甘えの構造 第3版

著者 :
  • 弘文堂
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  • Amazon.co.jp ・本 (229ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784335650789

作品紹介・あらすじ

著者は、本書によって日本の姿を写しだすばかりでなく、人間一般の本質に迫ろうとしている。英・仏・独・伊・韓国語に翻訳・刊行されている不朽の名著。

感想・レビュー・書評

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  • 「人間を超える存在」が自由をくれた時、自由が侵害されることはなくなる。
    宗教者にとっての神様がそれにあたる。
    だから西洋人は「個人の自由」 が身についている。

    対象は自分の理想像かつ絶対裏切らない必要があると見た。だから、身近な存在への甘えには限界がある。
    何歳であろうが甘えは必要。どんな形であろうがその欲求を充分満たしてる人こそ強い。と感じた。

  • 日本語の「甘え」という言葉をのぞき穴として、人間の心理に迫った試みです。

    著者は、日本語の「甘え」に相当する心理は、けっして日本人だけに特有のものではなく、普遍的に見られるものだとしています。しかし、日本人はその心理に「甘え」ということばを与えることで、それを文化的に公認してきました。そこで著者は、日本語における「甘え」という言葉と、それにまつわるさまざまな感情や社会的関係などを解きほぐすことで、人間心理の深いところにまで解明のメスを進めようとしています。

    なお、本書の方法がおよそ学問的な手続きに則っていないという、小谷野敦らの批判もあります。その一方で、上手に甘えることを人間関係に関する「技」としてとらえなおそうとする齋藤孝や、コフートの自己心理学との親近性を指摘する和田秀樹など、多くの論者によって再評価されており、現代の人間心理の解明に有効な手がかりを提供しつづけてもいます。そうした両義的な評価をもつ本書ですが、たいへん平明なことば遣いで書かれていて、一般の読者でもそのエッセンスに触れることのできる内容になっています。

  • 心理学方面からのアプローチなど網羅的であるが故に、私には難しい一冊だった。

    甘えは、甘える本人資質によるものと考えがちだが、これを許す環境にこそ、甘えに実体を持たせるという仕組みが学べた。

    一方で甘えを全く許さないという環境は不自然。環境づくりという観点を一緒に考えてくれたと感じた。

  • 題名の通り、
    「甘え」について様々な観点から
    述べられている。構造と言うだけあって、その切り口は非常に多面的である。

    甘えの語彙、心理的現象、日本人の考え方に照らし合わせた見方など、どれも自分では言語化できなかったものを、適確な言葉で表していた。

    日本人の根底にある「甘え」という心理が、ここまで人々の動向、表面的に表れる現象に裏付けされるというのは、非常に驚きであった。

    特に、【第二章「甘え」の世界】での日本社会に対する指摘は、私自身に社会への新たな見方を与えた。
    また、本書の後半に、甘えの現象を具体的に示している例として、夏目漱石の作品を引き合いに出しているのも、興味深かった。

    「甘え」という、フワッとした捉えどころのないものを、しっかりと捕まえて、あらゆる方向から考察した文献となっている。

  • 大学のゼミのテキストを再読。

    比較言語学的考察を背景に意味論的分析を行っていると言う内容ですが、
    簡単に言うと、日本語に独特な「甘え」という語彙から、日本人の心理特性、精神構造なんかを解き明かした本です。

    曲がりなりにも言語学なんかを齧った今読むと、また違った理解ができた気がします。

    「外国語を知らない者は母国語も知らない」とはゲーテの言葉らしいですが、
    我々が使っている言語と外国語の比較から、我々が無意識に行っていることの意味が理解できたりします。

    今回の震災で国難に際して一致団結する日本人の国民性が取り沙汰されましたが、
    その辺のこともこの本の集団心理の記述から理解できると思います。

  • さらーと流すように読んだ。内容も実生活に絡めて説明してあるので、気付けば自分の「甘え」について考えられるよう。依存甘え妬み悔やみ集団自分ルサンチマン 何度か繰り返して、さらーと読んだらいいかも。

