エンベディング (未来の文学)

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  • Amazon.co.jp ・本 (353ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784336045676

感想・レビュー・書評

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  • この世界は言語で構成されている。しかし、われわれの言語には限界があり、多様にして壮麗な世界をとらえきれていない。ドラッグ体験を通じて、あるいは精神を病んでいる人々が見る、無際限な可能的世界の方が、むしろ本来的な世界なのであり、われわれは貧しい言語観が災いして、その芳醇な世界に触れられないでいるのではないか。60~70年代に一世を風靡したドラッグ・カルチャー全盛期になら、人目を引いたアイデアではないか。

    イアン・ワトソンは、多くの平面を共時的に併置し、同時進行する危機的状況を手際よく一本の筋に綯いあわせる。その主題になっているのが、表題でもある「埋め込み」(エンペディング)だ。イギリスの施設では、クリスが四人の子どもを「埋め込み型」言語環境の下に、他の環境とは隔絶して育てるという実験中である。ブラジルでは、やはり埋め込み型言語を持つアマゾンにある少数部族の研究をするピエールがいた。二人はアイリーンというクリスの妻によって繋がる友人である。

    そのころ、アメリカのネヴァダ砂漠に宇宙人が飛来する。その交渉相手としてクリスが選ばれ、交渉の仲介者となる。宇宙人はコミュニケーション能力を研究するため、星間飛行の技術を提供する引きかえに地球人の脳のサンプルを採集する目的で地球に立ち寄ったのだ。

    巨大ダムに水没しようとする少数部族、アメリカ産業資本と結託するブラジル政府に反対する勢力の武力蜂起、米ソ二大国の思惑とそれを暴露する中国のスパイ衛星網、そんな現実的世界の真ん中に人類をはるかに超える能力を持つエイリアンがやってくる。いかにもSFらしい発想だが、アイデアが空回りして拡散し、大事なところに焦点化しない憾みがある。レーモン・ルーセルの詩集『新アフリカの印象』をエンペディングのテキストにしたり、アマゾンの部族につたわる神話を語ったりする部分など、興味深い点もあるだけに惜しい気がする。

  • これは…
    ある作家を思い出すような
    わざとなのかはわからないけど構成が
    お世辞にも上手とはいえない作品です。
    視点変更の多様がかなり仇になっています。

    悪く言うと、レナルズの劣化版。
    何かが明らかに欠けています。
    なんなんだろうなぁ。

    読めないわけではないけど
    構成の荒さが目立つ作品です。

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