浅草公園 凌雲閣十二階―失われた〈高さ〉の歴史社会学

著者 :
  • 弘文堂
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  • Amazon.co.jp ・本 (418ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784335551741

作品紹介・あらすじ

明治・大正時代の東京スカイツリーである浅草十二階と、盛り場に集う群衆。稀代の民間学者に導かれて、東京の歴史が幕を開ける。

稀代の郷土史家にして考証家、喜多川周之。遺された膨大な資料をもとに、関東大震災前の東京・盛り場=浅草にたつ凌雲閣十二階とそこに集う有名無名の群衆を描く。
パノラマ的視界を現出させた、当時のめざましい高層建築、日本初のエレベーター、初めての美人コンテスト、そして関東大震災による倒壊。話題に事欠かない凌雲閣十二階の消長が、日本近代の諸相、人々の好奇心のありようを鮮やかに照らし出す。
本書は喜多川周之という人物とその業績をていねいに辿りながら、脱皮を繰り返すように成長していく東京、そして日本近代の様相、人々の欲望をみごとに捉えた歴史社会学の成果。図版多数、読物としても面白い内容。「記録と記憶」と題された当時の貴重な資料は必見。

感想・レビュー・書評

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  • 昭和以降に生まれた人間にとって、凌雲閣はファンタジーの世界だ。でも紛れもなく、現実にあった。その狭間にあるおもしろさに惹かれて、本書を手に取った。

    明治時代は博覧会ブームで、浅草での博覧会の一環として建てられた凌雲閣。しかし明治の終わりには足を運ぶ人が減り、1日数十人の客となる。

    凌雲閣を設計したスコットランド人の家庭事情など誰も興味がないと思うが(笑)、綿密に書かれている。また、大正時代に凌雲閣に登った田山花袋が語る、凌雲閣の凋落ぶりも楽しい。しまいには、自殺の名所となるのだとか。

    個人的には、民間学者の喜多川さんの自慢話より、歴史的事実を書かれた章のほうが楽しかった。

    好事家が楽しむ本だと思うが、こういう本はこれからもつくって欲しいね。

  • 凌雲閣に興味があって読み始めたけど、2章、3章の喜多川周之さん(石版画工、民間学者)が魅力的すぎた!

  • 当時の資料を基にした、十二階の当時の様子など。
    小説などではよく見るけども、実際の様子などは読んだことなかったので、と借りてみる。
    十二階の喜多川さんのことも知らず、昭和も遠くなったなぁ、と。あと色々な資料が気になりました。今度江戸東京博物館で展示があったら行ってみたい。

    タイムスリップしちゃうとしたら、田舎者と笑われてもいい、やはり十二階に登ってみたい。

  • 「民間学者・喜多川周之」の仕事を通して江戸から続く明治・浅草の社会の動きがよく解る。やや高価な学術書だが図版が充実していて読みやすく資料的価値も高いと思う。

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著者プロフィール

佐藤 健二(さとう・けんじ):1957年、群馬県生まれ。東京大学大学院社会学研究科博士課程中途退学。東京大学名誉教授。博士(社会学)。専攻は、歴史社会学、社会意識論、社会調査史、メディア文化など。著書に、『読書空間の近代』(弘文堂)、『風景の生産・風景の解法』(講談社選書メチエ)、『流言蜚語』(有信堂高文社)、『歴史社会学の作法』(岩波書店)、『社会調査史のリテラシー』など。

「2024年 『論文の書きかた』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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