日本幻想文学集成 (26) 円地文子―猫の草子

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著者 : 円地文子
制作 : 須永 朝彦 
  • 国書刊行会 (1994年7月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (266ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784336032362

日本幻想文学集成 (26) 円地文子―猫の草子の感想・レビュー・書評

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  • 円地文子さん(1905.10.2~1986.11.4 享年81)の幻想文学集成(1994.6)の中に「冬の旅」があります。幽霊になった三島由紀夫と会話しながら、あの事件への思いを綴っていらっしゃいます。「私には、彼の武士道も、日本精神も、陽明学もいっこうに解らない。解っているのは彼が楽屋を持たない役者だったということだけである。人生のあらゆる場面が役者であり、而もその何処でも派手な立役者でなければならなかった。」この作品は、円地文子の三島由紀夫への「弔辞」だと思いました。

  • 幸田露伴 ウッチャリ拾い

  • 梅の木に梅の花咲くことわりをまことに知るはたは易【やす】からず
      岡本かの子

     「作家論」という文学研究のジャンルがある。作家の強烈な個性や独特の経歴、交友関係などが、その作家の文学観の核に重なることを論ずるものだ。実際さまざまな〈伝説〉をもつ作家も多く、また、その伝説を作家同士が生むこともある。
     たとえば、円地文子が岡本かの子について書いた「かの子変相」は、筆の鋭さに思わず緊張も走る名編だ。
     まず、かの子の相貌がなまなましくスケッチされている。「きめの荒い艶【つや】のない皮膚に濃く白粉【おしろい】を塗り、異様に大きくみひらいた眼が未開な情熱を湛【たた】えて」いる姿。だが、そのようなかの子を「美しいとは私は一度も思ったことがない」と断言。
     けれども、かの子が文学の上で「美女に化けようとし、その化け方は晩年には堂に入ったものになった」と、読者を魅了した妖艶なロマンチシズムを冷静に分析している。
     また、他人の心を強いて自分に引きつけたかの子の「孤独の深さ」を、円地文子は見通していた。それは、孤独の深さを知る作家同士のいたわりだったかもしれない。
     かの子の創作活動は短歌から始まり、晩年の3年間は、憑かれたように小説を量産した。その小説が、実は長歌的であることも円地文子は指摘している。 
     夫は画家の岡本一平、息子は芸術家の岡本太郎。多くの男性に支えられた50年の生涯だった。掲出歌、「ことわり」=理を追究するのはまこと易からぬもの。

    (2012年4月15日掲載)

  •  この小説の入っていた新潮文庫のタイトルを忘れたが、この小説は唯一読んだ円地文子の小説である。女流作家というのをあまり好まない私が、思わず引き込まれてしまうのは、一人の痴呆の老婆の中に潜む老いの中の性と少女のような無邪気さが、彼女が遺した猫のスケッチという形で描かれるその手法の鮮やかさにある。老婆の中の性の生々しさなど、女性しか書けないが、そればかりでは美しくない。猫の戯画があることで、「私」がそれを描き縊死した老婆の魂に踏み込んでいける、そしてただの性を描くようないやらしさは画帳の上に清真なものとなる。
     稀有な小説である。

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