鉱物 (書物の王国)

  • 国書刊行会
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  • Amazon.co.jp ・本 (226ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784336040060

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  • 編:高原英理、須永朝彦、東雅夫
    目次:
    ■ 石の夢(澁澤龍彦)表面に自然に絵柄が生じた瑪瑙。ガマエとは、貯蔵瓶のように天体の力や効能を集める霊石。石は鉱物は生きており、地下で成長したり病気になったり老衰して死んだりする。蘚苔類が鉱物の内部に侵入し花を咲かせる。ユング、永久に滅びない医師と自分とを同一化、母胎と石棺を同じイメージ。石は芸術ではなく魔術の対象。内部が中空になっている石、医師の牢獄、塔に閉じ込められた姫君のような処女の水。
    ■ 貝の火(宮沢賢治)たった六日だったな。ホッホ。→オパールが念頭にあったとか。
    ■ 水晶物語(稲垣足穂)学校の友達が見せてくれた草入り水晶。人間よりは樹木が偉く、樹木よりも鉱物、それも水晶のようなものがいっそう偉い。早く人間も鉱物に、いや遠い星になって。人間の顔の醜怪さ。原型は壊されても細粉は決して死滅してしまうわけではない。長命な鉱物が人類を観察しているとすれば。水や風に浸食された丸みよりも大自然の只中からたったいま抉り取ってきたことを思わせる、ゴツゴツとしたかけら。標本戸棚作り。方解石どもの寄り合い。
    ■ 異石(杜光庭『録異記』 訳:岡本綺堂)
    ■ 石髄の話(葛洪『神仙伝』 訳:飯塚朗)
    ■ 狐の珠(戴孚『広異記』 訳:前野直彬)
    ■ 石を愛する男(蒲松齢『聊斎志異』 訳:増田渉)
    ■ 巡礼のひとりごと(ヴォルケル 訳:栗栖継)
    ■ 石の女(ピエール・ド・マンディアルグ 訳:生田耕作)石も張り裂けるほどの凍てつきようだ。教師のベナンは鉱脈のあたりで声を聞く。見ると、赤い生物が三つ。人呼んで石の女(街娼の意味もある)。二千年近く晶洞に閉じ込められていた。内部から漏れ出た空気は24時間で人を殺す。
    ■ 食べる石(種村季弘)
    ■ 産む石(種村季弘)
    ■ 石中蟄龍の事(根岸鎮衛『耳嚢』 訳:須永朝彦)
    ■ 懐中へ入った石(『梅翁随筆』 訳:須永朝彦)
    ■ 動く石(柴田宵曲)
    ■ 室の中を歩く石(田中貢太郎)
    ■ サファイア(寺山修司)石の名はサファイア。そして、美しく発狂した母よ。あなたは九月生れでしたね。
    ■ 水晶の卵(ハーバート・ジョージ・ウェルズ 訳:小野寺健)骨董屋のケイヴ氏は店に水晶の球を置いている。二人の男が買いに来て、ケイヴ夫人は売りたがるが、ケイヴは誤魔化す。売れという家族から離すために、ケイヴは実験助手ジャコビ・ウエイス氏に渡して調査を依頼したのだ。球にはマストや庭園など知らない国の風景が見える。そして向こうからもこちらが見えるらしい……観察されているかもしれないのだ。向こうにいる生き物は火星人らしい。ここまで調べて、ケイヴは死に水晶は売られたとウエイスは知る。いまも探している、わたしは彼から話を聞いたのだ。……なんでもボルヘス「アレフ」の着想の元らしい。
