ラピスラズリ

著者 :
  • 国書刊行会
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  • Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784336045225

作品紹介・あらすじ

不世出の幻想小説家がふたたび世に問う人形と冬眠者と聖フランチェスコの物語。

感想・レビュー・書評

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  • 深夜営業の画廊に飾ってあった三葉の銅版画から導かれる、冬を知らない冬眠者たちをめぐる、幻想小説連作集。

    静謐で、歪んだ美しい世界がおごそかに陳列されている。
    ストーリーを説明するのはとても難しい。
    まるで夜に見る夢を小説化したようで、読んでも読んでも腑に落ちることなく、放り出されたまま。
    無駄のない硬質な文章は平易なのに、視点や時制がなめらかに切り替わってどんどん相がズレていき、読み進めることが困難なのだ。

    常識や理性とかいったものは、この作品を鑑賞するのには邪魔になってしまう。
    ただただ瞠目し、耽溺するのみである。

  • 華美な表現や難解な言い回しを用いない、装飾を極力落としたような文体、緻密に書き上げられた硬質な文章から、幻想的というほかない、豊かな世界が生まれ出る。代替不可能な世界を構築しながらも、そこに自己を投影せず、影すら残さない。硬質と感じるのは、作者と作品とのあいだに確固とした距離が横たわっているからだろう。工芸品のような作品集。

  • 不思議で独特な構成。1話は語り手が立ち寄った画廊で架かっていた三枚の銅版画。画廊主からそれは小説の挿画として描かれたものであると説明される。2、3話はその銅版画に描かれている世界の物語。4話5話はそれぞれ2、3話と時代、場所も全く異なるが、冬の間冬眠する種族の存在がその世界を繋げている。硬質で緊密でしかも読者への説明が排された文章は、ともすれば読み手がその世界へ没入するのを拒絶する。自分だけなのかも知れないが、もしかしたらそれは額縁に収められた画を、額の外から眺める者の立ち位置なのかも知れないとも思った。

  • すごく楽しみにしていた「飛ぶ孔雀」がなぜピンとこず、山尾悠子ってこうだったかなあと前作を再読。記憶にある通りすごく良かった。

    そう、この硬質な感じ。目眩のするような魅惑的な世界なんだけど、決してわかりにくいわけではない。幻惑的であると同時に、すーっと腑に落ちる感がある。そこがとてもいい。

    「これは落ち葉枯れ葉の物語」というリフレインの効果的なこと。これぞ物語という気がする。繰り返し読んで飽きない、芳醇な世界にうっとり。

    「飛ぶ孔雀」はまた読み返そうと思っているのだけど、初読の印象では、なんだか山尾悠子独特のノーブルな感じが薄れたような気がして仕方がない。猥雑かつノーブルというのが魅力だと思ってきただけに、違和感がある。著者の進化(深化)についていってないオールドファンの繰り言かもしれないが。

  • やばいらしい。

  • わたしの拙い文章力では感想を書くことすら出来ない。
    圧倒的な言葉のイメージにずっぽりと埋もれてしまって。
    それはもう、息苦しいほど…

  • 雪と埃と落ち葉。降り積もっていくもの、落ちてしまったものは覆しようがない。息を潜めていたものたちが、ページをめくるたびにぶわっと撒きあがるような物語。

  • 白銀世界に白く犇めく氷花、
    <塔の棟>の天使窓に羽を休める
    雪の結晶の燦き、冬の眠りの物語。

    魔女の火炙り、地獄の窯のように熱く、
    鉄蓋の奥に夢を飼う、石の大竈の火の囁き、
    秋の落ち葉枯れ葉の物語。

  • すべてが意味ありげで惹き込まれます。そして文章が綺麗。綺麗、って漢字で書きたくなるような独特の硬い質感がありました。

  • 場面場面が心深くに残って、本を読んだというより沢山の写真を見ていたような気がしてくる。

    読み終えたあと心に残るのは、冷たい夜気と 玲瓏な早春の空、この美しい装丁を見たときの期待感を結晶したようなチラチラと光る石のイメージ。

    気品ある言葉で綴られた物語を読めたことに感謝します。


    そして作中に出てくるお料理がまた美味しそうで。カテゴリ分けを「幻想文学」とするか「食」とするか、非常に悩ましかった。

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著者プロフィール

山尾悠子(やまお・ゆうこ)
1955年、岡山県生まれ。75年に「仮面舞踏会」(『SFマガジン』早川書房)でデビュー。2018年『飛ぶ孔雀』で泉鏡花賞受賞・芸術選奨文部科学大臣・日本SF大賞を受賞。

「2021年 『須永朝彦小説選』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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