  • 「甘え」という概念が日本特有で欧米には見られないことなどを言語の面から説明。硬さはかなりのもの。

  • 三葛館一般 146.1||DO

    保健看護学部 石村由利子先生
    本書は40年余に亘り、誤解されたり、批判されたりしながらも、長く読み継がれてきた代表的な日本人論の一つです。
    著者は、「『甘え』の概念は本来普遍的なはずなのに、日本人にはことさら培養されている点にこそ日本人心性の特色がある」と述べ、義理人情、遠慮などの私たちの生活に馴染んだ人間関係や「甘え」の病理を説明しています。私も大学生の時に読み、日本人独特の「甘え」に基づく人間関係のありようを納得した本です。

    和医大OPAC →http://opac.wakayama-med.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=27697

  • 「甘え」シリーズはその後も次々と刊行されているのである。
    なのに、ちーっとも知らなかった。隠れたベストセラーなのか、私が物知らずなだけなのか?
    先日読んだ本「いじめと妬み」と作者が同じだったので、読んでみようと思ったのだけど「甘え」というタイトルが、(私には)緊急性を感じなかったので、手に取るのが遅れたけどこれはもっと早くに読んでおけば・・・と思いました。

    私は人間関係で生じる不都合のを、相手への期待だと認識していたけど
    「甘え」としてもいいのだとわかる。完全ではないけど、ほぼ一致していると思う。
    人間関係に問題のある人は、「自分を作り(成長させ)」、円滑な「甘え」状況を作ることが問題解決になるのだけど、自分を成長させるのって難しいよね。

    「甘え」それは他言語では表現しにくい言葉なのだという。なるほど。
    だからといって、日本固有のものではないとも書いてある。
    それでも、日本独特のこの「甘え」と言う言葉と感性を今一度、じっくり吟味して土居さんが前書きで書いているように、将来を悲観しないで、未来に期待したいと思います。

  • 読みやすくて面白いテーマでした。この中のネタで一本お話が書きたくなったし(笑)

    『「甘え」は日本人の依頼心に対する肯定的な態度』
    (Dr.フリーダ・フロム・ライヒマン)
    この言葉に表されるように「甘え」は日本人に顕著であり独特なものらしく、英語ではこれにあたる単語がないそうです。
    意外ですよね。
    でも、日本では誰でも知っている「人見知り」という概念も欧米ではR.スピッツという学者さんが「stranger anxiety(八か月不安)」とわざわざ名付けて発表するくらいの発見だったそうです。

    「甘え」がいけないことだとは筆者は言っていません。この本はただ「甘え」という感情について語られています。
    だって、甘えの心理的原型は乳児の精神発達に関係あるんですよ。
    「母親が自分とは違う人物だと知覚し、その母親を求めること」
    これが甘えの心理的原型です。
    だからって、甘えが美徳ってわけじゃないですけどね。甘える相手(知り合い)が誰もいない場所で無遠慮な行動・態度になってしまうのは、咎める人がいなくても褒められたものじゃありませんし(笑)

    人は「甘え」が濃厚でも全く欠如していても、人を人と思わない態度をとってしまう、とここには書かれていました。
    そういうことを改めて自覚したい時、読んでみてはいかがでしょう。
    一応専門書ですが読みやすかったですよ。

    『なるほど~』と思った一文↓
    甘えは本質的にまったく対象依存的であり、主客合一を願う動き。
    甘えをむき出しにしたわがままは、他者に依存すると同時に他者を支配しようとする。

    心理学の専門書は、結構「そういえばそうだよね」っていう人の行動・態度についての分析が書かれています。
    そういうのを読むたびに感じるのは、それを研究者でもないのに見出して物語を作り上げる作家さん。ドラマや小説で何度感心したか……。読むたび回数が増えていくので、それもこういったものを読む楽しみです!

    では、長々とネタバレ失礼しました(笑)
    御時間がある時にでもどうぞご一読下さい。

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