    ■ 博物誌より(プリニウス 訳:佐藤弓生)天然磁石。サルコパグス石(人の体を食う)。メリティヌス石。ペンギテス。水晶(雪が非常に硬く凍り付く場所でしか発見されないので、氷)。スマラグトゥス(緑の宝石)類。ケラウニア。Dではじまる石。Gではじまる石。
    ■ フィシオログスより(作者不詳 訳:梶田昭)火打ち石(オスの石とメスの石が近づいて発火)。メノウと真珠(カキが日の出ころ海から上がり口を開けて天の露を呑み、日と月と星の光を殻の中へ閉じ込める)。インド石(病気の汚れをとる)。
    ■ 雲根志より(木内石亭 訳:須永朝彦)
    ■ 鉱石倶楽部より(長野まゆみ)
    ■ 白描・白描以後より(明石海人)更くる夜の大気ましろき石となり石いよよ白く我を死なしむ
    ■ 青色夢硝子(加藤幹也)S,T,M,そしてぼくKが屋敷に忍び込む。パルシファル教授が残した、夢物質投影装置。僕は夢結晶を吸い込んで、世界に遍在するようになる?
    ■ 馬鹿石、泥石(ジョルジュ・サンド 訳:篠田知和基)石は時と場合によっては口をきく。
    ■ 妖気噴く石(石上堅)
    ■ クマルビの神話(矢島文夫)
    ■ 岩(オマハ族の歌 訳:金関寿夫)
    ■ 石の花(日野啓三)一条氏と夫人は鉱物結晶の花壇を作る。おしつけがましくしぶとい木と草が嫌い、あるいはそういう生き方が。石を育てている。最後の夕暮れ、石が子を産む。残されたのは二個の石。
    ■ 石の言語(ブルトン 訳:巖谷國士)石を通って徴候と暗号の領域に入る。ガマエ。アナロジーを通じて神秘な交換。幻視鉱石学。石は、人間という種族に、苦悩と品位という高度の特典を授けた。石は言葉を持つ。
    ■ 鍾乳石(ピエール・ガスカール 訳:有田忠郎)
    ■ 黄銅鉱と化した自分(池澤夏樹)銅は鉱石から金属へというメタモルフォーズを経験している。銅山の坑道を見学したことがある。その坑道の中が現在どうなっているのか考える。絶対に行けない場所について想像すること。
    ■ 断片・続断片より(ノヴァーリス 訳:飯田安)人生は強要せられた一つの酸化である。
    ■ 石(西條八十)石の眠は深くして、花落つれども、ただ、しづか、石の眠は昏くして、雨ぬらせども、ただ沈黙。
    ■ ファルンの鉱山(エルンスト・テオドール・アマデウス・ホフマン 訳:種村季弘)船員エリス・フレーボムは母の死を知り、働く理由を見いだせないでいる。老人が話しかけてきて「ファルンに行って鉱夫におなり」。ファルンへ行き、鉱山主ペールソンから見込まれてその娘ウラとの結婚を持ちかけられる。が、エリスは先日の老人……100年以上昔の老トールベルンに、山の女王を紹介されて、熱に浮かされる。落盤事故でエリスは死ぬ。50年後、化石となったエリスの死体をウラは見つけ、絶命する。……「砂男」みたいな展開。
    ■ 山の親方(パーヴェル・ペトローヴィチ・バジョーフ 訳:佐野朝子)カーチャは許嫁のダニーロが死んでも待ち続けている。プロコーピィチ親方からくじゃく石細工の仕事を教えてもらい、ひとりで銅山に行って石を調達し、販路も確保する。結婚せよと迫るきょうだいを置いて山に入ると、山の女王さまがダニーロを返してくれる。
    ■ 青晶薬(塚本邦雄)
    ■ 解題(高原英理)石を前にした時に慌ててしまう。

