術/32 人名〕

    本体部分 [0001-1371]

    社会学文献表 [1373-1439]
    和文事項索引 [1442-1534]
    外国語事項索引 [1535-1562]
    和文人名索引 [1563-1580]
    外国語人名索引 [1581-1583]
    執筆者索引 [1584-1590]




    ――――個人用メモ(ぶつ切り)――――
    ・私(mandarine )が略する場合は、この記号(〔……〕)を使っています。
    ・私が加えた振り仮名は、全括弧([ ])にいれています。

    ■  日本人  [英]Japanese  ■
    執筆:ピエール・スイリ/分量:約3500字

     「日本人」という項目が現代社会学事典にこうして現れるのは驚きに値する。というのも,「日本人」とは,社会学的概念ではないからである。日本人とは日本という名の列島に居住している者のことであり,ここでまず,日本人とは地理的概念とみなすことができる(そうであれば,日本列島に住む日本人以外はどうか?)。また,日本人とは日本国籍の日本の旅券[りょけん]をもつ者という政治的概念とみなすことができる(そうであれば,一世代以上が日本領土外に生活している日系人の場合はどうか?)。また,日本人とは日本語を母国語とする者という言語的な概念である(その場合,朝鮮半島出身の日本語を話す者はどうか? また,もっと一般的に,日本で育ち,生まれつき日本語で話す外国人の場合はどうか? さらには,日本語を話す者で,アイヌを祖先にもつことを主張し,自らを完全な「日本人」と見なしていない)。このように定義は簡単ではないということがわかるであろう。
     問題は,ほぼ同様のことが他のどの国の民族に関してもいえるということだ。〔……〕しかしながら,日本,アメリカ,スウェーデン,または中国,それぞれの国家と,それらが社会的集団を形成し,文化,歴史上の特殊な問題が当然存在するのはいうまでもない。
     かつて,20世紀の中頃までは,一般的な特徴によって民族を定義する仕方はよくあることであった。社会集団のある特定の行動を説明するために,「民族の心理」が使われていた。アメリカの文化人類学者,ベネディクト,R.は,著書『菊と刀』のなかでためらいもなく日本人を空想的に描いている。日本人は「礼儀正しく同時に尊大」であり,「厳格だが適応性がある」,また「誠実で寛大でありながら,かつ陰険で傲慢」であると彼女は描写する。しかしこの特徴を他の国の民族を表現することに換えることも可能になってくるのではないだろうか。たとえば〔……〕。つまり,集団心理学だけで,ある国民という概念を理解することは不可能である。
     地理,政治,文化,心理というものがこの問題を解くのに適していないならば,もしくは不十分であるならば,この問題はどのように言及されるべきか。「日本人」という概念は日本という国民国家の台頭と深く関わりがあり,おそらく,その歴史のなかにこの概念を理解する鍵を見つけることができるであろう。
     〔……〕
     〔……〕アジア全体がまだ貧困のなかにいるにもかかわらず日本だけが経済的に台頭した。このことが日本人は特有であるという意識を自[おのず]とうながすこととなった。日本人論という特異な文化論がもてはやしだされた所以である。国民の優位性は武器や国体の存在ではもはや表現されず,それは,日本人は特殊な人間だとする文化論で表現されるに至る。ほかの人々とは違うとされる社会的・文化的慣行を描くことによって日本人の均一性が前面に出され,どの時代にもこの国は当然特異であったというイメージを与えた.そして,義理の概念,家の概念,縦社会の概念,または,甘えの構築など,次々と,日本の固有さを説明する原則が打ち探された。日本人の脳は他の人間のそれとは違うのだという者さえいた。このような日本人論は,高度成長期の絶頂に極みに達した。
    それから20年ほど経ち,ほかの歴史的現象がさまざまな日本人論を相対化させ,今日では日本人論はある一時期のイデオロギーの産物であったと明らかになった。地方分権化,超国家的統合の試み,NGOの役割の増大,少数民族や原住民の権利の認証,アジア諸国の経済的台頭,これらが国民国家の役割を相対化するのに貢献したのである。日本という国民国家はもはや半世紀前のように特異なものとは見られなくなった。ことに,日本人という概念も,ここ20年ほどの世界中の人々の交流の増大,移住やグローバル化現象により,さらに複雑化している。
     100年前,たとえば日本文学というものを定義するのは,「日本人により日本語で書かれた文学」というように,単純なことであった。しかしながら,今日,日本語で書く日本国籍でない作家も存在するし,日本人作家でありながら日本語以外の言語で書く者もあり,さらには,文中に,日本語お英語を混ぜることによって,2つの文化,言語を生きる人物を描く作家もいる。いい換えると,確信できるものが失われ,境界線はいっそう不明瞭になっているということだ。その結果,「日本人」という概念は,「歴史性」の対象となりえるものと同時に,相対的で変動的なものとなる。この概念が,かつて意味していたものと同じ意味を持つとは限らない。
     「日本人」という表現は,結局,相対的なものであり,不可侵なものではなく,不変でもない。歴史的もしくは文化的構築物の表現であるということが理解できるのである。

    【主要文献】
    和辻哲郎『風土』1979.梅棹忠夫「文明の生態史観序説」久野収編『戦後日本思想体系15現代日本論』1974.中根千枝『家族の構造』1970.小熊英二『単一民族神話の起源』1995.網野善彦『「日本」とは何か』2000.

  • 参考図書 361.03/G34
    資料ID 2012105244

  • 貸し出し状況等、詳細情報の確認は下記URLへ
    http://libsrv02.iamas.ac.jp/jhkweb_JPN/service/open_search_ex.asp?ISBN=9784335551482

  • 361.033||Mi  参考図書

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