アーサー・サヴィル卿の犯罪 (バベルの図書館 6)

  • 国書刊行会
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  • Amazon.co.jp ・本 (182ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784336025616

感想・レビュー・書評

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  • ボルヘス編集のバベルの図書館シリーズ。画像が出なくて残念ですが、青を基調としたとても綺麗な装丁です。

    ===
    『アーサー・サヴィル卿の犯罪』
    手相占い師に殺人の相を言われ、奇妙な義務感から殺人を計画する青年。

    『カンタヴィルの幽霊』
    イギリスの古い屋敷に住み付く幽霊。しかし新しいアメリカ住人はまったく幽霊を信じず物質攻撃を加える。ただ一人一家の娘だけが幽霊の話を聞く。「あんたは常に"愛"とともにあり"愛"は"死"よりも強い」「私は涙を持たないからあんたがわしと共に私の罪のために泣いてくれなくてはならぬ、わしは信仰をもたないからあんたがわしと一緒にわしの魂のために祈ってくれなくてはならぬ。あんたは闇の中で恐ろしい姿を色々見るだろう、恐ろしい声があんたの耳に囁くだろう、しかしそれらはあんたに危害を加えることはない。子供の純潔には地獄の力も叶わないからだ」


    『ナイチンゲールと薔薇』
    貧しい学生は想い人のために紅い薔薇を望む。その愛に打たれたナイチンゲールは、自らの心臓を薔薇の棘に刺し、死によって成就される恋、墓の中までも滅びない永えの恋により薔薇を紅く染め上げる。しかし不実で多情な人間は…


    『幸せの王子』
    生きているときに無憂宮で享楽的に暮らして死んだ王子は、銅像となり街の高みに飾られ、人の醜さ惨めさを目にする。王子は群れに遅れたツバメに自分の装飾品を剥がして貧しい人々に届けさせる。
    ツバメは慰みに旅した世界中の話を聞かせると王子は答える。
    「およそ人間、男女の苦しみほど不可思議なものはないんだよ。不幸ほど大きな神秘がまたとあろうか」
    ツバメはそれまでは歌と恋と人生とを楽しんでいたが、王子を愛してしまっていたのでそこに留まり、冬の寒さに王子の足元で死ぬ。
    「お別れのキスしてもいいですか、死の家へ行くんですよ。死って、眠りの兄弟でしょう?」
    ツバメが死ぬと王子の鉛の心臓が真っ二つに割れて裂ける。翌日街の人たちは王子の銅像が薄汚れていることに気付き、引きずり下ろして溶鉱炉で溶かす。
    それでも王子の鉛の心臓だけは溶けず、ツバメの屍骸と共にごみ山に捨てられる。
    天国で神様は言った。
    「あの街で一番尊いものを二つ持ってくるように」
    天使たちは王子の鉛の心臓とツバメの屍骸を持ち帰る。

    『わがままな大男』
    大男は見事な庭を持っていたが、独占欲から子供たちを追い出す。庭から春は去り冬が留まり続ける。
    ある日一羽の鳥が庭の木に止まり、子供たちが集い、ついに庭に春がやってきた。その美しさに感動した大男は庭を開放し、子供たちと遊ぶ。
    その中でも一番小さな男の子を気に入ったが、その子はその後現れない。何年も経ち大男の庭についにその幼子が現れる。喜びに駆け寄る大男はその幼子に傷跡を見つけて驚愕する。
    “子供の両手のひらには釘の痕が二つ、小さな両足にも二つ同じ釘跡が付いているのでした”「これは愛の傷なのだ。(略)お前はいつか自分の庭で私を遊ばせてくれたね、今日は私の庭へ一緒に行くのだよ、天国という庭に」
    その後遊びに来た子供たちは、白い花に包まれて横たわる大男を見つける。
    (たしかイエス・キリストの言葉で「お前が誰かに親切にすることは私に親切にすることだ。私は彼らに代わってお前に礼を言おう」みたいなものがあったと思うのですが、それを彷彿とさせる話でした)
     
    ===

    ぽろぽろ涙が出てくるような素晴らしい作品でした。
    キリスト教のすべてには賛同しているわけではないけれど、このような発想はキリスト教圏でないとできないな。ワイルドの皮肉めいた目線で、とても本人がそんなところで大人しくしていないだろうと思うような天国を描かれると素直に泣ける。
    こういう名作文学は子供用にアレンジしてはいけないなあ。「レ・ミゼラブル」「幸せの王子」などは子供の時説教臭く変えられたの読んでピンとこなかったのだが、ちゃんと翻訳されたものを読むと名作の名作たる所以、大作家の大作家たる所以がよく分かる。

  •  「幸せの王子」は道徳の教科書に載ってるから四回目くらいだけど泣いた。王子かっこよすぎる

  • 『幸せな王子』の作者。
    『ナイチンゲールと薔薇』『わかままな大男』の三編は童話的なお話。
    『アーサー・サヴィル卿の犯罪』『カンタヴィルの幽霊』は怪奇的なお話。
    『カンタヴィルの幽霊』は読んでいくうちにどんどん幽霊の方が可哀想になってくる。こんな怪談話は初めて。

  • 第6冊/全30冊

  • 2011/8/16購入

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著者プロフィール

1854年アイルランド・ダブリンに生まれる。19世記末の耽美主義文学の代表的存在。詩人・小説家・劇作家として多彩な文筆活動で名声を得る。講演の名手としても知られ、社交界の花形であった。小説に『ドリアン=グレーの肖像』戯曲に『サロメ』『ウィンダミア卿夫人の扇』回想記に『獄中記』などがある。1900年没。

「2022年 『オスカー・ワイルド ショートセレクション 幸せな王子』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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