  • 根岸鎮衛『耳嚢』より「石中蟄龍の事」
    啓蟄以外で初めてこの字使ってるの見たわ。
    地中などに潜む龍、とのこと。
    あまりにもロマンがある。

    田中貢太郎「室の中を歩く石」
    なんだかヘンな話で、なんだかすきだな。

    こういうのに長野まゆみの「鉱石倶楽部」が掲載されてるの、なんかびっくりだな。
    まあ正に長野まゆみでございって感じで好きだが。

    塚本邦雄「青晶楽」
    な、なんだこの読書体験は……。
    なんていうんだ、こういう散文は……。
    これが、塚本邦雄……。

  • 2015年9月22日読了。
    読んだことのあるものの収録も多かったけれど、とにかく、とても魅力的な一冊であった。

  • 石の夢(澁澤龍彦)
    ☑貝の火(宮沢賢治)
    ☑水晶物語(稲垣足穂著)
    異石(杜光庭『録異記』 岡本綺堂訳)
    石髄の話(葛洪『神仙伝』 飯塚朗訳)
    狐の珠(戴孚『広異記』 前野直彬訳)
    石を愛する男(蒲松齢『聊斎志異』 増田渉訳)
    巡礼のひとりごと(ヴォルケル 栗栖継訳)
    石の女(ピエール・ド・マンディアルグ 生田耕作訳)
    食べる石(種村季弘)
    産む石(種村季弘)
    石中蟄龍の事(根岸鎮衛『耳嚢』 須永朝彦訳)
    懐中へ入った石(『梅翁随筆』 須永朝彦訳)
    動く石(柴田宵曲)
    室の中を歩く石(田中貢太郎)
    サファイア(寺山修司)
    水晶の卵(ウェルズ 小野寺健訳)
    博物誌より(プリニウス 佐藤弓生訳)
    フォシオログスより(作者不詳 梶田昭訳)
    雲根志より(木内石亭 須永朝彦訳)
    ☑鉱石倶楽部より(長野まゆみ)
    白描・白描以後より(明石海人)
    青色夢硝子(加藤幹也)
    馬鹿石、泥石(サンド 篠田知和基訳)
    妖気噴く石(石上堅)
    クマルビの神話(矢島文夫)
    岩(オマハ族の歌 金関寿夫訳)
    石の花(日野啓三)
    石の言語(ブルトン 巌谷國士訳)
    鍾乳石(ガスカール 有田忠郎訳)
    黄銅鉱と化した自分(池沢夏樹)
    断片・続断片より(ノヴァーリス 飯田安訳)
    石(西条八十)
    ファルンの鉱山(ホフマン 種村季弘訳)
    山の親方(バジョーフ 佐野朝子訳)
    青晶楽(塚本邦雄)
    解題(高原英理)

  • 青色夢結晶がすき

  • 「鉱物」をテーマにした文学を集める。石・宝石・結晶などの無機物たちの愛と憧憬を描いた随筆、博物誌、神話・伝話・民間伝承、怪談奇談、思想・随想、小説、詩歌等、古今東西36作品を紹介。

  • 第6巻 全20巻

  • 「鉱物」についての古今東西の小説・随筆・詩などを集めた本。

    企画展とか、「印象派」だとか「ゴッホ」の作品ばかりを集めたものより、「人間」とかについて、テーマ別にごったに集めているものがすき。
    ただあまりそういう展覧会はないのだが。
    というのも、全部調べるキュレーターの苦労が大きいからだと思う。
    一回授業で、仮想展覧会のキュレーターのレポートがあって、そいうテーマを選んだんだけど、世界中から集めるのはつらかった。国宝とかばんばんもって来ちゃったし。

    このシリーズは、若干偏りがあるけど、1世紀のローマの博物誌から現代日本人の小説まで、とてもがんばって載せている。
    今から10年前の本なのかぁ。

    ①全く違う時空に存在しながらも、
    隣のページに載せられることで、
    「鉱物」に対する人間の共通の考えや恐れが、面白いほどみえてくるのだ。
    ②これに載っていなければ知らないような、昔の人の作品や今の人の作品が読める。
    ③偏りがあるといったのは―
    ちょっとロマン主義的かな?
    文学と科学の融和なんだけど。
    まゆつばな科学のことが美しく書かれている、というか。

    きれいな公園か、コンクリートのオアシスかなんかで一気に読まないと大変な本です。
    ながーいし、現実離れしていて。
    でも読んだあとなんとも言えぬすてきな気分になるから、このシリーズはすきなのです。

  • 鉱物をテーマとした全集。
    澁澤龍彦の「石の夢」をはじめ、鉱物に関するあらゆる文章が集められてます。
    幻想文学もあれば鉱山見学の随筆もあり、博物誌もあり伝説もあり神話もあり…。
    いろんな文章をざざっとなめたい時におすすめ。

  • 石や鉱物・鉱石にまつわる世界各国の短編をまとめたもの。
    鉱石の滑らかな表面や、透明さ、輝きなどが好きで好きでたまらないあなたにおすすめです。

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著者プロフィール

1896-1966年。フランスの文学者で、シュルレアリスムを創始した。1924年に『シュルレアリスム宣言』を刊行、自動記述などの表現方法を重視した。他に著作として『ナジャ』『黒いユーモア選集』など。

「2017年 『魔術的芸術 普及版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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