- Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
- / ISBN・EAN: 9784336030634
感想・レビュー・書評
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それなりに面白く読んだけど、難しかったー。訳者のあと書きさえ意味が取れない個所があったり、5回目くらいでようやく意味がつかめたフレーズがあったり。表面をさらっと撫でたような読書になってしまった気がするので、自分のせいで星みっつ。頭いい人・忍耐力がある人はもっと面白く読めるんじゃないかな。
それで自分なりの感想ですが... トゥルニエの設定した「双子/単独者」「同性愛者/異性愛者」の枠組みにのっとって、登場人物たちがいささかのためらいもなく行動し続ける、運動小説でした。主要人物のアレクサンドル、ジャン、ポールは、自分の本性に従ってぶんぶん動き、現実的な人付き合いのレベルで相手を慮って行動を変えたりしない。この自分勝手と表現するのもちょっと違うぶれないキャラ立ちは、神話的といっていいかもしれない。おかげで自分と本の間に一枚薄紙が挟まっているような、どこかふわふわした読み心地だった。
訳者あと書きによると、トゥルニエは「双子ってこんななんじゃない?」っていうある着想を得たそうで。先の枠組みはそのコンセプトから演繹的に構築されているので、現実世界の双子性・同性愛にひきつけて読もうとしていた自分はいささか戸惑うことになってしまった。そこで、この特殊な枠組みのことはひとまず置くことにして、「おれはおれだけで完全無欠」と豪語するアレクサンドル叔父さんと、ジャンを追いかけて世界一周せずにはいられないポールのことに集中して読んだところ、なんとまあわたしたちはバラバラなんでしょう!という気持ちになった。
これは、種類が違うっていうことではなくて、ひとりだっていうこと。ヨーロッパの小説を読むと人の孤独レベルが高過ぎて息をのむことがあるのだけれど、この本も、からりとした当然の孤独をつきつけてくる。大気現象・潮の満ち引き・惑星の動きのうねりの描写がそこここにあって、個人というものがそれぞれに波型グラフを描いている波長にすぎないような気がしてくる。グラフが交わったと思ったらまた離れて行って、でもそれぞれの人がその独自の波長を曲げたら、彼ら自身であるということは失われてしまうんだろうなとか、そういうことを連想した。まあわたしたちは神様じゃないから、そこそこ曲げても消滅したりしないですけど。
帯の「世界をかけめぐる双子の愛と冒険」にはちょっとだまされた。全22章で15章になるまで、双子は旅に出ませんでした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
濃い。二段組みで約400ページ。しかも思弁的。ゲルマン風フランス小説。ごみのダンディー、アレクサンドルの独白の部分で時々読むのをやめようかと思ったが、ジャンとポールが旅立ったあたりから面白くなりはじめた。ちなみに日本も登場。